MAI models blog 2026Jun

改善し続ける仕組み(ヒルクライミング)の構築: 7 つの新しい MAI モデルを発表

著者: ムスタファ  スレイマン ( Mustafa Suleyman )

※本ブログは、米国時間 2026 年 6 月 8 日に公開された “Building a hill-climbing machine: Launching seven new MAI models | Microsoft AI”  の抄訳を基に掲載しています。 

本日、私たちは Microsoft AI が自社開発した 7 つの新しいモデルからなるファミリーを発表します。そして、私たちは、AI の次の段階を定義すると考える「超知能ラボ( superintelligence lab )」の構築も進めています。

現在、テクノロジーは非常に重要な転換点を迎えています。最先端モデルのトレーニングに使用される計算力は、これまでに 1 兆倍へと増加しました。そして今後 3 年間で、さらに 1,000 倍の増加が見込まれており、それに伴い、より高度な能力の実現と、これまで以上に効果的な AI の継続的な展開が可能になると考えられます。

この大規模な計算力の急速な拡大は、働き方、ビジネス、そして日常生活のあり方を変えていきます。私たちは皆、この現実に備える必要があります。MAI における私たちの使命は、その準備を支援することです。すなわち、最先端の領域を押し広げるとともに、皆さまがその最前線に立ち続けられるよう、継続的に改善を重ねる仕組みを構築することです。

ここでは、その取り組みに向けた最初のステップをご紹介します。

私たちのモデル

マイクロソフトの新しいモデルは、画像、音声、音声認識、コーディング、推論といった分野にわたり、一体となってMAI モデル ファミリーを構成します。これは、現実世界で重要となる多様なタスクに対応するよう設計された、マルチモーダルなエコシステムです。

  • MAI-Thinking-1 は、Microsoft AI のフラッグシップとなる推論モデルです。中規模でありながら同クラスの中でもトップレベルの性能を備え、主要なソフトウェア エンジニアリングのベンチマークにおいて先進モデルに匹敵するほか、高度な数学的推論能力を示しています。また、ブラインドで実施した人による比較評価では Sonnet 4.6 よりも高く評価されています。本モデルは、クリーンなデータをもとに一から学習しており、サードパーティ モデルをもとに学習は行っていません。
  • MAI-Code-1-Flash は、推論効率に優れたエージェント型 AI のコーディング モデルです。GitHub Copilot、Visual Studio Code、ならびにマイクロソフトの技術基盤と深く統合されるよう設計されており、50 億のアクティブ パラメーターを備えながら、Haiku に匹敵する性能をより低コストで実現しています。
  • MAI-Image-2.5 は、超高効率の Flash バリアントを含み、テキストから画像を生成する機能と画像編集の両方において世界トップレベルの性能を提供します。Arena スコアでは Nano Banana Pro を上回っています。
  • MAI Transcribe-1.5 は、最先端の精度を実現する世界最高レベルの音声認識モデルです。競合モデルと比べて 5 倍の速度を実現しており、43 言語にわたり分野固有の専門用語にも対応する機能を標準で備えています。
  • MAI-Voice-2 は、15 言語に対応した高品質で自然な音声生成を実現し、短い音声サンプルから声質に適応する機能を備えています。また、不正利用を防ぐための強力なセーフガードも組み込まれています。近日提供予定のMAI-Voice-2-Flash は、これらの機能をより低コストかつ高効率な形で提供します。

Foundry での提供やマイクロソフトの製品向けの最適化に加え、これらのモデルは OpenRouterFireworksBaseten といったプラットフォームを通じて、開発者が広く利用できるようになります。さらに今回、開発者は初めてモデルの重みを自ら調整できるようになります。

これらのモデルはすべて、同じ構造基盤で提供され、またすべてのモデルにおいて明瞭かつエンタープライズレベルのデータリネージの提供を約束しております。これらは連携して機能し、人々が日常的に利用する製品に直接統合されるよう設計されています。しかし、モデルそのものは全体の一部にすぎません。

最も重要な変化は、あなたがそれらを使って何ができるかという点にあります。

ユーザーに合わせて進化

AI は新たな段階へと進んでいます。現実環境での強化学習により、AI は特定のワークフローに応じて、初めて完全に適応できるようになりました。マイクロソフトではこれを Microsoft Frontier Tuning と呼んでいます。私たちはこれが、AI のあり方を変えていく今後の方向性になると考えています。詳しくは Microsoft 365 ブログ記事をご覧ください。

この仕組みにおいて最も価値があるのは、ユーザー自身のデータです。すなわち、エージェントが実際の業務で行った内容の記録であり、タスクが組織内でどのように遂行されているかを形づくる、プロセス、意思決定、そして行動の積み重ねです。

マイクロソフトの強化学習環境 RLE により、MAI モデルがユーザーのワークフローから直接学習できます。これは、ユーザー専用の AI のトレーニング環境と捉えることができます。

Frontier Tuning により、ユーザーは自ら管理する環境のもと、自社のデータを用いて独自のモデルを構築できるようになります。組織に蓄積された知見はモデルの一部として組み込まれ、それは引き続きユーザーのものとして保持されます。さらに重要なのは、この取り組みによって効率とパフォーマンスの向上が実現される点です。

マイクロソフトとお客様両方の環境において、Frontier Tuning は、カスタム モデルが性能と効率の両面で優れていることを示しています。具体的には、Excel 向けにチューニングされた MAI モデルは、GPT 5.4 に匹敵する性能を持ちながら、最大で 10 倍の効率を実現しています。先行導入企業でも、同様の成果が確認されています。さらに、市場をリードする企業の厳格なエンタープライズ要件に合わせて調整した場合、MAI は、検証されたすべてのモデルの中で最高の勝率を達成しつつ、コストを約 10 分の 1 に抑えています。

開発者や企業は、自らの条件で利用でき、自らコントロールできる AI を求め続けてきました。私たちはこれを、その実現に向けた重要な一歩になると考えています。

メイヨー クリニックとの連携による最先端のヘルスケア インテリジェンス

医療のように、高い重要性と高い機密性を備えた分野では、より密接な連携が求められます。そのため本日、マイクロソフトとメイヨー クリニックは、医療分野向けの最先端 AI モデルを共同で構築するための取り組みを発表します。この取り組みでは、メイヨー クリニックの世界最高水準の臨床知見と、匿名化された臨床データおよび長期的な知見を、マイクロソフトの基盤となる AI 技術と組み合わせます。

このモデルは、臨床推論および医療における幅広いユースケースにおいて優れた性能を発揮するよう設計されており、現在の汎用的なシステムでは到底及ばない水準に到達することを目指しています。

このモデルはまず、世界トップクラスの医療システムであるメイヨー クリニックの環境内で展開され、より早期かつ高精度な診断や治療計画の策定など、幅広い機能の実現が期待されています。検証が完了した後は、Microsoft Foundry を通じて他の組織にも提供される予定であり、メイヨー クリニックの専門知見を、必要とするより多くの人々が活用できるようになります。

この最先端の AI モデルはメイヨー クリニックが保有し、患者の信頼、臨床の厳密性、安全性、そして臨床データおよび AI の責任ある管理に対する、両者の長年にわたるコミットメントをさらに強化するものとなります。

マイクロソフトのラボ

Microsoft AI は、最先端に到達するために近道はないと考えています。私たちは推論モデルを一から構築しています。他の研究機関のモデルに頼ることなく、無許可または不透明なデータにも依存しません。使用するデータセットはクリーンで、適切にライセンスされたものです。アーキテクチャからトレーニング パイプライン、ポストトレーニングに至るまで、システムのあらゆる要素を自社で構築しています。また、自社開発の Maia 200 シリコンと共同設計を行い、これらの取り組みにより、すでに 1.4 倍の効率向上を実現しています。こうした取り組みはすべて、マイクロソフトとパートナーの長期的な自立性の確立を目的としたものです。そしてそれは、信頼できるモデルの実現につながります。

ここでの目標は、「継続的に改善し続ける仕組み」を構築することです。すなわち、より多くの計算力、より良いデータ、より精緻な評価を適用しながら、サイクルを重ねるごとに進化し続ける組織を実現することです。

私たちは、そのためには科学的な厳密性が不可欠だと考えています。そのため、あらゆる取り組みにおいて、要素ごとの検証、測定、記録を徹底しています。データパイプラインにも積極的に投資しています。また、小規模なチームで、短期間かつ検証可能な目標を設定し、スピードと品質、集中と挑戦のバランスを取りながら開発を進めています。さらに、透明性の確保にも継続的に取り組んでいます。私たちは、この取り組みに皆さまにもぜひ参加いただきたいと考えています。その一環として本日、安全性および技術に関する詳細なレポートを公開します。

ヒューマニスト型超知能

これが、MAI で私たちが構築しているものです。新しいバージョンをすでに提供しているモデルファミリー、基本原則に基づいて構築され長期的な能力の向上に焦点を当てたラボ、そして、AI の次の段階を定義するものになると私たちが考える、チューニングと所有の新しいアプローチです。

私たちの最終的な目標は、「ヒューマニスト型超知能」です。これは、人や組織に役立つことを目的として設計された高度な AI システムであり、それらを置き換えるものではありません。これらのシステムはあくまでツールであり、人間の意図によって形づくられ、人による監督に対して説明責任を持ち、最終的には人間の目標に従属する存在でなければなりません。人、すなわち皆さまが常に主導権を持ち続ける必要があります。

今後 1 年間で、このビジョンを現実のものとするために、計算資源と機能を急速に拡張していきます。これは AI にとって、そして私たちにとって新たな段階です。
 — MAI チーム

未来をともに築きましょう

私たちは、少人数で機動力も高く、学び続けながら価値を生み出す人材が集まる研究組織です。 MAI における計算基盤のロードマップも着実に進展しており、次世代の GB200 クラスターはすでに稼働を開始しています。また、私たちは強い信念を持って取り組む、大きなビジョンを掲げています。さらに、優れたプロダクト チームとの連携により、私たちのモデルは数十億のユーザーに届き、大きなポジティブな影響を生み出す機会を得ています。高い能力と強い志を持ち、謙虚さも兼ね備えた方であれば、きっとこの環境で力を発揮できるはずです。ぜひ私たちとともに、次世代のモデルの開発に取り組みましょう。

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