クラウドとタイヤ: 安全運行の鍵を握る IoT

※本ブログは、米国時間 5/27 に公開された”The cloud and tires: Where the rubber and the Internet of Things hit the road” の抄訳です。

データを活用したより安全で効率的な走行を実現

タイヤはクルマが唯一路面と接地する部品であり、ガソリンや CO2 の排出、関連コストを削減し、何よりも安全運行へ繋げるためには、適切な使い方が重要です。

一般のドライバーはタイヤにあまり関心が高くないかもしれませんが、トラックやバスなどを保有する運送事業者は、安全で快適かつ効率的な運行のためにタイヤの空気圧を管理することが重要だと認識しています。

世界最大の自動車市場でもある米国での調査結果として、商用車の運行コストの上位にタイヤが挙げられています。道路脇に停車する車両の半数以上はタイヤトラブルが原因で、更なる事故を引き起こす可能性もあります。

特に、不適切な空気圧でのタイヤの使用は、タイヤの摩耗を加速させるだけでなく、車両の性能を低下させ、燃費も悪くなります。結果、運行コストの増加に加え、環境にも影響を与えます。

タイヤの空気圧を適切に管理することは簡単なことではありません。絶えず変化する気温、多様な路面状況、ドライバーの運転の仕方、積み荷(積載量)などが関わってくるからです。

上記の米国での調査結果は、世界中どこでも当てはまります。日本では、明るい黄色の車体で知られる「株式会社はとバス」が、数十年にわたり、東京観光を中心に毎日数百人もの乗客を乗せて運行しています。すべての事業活動において安全を最優先している同社は、長い間厳格な車両メンテナンス体制を実践してきました。

Yoichi Matsui of the Hato Bus Company.

「タイヤの点検は、ドライバーが運行前に行う日常点検に加え、整備士による毎月の車両点検の時にも実施しています」と株式会社はとバス 執行役員 観光バス事業本部 車両整備部長の松井洋一氏は語ります。「大型バス 1 台あたりのタイヤ数は、前輪 2 本、後輪 4 本、スペアタイヤ 1 本の計 7 本です。これらのタイヤの点検は、以前は手作業で行われており、大型バス 1 台あたり 15 分程度かかっていました。また人手での点検では誤差も発生しがちでした」

そこで、はとバスではこのようなタイヤの点検に関するコストやリスクに対応するため、より優れた管理システムを導入したいと考えました。

日本および世界最大のタイヤ会社のブリヂストンは、クラウドサービスである Microsoft Azure とモノのインターネット (IoT) を組み合わせたソリューション Tirematics を開発しました。

「Tirematics は運送事業者向けに提供されているソリューションです」と株式会社ブリヂストン デジタル ソリューション開発部 デジタル ソリューション開発ユニット リーダーの浜畑直哉氏は語ります。「各タイヤにセンサーを取り付けることで、リアルタイムで空気圧や温度 (データ) を捕捉し、その情報をクラウドへ送信します。異常を検知すると、直ちに Tirematics からドライバー、整備士、車両管理者などに向けてアラートを送ります」

The traditional way of checking tire pressure.

Tirematics を取り入れれば、タイヤの点検やメンテナンスにかかる作業の負担を軽くすることが出来ると共に、タイヤ不具合による予期せぬ運行トラブルも未然に防ぐことが出来ます。

ブリヂストンの Azure 上での Tirematics の開発は、2016 年 8 月から始まりました。Tirematicsは、Azure IoT Hub や Azure Data Lake、Azure Stream Analytics、Azure Event Hubs などで構成されています。

そのしくみは次のとおりです。タイヤに取り付けられたセンサーのデータは、まず車両整備場に設置されたローカルシステムに送られ、さらに携帯電話網を通じて Azure IoT Hub へと送られて、Azure Data Lake に蓄積されます。次に、このデータが Azure Stream Analytics でリアルタイムに分析され、異常を検知した場合には、Azure Event Hubs がアラートを送ります。

ブリヂストンは、2017 年 5 月に Azure での開発を完了し、昨年 8 月からはとバスと協働で日本での実証実験を開始しました。この実験では、車両管理者がリアルタイムでTirematicsからのアラートをスマートフォンで確認出来ることにより、タイヤに関する問題への対処をはるかに迅速化することが出来ました。

Using Tirematics via a smartphone app.

「私たちはバスの安全運行のため、タイヤ (管理) に最も力を入れています」とはとバスの松井氏は言います。「人による誤差を減らし、タイヤの空気圧の状態を完全に把握できるようにするため、当社は Tirematics を採用しました。

Tirematics はデータやアラートを直接車両管理者に送ることができます。これによりドライバーからの報告を待つことなく、いち早くトラブルに対応できるようになります」

ブリヂストンは、「より安全で快適かつ、より経済的なモビリティ」を目指して、現在 20 か国で Tirematics を運用しています。浜畑氏は、マイクロソフトのグローバル サポート体制や Azure のスケーラビリティは、クラウド選定において大きな差別化要因になると説明します。また、Azure が Tirematics のグローバル展開に伴う規模拡大にも十分対応できたことを高く評価しています。

イノベーションはさらに続きます。自動車業界では、個人および商業モビリティの大変革として、更なる「CASE (Connected, Autonomous, Shared and Electric)」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化) 化が進んでいます。加え IoT やその他テクノロジの進歩により、使用中のタイヤから情報を収集し、新しいサービスを開発することが可能となっています。

Naoya Hamahata, Bridgestone’s Manager for Digital Solution Development.

「当社のイノベーションは、お客様の課題およびニーズに、真の付加価値を加えたサービスを提供することで進められます」と浜畑氏は言います。

「現時点で Tirematics が計測および収集している情報は、タイヤ空気圧と温度に関するデータですが、対象データの拡大も検討しています。今後は、さらに多くの運送事業者にこのソリューションを提供すると共に、Toolbox などの多様なシステムとも連携し、タイヤに関するデータ収集プラットフォームを構築することを計画しています。

また Tirematics をはじめとするデジタルツールが収集し蓄積したデータを、社内で育成したデータサイエンティストが迅速かつ効果的に分析する体制も整備されつつあります。

これに当社ならではの技術を組み合わせることで、新たな技術開発やタイヤ開発も可能になるはずです」浜畑氏は語ります。「今後もよりお客様のニーズに即したタイヤを提供すると共に、データに基づいた提案やサービスの質を高めることで、お客様への提供価値を向上させていきます」

【日本マイクロソフト株式会社について】
日本マイクロソフト株式会社は、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ時代のデジタルトランスフォーメーションを可能にします。「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」企業像を目指します。

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフトWebサイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Webサイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Webサイト http://www.microsoft.com/

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