※ 本ブログは米国時間 4 月 23 日に公開された “Update #3: Business continuity with Azure” の抄訳です。
クラウドサービスの継続性に関するブログにご意見をお寄せいただき、ありがとうございます。多くの方から、情報が役立ったという声が届いています。今後も新たな情報が入り次第、こちらでお知らせします。
マイクロソフトでは、社内の多くの人が仕事や個人的なしきたりを変えて 7 週目を迎えており、新しい生活や仕事の仕方、学び方やコミュニケーションの方法を学びつつあります。お客様やパートナーから学ぶこともあり、皆様と共にこの有事に対応しようとしていることを感じます。皆様からいただいたフィードバックと、マイクロソフトの幅広いクラウドサービスに信頼を寄せていただいていることに感謝いたします。
マイクロソフトは、世界的な医療危機と戦う第一対応者にサービスを提供するテクノロジの第一対応者であり、お客様のテクノロジへの投資が期待通り価値を提供し続けられるよう尽力する信頼の置けるクラウドプロバイダーであり、変化するニーズに組織が対応できるよう支援することに注力している企業です。だからこそ、このように変化する時代においても、働く人たちができる限りスムーズに業務を遂行できるよう、必要なサポートを提供しようと懸命になっているのです。
マイクロソフトでは、注力分野を最適化すべく、以下の主要な 2 つの領域に軸足を置いた取り組みを継続的に進めています。
- お客様にとって最も緊急度の高いニーズに対応できるよう支援する
- 新たな需要にも対応できるよう Microsoft Azure の拡張性を継続的に確保する
この記事の後半では、この 2 つの領域をサポートする継続的な取り組みとして、世界中の組織や事業、そしてその関係者に対して行ってきた活動から得た知見を共有したいと思います。
お客様にとって最も緊急度の高いニーズに対応できるよう支援する
マイクロソフトでは、クラウドサービスのポートフォリオで世界中のお客様や組織と連携しています。それぞれの業務分野やニーズは異なりますが、お客様がクラウドプロバイダーに求めるものは共通しています。現時点で最もニーズが高い共通のテーマは、リモートワーク、遠隔学習、リアルタイムインサイト、分析といった分野です。
その取り組みの一部をご紹介します。
世界中の企業や学校が従業員および学生の安全と健康を優先する中で、Azure 上で稼働する Microsoft Teams が、ビデオ会議や通話、チャットなどを通じてつながりを保つ上で重要な役割を果たしています。ミーティング時間の新記録も更新し、1 日 27 億分に達しました。Teams を利用している組織の一例が、ペンシルバニア州とニュージャージー州の 10 群にわたって約 100 万人の人たちにサービスを提供している St. Luke’s University Health Network です。同組織では、数週間で働き方を変革し、Teams で患者ケアサービスを提供、3月中旬以降にバーチャル上で患者が訪問した数は 7 万 5000 件にのぼっています。これにより、患者と医師を COVID-19 に接触させることなく重要な外来診療を継続することができ、マスクや手袋などの貴重な資源の保護にもつながっています。病室にはタブレットも設置し、医療従事者が感染者と Teams で会話できるようになっています。これにより、接触を最小限に抑えつつ、患者と介護者が顔を合わせてつながることができるようになりました。
看護師や、ドクター トーマス グレゴリー (Dr. Thomas Gregory) をはじめとする医師は、HoloLens 2 と Dynamics 365 Remote Assist を最前線で利用しています。これにより、ソーシャルディスタンスを維持し、交流を最小限に抑えつつ、サポートスタッフがリモートから重要な患者データや医療記録にアクセスして患者を専門的にサポートできるようになりました。また、Case Western Reserve University の医学部では、1 年生 185 人 全員が大学キャンパスに来て集まるかわりに HoloLens と同大学が開発した HoloAnatomy 複合現実ソフトウェアを活用しています。パンデミックの期間中は物理的に離れた場所にいる必要があるためですが、このような取り組みは同大学にとって初めてのことです。
シアトルの Swedish Health Services と共同で開発した病院向けの Power Platform 緊急対応ソリューションは、何百にもおよぶ医療機関で採用されています。これは病院の管理者に向けたもので、資源のトラッキングを分析して改善し、意思決定を支援するツールです。
マイクロソフトの Nonprofit Data Warehouse Quickstart という取り組みでは、世界保健機関 (WHO) の水と衛生に関するデータリポジトリや、国際援助透明性イニシアティブ (IATI) のデータ標準に準拠したデータ、非営利団体向け共通データモデルなどのサンプルデータセットを統合することで、非営利団体が Azure Synapse Analytics をはじめとする Azure の分析サービスや、構築済みの Power BI テンプレートを簡単に導入できるよう支援しています。
先日マイクロソフトは Dynamics 365 Healthcare Accelerator Patient Scheduling and Screening Template を発表しました。これは、医療機関が患者からの大量の依頼に効率よく対応できるよう支援するツールです。このテンプレートにより、COVID-19 に関する情報ポータルや、患者がリスク判定するにあたって簡単に使える自己診断ツールにアクセスできるようになるほか、COVID-19 の診断の予約や実施プロセスが自動化できます。
Emergency Medical Services Copenhagen では、デンマークの人口の約 3 分の 1 の人に対して救急看護を提供しています。COVID-19 の発生後、あっという間に救急電話への通話数が倍増し、3 月上旬までに COVID-19 の症状を示し不安に駆られている人や、COVID-19 に関する質問がある人から 1 日に約 2000 件もの電話がかかってくるようになりました。Emergency Medical Services Copenhagen は現在、コロナウイルス感染の可能性がある人へのスクリーニングや治療にマイクロソフトの Healthcare Bot サービスを活用しています。同サービスは、ヨーロッパをはじめとするさまざまな地域で数多くの医療機関が採用しています。
新たな需要にも対応できるよう Microsoft Azure の拡張性を継続的に確保する
今回のパンデミックの影響は、クラウドコンピューティングが新たな課題に迅速に対応できることを示す良い例となっています。Teams をはじめとする Microsoft 365 製品や、Dynamics 365、Azure といったマイクロソフトのクラウドサービスは、こうした前例のない不測の時期にテストされることになったといえます。このような時期に、上記に示したようなお客様にサービスを提供できたことをとても誇りに感じています。ただ、何も問題が起こらなかったわけではないことも認識しており、今後も継続してさまざまな状況に対応できるよう設計と運用を改善していく予定です。どのような改善点に取り組んでいるのかお話しする前に、まずはマイクロソフトがどのように Azure を構築し運用しているかについて、背景をお伝えします。
Azure は、需要が急増すれば迅速に拡張できるよう設計されています。過去数年間で Azure サービスへの需要は驚異的に高まりました。その需要に対応するため、データセンターの設置面積を継続的に拡張しており、世界 58 カ所にてデータセンターリージョンを用意しています。マイクロソフトでは、予測していた通常の高成長に向け、独自のインフラストラクチャコンポーネントを設計し調達しており (同時に Open Compute Project を通じて自社の設計をコミュニティで共有しています)、戦略的な需要とサプライチェーン予測モデルを詳細に管理しています。一般的に、どの Azure リージョンにおいてもデータセンター内でほぼ瞬時に容量をバッファできるようにしており、追加のインフラストラクチャバッファは需要が高まったリージョンで使えるよう保管したままにしています。
先月、パンデミックが要因でリモートワークやリモート教育による Teams の利用が急増し、これまでにない領域にまで達しました。過去にも自然災害への対応などで、特定のデータセンターリージョンや、より幅広い地域で利用が急増したことはありましたが、アジアで急速に Teams への需要が高まり、その後ヨーロッパでも同様の事態が起こったことから、これまでとは全く違う状況になっていること、そしてグローバル化が進んでいることを実感しました。新たな需要がどれほどの規模なのかわからなかったため、マイクロソフトでは新規の Azure サブスクリプションに対して一時的にリソースを制限するという慎重なアプローチを取りました。(既存のお客様のサブスクリプションに対しては、このような制限は設けませんでした。Azure のお客様の各アカウントには、アクセスできるサービスのクォータが定義されているためです)。これにより、既存の Azure のお客様には契約通りのクォータを継続して提供できたほか、パンデミック対応の最前線にいる生命と安全を司る組織からの新たなニーズを優先し、Teams によるリモートワークやリモート教育への劇的な変化にも対応することができました。
Teams の需要が急増したことから、マイクロソフトはクラウドインフラとネットワークの需要増加に対応するため、迅速に以下のような対策を進めました。
・ Teams アーキテクチャの最適化と負荷分散を実施し、カスタマーエクスペリエンスに影響を与えることなく (Azure DevOps を利用して) 迅速にこの改善策を全世界に展開しました。この施策は耐久性が高く、Azure のお客様からの容量に対するニーズによって圧迫されることなく、今後の Teams の急成長にも対応できます。
・ データセンターのスタッフやサプライチェーンパートナーの安全と健康を保ちつつ、規制が敷かれている特定地域に対し、迅速にサーバー容量を追加しました。
・ お客様のクォータリクエストのバックログを承認しました。マイクロソフトでは日々急速に承認を進めており、今後数週間以内にほぼ全リージョンで完了する予定です。
・ 一部地域で新規の無料および特典つきサブスクリプションに対する制限を撤廃しました。これで誰もが Azure の機能について学び、新たなスキルを開拓できるようになります。
・ Azure 需要モデルの精度向上に取り組んでいます。マイクロソフトのデータサイエンスモデルは、今回のパンデミックによって学んだことを生かし、今後の需要予測の精度を高めようとしています。この取り組みには、今後パンデミックのような出来事が発生し、世界中のあらゆる場所で同時に需要が高まった場合、より良い対応ができるようにするといったことも含まれます。
マイクロソフトでは、オペレーショナルエクセレンスに真摯に取り組んでおり、今後もこの有事に皆様をサポートするにあたって学んだことや実施していることをお伝えしていきます。
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