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新たな多様性プログラムが、人々のアライシップを育む- 間違いを受け入れる力-

スザンナ レイ (Susanna Ray)

※ こちらのブログは “A different kind of diversity program is inspiring people to be better allies – and be OK with making mistakes” の抄訳です。

サラ ラーナー (Sara Lerner) は怒りながら、想像上のバスでの口論に参加しようとしていました。

マイクロソフトのシニアプログラムマネージャーであるサラは、ダイバーシティ (多様性) とインクルージョン (包括性) の向上を求めて、仮想のシナリオについて同僚たちと話していました。そのシナリオとは、バスの乗客が他のトランスジェンダーの乗客に心ない言葉を投げたらどうするかというものでした。ラーナーは、この想像上の差別行為にどう対応するかを考えていました。

すると、トランスジェンダーである彼女の同僚が予想もしなかった意見を言ったのです。

もしこのようなことが起きても、怒りに任せて反撃するようなことはしないと。なぜならそれは、周囲も含め緊張を高め、さらなる反撃を招きかねないから。その代わりに、手を振って微笑み、何か他に質問があるかと尋ね、攻撃者に恥をかかせることなく、前向きな対話ができるよう試みると言いました。

マイクロソフト シニアプログラムマネージャー
サラ ラーナー (Sara Lerner) (撮影: ダン デロング (Dan DeLong))

ラーナーは昨年にマイクロソフトが、グローバルなアライシッププログラムを立ち上げた時のことを思い返していました。この研修コースは、CEO サティア ナデラによるインクルーシブ (包括性のある) な企業文化育成に向けた取り組みの拡大を目指して、全従業員に対して提供されています。しかし、2020 年は、パンデミックによるリモートワークが人間関係の維持を困難にし、ウイルスの起源に関する誇張された認識によるアジア系の人々に対するヘイトがはびこり、黒人とアフリカ系アメリカ人に対する人種差別への抗議の声が高まり、政治的緊張が高まる年となりました。この動きに対応し、マイクロソフトはアライシップ入門のセッションをオンライン化し、必修の研修コースにしました。

このプログラムの目標は、マイクロソフトの世界 16 万人の従業員に、多様な視点や微妙な論点を議論するための共通言語を提供することであると、CDO (チーフダイバーシティオフィサー) のリンジーレイ マッキンタイヤー (Lindsay-Rae McIntyre) は述べています。このプログラムは、従業員によるダイバーシティ (多様性) への関心の高まり、そして、ナデラが採用した、心理学者キャロル ドウェック (Carol Dweck) による有名な「成長マインドセット」(growth mindset) プラットフォームから生まれ、リーダーによる縦割り組織の排除、そして、偏見、不寛容、差別への対応を含めた企業文化の領域も対象としています。

「アライシップに関する多くの要素が成長マインドセットを中心にしています。すなわち、他者と共に共感し、主張するということです。他者の『ために』とは言っていない点にご注意下さい。これは、レッテル付けではなく、行動です。人々が互いを支援するための対話を学べるよう私たちは腐心しています」とマッキンタイヤーは述べます。

多くの企業が、ダイバーシティ (多様性) とインクルージョン (包括性) を向上するためのプログラムを実施していますが、マイクロソフトは、2 年間にわたり神経科学者と連携し、新しいアプローチを開発してきました。

Microsoft Allyship Program は、10 のセグメントから構成され、異なる様々な学習スタイルで学べるよう多様なメディアを活用しています。従業員は、自分のペースで進められるオンラインコースを受講し、職場における様々な状況を役者が演じて議論する動画シナリオを視聴し、スキル構築と実践のために、ファシリテイターによるセッションに参加できます。このプログラムでは、インクルージョン (包括性) の向上に注力することであらゆる人が恩恵を得られることを学べます。すなわち、誰もが協力できる機会があり、何らかの形でアライシップを必要としているということです。

マイクロソフト シニアディレクター
リッチ ニール (Rich Neal)

リッチ ニール (Rich Neal) は、自身のキャリア初期に、マネージャーや他のリーダーとの会議において、自分が唯一のアフリカ系アメリカ人であった時のことを鮮明に覚えています。当時、そして、現在でもよくあることですが、出席者の 1 人が不適切なコメントをしたのです。ニールがどう対応しようか熟慮する 3 秒は 30 分のように感じられましたが、マネージャーがそのコメントの真意を問いただしてくれました。会議は居心地の悪いものになりましたが、ニールは安堵しました。

「私は、私の上司が自身の特権を意識して介入してくれたものと感じました。しかし、翌月に同じ会議に出席するとそうではないことが明らかになりました。上司は出席者全員の雰囲気を変えていたのです。この経験は、他者に対して強硬に反論する必要などないことを教えてくれました」とニールは言います。

数年後、マイクロソフトのシニアディレクターになったニールは、LGBTQI+ の従業員向けのイベントへの出席を依頼されました。そこで、白人でアイビーリーグ出身であるという自分の特権について語る女性が、彼に自身がもつ特権を他者にも拡げていくよう求めました。これは、彼がその時まで思いもしなかった考え方でした。「特権」とは「白人男性」と同義だったからです。現在、彼は、様々な年齢、キャリア、専門分野の人々のメンターとして活動しています。

マイクロソフト CDO (チーフダイバーシティオフィサー) リンジーレイ マッキンタイヤー (Lindsay-Rae McIntyre)

マジョリティのコミュニティの人々が、無礼な人、あるいは、救済者として描かれることがよくあります。しかし、メンタルヘルス、年齢、障碍、信仰などについての対話の機会を増やすことで、誰もが多様性から恩恵を受けられることが示されると、マッキンタイヤーは言います。

このアライシッププログラムは、無礼な行動を取った人を黙らせるのではなく、従業員が学び、成長し、過ちを犯しながらも改善していくことを奨励しています。

「アライシップは完璧ではありません。時には間違いを犯すこともあります。しかし、目標達成に対して全員が責任を持っています。行うべきことと行うべきでないことを明確に示すことで、人々は善かれと思ってした行為が必ずしも好ましい結果をもたらさないことを理解できます。そして、最終的には、従業員に互いのつながりを強化するためのスキルを提供し、結果的に組織の業績も向上できるのです」と彼女は言います。

マイクロソフト カンザスシティ政府担当アカウントエグゼクティブ
スティーブ チュー (Steve Chu)

マイクロソフトのカンザスシティ政府担当アカウントエグゼクティブのスティーブ チュー (Steve Chu) にとっても、この 2 つの要素は密接に関連しています。

チューは、ドイツ系の母親、そして、中国系の父親と共にアラスカで育ちました。彼は、子供時代に「残酷な人種差別」を経験し、アジア系アメリカ人の血筋を恨み、自分の姓を変えたいと両親に訴えたこともありました。しかし、昨年にマイクロソフトのコースを受講し、チューは、本当の自分を考え直す機会を得ました。その年の彼の業績はキャリア中で最高のものでした。

「コースの受講は私が自分の出自に対する考え方を変えてくれました。より自由に考えることができるようになり、中国系であることを隠す努力をするよりも、もっと有効なことに精神を傾けることができるようになりました」とチューは述べています。

チューの体験は研究結果が裏付けており、より多様性に富む企業はイノベーションと利益率において優ることが示されています。しかし、ダイバーシティ (多様性) とインクルージョン (包括性) には明確な意志が必要です。

マイクロソフト Global Diversity & Inclusion チーム
戦略とイノベーションリーダー
ダイアナ ナバスローゼッテ (Diana Navas-Rosette)

マイクロソフトの Global Diversity & Inclusion チームで戦略とイノベーションを統率するダイアナ ナバスローゼッテ (Diana Navas-Rosette) は、次のように述べています。「私たちの製品が世界中の人々のために作られているのであれば、多様な視点が表現され、考慮され、製品に反映されていなければなりません。そのためには、人々の視点や価値観が異なる時には、互いに敬意を持って議論できるような場と行動規範が必要です。」

ナバスローゼッテのチームは、マイクロソフトのデータ中心で思考するワークフォースが、アライシップへの科学的なアプローチに最適であると考え、ニューヨーク大学の Center for Diversity, Inclusion and Belonging、そして、NeuroLeadership Institute と協業し、アライシップの阻害要因、そして、おびえた傍観者に共感的な行動を起こさせる要素を判別しようとしています。NeuroLeadership Institute は、医師、神経科学者、研究者、教育者と協業し、効果的なリーダーシップを実現するための科学的かつ現実的な方法を探求しています。時には、人々をスキャナーにかけ、様々な状況に対応した時の脳の血流量、コルチゾールの分泌量、心拍数を測定することもあります。

自身の特権に関する会話は人々を分断し、互いを恐れさせる結果になることがあります。そして、NeuroLeadership Institute のクライアント体験/製品担当バイスプレジデントのキャサリン ミラン (Katherine Milan) によれば、疎外感や拒絶など社会的脅威を処理する際の脳の動きは、物理的な痛みを感じた時と同じなのです。

ゆえに、このグループの取り組みは、マイクロソフトの、競争よりも協業を重視した成長マインドセットによく合致すると、ミランは述べます。多くのアライシッププログラムが、多様性に反する行動をした人に対して強く対峙することを求める中、マイクロソフトのプログラムは誰もが間違いを恐れずに学べる雰囲気を作り出すことを目指しています。

NeuroLeadership Institute
クライアント体験/製品担当バイスプレジデント
キャサリン ミラン (Katherine Milan)

そして、2019 年 7 月に開催された最初のワークショップ以降、マイクロソフトの組織文化も変化しているように見えます。調査によれば難しい議題について意見を述べることに安心感を覚える従業員が増えているとミランは述べます。しかし、これは短期的な取り組みではないと彼女は付け加えます。

「これは 1 回のワークショップで終わるものではありません。筋トレのようなものであり、毎日繰り返し行なっていかなければなりません。」

パンデミックは多くの点で人々とのやり取りを変えてしまいましたが、リモートで働くチームも様々な工夫を行うことで絆を強めています。

マイクロソフトの Enterprise Cloud 部門のプログラムマネジメントディレクターであるパルル マネク (Parul Manek) は次のように述べています。「オフィスでは 1 日中、数多くの短い会話が行なわれています。廊下やカフェテリアで人に出会った時などです。今はそのようなことはなくなってしまいました。絆の維持をいっそう意識しなければなりません。昨日、ビデオ会議で様子のおかしい人々がいました。私は会議の後でその人に直接コンタクトし、彼らが在宅勤務での問題を抱えていることを知り、適切な対応方法を助言することができました。」

マイクロソフト Enterprise Cloud 部門プログラムマネジメントディレクター
パルル マネク (Parul Manek) (撮影: ダン デロング (Dan DeLong))

マネクは、自身が両親と共にインドからイギリスに移住してきた時の疎外感を今でもはっきりと覚えています。英語を話せない彼女はどのグループにも属せませんでした。しかし、周囲の人々は彼女を仲間にするために努力してくれました。今、彼女は周囲に疎外されている人々がいないか注意し、支援することを心がけています。

マネクは、ナデラの共感へのフォーカスは、卓越性を尊ぶ企業の中では目立たない要素ではあるものの、自身の仕事に明確な影響があったと述べています。他者への共感は、謙虚さ、そして、無条件の理解を促し、その結果として個人のつながりや組織のコラボレーションが推進されることに彼女は気付いています。

マイクロソフトのリーダーは、まだ多くの学ぶべき点があることを知っているとマッキンタイヤーは述べます。

「アライシップを求める人にとって重要な点は、善かれと思って救世主のように他者の会話に介入しないことです。私の役目は他者の代弁者になることではなく、他者の意見を聴くための機会を設けることです。もし、他者が望むやり方で支援できれば、マイクロソフトだけではなく、より広範なエコシステムで構造的な進歩を達成できるでしょう」とマッキンタイヤーは述べています。

これは、他者への支援を常に心がけてきたシルビア バルガス (Sylvia Vargas) が自身で経験し、まだ学ぶ過程にあることです。

バルガスは、データ応用を専門とするシニアサイエンティストです。彼女は、マイクロソフトに 7 年間勤務しましたが、組織文化に関する悪い経験から 2013 年に退職し、その後に、同僚の勧めにより 2017 年に復職しています。

彼女は、会社の語彙に新たに加わった言葉「アライシップ」をすぐに学びました。これは、ブロンクスで育ったプエルトリカンである彼女にとってはなじみのある概念で、彼女と家族には、いざという時に頼れる人がいたことを思い出しました。これにより、自分は、誰かに頼られる存在になりたいと思うようになったと彼女は言います。

「私は、今まで多くの会議で他の人々が差別的な発言をされた時に、意図せずアライシップを実践していました。ニューヨーカーである私は黙っていることができないのです」と彼女は言います。

マイクロソフト データ応用専門シニアサイエンティスト
シルビア バルガス (Sylvia Vargas)

マイクロソフトの組織文化は変化してはいますが、バルガスによれば、依然として論争や不適切な発言があります。しかし、バルガス自身も含めて人々の緊張関係への対応方法は大きく変化しています。

今では、会議で他者に対して無礼な態度を取った人には強硬に対応するのではなく「あなたの言いたいことにも意味があるかもしれない、同意を得られるかは別として」などと介入したりします。そして、バーガスはもう 1 つの重要な教訓を学んでいます。自分自身がアライになり、その行動や失敗に共感を持つということです。

研修コースが世界中のマイクロソフトで使用され始める中、“allyship” という言葉が適切に他言語に翻訳されているとは限りません。そして、スペルチェックプログラムが、それを “ally’s hip” に修正しようとすることもあります。しかし、このメッセージは伝わりつつあります。

「これは基本的に行動に関するものです。単なる名称、ラベル、証明書ではありません」とアシュウィン シュリニバス (Ashwin Shrinivas) は述べています。彼は、このコースを受けるまで、「アライシップ」とは大げさで厚かましい概念であると考えていたと言います。「行動ひとつで『アライ』になれますが、次の瞬間、適切な行動を取り続けなければもはや『アライ』ではありません。これは、旅路のような長期的取り組みです。」

マイクロソフト Azure Data 部門
エンジニアリングディレクター
アシュウィン シュリニバス (Ashwin Shrinivas)

Azure Data 部門のエンジニアリングディレクターであるシュリニバスにとって、これはとてもなじみがある考え方でした。

シュリニバスの母親は大学院の数学科をトップの成績で卒業し、インドの小さな町で、大学受験用に物理と数学を教え、多くの学生を一流の工科大学に送り出してきました。これは、彼女の環境では女性として大変な偉業です。シュリニバスは子供のころ、母親が他の教師や生徒の親による女性蔑視と戦ってきたのを見てきました。そして、自身が大学に進む時には、絶対にそのようにはならないよう誓いました。しかし、すぐに彼は自分の周囲の社会、そして、彼自身の無意識の偏見が、女性の同僚、学生、教師などに対する否定的な行動や思想に結び付いていることを実感しました。

これを恥じた彼は、偏見を積極的に改めていくことが必要と感じました。そして、マイクロソフト社内でのキャリアを進めていく中で、アライシッププログラムをはじめとする支援活動に関与していく機会を求めてきました。

アライシッププログラムの重要な要素は他者の多様な人生経験に対する意識向上であると、シュリニバスは言います。年に 1 度、ちょっとした差別的言動を経験してもすぐに忘れてしまう人もいるかもしれません。しかし、同じようなことを毎日のように経験している人もいます。それに対応しても、それがその人にとって 1000 回目の経験であるとわからない人にとっては過剰反応としてしか映らないでしょう。

「このような微妙な無自覚の差別に直面したことがない人はそれが存在することすらわからないでしょう。マジョリティ向けアライシップ研修プログラムの大部分は、自分の体験が同僚にとっても同じとは限らないことを示すことに向けられています。これが、アライシップの最初のステップです」とシュリニバスは述べています。

シュリニバスによれば、アライシップにより従業員の絆はより深くなり、業務にも好影響を与えることができます。さらには、人々が自身の相違点が評価されると感じることから、多様性も推進されます。

マイクロソフト ヘルスケア部門ビジネス戦略リーダー
クリス マテオ (Chris Mateo)

今年の様々なイベントはアライシッププログラムの必要性が差し迫ったものであることを明らかにしてくれたと、ナバスローゼッテは述べています。

多くの人々の間違いが、それが努力の結果である限り、許容、さらには、評価されます。

クリス マテオ (Chris Mateo) は、シアトルでパートナーと共にミネアポリスの黒人ジョージ フロイド (George Floyd) の死に関する抗議活動に参加していました。その時、彼の上司がメッセージを送ってきました。

「上司は何を言ってよいかわからないが、単に連絡したかった、自分の好きなように行動して欲しいと言ってくれました。その何ということはないメッセージにはとても心が温まりました」とアフリカ系ラテンアメリカ人であるマテオは述べています。

「アライシップに関しては、なぜか完璧主義が求められる傾向があります。しかし、間違いは起こるものであり、それは許容されるべきです。より重要なことはフィードバックに耳を傾け、対応していくことです。これは真の意味での長期的取り組みです。」

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