破壊が目的:マイクロソフト ラボでのデバイス検証

破壊が目的:マイクロソフト ラボでのデバイス検証

[ブログ投稿日:2018年1月8日]

住所が伏せられた場所にある窓のない建物で、ハードウェアの特殊なテストが行われています。

数カ月間にわたりノンストップで文字を書くSurface ペン の検証や、Surface デバイスを激しく落下させる「ショックタワー」、長期的な高温、低温、雨、多湿、埃、霧、化学薬品、紫外線などによる影響を検証する過酷なテストなどがここで行われています。

デバイスにとって悪夢のようなこの施設は、ワシントン州レドモンドのマイクロソフト本社にあるリライアビリティラボです。この所謂「テクノロジ拷問部屋」では、エンジニアのチームがマイクロソフトのあらゆる製品のヒンジ、ハードドライブ、キーキャップ、ケースなどのあらゆる部分の強度を確認するためにストレスを加えています。

デバイス リライアビリティ担当シニアディレクター クリシュナ ダーバ (Krishna Darbha) は「私たちは 3 週間のテストによって 3 年間分をシミュレートしようとしています」と述べます。

A Surface Pen, guided by a robotic arm, spends weeks drawing lines, symbols and shapes on Surface screen.

リライアビリティラボは、マイクロソフトの Product Quality プログラムの一環です。同プログラムは設計の検証、素材の分析、コンプライアンス、安全性などにもフォーカスしています。同ラボが、マイクロソフトのメインキャンパスのハードウェア開発部門の近隣にあることで、製品のライフサイクルのあらゆる部分で品質と信頼が満足されるようになるとダーバは述べます。テストはお客様の全体的満足度を向上させるために設計されています。

マイクロソフトのパートナーや顧客もラボの実験から知見を得ており、この取り組みは自身の製品の改良や自社のデジタルトランスフォーメーションに役立つこともあります。

「必要に応じてパートナーやお客様にテクノロジや検証作業の詳細を公表しており、それによるメリットを得ています」とダーバは言います。

ダーバのチームは、赤い金属のドアで隔離された数十もの試験室で作業をしています。

それらの部屋では、テスト装置が作り出す騒音が響き渡ります。日光がまったく当たらず、あたかも防空壕のようなコンクリートの廊下が部屋と部屋をつないでいます。そしてラボのスタッフが部屋を渡り歩き、意図的にガジェットを乱暴に扱います。

Technicians wearing ear and eye protection conduct an impact test on a packaged Surface device, simulating a 48-inch drop onto wood. Reliability test engineer Michael Nist stands behind reliability technician Vladimir Artym. Reliability engineer Jacob Murphy sits partially obscured by a test camera.

リライアビリティラボのマネージャー、ブラッド トンプソン (Brad Thompson) は「私はデバイスを壊すことに情熱を傾けています。これらは全て、より良いハードウェアを作るためです」と笑いながら言います。

ラボの目的のひとつはどこでも使える製品を作り出すことです。たとえば、フットボールの競技場で選手やコーチがSurface Pro 4を使うケースなどがあります。また、アウトドア環境、貨物船の船内や炎天下の自動車などの厳しい条件による故障の可能性を発見し修正することも目標です。

「私たちは現実世界の条件を実験室でシミュレートすることでテストを迅速に行います。極高温と極低温のテストを行い、それを繰り返しています」とダーバは述べます。

このような極限環境におけるテストの例を見てみましょう。

ある日の朝、Surface Studio が摂氏 55 度、湿度 85 パーセントの試験室に数日間置かれていました。このテストでは、ヒンジ、タッチディスプレイ、内部回路、さらには、接着剤や塗装などの素材がチェックされました。

 

Test engineer Bob McPherson lifts a Surface Pro from the salt-fog machine.

テスト中およびテスト完了後に、ラボのスタッフが電子回路の挙動やディスプレイの構造などの変化を検査します。

「たとえば、ディスプレイのガラスが曲がっていないかなどを検査します」とダーバは述べます。

このような検査はどの程度の精密性で行われるのでしょうか?

「それはミクロンレベルのため、肉眼で見ることはできません」とダーバは述べます。1ミクロンは0.001ミリメートルです。

しかし、測定を行わなくても、多くの場合チームは微妙な変化を感じ取れます。

「これによってどのようにマシンが故障するかの原理がわかります。設計と診断の両面で有用な情報です。」

オーブンのような試験室でゆっくりと焼かれていく Surface Studio は同じ日に行われていたテストの一部に過ぎません。

別の Surface Pro が太平洋上の船便コンテナの環境を再現する塩分を含む霧を発生させるマシンで何時間もテストされていました。テスト後、チームは製品の内外に腐食の兆候がないかを検査します。

別の試験室では多くのラップトップが紫外線に晒されています。1 週間にわたりキセノンランプの明るい光がデバイスを照らします。これは、数カ月間の太陽光の投射に相当します。

A Surface device withstands an impact test, matching a half-meter drop onto wood

テストエンジニアのジョナサン レール (Jonathan Lehl) は次のように述べています。「太陽光を凝縮することで、素材に対する影響を調べるための時しています。光があまりに強力なため、ドアには鍵がかかっています。中に 1 分でもいれば日焼けしてしまうでしょう。」

テスト後、エンジニアのチームがラップトップを検査し、色のコントラストの低下、接着剤の劣化、ケースのダメージがないかをテストします。

廊下の先では、シャワーカーテンの向こうで Surface Pro がホースで水をかけられています。水かけと乾燥を繰り返すことで、フットボールの競技場での数カ月間の使用がシミュレートし、表示や機能に問題がないかをチェックします。

一方、テストエンジニアのボブ マクファーソン (Bob McPherson) はネバネバした液体の付いた綿棒を Surface Pro の筐体に差し込んでいます。スキンローションや窓用洗剤などオフィスや家庭で使われる様々な液体によるテストが行われています。

McPherson places a Surface laptop into a machine that mimics ultraviolet light.

マクファーソンは作業を終えると筐体を試験室に入れて数時間「調理」し、化学反応をチェックします。同様のテストがキーキャップや画面などに対しても行われます。これらのテストは、シニアリライアビリティエンジニアのシーン トゥー (Sean Too) と ニコレッタ サンガリ(Nicoletta Sangalli)、そして、リライアビリティエンジニアのグオファン ゾウ (Guo fang Zhou) が統率しています。

さらに、埃のテストも行われます。天井の高い試験室では Surface ラップトップに向けてファンが多量の粉を吹きかけています。これは、家庭やオフィスにおける長期的な埃の影響をシミュレートするテストです。テスト後、ラップトップのファンは正常に機能しているか、冷却はできているか、ラップトップは効率的に動作しているかなどが検証されます。

近くの棚には粉の入った瓶が並んでいます。その中身は、家庭の埃を再現するために所定のサイズに粉砕された水晶が入っています。マイクロソフトはテストのためにこの「埃」を購入しています。

Testers spray water on a Surface device, reproducing a lifetime of rain exposure.

「この埃は金より価値があるかもしれません」とトンプソンは言います。

また、その日のテストでは、テクノロジにより人間のミスを再現するための多くの方法が探求されました。

様々な装置により、デバイスが2メートル以上の高さからカーペットやコンクリートなどの様々な落とされ方による衝撃がシミュレートされます。

ギロチン台にも似た薄型の装置、「ショックタワー」は、パッケージされた Surface デバイスを地上から数フィートの高さまで引き上げ、最大 600G の加速度を作り出すことができます(参考までに人間は 5G で意識を失います)。

保護ゴーグルを付けた 2 人の技術者が、タワーから 3 メートルほど離れた場所に座ってラップトップをのぞき込んでいます。高速撮影カメラがデバイスにフォーカスし、あらゆる衝撃の影響を捕らえようとしています。技術者が「データ取得開始、目標設定、落下」と告げると、タワーは鋭い音と共にデバイスを下方に発射し、1.2 メートルの高さから木の床に落とされた状況を再現します。

試験後、ビデオが検証され、パッケージされたデバイスがダメージを受けていないかが視覚的に、さらに顕微鏡によってもチェックされます。このような制御された衝撃テストは、製品の角や縁部分、さらには、個別のボタンに対して行われます。

「私たちは、製品のどこに弱点があるかを知りたいのです。そのため弱い部分にフォーカスし、堅牢性を評価します。なぜならシステム全体の強みは、弱点によって左右されてしまうからです」とダーバは述べます。

暴力的でなくても破壊に結び付く行為もあります。それは、日々の使用による単純操作を何年間も繰り返すことです。

これを再現するために、ラボは、多くの機能的・機構的なテストを行い、デバイスの長期的な耐久性を短時間で測定しています。

A Surface Pen, guided by a robotic arm, presses every button on a Surface device – over and over for weeks.

ある部屋では、ロボットの腕が Surface ペン を握り、Surface Studio の画面上で水平線と垂直線の格子を描画しています。そして、ロボットは画面を消去し、描画を再開します。

一週間にわたって、ペンと画面は同じ操作を飽きることなく何百回も繰り返されます。

その近くでは、ロボットの腕が Surface ペン を操り、デバイス電源のオンオフ、スタンバイモード設定、再起動、すべてのキーのタッチ、動画の再生、ファイル転送、カメラの起動、さらには、写真の撮影を延々と繰り返しています。

「ユーザーが行うあらゆることを数週間連続で行うのです」とテストエンジニアのネイサン パターソン (Nathan Patterson) は言います。

このような過酷なテストがあってこそ、お客様の製品に対する信頼感を獲得できます。だからこそ、テストエンジニアはテスト開始のボタンを押し続けるのです。

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TOP IMAGE: A Surface device gets a shower during a test that simulates a lifetime of rain exposure. All photography by Scott Eklund/Red Box Pictures.

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