Future Computed:AI とその社会における役割

Future Computed:AI とその社会における役割

[ブログ投稿日:2018年1月17日]

ブラッドスミス (Brad Smith)
プレジデント兼最高法務責任者
ハリー シャム (Harry Shum)
Microsoft AI and Research Group 担当
エグゼクティブバイスプレジデント

マイクロソフトは新しい電子書籍「Future Computed:AIとその社会における役割」(“The Future Computed: Artificial Intelligence and its role in society”)を公表しました。私たちが前書きを担当し、私たちのチームが執筆に協力しています。タイトルが示すように、本書は、AIテクノロジの方向性、そして、それがもたらす社会的課題についてのマイクロソフトの見解を述べたものです。

個人的レベルで言えば、前書きを担当したことで、過去20年間にテクノロジがどれほど私たちの生活を変えてきたか、そして今後20年間にどのような変化が起こるのかを、一歩離れて熟考する機会が得られました。1998年に私たちは2人ともマイクロソフトに勤務していましたが、勤務地は地球の裏側でした。別の大陸のまったく異なる文化の中で暮らしていましたが、人の手による計画と活動が中心の生活という点では共通でした。それから20年経った今、かつてはSFと考えられていたデジタルの世界が当たり前の存在になっています。

モバイルデバイスやクラウドコンピューティングなどのテクノロジが私たちのニュースの読み方、日々の計画、コミュニケーション、ショッピング、そして、家族、友人、同僚とのやり取りを根本的に変革しました。今から20年後にはこの世界はどのようになっているでしょうか?マイクロソフトは、AIにより、私たちの最も貴重な資源、つまり「時間」を節約しながらより多くのことができるようになると考えています。2038年までには、パーソナルデジタルアシスタントが私たちのニーズを先読みし、スケジュールを管理し、会議の準備をし、日々の計画を助け、コミュニケーションを行い、自動車を運転してくれるようになるでしょう。

個人の生活以外でも、AIはヘルスケア、農業、教育、運輸などの領域でブレークスルーを実現していきます。既に驚くべき事例が存在しています。

しかし、過去20年間においてもそうであったように、新しいテクノロジは必然的に複雑な問題と広範な社会的懸念をもたらします。コンピューターと人間の協力によって生まれる未来を考える上では、これらの課題に正面から対応することが重要です。

AIが責任ある形で作られ、使用されるためにはどうすればよいでしょうか?人々を守るための倫理基準をどのように確立すればよいのでしょうか?AIの利用基準をどう統制すべきでしょうか?そして、AIは雇用と職業にどのような影響を与えるのでしょうか?

これらの難しい質問に答えるために、科学技術者は政府、学術界、企業、市民社会などの利害関係者との連携を強めていく必要があります。マイクロソフトでは、学際的な人工知能の開発と利用の指針として公平性、信頼性、プライバシーと安全性、協調性、透明性、そして、説明責任という6つの倫理基準を定めています。これらの課題をより深く理解するほど、そして、テクノロジの開発者によるこれらの課題対応のベストプラクティスの共有が進むほど、AI統制の社会的ルールが熟考され、世界に対する貢献度は高まるでしょう。

また、AIの労働市場への影響にも注意を払う必要があります。AIによって不要になる職業は何でしょうか?AIはどのような職業を生み出すのでしょうか?250年にわたるテクノロジの変化の中で変わらない要素があるとするならば、それはテクノロジの労働市場への絶え間ない影響、すなわち、新しい職種の誕生、既存職種の消滅、そして、職業の特性の変化です。この影響が今後も続いていくのは確実です。

今、いくつかの重要な事実が明らかになりつつあります。

第一に、AI時代には、AIによる変化を迅速かつ効果的に取り入れた企業や国家が成長するということです。なぜなら、新しい職業や経済成長はテクノロジを採用する者に訪れるからです。

第二に、AIが重要な社会的問題の解決に貢献できる一方で、その未来についてはより批判的な目で見なければならないということです。機会と同様に課題もあります。強固な倫理基準、法律の改正、新たなスキルの訓練、さらには、労働市場の改革などに対応しなければなりません。AIから最大の価値を得るためには、これらの課題すべてに対応する必要があります。

第三に、AIはテクノロジセクターだけで作られるものではないことから、共同責任の意識を持つことが必要とされるということです。マイクロソフトでは、かつてPCをすべての人に提供したのと同様に、AIを民主化しようとしています。つまり、開発者、企業、政府が容易にAIベースのソリューションを構築し、社会に迅速に価値を提供できるようにするためのツールを作成しています。

これらの点は最も重要な結論へと結びつきます。それは、AIによる世界のためのスキルの獲得には、科学、テクノロジ、工学、数学以外の要素も必要ということです。コンピューターがより人間に近くなるにつれ、社会科学や人類学が今まで以上に重要になるでしょう。言語学、文芸、歴史、経済学、倫理、哲学、心理学、人格形成などの科目によって、AIソリューションの開発と管理で重要になる哲学的・倫理的なスキルを教育することができます。AIが人類に最大限貢献できるようにするためには、すべてのエンジニアが一般教養をより深く学び、すべての一般教養学部の学生がより深く工学を学ぶことが必要になります。

私たちには先見の明があるわけではありませんが、私たちが互いの言葉を聞き、学ぶためにより多くの時間を費やさなければならないことは確かです。「計算される未来」がこの対話に貢献できることを願っています。

「Future Computed」はこちらから入手可能です。また、追加の情報はこちらから参照可能です。

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