AI Forum 2023: AI、社会、科学のシナジーを探求

私たちは、AI がさまざまな形で私たちの世界に革命をもたらす刺激的な時代に生きています。ヘルスケア、教育、交通、エンターテインメントなど、AI はあらゆる産業を再構築し、私たちが実現可能だと考えていたことの地平線を広げています。この継続中の変革において、AI と社会や科学との接点がますます重要になっています。

このような背景のもと、Microsoft Research と東京大学は 2023 年 8 月にマイクロソフトと東京大学が締結した基本合意書 (MOU) に基づき、11 月 14 日に AI Forum 2023 を共催しました。「AI シナジー: 科学と社会」をテーマとしたこのフォーラムは、両組織のリーダーが AI 研究の画期的な進歩を共有し、AI、科学、社会のシナジーを探求する、ユニークな機会となりました。

AI Forum 2023 のハイライトを下記にご紹介します (講演のビデオをこちらで視聴できます)。

東京大学総長 藤井 輝夫
「今年の 8 月 14 日、マイクロソフトと東京大学は戦略的な協力関係についての基本合意書を締結し、グリーントランスフォーメーション、ダイバーシティ&インクルージョン、AI 研究に関して協力することで合意しました。この基本合意書 (MOU) を通じて、マイクロソフトとのパートナーシップをさらに発展させてまいります。」

東京大学総長 藤井 輝夫 氏

マイクロソフト リサーチ&インキュベーション担当 コーポレートバイスプレジデント ピーター リー (Peter Lee)
「私たちが生成 AI システムと共にある未来に向けて進む中、AI を自分たちの第 2 の目として、レビュアーとして、評価者として、批評家として使うという考え方が非常に重要になってきました。たとえば、医療用 AI では、責任ある基準が確立されるまでは、診断や治療の決定において、人間が主導することが非常に重要であることから、マイクロソフトは、医療の領域では人間の医師が臨床判断を下すことが最善であるとして推奨しています。」

マイクロソフト リサーチ&インキュベーション担当 コーポレートバイスプレジデント ピーター リー (Peter Lee)

マイクロソフト リサーチ レッドモンド パートナーリサーチマネージャー セバスチャン ブベック (Sebastien Bubeck)
「phi-1.5 の性能は、少なくとも 10 倍のサイズで、100 倍以上の量のデータで訓練されたモデルに匹敵します。典型的な LLM の構築では、ウェブから可能な限り多くのデータを収集し、可能な限り大きなモデルを訓練します。それは私たちがやったこととはまったく違います。どこに秘密があるのでしょうか? その答えは基本的にこの 5 つの単語にあります ”textbooks are all you need” (必要なのは教科書だけ)。ランダムなウェブデータでモデルを訓練するのではなく、質の高い教科書のデータでモデルを訓練しました。」

マイクロソフト リサーチ レッドモンド パートナーリサーチマネージャー セバスチャン ブベック (Sebastien Bubeck)

東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任教授 長井 志江
「AI 研究は、ニューロダイバーシティの根本的メカニズムを解明する可能性を秘めています。また、発達障碍のある人たちが、自分自身の認知プロセスをよりよく理解し、社会とよりよくつながることができるような支援システムへも応用可能です。脳の一般原理である予測情報処理は、私たちの社会的行動の多様性を理解する上で重要な鍵となります。」

東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任教授 長井 志江 氏

マイクロソフト リサーチ レッドモンド 副所長 エジェ カマール (Ece Kamar)
「私たちは、特定のアプリケーションのために注意深く訓練され開発された、用途の狭い AI システムから、1 つのモデルまたはモデルファミリーが、さまざまなタスク、コンテキスト、目標にわたって人々を支援できる汎用的な AI システムへと移行しつつあります。」

マイクロソフト リサーチ レッドモンド 副所長 エジェ カマール (Ece Kamar)

マイクロソフト リサーチ アジア コーポレートバイスプレジデント リドン チョウ (Lidong Zhou)
「私たちは、今、自分たちが ”Xerox PARC” モーメント、すなわち、今後何十年もの間、コンピューティングを定義する新しいコンピューティングパラダイムの瞬間にいると信じています。マイクロソフト リサーチ アジアは、そのイノベーションの最前線に立つことを目指しています。そのためには、新しいコンピューティングパラダイムの基礎を築くブレークスルーを生み出す、複数の領域にまたがった学際的研究が必要です。」

マイクロソフト リサーチ アジア コーポレートバイスプレジデント リドン チョウ (Lidong Zhou)

マイクロソフト リサーチ アジア プリンシパル リサーチマネージャー ドンシェン (Dongsheng Li)
「自己教師あり学習のためのエンコーダ デコーダ アーキテクチャを私たちは提案します。このアーキテクチャにより、多くの EEG 関連タスクのパフォーマンスを大幅に向上できます。今、私たちは、まさに脳を読み取るための簡単な基盤モデルを手に入れました。これによって脳の異常を検出し、脳信号を解読し、人間の脳をよりよく理解することができるのです。私たちの研究は、脳の健康を増進し、研究結果に基づいて、より良い AI を設計することを目指しています。」

マイクロソフト リサーチ アジア プリンシパル リサーチマネージャー ドンシェン リ (Dongsheng Li)

マイクロソフト リサーチ アジア シニア プリンシパル リサーチマネージャー シン シエ (Xing Xie)
「これまで社会科学と AI の分野は別々に発展してきましたが、今後は両者が融合し、互いに補完し合う流れになると考えています。私たちは、AI と人間社会の相互作用を研究する新たな学問分野を表すために ”社会的 AI” という用語を使用しています。社会科学と AI の融合により、将来に待ち受けるものをよりよく理解し、それに備えられるようになると信じています。」

マイクロソフト リサーチ アジア シニア プリンシパル リサーチマネージャー シン シエ (Xing Xie)

マイクロソフト リサーチ アジア アシスタントマネージングディレクター リリ チウ (Lili Qiu)
「私たちは、小さな位相アレイのプログラム性とメタサーフェスの強力な波面整形を組み合わせたシステムを開発しました。環境とアプリケーション要件を考慮し、私たちのシステムは、ネットワークカバレッジ、大容量、低遅延、およびサービス品質のための通信をより良くサポートするために、送信機、受信機、およびメタサーフェスを共同で設計することを想定しています。一方、私たちは、IoT アプリケーション、ヘルスケア、環境モニタリング、農業におけるセンシングなどの分野向けに、AI に新しいタイプのデータを提供することも目指しています。」

マイクロソフト リサーチ アジア アシスタントマネージングディレクター リリ チウ (Lili Qiu)

マイクロソフト リサーチ アジア パートナーリサーチマネージャー フル ウェイ (Furu Wei)
「理想的なモデルは、パフォーマンスを提供するために大規模であり、シームレスな展開のために効率的であるべきです。ゆえに、将来の LLM はできるだけ効率的なものにする必要があります。トランスフォーマーの規模を拡大するだけでは、この目標を達成できないことは明らかです。実現には基礎研究のブレークスルーが必要です。私たちは、モデル アーキテクチャの革新がこのビジョンを実現する鍵になると強く信じています。」

マイクロソフト リサーチ アジア パートナーリサーチマネージャー フル ウェイ (Furu Wei)

東京大学 東京カレッジ 准教授 江間 有沙
「原則と実践の相互作用はきわめて重要です。原則を議論する際には、公平性、説明責任、透明性、信頼性、拡張性など、考慮すべき項目が数多くあります。ゆえに、AI の開発や利用には、多くの原則や検討すべき項目があります。」

東京大学 東京カレッジ 准教授 江間 有沙

マイクロソフト リサーチ AI4Science プリンシパル リサーチマネージャー ハイグァン リュウ (Haiguang Liu)
「今は科学のための AI の時代です。ディープラーニングモデルと AI の進歩が大きな推進要素となりました。私たちが新たに設立した組織 AI4Science はここにフォーカスしています。AI は、自然の仕組みをよりよく理解し、科学的発見を加速するのに役立ちます。健康、環境、気候に関する差し迫った問題を解決するために活用できます。」

マイクロソフト リサーチ AI4Science プリンシパル リサーチマネージャー ハイグァン リュウ (Haiguang Liu)

マイクロソフト リサーチ アジア シニア プリンシパル リサーチマネージャー ジアン ビエン (Jiang Bian)
「私たちは、ディープラーニング、強化学習、基盤モデルを活用した統合的アプローチを開発し、より正確な炭素モニタリング、クリーンエネルギー発電とエネルギー貯蔵のより効率的な最適化、エネルギー消費削減のより効果的な制御を実現しようとしています。」

マイクロソフト リサーチ アジア シニア プリンシパル リサーチマネージャー ジアン ビエン (Jiang Bian)

東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構 特任教授 長井 志江
「AI の研究と他分野の融合が成功した例として、医学や人間科学のデータ分析に AI のテクノロジを活用したことが挙げられます。しかし、AI テクノロジが人間研究や神経科学研究をどのように変えられるかについても考える必要があります。」

東京大学 次世代知能科学研究センター長、大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授 國吉 康夫
「AI プログラムはますます強力になり、囲碁や将棋のようなボードゲームでは、最高ランクの人間のプレーヤーに勝つことさえできるようになりました。囲碁や将棋のトップ棋士に、この状況をどう思うか、仕事をやめるつもりはないかを尋ねたことがあります。その答えは、むしろとてもエキサイティングな時期であり、棋士をやめることはないというものでした。AI は宇宙ロケットのような存在です。これまで人間の力だけで開拓してきた領域を超えて、私たちの知性をフロンティアに向かって押し上げ、全く新しい宇宙を私たちは見ているのです。」

東京大学 次世代知能科学研究センター長、大学院情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授 國吉 康夫

講演のビデオをこちらで視聴できます。

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