企業文化について学んだ 10 のこと

[ブログ投稿日 2017年10月9日]

Posted by: キャスリーン ホーガン (Kathleen Hogan)

今日、企業文化が注目を集めるトピックになっています。マイクロソフトにおいて自社の企業文化変革に深く関与してきた者として、お客様やパートナーの皆様から、その詳細を知りたいという声を聞くことができることをたいへんうれしく思います。企業文化変革は一種の産みの苦しみのようですが、マイクロソフトがそれに取り組んだことは素晴らしい経験でした。これには、マイクロソフト CEO サティア ナデラ (Satya Nadella) の影響力とリーダーシップが大きく貢献しています。サティアの新しい著書「Hit Refresh」では、マイクロソフトの 40 年の歴史の中で 3 番目の CEO になるまでの個人として、そしてプロフェッショナルとしてのサティアの経験が綴られています。また、それは、企業とその従業員を救ったリーダーが、企業の魂を再発見し、その文化を変革していく物語でもあります。

最近、過去 3 年間のマイクロソフトの企業文化変革において学んだことを公開できないかという依頼がありました。ある意味、変革は始まったばかりなのですが、企業文化変革の実現に必要なことについては既に多くを学んでいます。そこで、共有して学ぶという精神に則り、ここでご紹介することにします。

#1 過去を尊重して未来を定義せよ

私たちが企業文化変革の取り組みを始めた時には、多くの人々が「今やろうとしていることが正しく、過去は間違っていた」というストーリーを作ろうとしていました。しかし、私たちはそのようには考えませんでした。マイクロソフトの最初の 40 年間には素晴らしいことがたくさんあったからです!私たちは時間をかけて何を将来の基盤にしていきたいのかを従業員と話し合いました。従業員による慈善の精神、公共のためのテクノロジ構築、大胆な目標設定といったものです。誰もがこれらの受け継がれてきた伝統を誇りに感じていました。しかし、同時にマイクロソフトには捨てなければならないことがあることも理解していました。たとえば、マイクロソフトには激しい社内競争がありましたが、本当の競争相手は社外に存在します。
他にも、マイクロソフトが捨ててきたものがあります。
サティアはこの変化を「何でも知っている(”know-it-all”)会社から、何でも学ぶ(”learn -it-all”)会社への変化」であると的確に表現しています。
進化の方向を理解したら、次に未来について考える必要があります。フォーカスグループ、サーベイ、そして、組織全体を通じた多くの対話により、私たちはあるべき働き方を定義しました。これと同時に、サティアはグロースマインドセットの考え方に触れ、このアプローチが、私たちが目指す企業文化とうまくマッチするのではないかと考えるようになりました。

#2 要約する:単純でも戦略的に

この段階で、私たちには、マイクロソフトの企業文化を表す方法が学び、好奇心、大胆さなど 50 種以上あり、その数はさらに増えつつありました。これは多すぎるため、要約する必要が生じました。
これは先を急いだということではありません。このステップには十分な時間をかけました。実のところ 9 カ月をかけました。
フットボールチームのシアトルシーホークスのマインドセットコーチであるマイケル ジャーベイス (Michael Gervais) 博士などの専門家を招きました。マイクロソフトの元役員で現在はゲイツ財団の CEO であり、スタンフォード大学理事でもあるジェフ レイクス (Jeff Raikes)とも会いました。Mindset の著者であり、グロースマインドセットの権威であるキャロル ドゥエック (Carol Deck) 博士のコンサルティングも受けました。
より多様性を重視したフォーカスグループを実施し、コーポレートバイスプレジデントとのミーティングを行い、アイデアの統合と展開のエバンジェリストとして機能させるための「カルチャーキャビネット(企業文化内閣)」を設立しました。
最終的に、「お客様中心主義」(Customer Obsessed)、「ダイバシティー&インクルージョン」(Diversity and Inclusion)、そして、「One Microsoft」という 3 つの属性にフォーカスしたグロースマインドセットを企業文化に取り込むことを決定しました。これらはみな、世界をより良く変えていくことに貢献します。

#3 ごまかしは許されない

サティアは、マイクロソフトが目指す企業文化を全社に向けて、そして、株主総会で発表しました。これは大胆なアプローチであり、あらゆる行動が目標との対比で評価され、ごまかしが許されないことを意味しました。サティアがその発言と行動において常にグロースマインドセットを示していたことは、私たちの取り組みの強力な推進要素となりました。企業文化変革を定着させるためには、CEO、役員、マネージャーが語る文化を現実に実行しなければなりません。

#4 目的指向型のミッションを持つ

次の学びは、この取り組みは単に企業文化だけの問題ではないということです。企業文化を目的指向のミッションと組み合わせることが重要です。今日の従業員の大多数は働く意味と目的を求めていると私は考えています。彼らは自分が何か良い変化をもたらしていることを知りたいのです。戦略が進化していく一方で、企業文化や目的意識は永遠に、少なくとも長期的に不変でなければなりません。目的指向のミッションと組み合わさった企業文化により、企業の従業員は企業を基盤として使い、自分自身の目標と情熱を具現化できるようになります。

#5 大小様々な象徴的変化を実現する

企業文化を宣言したならば、次のステップは変化が始まったことを伝えることです。
私たちはすぐにいくつかの大きな変更を行いました。たとえば、社内の軋轢を招きがちな固定的な評価カーブに基づいていた人事評価システムを更改しました。新しいシステムは、個人の影響度、他者への貢献、他者からの協力にフォーカスしています。社内ミーティングも大きく変わりました。従業員が聴衆として座り、経営陣の話を聞くだけのきわめて静的な体験からハッカソン、製品エキスポ、セミナーを含むきわめて対話的な 1 週間のイベントへと変わりました。
多様性と一体性 (ダイバシティー&インクルージョン) に対する認知度を向上するために、無意識の偏見に関する研修を行い、個人の尊重と帰属意識の向上のために Dialogue Across Différences (「相違を越えた対話」) というコースでフォローアップしました。
同様に小さな変更も行いました。たとえば、ミーティングで他人の話を遮らないなどの10のマナーの公表などです。これらの小さな行動も、従業員に変化が進行中であり、個人の努力が毎日の進歩をもたらしていることを伝える上で有効でした。

#6 文化を人に取り入れる

次の学びは企業文化を人々の中に取り入れることに関します。上記の象徴的変化とまったく同様に、インタビュー、報酬、昇進のやり方に具体的変化を取り込むことで、自分のプロセスと企業文化との整合性を取ることができます。人事レビューのアプローチを変更し、スクリーニングインと呼ぶプロセスによって採用プロセスをより多様性を重視したものにしました。さらには、コーポレートバイスプレジデントの昇進の基準に「企業文化指数」とインタビューを加える変更も行いました。

#7 コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーション

この点についてはいくら強調してもし過ぎということはありません。一貫性のある定常的コミュニケーションが必要です。CEO のビデオメッセージ、雑誌スタイルの SWAY、さらには、メッセージを書いたコーヒーマグなど、従来型か否かを問わず企業のあらゆるレベルでのコミュニケーションを行いました。マネージャーのコミュニティも重視し、 “Manager Meeting-in-a-Box” を提供することで、チームに向けて容易にメッセージを発信できるようにしました。ここでのポイントは頻繁に広報活動を行い、企業文化の重要性を印象づけることです。

#8 テクノロジにより変化を加速

テクノロジ企業であるマイクロソフトにはテクノロジの活用が DNA に埋め込まれています。私はそれを当然と受け止めていましたが、多くのお客様や同僚たちが、マイクロソフトがなぜこれほど急速に変化できたのかを尋ねてきた時、私はテクノロジの重要性に気づきました。企業文化の構築支援に活用した(そして、今でも活用している)テクノロジの例は以下のとおりです。

スコアリングを行う: 日々のサーベイにより従業員の心理状態を測り、企業文化を理解し、それを取り入れようとしているかを判断しました。また、経営陣には、HRBI (Human Resources Business Insights) を提供し、多様性のあるチームの構築など様々な企業文化の領域に関する可視化を実現しました。

思い込みと洞察: 採用アプローチの障害になっていた思い込みの解消のためにデータを活用し、退職の要因などの洞察を得るために機械学習を活用しました。

コラボレーションと学習: マイクロソフトの学びの文化を強化するためにすべての研修システムを集中化し、従業員には Lynda.com へのアクセスを提供しています。Skype、Yammer、そして、Microsoft Teamsにより、マイクロソフト従業員はコラボレーションツールに容易にアクセスできます。

大規模なつながり: 従業員は(対面式か仮想的かのいずれかで)サティアの月次の Q&A に参加し、CEO の声を聞き、質問を直接投げかけることもできます。Yammer と Skype によりリアルタイムで感情を伝えることができ、その情報は何が従業員の心に響いているかを判断する上で有用でした。

#9 全員が漕ぎ手

企業文化変革の目標に到達するためには、リーダーシップチームの全員がコミットし、参加しなければなりません。公約と一致しない行動を取れば、他人はそれを見ており、不信感が蔓延しかねません。長期的変化を確実に起こしていくためには、この点に注意した行動を取る必要があります。

#10 謙虚さを保ち、進路を維持する

最後の学びは、私たちがまだこの取り組みの過程にあり、今後も学び続けていくという点です。謙虚さが重要です。勝利宣言をするべきではありません。一貫したアプローチを毎日続け、進路を維持しながら小さなマイルストーンの達成を祝福していくことが必要です。
最近、マイクロソフトの Envision イベントにおいて、私はこれらの10の学びについてマイクロソフト CMO のクリス カポセラ (Chris Capossela) と対談しました。マイクロソフトの企業文化変革について詳細をお知りになりたいのであれば、是非このセッションをご覧ください。

 

私たちがこの取り組みを続けていくにつれ、この学びのリストも変わっていくでしょう。旅路を進めていく過程でより多くを公表できることを楽しみにしています。皆様の組織が、今日のデジタルトランスフォーメーションと変化する従業員の期待に適合していきながら進化し、市場での地位を維持していく上でどのような活動をされているのかも是非お聞かせください。

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