マイクロソフト、アジア太平洋地域におけるハイブリッドでニューノーマルな働き方を予測

※ 本ブログは、“Microsoft forecasts a hybrid new normal of work in Asia-Pacific” の抄訳です。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) によるパンデミックが私たちの日々の生活に変化をもたらし続けています。こうした中でマイクロソフトでは、TechRepublic Premium の調査から、パンデミックがアジア太平洋地域の従来の働き方や事業運営に与えている影響と、パンデミックによってテクノロジの採用がどれほど加速し、ハイブリッドなニューノーマル (新たな日常) における働き方を実現しているかについて調べました。

定性調査に基づいた「アジア太平洋地域におけるニューノーマルな働き方への移行」と題するホワイトペーパーでは、銀行、ヘルスケア、教育、通信、調査、専門コンサルタントといったさまざまな業界のビジネスリーダーやオピニオンリーダーが、アジア太平洋地域の組織文化が新たな働き方の枠組みへと進化している様子について知見を共有しています。

マイクロソフトで Microsoft Teams のマーケティング責任者を務めるキャディ ダンダス (Kady Dundas) は、「世界中のさまざまな地域で COVID-19 が蔓延し、すべての人の生活や仕事が一夜にして変わってしまいました」と話します。「会議室で仕事をしていたのに、突然リビングルームで仕事をするようになりました。そうなると、ビデオへの依存度が高まります。日々の Teams ミーティングの参加者は約 2 億人にのぼっており、時間に換算すると 41 億分に達します [1]。このデータからも、リモートワークへと大きく移行していることが伺えます」

技術がさまざまなことを実現する力に

パンデミックの中で、組織はリモートワーク環境や全般的なビジネストランスフォーメーションを実現しようとテクノロジの採用を優先させるようになりました。その一方で、テクノロジだけではそのような変化が起こらないことも明らかになっています。

IBRS のアドバイザーで未来の働き方の専門家であるジョセフ スウィーニー (Joseph Sweeney) 博士は、「技術面は比較的シンプルです」と語ります。「COVID-19 によって誰もが在宅勤務を強いられた際、Microsoft Teams の利用が急増したのはとても自然なことでした。すでに目の前にありましたし、Office 365 のユーザーであれば慣れ親しんでいる環境にありましたので。」

強制的に考え方を変えることが求められるようになり、組織は働き方を再考し、個人やグループ、マネージャーのコミュニケーション方法も考え直さなくてはならなくなりました。また、チェンジマネジメントの手法も、変化による感情的な影響に焦点を当てたニューノーマル環境下での働き方に合わせる必要がありました。

シドニー工科大学の准教授で同大学のビジネスおよび社会イノベーションセンター (CBSI) 経営規律グループ コアメンバーのサラ ケイン (Sarah Kaine) 氏は、「リモートワークを許可することに消極的な場合、マネージャーの管理の仕方はこうあるべきだという時代遅れな考え方が要因となっているケースが多いと言えそうです。例えば、部下がちゃんと意図したことをしているか確認するため『見張る』必要があると感じるようです」と述べています。

ニューノーマルでの働き方における新たなトレンド

ハイブリッドなニューノーマルでの働き方に向けた計画を立てるには、以下のような新しいトレンドを念頭に置いておくと良いでしょう。

  1. 燃え尽き症候群の危険性 – 組織は、従業員の稼働状況を新たな認識に基づいて気遣わなくてはなりません。IBRS のアドバイザーで未来の働き方の専門家であるジョセフ スウィーニー (Joseph Sweeney) 博士によると、仕事中の人は皆「休むことなく、より一生懸命働こう」と考えているといいます。在宅勤務を始めた人は、上司から夜遅くまで電話がかかってくるようになっていることから、時間外の連絡について境界線を見直さなくてはならない状況に陥っています。
  2. キャリアアップに関する懸念 – 従業員のパフォーマンスをどう測るかも見直さなくてはなりません。コラボレーションツールで仕事を見ることはできても、個人が組織にもたらす価値を測定することはできません。組織も、在宅勤務で注目を浴びつつあるのは「内向的な人」で、「スタープレイヤー」である外交的な人には注目が集まらなくなっていることに気づき始めています。
  3. 柔軟性と共感が必要 – 調査によると、在宅勤務者の半数近く (47%) が、自宅で気が散ることを何とかしたいと考えていることがわかりました [2]。組織はもちろんのこと、マネージャーやチームメートも、従業員が気が散らない環境を作り出せるよう支援するだけでなく、より柔軟に仕事を割り振り、在宅勤務の課題に共感するようにしなくてはなりません。
  4. 技術研修と技術を受け入れる準備 – テクノロジは従業員にとって欠かせないものとなりつつありますが、ハードウェアやソフトウェアの可能性を最大限活用するには研修が必要です。インドに拠点を置く MacOffice Services Private Limited CEO 創業者であるニティン パランジャペ (Nitin Paranjape) 氏は、「変化に抵抗を感じる人もいますが、それはテクノロジの使い方を学ぶ必要がなかった年配の人が中心です。そのような人は、必要な時には常に IT サポート要員が近くにいたのです」と述べています。
  5. 社会的要素を取り入れる – 組織は、純粋なテクノロジよりも、意図的にポリシーや企業カルチャーに注力しなくてはなりません。これは、2020 年 4 月にリリースした Microsoft Work Trend Index [3] で明らかになったことです。同指標では、人との関わり方について継続的に調査していますが、Microsoft Teams を使ったミーティングでビデオをオンにする人が、在宅勤務が主流になる前の 2 倍になっていることが明らかになりました。ビデオ会議だけでなく、組織はイノベーションを促進し、創造的なアイデアの流れを作り、仲間意識を高めるような方法を模索し、従業員が組織の重要な一員であると感じるようにしなくてはなりません。

ハイブリッドな未来の働き方は、すでに始まっている

マイクロソフトの 2020 年度第 4 四半期の決算発表 [4] では、生産性およびビジネスプロセス分野の収益が 6% 増となりました。これについてマイクロソフトの最高経営責任者、サティア ナデラ (Satya Nadella) は、「過去 5ヶ 月で、Tech Intensity (テクノロジ活用の強度) がビジネスの回復力を高める鍵となることが明らかとなりました。自らデジタル機能を構築している組織は、回復までの時間も早く、今回の危機でより強固に頭角を現すようになるでしょう」と述べています。

COVID-19 によって新しい働き方への移行が進み、アジア太平洋地域全体でイノベーションに注目が集まったのは間違いありません。同時に、社会的環境や文化的環境も、組織のニューノーマル環境下での働き方に多大な影響を与えています。

一部の組織では、働き方の変化に対する自国政府の独自の対応に合わせようとしているケースもあります。立命館小学校 ICT 教育部長 英語科教諭 正頭 英和氏は、同校が政府が推進する働き方関連の規制や環境の変化に合わせようと模索しなくてはならなかったと語ります。「当校では、日本の新しい労働法に合わせて、新たな勤務時間制を導入したばかりです。個々の教職員の家庭の状況も考慮しながら、コンプライアンスと柔軟性をどう両立させるか考えなくてはなりませんでした。また、パンデミックによって多くの児童の親御さんも在宅勤務をされていますので、そこからワークライフバランスの新たな可能性が見えてくるようになりました。長期的には、こうした経験が人のコミュニケーションや時間管理にも役立つようになると考えています」と、正頭氏は述べています。

通勤時間が長い国では、より多くの従業員がリモートワークを希望しています。シンガポールに拠点を置く Maybank にてカスタマーエクスペリエンス部門の責任者を務めるアンディ クー (Andy Khoo) 氏は、「専門性を持つ従業員が自分の時間を管理できるという便利さに魅力を感じているようです」と話します。「特にインドネシアやタイ、インドといった国では通勤時間が長いので、交通機関を使って長い時間移動しなくて済みます。他の国、例えばシンガポールでは、スタッフが単純に在宅勤務のほうが生産性が高いと感じているようです」

一方、オーストラリアやシンガポールのように不動産が高価な国では、一部の時間をオフィスで過ごし、その他の時間は在宅勤務する従業員の間でオフィスを共有するモデルに移行することで、経済的なメリットが得られるようになります。

未来の働き方でハイブリッドな手法が取り入れられるのは、仕事とプライベートの境界線が曖昧になってきているためです。マイクロソフトの第 2 回 Work Trend Index [5] によると、午前 9 時から午後 5 時という一般的な勤務時間以外でも、Microsoft Teams の勤務時間外チャット (午前 8~9 時から午後 6~8 時) が日中のどの時間と比較しても 15% ~ 23% 増加していることがわかりました。週末に働く人も急増しており、土日における Teams のチャットは 200% 以上増加しています。

未来の職場を構築するには、標準的な 9 時から 5 時までという時間から脱却できるよう、また稼働時間に対する妥当な予測値を設定し、パフォーマンスの指標も見直すよう、組織でポリシー策定のプロセスを加速させなくてはなりません。

中国で Great Place to Work Institute の最高執行責任者を務めるアリシア タン (Alicia Tung) 氏は、「感情については、まだ考慮できているとは言えません。ただ、近づいてきてはいます。10 年後の大まかな予測ですが、オフィス勤務とリモートワークの割合は 60 対 40 程度になるのではないでしょうか」と述べています。

ビジネスリーダーは、強固なセキュリティ戦略と効果的なコラボレーションを維持できるようなポリシーを策定しなくてはなりません。アジア太平洋地域全体でロックダウンが緩和されつつありますが、次のステップはこのニューノーマルな環境におけるハイブリッドな働き方の中で、あらためてポリシー策定に力を注ぐことです。

アジア太平洋地域の組織におけるリモートワークの対処方法や成功事例の詳細については、こちら (英語) のホワイトペーパーをご覧ください。

 


[1] https://www.microsoft.com/en-us/Investor/earnings/FY-2020-Q3/press-release-webcast
[2] CBS 電子書籍: 在宅勤務と在宅勤務者の管理方法に関する 250 以上のヒント (250+ tips for telecommuting and managing remote workers)
[3] https://news.microsoft.com/ja-jp/2020/04/10/200410-remote-work-trend-report-meetings/
[4] https://www.microsoft.com/en-us/Investor/earnings/FY-2020-Q4/press-release-webcast
[5] https://news.microsoft.com/ja-jp/2020/07/09/200709-future-work-good-challenging-unknown/

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