New Normal を見据えた日本マイクロソフトのヘルスケア戦略

日本マイクロソフト株式会社
業務執行役員 パブリックセクター事業本部 医療・製薬営業統括本部長 大山 訓弘

世界保健機関 (WHO) が新型コロナウイルスのパンデミックを宣言して、まもなく 1 年になります。予想以上に長引くコロナ禍で、私たちの生活様式は一変しました。テレワークによる働き方が広がり、日本企業のデジタル化が進んでいます。

ヘルスケア業界も例外ではありません。コロナ禍において業務のデジタル化が進み始めており、コロナが収束してもその動きは続くことになるでしょう。そうした New Normal を見据えて、日本マイクロソフトでは、ヘルスケア業界のデジタル化を支援しています。

New Normal を見据えた日本マイクロソフトのヘルスケア戦略

コロナが後押し 機運高まるクラウド活用やオンライン診療

コロナ禍でヘルスケア業界でも業務のデジタル化が進む中、クラウドへの期待も高まっています。日本マイクロソフトでも、2020 年度の国内ヘルスケアクラウド市場で前年比 2 倍となる 40 億円以上のソリューション販売を実現したほか、賛同パートナーの数も、ここ 3 年間で 2 倍の 61 社となりました。

賛同パートナー

また、新型コロナ感染の影響で、医療機関などでも感染対策の一環で、クラウドだけでなく、ビデオ会議ツールの使用も進んでいます。当社の Microsoft Teams の導入事例も増えており、ヘルスケア業界での Microsoft Teams の利用者数は、初めて緊急事態宣言が出された 2020 年 4 月と比べると、これまでに 82% も増加しています。例えば、医療機関ですと、コロナ感染者との問診を遠隔で行えるように利用されているほか、医薬品企業では、これまで対面で行っていた MR (医薬情報担当者) の医療機関への訪問を、Microsoft Teams を使ってバーチャルに切り替えています。

Microsoft Teams

さらに、日本では、コロナをきっかけに、緊急事態に対応した時限的な規制緩和に踏み切るなど、オンライン診療への関心・ニーズも高まってきています。こうした状況の変化に対応していくためには、オンライン診療の分野のパートナーとの連携が重要だと考えています。

例えば、株式会社インテグリティ・ヘルスケア様は、オンライン診療システム ”YaDoc Quick” を提供していますが、当社とのパートナーシップを通じて、医師と患者のつながりをデジタル技術で補い、共により良い医療の実現を目指しています。”YaDoc Quick” 内でのオンライン診療時の患者と医療従事者間のビデオ通話に Microsoft Teams を採用していただいています。

株式会社インテグリティ・ヘルスケア様とのパートナーシップ

同社の代表取締役会長で医師の武藤真祐氏によると、コロナ禍でオンライン診療への需要は高く、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリーが 2020 年 8 月に発表した調査では、48.4% の患者が、コロナ禍で「なるべく通院は控えたい」と回答しています。また、実際にオンライン診療を受けた患者の方からは、「これまで医師は電子カルテを見ていてほとんど患者を見ていなかった。(オンライン診療だと) 医師と対面で会話ができる」といった声が寄せられるなど、評判も高いようです。

コロナ禍でオンライン診療への需要

ただ、オンライン診療には、対面診療と比較すると得られる情報が少ないという見方もあります。そうした課題を解決しようと、マイクロソフトでは順天堂大学様と共に、複合現実 (MR) を活用したオンライン診療の実現にむけた実証実験を行いました。実験では、モーションセンサー付きのカメラ「Kinect」と複合現実ヘッドセット「Microsoft HoloLens」を使い、100 人以上のパーキンソン病の患者に対して遠隔診断を実施したところ、対面診療の代わりとして患者の診断評価に使うことができると判断されました。今後、離島など遠隔地からの診断や、コロナ禍での感染対策として活用できると考えています。

複合現実 (MR) を活用したオンライン診療

今後も、日本マイクロソフトとしては、多くのパートナーとともにオンライン診療の促進を支援していきます。

“医療 AI” の活用を支えるクラウド基盤

コロナ禍を通じて、強靭な医療提供体制構築のために、診療の効率化、医療従事者の働き方改革などの重要性が再認識される中、厚生労働省は、医療における AI 活用などイノベーション加速に向けた環境整備などに注力が必要だとしています。

私たちマイクロソフトでは、Microsoft Azure によるクラウド基盤の提供により、医療業界のイノベーションを支援しています。例えば、2021 年 1 月から医療向けクラウドプラットフォームビジネスで連携しているシーメンスヘルスケア株式会社様では、Microsoft Azure を基盤として、AI 技術を活用した診断・治療支援サービス「AI-Rad Companion」を展開しています。「AI-Rad Companion」は、胸部や頭部、前立腺における画像診断の支援や放射線治療の計画に貢献できるサービスで、2021 年 2 月の時点で、約 500 施設への導入準備が完了しています。

医療 AI

このほか、AI ベンチャーの FRONTEO 様とも医療向け IT の分野で協業しており、Microsoft Azure 上で会話型 認知症診断支援AIシステムを開発しています。5~10 分の日常会話で、認知症の症状の有無を判断することが可能で、2021 年に治験を開始する予定です。マイクロソフトでは引き続き、AI 画像診断を実現するソリューションをパートナーと共に届けていきます。

FRONTEO

また、電子カルテや医療研究といった分野でも、Azure の活用例が増えてきているほか、製薬業向けにはグローバルパートナーとのアライアンスを強化しています。今後も、医療の発展と新しい価値提供、また医療従事者の働き方改革などに寄与していきたいと考えています。

Azure の活用例

PHR に関する取り組みや社会全般での新しいエコシステム実現を

私たちは、社会全般に対する支援も重要だと考えています。今後、医療やその周辺のサービスを充実させ、患者さんの地理的・身体的な負担を軽減していくためにも、個人の健康・医療・介護に関する情報を一元的に保存するパーソナルヘルスレコード (PHR) の環境整備が重要になってきます。

そうした中、マイクロソフトでは、TIS 様と共に、PHR 分野におけるデータ活用の基盤を Microsoft Azure ベースで提供しています。これにより、医療業界における PHR の標準化を推進してデータの有効活用を促進していくことを目指しており、その実現に向け、医療・産学官と更に連携を強化していく方針です。

PHR に関する取り組み

加えて、新しいエコシステム実現に向けた技術開発として進めているのが、2021 年 1 月にサービスを始めたチャットボット「Healthcare Bot」です。コロナ感染の疑いがある患者向けのトリアージ Bot や、メンタルヘルスに関する診断 Bot、診療予約に関するトリアージ Bot など、計 14 種類のクラウドベースでの医療向けテンプレートを提供しています。これによって、多くのパートナー企業が一から開発する必要がなく、ガイドラインに準拠した形でカスタマイズが可能となります。

また、様々な医療情報の互換を可能とする「Azure API for FHIR」も、2020 年 9 月に日本で提供を開始しており、医療画像の取り込み (DICOM) など、機能強化も進めています。

新しいエコシステム実現に向けた技術開発

医療者の課題解決も支援 医療機関向けマニュアルを無償提供

日本マイクロソフトでは、医師と一緒に作成した医療者向け Teams 活用シナリオブックや、Teams による院内感染軽減対策ブックを無償で提供しています。また、医療現場における Teams の実践活用院内感染防止に向けた医療機関のコロナ対策についての無償のオンデマンド・ウェビナーも提供しています。

日本マイクロソフトは、ヘルスケア事業において、ビジネス拡大だけでなく、医療機関・医薬品企業、その先にいる患者の方々、そして住民・社会全般に対しても寄り添いながら、パートナー企業と共に、日本社会が直面している多くのヘルスケア関連の課題解決に挑戦していきます。

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