AI、人々、そして、社会の交差点におけるマイクロソフトの役割

[2017年7月12日]

Posted by:  ハリー シャム (Harry Shum)
Microsoft AI and Research エグゼクティブ バイスプレジデント

今日の平均的な消費者にとって当たり前の機能でさえも、50 年以上前に人工知能という研究分野が生まれた当時、コンピューターサイエンティストたちは、ただ夢見るしかありませんでした。

私たちは、AI の進化の黄金時代に生きています。コンピュータービジョン、深層学習、音声処理、自然言語処理といった分野で、コンピューターサイエンティストたちは毎日のように成果を上げています。これらの分野は、最前線の専門家たちが何十年もの間、挑んできたものです。

これらのブレークスルーが、Microsoft Translator などの生活に役立つツールとして現実になりましたが、ごく最近まで、このようなツールは単なるファンタジーや SFに過ぎませんでした。さらに、これらのツールは、言語の壁を打ち破り、コミュニケーションを促進することによって、様々な形で人々を支援しています。

AI と人々と社会との交差点は、マイクロソフトに対して膨大な機会と共に厳しい課題を突き付けています。

AI のブレークスルーが豊富に存在する中、テクノロジ企業であるマイクロソフトには、これらのイノベーションから、人々が仕事をより効果的かつ効率的に行えるよう支援し、世界の最も深刻な課題を解決するツールを構築できるチャンスがあります。AI の活用により、重要なメールを判断するといった一見単純な仕事から、パーソナライズされた癌治療法の発見などきわめて複雑な仕事まで、既に多くの改善が達成されています。

マイクロソフトは、人間の創造性を拡げるだけでなく、共通の社会的価値基準と期待に対応する形で AI を進化させていくことへの責任があると考えています。マイクロソフトが構築するAIのツールやサービスは人間性を支援すると共に、人間の能力を強化できなければなりません。

これらのツールを使用している人々は、それがどのように機能しているのか、そして、どのようなデータに依存しているかを理解できる必要があります。AI を作り出した人々、そして、それを使用している人々が、AI がどのように機能し、なぜそのような意思決定が行われたかを説明できれば、AI はさらに有用になり得ます。

AI の進化は可能な限り開放的で公平でなければなりません。

これははじまりに過ぎません

今までの目覚ましい技術進化にもかかわらず、AI のツールとテクノロジの開発において私たちはまだ初期段階にあります。AI を活用したテクノロジは、画像の正確な識別や会話中の単語の認識などの特定のタスクをうまく実行できますが、触覚、視覚、嗅覚などの感覚を使用して周囲にある世界を理解してやり取りできる幼児の能力には遠く及びません。

AI を使用したテクノロジがさらにスマートになるにつれ、マイクロソフトは技術進化に対して責任あるアプローチを取りたいと考えています。それは、最終的にお客様と社会全体に対して最大の価値を提供するアプローチであり、マイクロソフト CEO のサティア ナデラ (Satya Nadella) が昨年発表した AI の規範と目標に合致するものでもあります。

これは未開拓の領域であり、マイクロソフトは自社が行う意思決定が重大な影響を持つことを認識しています。

昨年の 9 月に、マイクロソフトはMicrosoft AI and Research の設立を発表しました。社内の研究所、そして、Bing、Cortana、Azure Machine Learning などの製品グループから、約 7,500 名のコンピューターサイエンティスト、研究者、エンジニアを集結した新しい組織です。

本日、ロンドンで開催された AI イベント(マイクロソフトの英国ケンブリッジ研究所の創立 20 周年を祝うイベントでもありました)において、AI の最も困難な課題の解決にフォーカスした研究組織内のリサーチとインキュベーションのハブである Microsoft Research AI を初公表しました。科学者とエンジニアのチームがマイクロソフトの研究所や製品グループの同僚と緊密に連携します。AI の最も困難な問題に挑戦し、お客様や社会に貢献できる製品やサービスへの最新の研究成果の統合を加速します。

Microsoft Research AI のもうひとつの主要な目的は、機械学習、認知、自然言語処理など、長期的に個別の研究分野として発展してきたAIの研究分野を再結合することです。この統合型アプローチにより、高度な理解を行い、複雑で多面的な作業で人々を支援できるツールの開発が可能になります。たとえば、このようなアプローチを取ることで、言語を理解し、その理解に基づいて行動する方法やシステムを構築することができます。

マシンリーディングを例に取ってみましょう。これは、先進的領域であり、医師が数千もの文書から重要な情報を発見できるよう支援し、人命救助に貢献できる可能性がある高付加価値の作業に時間を割り当てられるようにするなどの、驚異的な潜在力を持っています。

マシンリーディングの実現には、自然言語処理や深層学習などの複数の AI の研究分野の組み合わせが必要です。実際、現時点でマイクロソフトの統合型アプローチはこの分野の競合をリードしています。

マシンリーディングにおけるマイクロソフトの先進的取り組みは、より洗練され、微妙なニュアンスも理解できるテクノロジを構築するという、マイクロソフトのより広範なゴールに向けた進化の一例でもあります。

毎日のように、コンピューターは、パターン認識やクラス分類などの機能を使用し、写真中の顔や会話中の単語の認識といった個別タスクの能力を向上させています。

これらの機能を組み合わせ、人々にとって自然に見える能力を追加することで、AI はさらに有用になるとマイクロソフトは考えています。これには、あるタスクの知識を別のタスクに適用する、そして、周囲の世界を常識として理解するといったことが含まれます。

AI アルゴリズムの進化、クラウドコンピューティングの処理能力、そして、AI システムを学習させる上で有用なトレーニングデータにより、AI の研究は急速なペースで進んでいます。

マイクロソフトは、この進化のスピードにブレーキをかけることはできませんし、それを望んでもいません。しかし、AI を責任ある形で進展させていくことを望んでいます。

マイクロソフトが生み出している AI の進化は、一企業だけでも、また一人のコンピューターサイエンティストだけでも達成されることはなく、強力なコミュニティの協業がなければ責任ある形で結実することもありません。マイクロソフトが Partnership on AI to Support People and Society などの組織に積極的に参画しているのはこれが理由です。また、マイクロソフトの研究者が、学術界や他の団体におけるコンピューターサイエンス分野の科学者や他の分野の専門家と定期的に協業している理由でもあります。

AI が研究開発の世界から現実の製品の世界へと移行する中で、マイクロソフトはオープンでコラボレーションを重視した基礎研究へのコミットメントを維持していきます。また、社会のあらゆるメンバーと協業し、社会の最も困難な課題の解決に腐心していきます。マイクロソフトは、地球上のすべての個人とすべての組織がより多くのことを達成できるようにするという企業ミッションの追求において、研究の強化をさらに進めていきます。

 

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