リモートワークに関するトレンドレポート: ミーティング編

Microsoft 365 担当 コーポレートバイスプレジデント
ジャレッド スパタロウ (Jared Spataro)

※このブログは、米国時間 4 月 9 日に公開された”Remote work trend report: meetings” の抄訳を基に掲載しています。

いま私がこうしてブログを執筆している間にも、世界中で何百万人もの人たちがフルタイムでのリモートワークやリモート学習に日々適応しようとしています。フルタイムでリモートワークするということは、人間としての試練にさらされているともいえます。私たち人間は、生まれながらにしてつながりを求める生き物だからです。マイクロソフトは数年前、7 ヶ国の 1 万 4000 人を対象に、最も幸福感をもたらすコミュニケーション手段は何かというテーマで調査を行いました。当然の結果として、全世代で「直接会うこと」がトップとなり、メールやチャット、携帯電話へのメッセージなどの数値を上回りました。直接顔を合わせることができない今のような状況下では、お互いどのようにつながりを保てば良いのでしょうか。

過去数週間にわたり、マイクロソフトはお客様が Microsoft Teams を活用し、ミーティングでつながりを保っているさまざまな方法を知ることで、非常に刺激を受けています。上司がオンラインミーティングでバーチャルポテトヘッドとなって登場したり、チームでのスタンドアップミーティングが楽しいおふざけ会になったりといった状況も見受けられました。シフト勤務の最新情報を共有するチームから、バーチャルクラスルームでつながる学生と教師、さらには何千人もの従業員に対しタウンホールで Q&A セッションを行う CEO に至るまで、多くの人が離れた状態で仕事や学習をこなす際に全員が集まる新たな方法を見い出しています。

これは、Microsoft Teams で日々行われているミーティング数の多さにも現れています。1 日のミーティング時間(分)は、これまでの記録を更新して 27 億分に達し1、3 月 16 日の 9 億分から 200% 増となりました。また、教育関係者が遠隔授業に利用し始めたこともあり、今では 175 ヶ国 18 3,000 の教育機関2 Teams for Education を利用しています。

リモートワークとリモート学習に関する変化のトレンドを探るため、マイクロソフトは新たな働き方トレンドインデックス (Work Trend Index) をベースとした初のレポートを発表します。マイクロソフトは継続して研究を続け、今後も調査やインタビューはもちろん、マイクロソフトの生産性ツールを使った人と人とのコミュニケーション手法の傾向を見ていくことで、働き方の変化を探求していきます。

今回発表する最初のレポートでは、離れた場所で仕事をするチームメンバーが、どのようにしてつながりを保とうとしているのかを探っています。ここで得た知見を共有する目的は 2 つです。ひとつは、個人情報や組織データを保護しつつ、お客様に明るい側面から学びを得てもらい、将来に向けて計画が立てられるよう支援したいと考えていること。そしてもうひとつは、その知見を製品イノベーションの指針として活用し、できる限り最高のエクスペリエンスを継続的に生み出せるようにするためです。

主な調査結果

世界中の人々が Microsoft 365 で仕事をこなし、Bing で検索し、LinkedIn でつながると、メールやミーティング、検索、投稿から何兆件ものシグナルが発生します。それが、仕事上での人同士のインタラクションを世界最大級で示す  Microsoft Graph に集約されます。このデータのトレンドから、独自の視点で世界の生産性パターンを観測できます。

マイクロソフトでは、プライバシーを真摯に捉えており、レポート制作に使用する前に個人データや社名など組織を特定するデータはすべて削除しています。メールやチャット、ドキュメント、ミーティング内の情報など、お客様のコンテンツをレポート制作に利用することはありません。マイクロソフトは、Microsoft Graph で収集したデータから、職場のトレンドを幅広く調査し、共有することを目指しています。

ビデオを ON にした通話で、人とのつながりを体感

フィオナ カー博士 (Dr. Fiona Kerr) をはじめとする研究者は、目と目を合わせ、他人と物理的なつながりを持つことで、ドーパミンが増加し、ストレスホルモンのコルチゾールが減少することを発見しました。カー博士の研究によると、目を見つめるだけで相手を物理的に落ち着かせることも可能だといいます。そのため、世界中でリモートワークが進められるようになった今、多くの人がフルタイムで在宅勤務を始める前に比べ、Teams ミーティングでのビデオ通話(ビデオをONにした通話)が 2 倍以上3に増加したのも当然の結果といえます。Teams のビデオ通話の総数も、3 月は 1,000 以上増加しています4

ユーザーが Teams を最も積極的に利用している国を調査すると、ノルウェーとオランダでビデオの利用率が高く、約 60 の通話でビデオが使われている(ビデオがONになっている)ことがわかりました。オーストラリアでは、ミーティングでのビデオ利用率が 57% で、イタリアが 53%、チリが 52%、スイスが 51%、スペインが 49% となっています。一方、イギリス、カナダ、スウェーデンでのビデオ利用率は 47% で、メキシコは 41%、米国では 38% となりました。

ビデオをあまりONにしない国はどこか、またその理由は何か調べたところ、インドでのビデオ利用率は 22%、シンガポールは 26%、南アフリカは 36%、フランスは 37%、日本は 39% でした。これは、インドや南アフリカなど一部の地域ではデバイスが入手しづらいことや、インターネット回線が安定していないことなどが要因として考えられます。

リモートワークが推奨されているこの期間中も、お客様がビデオを使ってつながりを保っている様子に励まされました。例えば、中国温州市最大の病院である温州医科大学の第二附属病院では、Microsoft Teams を導入し、院内で隔離された場所にいる医療スタッフと、隔離されていない場所のスタッフが連絡を取れるようにしています。これにより、スタッフの健康と安全を確保しつつ、患者を安全に治療できるようになりました。

真の意味で対面によるコラボレーションに取って代わるようなものはありませんが、マイクロソフトでは迅速なイノベーションを起こそうとこれまで以上に努力しており、解決が困難な問題を減らして人とのつながりを増やし、仕事が少しでも楽しくなるよう、次のような機能に取り組んでいます。

  • 背景差し替えは、自宅からTeams 会議に参加した場合でも、背景をきれいなホームオフィスなどに変更できる機能です。この機能が、Teams で一般提供されるようになりました。カスタム背景は、人工知能 (AI) によって、人物を抽出し、後ろの背景をぼかす「背景ぼかし」機能をベースに構築されています。将来的には、ユーザーが独自のカスタム画像をアップロードできるようにする予定です。
  • ビデオ通話で参加しやすい雰囲気を作るため、挙手機能を先月発表しましたが、この機能が今月グローバル展開されます。会議中に発言したいことがある参加者は、ミーティングのコントロールバーにある「手を挙げる」アイコンをクリックすることで、発言の意思表示ができます。
  •  ミーティングの主催者がボタンをクリックすると、参加者全員の会議を終了させることができる機能を本日発表します。ミーティングの主催者は、コントロールバーのオプションに「会議終了」というボタンが表示されます。
  • ミーティングの主催者は、特に教職員の方は、誰が Teams ミーティングに参加したか把握しておかなくてはならないケースがよくあります。そのため、今月より参加者レポートがダウンロードできるようになります。参加者レポートは参加者リストの中にあり、参加者の参加時間と退出時間などが記載されています。
  • 今年後半には、リアルタイムのノイズ抑制機能が搭載される予定です。同機能は、大きなタイピング音や犬の鳴き声など、Teams のミーティングで邪魔になる背景音を AI で抑制します。

ビデオを使った新たな手法でつながりを構築

企業が全面的にリモートワークを採用する中で、バーチャルタウンホールを活用して大規模に従業員同士のつながりを構築するリーダーが増えています。大規模なカンファレンスやイベントもオンライン化が進んでおり、Teams ミーティングの録画機能を活用する人も多くなりました。例えば、教員が学生に向け授業を録画したり、社員が招待した同僚のためにミーティングを録画し、後で確認できるようにしたりといったことが行われているのです。

Teams のライブイベントやミーティングを録画する機能は、Microsoft Stream というサービスによって実現しています。イベントをオンラインに移行するお客様が増えたことにより、Teams における 1 週間の Stream ビデオ数先月 5 倍以上増加し、1 分間に何百時間ものビデオがアップロードされました5

Nuance は、ヘルスケア、金融サービス、通信、政府機関、小売業などにおける世界で最も困難な問題を AI で解決しようとする企業です。同社は、モントリオールで開催予定だったグローバル研究開発カンファレンスを数日でバーチャル化しました。主催者は、数百人の参加者を Teams チャンネルと PDF によるアジェンダでつなぎ、PDFのアジェンダには Teams のイベントセッションへのリンクをそれぞれ記載しました。昨年 Nuance では同カンファレンスに約 70 万ドルの予算を費やしましたが、今年の費用はほぼゼロで、世界各地からの出張もなかったため二酸化炭素への影響も抑えることができました。

仕事のスケジュールがより柔軟に

生産性は人によって異なります。いわゆる朝型の人は朝の方が生産性が高く、夜型の人は夜の方が創造力や集中力が高まります。今回の調査から、リモートワークで勤務体系が柔軟になったことにより、それぞれが自分に合った時間帯で働けるようになったことがわかりました。

3 月 1 日から 31 日までの期間、1 の最初に Teams を利用した時間から、最後に利用した時間までの平均時間が 1 時間以上増えました。これは、必ずしも 1 日の労働時間が増えたわけではなく、個人の生産性に合わせて 1 日を分割して働いているケースや、仕事以外の用事のために時間をとっているケースがあるということです。

ウイルスの影響が大きい国や業界ではモバイルの活用でチームのつながりを推進

組織が業務継続を目指す中、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスによる Teams の利用が大幅に伸びました。2 月初旬から 3 月 31 日までの間に、1 週間の モバイル版の Teams ユーザー数が 300% 以上増加したのです。特に増加率が高かったのは、今回のウイルス感染拡大によって最も影響を受けた業界のお客様です。世界 175 ヶ国にわたる 18 3,000 の機関が Teams for Education を利用する中、高等教育機関や初等中等教育機関 (K-12) のお客様によるモバイルデバイスでの Teams の利用が大幅に増加しました。また、政府関連業界のお客様からの利用も顕著な伸びを示しています。

これをキャパシティの観点から考えると、新規ユーザー数だけでなく、各週にユーザーが Teams をどの程度利用しているか、つまりエンゲージメントと呼ばれるものが重要な指標となります。モバイルデバイスでの Teams のエンゲージメントは、オランダ、イタリア、スペイン、フランスなど、感染危機による影響が特に大きかった地域で飛躍的に伸びています。

リモート学習への移行を進めている学校の一例が、イギリス北東部のダーラム大学です。同大学では、授業をオンライン化し、スタッフをリモートワークに移行させる必要がありました。そうすることで、感染拡大中も学生や教員に対応でき、専門的なサービスを継続できるためです。感染拡大の危機に効率的に対応するため、ダーラム大学では Microsoft Teams の利用を拡大し、オンライン学習ツールセットを追加してコミュニティを維持、学生やスタッフが最適なデバイスを使ってコラボレーションやコミュニケーションをリモートで安全にできるようにしました。

今回の出来事で、今後の働き方と人と人とのつながり方が変わる

今回のデータの傾向やお客様との会話から、これまでには考えられなかったような方法で、人々が距離を超えて効果的につながることが可能であることがわかってきました。例えば中国では、一部の従業員が職場に戻ったにもかかわらず、Teams の新規ユーザー数が 1 月末より日々 2 倍以上になっています6中国における 1 日の Teams アクティブユーザー数も、週を追うごとに増加しています。また、離れて働くことを強いられても、任務は継続的に遂行可能であることを示したお客様からも学ぶことができます。

例えば、安価な住宅を用意しようと取り組んでいる非営利団体の Mercy Housing は、Microsoft Teams をはじめとするテクノロジを導入し、ウイルスの危機に直面しても事業継続できるよう準備を整えました。同団体の最高情報責任者 兼 技術・戦略担当シニアバイスプレジデントであるガンナー タンデ (Gunnar Tande) 氏は、「1,600 人にもおよぶ従業員の多くがほぼ一夜にしてリモートワークへと移行した中、単一の場でバーチャルミーティングを実施したりドキュメント上でコラボレーションしたりできる機能が役立ちました。中には、入居者サービスのスタッフが、Teams のビデオミーティングを使って入居者とのつながりを保つ方法がないか探求しているケースもあります。このような非常事態においては、精神面や感情面の健康を支えることが非常に重要なためです。この遠隔でのチームワークにより、不安を抱えながら自宅で過ごす 4万 5,000 人もの住民をサポートできるようになりました」と述べています。

COVID-19 によるパンデミックに直面しても、救世軍 Salvation Army は引き続きホームレスの住居を整え、空腹の人たちに食料を供給するといった活動を続け、奉仕対象となる人たちのニーズに対応しています。米国西部地域の救世軍で情報技術ディレクターを務めるティム シャール (Tim Schaal) 氏は、何千人もの従業員がリモートワークへと迅速に移行したにもかかわらず、「Microsoft Teams によって、西部 13 州の大小さまざまな都市や町で重要な支援を提供し続けることができました」と述べています。

マイクロソフトのテクノロジが、こうした組織の重要な業務の継続に貢献できていることを非常にうれしく思います。マイクロソフトの企業ミッションは、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにすることです。このような非常時には、誰もがこの新たな日常に適応しようとしていますが、様々な安全なツールによってより多くの人をつなぎ、より多くの組織が事業継続をできるようにすることが、これほどまでに重要だと感じたことはありません。働き方は変わりつつありますが、マイクロソフトのお客様は日々、お互いにつながりを保とうとする気持ちの方が、お互いが遠く離れた場にいるという状況よりも強いものであることを示してくれています。

 

1 2020 3 31 日に Teams でのミーティング時間が 27 億分に達しました。
2 ここで言う機関とは、数十~数百の学校を抱える学区のことです。
3 3 2 日から 3 31 日にかけて、1 週間にビデオを使った通話やミーティングの割合が 21 から 43 に増加しました。
4 3 2 日から 3 31 日までの Teams における各週のビデオ通話数の増加率を示しています。
5 3 1 日から 3 28 日までの各週に送信されたビデオの時間数を示しています。
6 1 月の最終週から 3 月の第 3 週までの増加数を示しています。

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。

関連記事