ノバルティスとマイクロソフトが新薬開発プロセスの改革で提携、バイオサイエンスと AI で世界の患者を救う

※ 本ブログは、米国時間 10 月 1 日 に公開された”Bringing together deep bioscience and AI to help patients worldwide: Novartis and Microsoft work to reinvent treatment discovery and development” の抄訳です。

商用研究および科学の世界において、新薬を市場に投入するプロセスほど骨が折れ、コストのかかるものはおそらく他にないと思います。まず新たな化合物を発見し、開発、テスト、臨床試験を経て最終的に規制当局の承認を得るまでに、10 年以上かかることもあります。有望な薬の候補が 10 種あっても、そのうち 9 種は市場にたどり着くことなく終わってしまいます。結果、ライフサイエンス企業が新しい処方薬を1つ導入するためにかかる費用は平均 26 億ドルとされています。

これは、ライフサイエンス企業にとって単なる挑戦にとどまるものではありません。医薬品開発の合理化は、幅広く言うと人間の健康のためにも緊急を要する課題となっているのです。マラリアのように、今でも毎年何十万人もの人の死につながる古くからの病気を治癒する方法を発見することや、がんの新たな治療法を見つけること、さらには非常に伝染力の高い病気で世界的な大流行を引き起こさないよう新たなワクチンを開発することも含め、新薬の開発を早めることができれば世界中で救われる命の数は膨大なものとなるでしょう。

今回ノバルティスとマイクロソフトが協業を発表したのは、こうしたことが背景にあります。今回の発表は、両社がマイクロソフトの高度な AI 技術とノバルティスのライフサイエンス分野における深い専門知識を組み合わせて活用する方法を共同で模索するというものです。この取り組みにより、両社は研究や臨床試験、製造、運用、財務など、医薬品開発のさまざまな段階に潜む課題に対処する新たな方法を見つけようとしています。

ノバルティスの最高経営責任者であるヴァス ナラシンハン (Vas Narasimhan) 氏は、最近のインタビューで、今回の提携により AI の力が解き放たれ、ノバルティスがまだ治療法のない数多くの病気に対する新たな治療法の研究を加速させる可能性があると述べました。

バイオテクノロジー業界では、ここ数年で命を救う新薬発見の革命に繋がりうるすばらしい科学的進歩が見られます。こうした進歩の多くは、大量のデータを新たな方法で分析する機能がベースとなっていることから、新薬の開発は生物学や化学の課題だけにとどまらず、AI やデータサイエンスの課題としても捉えられるようになりました。つまり、ノバルティスのような企業も、これまで以上にデータサイエンス企業へと変わらなくてはならないのです。今回の協業で中心となるのは、ノバルティス社員が医薬品開発の各段階で AI を活用できるようにし、データサイエンティストでなくとも大量のデータに隠れたインサイトを見つけ出せるようにすることです。というのも、近年デジタル化された健康情報が急激に増加し、健康を改善する新たな機会があるにも関わらず、これらすべてのデータを理解するのは非常に困難なためです。

膨大な量だけが問題なのではありません。情報の多くは、研究ノートや医療雑誌の記事、臨床試験の結果といったように、非構造化データとして存在し、通常は接続されていないシステムに保存されています。つまり、すべてのデータをまとめることが非常に困難なのです。

両社には夢があります。ノバルティスの社員全員が、データサイエンスの専門知識がなくても、Microsoft AI ソリューションを日常的に使用して大量の情報を分析し、新薬の発見に重要となる新たな相関関係やパターンを発見できるようにすることです。今回の戦略的協業の目的は、この夢を実現させることです。これにより、新たな化合物の可能性を探る研究者や、投与量を把握しようとする科学者、結果を測定している臨床試験の専門家、サプライチェーンの効率化を模索している運用マネージャー、さらには効果的な意思決定を目指すビジネスチームに至るまで、すべての人に力を与えることができます。また、社員が新たな課題に取り組んだり新しい AI モデルを開発したりする中で、継続的にお互いの取り組みで関係性を築き、探索と発見の好循環が生まれるようになるでしょう。その結果、インテリジェンスがノバルティス全社に広がるだけでなく、医薬品開発プロセス全体にも到達し、世界で最も差し迫った健康問題に対する答えを見つける力が高まるのです。

今回のノバルティスとの協業においては、マイクロソフトリサーチのデータサイエンティストとノバルティスの研究チームも協力し、AI が 3 つの特定領域で変革的な新アプローチを実現できる方法を模索します。

そのひとつは、不可逆的失明の主な要因とされている黄斑変性症におけるパーソナライズ治療です。2 点目は、AI を使って新しい遺伝子の製造や細胞療法をより効率的にすることで、まずは急性リンパ性白血病に焦点を当てます。3 点目は、AI を駆使して新薬の設計時間を短縮することで、マイクロソフトが開発した草分け的なニューラルネットワークを使って有望な分子を自動的に生成し、スクリーニングや選択作業まで行います。両社の取り組みが進むにつれ、共同研究の範囲も拡大するでしょう。

マイクロソフトでは、今回の協業がライフサイエンスの研究開発を変革すると見ており、その可能性に期待しています。マイクロソフトの CEO である サティア ナデラ (Satya Nadella) が述べたように、ノバルティス社員が AI の力を手にすることで、同社はこれまでにないほどの機会を得ることができ、世界中の患者に新たな救命治療をもたらす薬の未開拓分野を模索できるようになるのです。

両社は、まだ探索と発見に向けた長い道のりのスタートラインに立ったに過ぎません。しかし、この戦略的提携は、画期的な医薬品や治療法の開発方法と提供方法に大きな影響を与える重要な協力的取り組みが始まったことを示しています。ノバルティスがバイオサイエンス分野で提供する深く幅広い知識と、マイクロソフトが持つコンピュータサイエンスおよび AI 領域における比類なき専門知識により、両社は新薬開発の方法を改革するユニークな機会に恵まれたのです。この取り組みを通じ、両社は、質の高い治療と看護がよりパーソナライズされ、効率化され、安価になり、より手の届くものになる世界に向けて前進できると信じています。

【日本マイクロソフト株式会社について】
日本マイクロソフト株式会社は、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ時代のデジタルトランスフォーメーションを可能にします。「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」企業像を目指します。

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフト Web サイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Web サイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Web サイト http://www.microsoft.com/

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