AI 時代のセキュリティを再考する
セキュリティに新しいサイバースタックを — Project Perception 発表
著者: ハイヤット ギャロ (Hayete Gallot)、マイクロソフト セキュリティ担当エグゼクティブ バイス プレジデント
※本ブログは、米国時間 2026 年 7 月 27 日 に公開された “Rethinking security for the age of AI – The Official Microsoft Blog” の抄訳を基に掲載しています。
昨今、サイバーセキュリティを取り巻く力学そのものが変わりつつあります。いまや自律的なシステムは、自ら推論し、状況に適応し、休みなく動き続けることができます。一方で、攻撃にかかるコストは下がり続け、守るべき対象の量、速度、複雑さは増え続けています。攻撃者は、これまで以上に速く攻撃を生み出し、攻撃活動をさらに大規模に展開し、かつてない効率で活動できるようになりました。人間による攻防を前提に組み立てられた従来の手法では、AI とエージェント、そしてマシンスピードの攻撃が飛び交う世界には、もはや追いつけません。
セキュリティには、新しいサイバースタックが必要です。新しいサイバースタックは、デジタル環境全体のリスクを継続的に把握し、膨大なコンテキストをもとに推論し、マシンスピードで対応できなければなりません。環境の変化に合わせて学習し、適応しながら、組織が脅威の一歩先を行けるよう支援する必要があります。そしてセキュリティは、最終的には人が担うミッションです。だからこそ、より的確な洞察と、より強力な対応手段によって、防御側の力を高めるものでなければなりません。次世代のセキュリティシステムを特徴づけるのは、より多くのアラートを生成する能力ではありません。継続的に把握し、推論し、対応する能力です。
このビジョンのもとで開発されたのが「Project Perception(プロジェクト パーセプション)」です。これは、AI 時代の現実を踏まえて設計された、新しいエージェント型セキュリティシステムです。AI に対抗するために AI を活用し、検知したシグナルをもとに、リアルタイムの保護につなげます。
Project Perception は、シグナル、コンテキスト、モデル、そして専門エージェントを組み合わせ、継続的に学習する防御システムを実現します。人間が確実に主導権を保ち、新しい強力なワークフローで防御側を支えながら、マシンスピードで推論し、優先順位を付け、対応することができます。
Project Perception は、シンプルな考え方に基づいています。それは、効果的な防御には、攻撃者が環境をどう見ているか、防御側がリスクをどう評価するか、そして保護を時間とともにどう改善していくかを、継続的に把握することが欠かせません。これを実現するために、Project Perception は 3 種類の専門エージェントを連携させます。Red team エージェントは、攻撃者に悪用される前に、侵害につながりうる経路を特定します。Blue team エージェントは、調査を行い、コンテキストを踏まえて推論し、実質的なリスクを判断します。Green team エージェントは、是正措置を実行し、環境全体の防御を強化します。これらのエージェントが連携することで、組織のセキュリティ態勢を継続的に把握し、評価し、改善する仕組みを実現します。

Project Perception のようなシステムの効果は、どれだけ広い範囲を可視化できるか、どのような対応を実行できるか、開発に携わるチームの経験値、そして使えるモデルの幅に左右されます。Microsoft は、この 4 つの要素すべてを備え、本日、この新システムの提供を発表します。
マイクロソフトは、ID、エンドポイント、アプリケーション、データ、クラウド、AI システムにまたがって、お客様のデジタル環境全体を可視化します。可視化にとどまらず、必要な対応を環境全体で取れるよう支援できることも重要です。数十年にわたるセキュリティ研究、脅威インテリジェンス、そして組織の防御を支えてきた実運用の経験が、Project Perception の推論、優先順位付け、対応を支えています。
セキュリティは、24 時間 365 日、常時対応が求められるミッションです。組織には、高い効果を発揮し、常時利用でき、規模が拡大しても無理なく運用できる保護が求められます。そのために必要なのは、最も高性能なモデルにアクセスできることだけではありません。適切なタスクに適切なモデルを適用することです。Project Perception は、フロンティアモデルとサイバーセキュリティに特化したモデルを組み合わせるマルチモデルアーキテクチャを採用し、品質とコストの両面を最適化します。
マイクロソフトは、マルチモデル戦略の一環として、セキュリティタスクごとに、自社の特化型モデル開発を含め、最適なモデルをお客様に提供するべく注力しています。その第一歩として、ソフトウェア脆弱性管理向けの新モデル「MAI-Cyber-1-Flash」を開発し、ソフトウェア脆弱性に対応するマルチモデルエージェント群である MDASH に、MAI-Cyber-1-Flash を組み込みました。 MDASH と MAI-Cyber-1-Flashを組み合わせた構成は、業界をリードするベンチマークである CyberGym で 96% を達成し、Mythos を 12 ポイント上回りました。さらに、同構成は、現在市場で提供されている MDASH 構成と比較して、約 50% のコスト削減を実現しています。これは、他に類を見ない豊富な過去の学習データにアクセスでき、精緻に調整されたマルチモデルシステムの力を示すものです。今後、Project Perception では、ソフトウェア脆弱性のシナリオを超えて、さらに多くのセキュリティワークフローで MAI-Cyber-1-Flash を活用していきます。
マイクロソフトは、Project Perception を通じて、このビジョンを世界中のお客様に提供します。Project Perception は、8 月 3 日にパブリックプレビューを開始します。
エージェント型セキュリティのために開発されたサイバースタック
エージェント型セキュリティの実現には、既存のワークフローにエージェントを追加するだけでは不十分です。一から設計された新しいサイバースタックが必要です。
このサイバースタックは、デジタル環境全体の状況を把握するためのシグナルとセンサーから始まります。セキュリティコンテキストは、これらのシグナルを、エージェントが効率よく利用できる文脈情報へと変換します。モデルはインテリジェンスと推論を担い、ハーネスは、セキュリティワークフロー全体でモデルとエージェントを連携させます。エージェントはそのインテリジェンスをセキュリティワークフロー全体に適用し、アクチュエーターは判断を防御アクションへとつなげます。これらの層が連携することで、リスクを理解し、状況の変化に適応しながら、セキュリティの実効性を継続的に高める学習システムを実現します。

各層はそれぞれ重要な役割を担っています。しかし、Project Perception の真価は、それらが一体となって機能することで発揮されます。
AI のためのセキュリティコンテキスト
的確な推論には、個々のシグナルを捉えるだけでは不十分です。エージェントには、コンテキストが必要です。
マイクロソフトは、幅広い可視性、脅威インテリジェンス、セキュリティの専門的な知見をもとに、デジタル環境全体のセキュリティデータ、知識、意味情報を結び付ける「セキュリティコンテキスト」を構築します。これにより、組織の資産、ID、関係性、リスク、活動を継続的に更新される見取り図として捉えられるようになります。この見取り図を通じて、複数のエージェントは、防御対象となる環境について、ほぼリアルタイムの共通認識を維持できます。

この共通認識こそが、Project Perception の動作の根幹を成しています。エージェントは、シグナルをもとに毎回コンテキストを収集し、関連付け、再構築する必要はありません。必要な情報に即時かつトークン効率よくアクセスし、リスクを推論し、対応の優先順位を付け、意思決定を行うことができます。すべてのやり取りをこの豊富なセキュリティコンテキストに基づかせることで、Project Perception は推論の正確性と一貫性を高め、大規模運用に必要な時間、計算資源、コストを抑えます。
セキュリティのためのマルチモデル アーキテクチャ
すべてのセキュリティタスクに最適な単一のモデルは存在しません。効果的なサイバー防御には、問題に応じて、適切なタイミングで最適なモデルを適用することが求められます。
Project Perception では、品質、信頼性、レイテンシ、コストの組み合わせをもとに、最適なモデルを判断します。単一のモデルに依存するのではなく、タスクに最も適した能力を継続的に選択するマルチモデルアーキテクチャを採用し、効果と経済性の両面を最適化します。セキュリティは常時稼働が求められるミッションであり、大規模な防御を支えるには、コスト面での持続可能性が不可欠です。
このアプローチには、フロンティアモデルと特化型モデルに関する継続的な研究、ベンチマーク、評価が反映されています。マイクロソフトのセキュリティ研究者は、実際のセキュリティワークフローに照らしてモデルを継続的に評価し、各タスクに最も適した成果をもたらすモデルを見極めています。これにより、お客様は特定の 1 つのモデルに縛られることなく、AI の進化によるメリットを享受できます。
アクチュエーター — 洞察を行動に変える
セキュリティチームに必要なのは、より多くの情報ではありません。より良い成果です。
そのため、アクチュエーターはサイバースタックに欠かせない要素です。Project Perception は Microsoft Security 製品群と緊密に連携し、エージェントが洞察を実際の防御アクションへとつなげられるようにします。これにより、防御側は主導権を保ったまま、リスクを継続的に低減し、セキュリティを強化できます。
安全性を最優先に構築
サイバースタックのすべての層には、信頼を前提とした設計が組み込まれています。Project Perception は、マイクロソフトの責任ある AI の原則に沿って構築され、お客様がすでに信頼しているセキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス、運用管理の枠組みを受け継いでいます。そのため、お客様が期待する厳格さ、説明責任、エンタープライズ利用に必要な信頼性を備えています。
セキュリティの未来
セキュリティは常に、攻撃者と防御側のせめぎ合いでした。AI は、その攻防の速度、規模、コスト構造を変えつつあります。防御側に必要なのは、自分たちと並走しながら、状況を継続的に把握し、推論し、対応できるシステムです。
Project Perception は、その未来に向けたマイクロソフトの第一歩です。
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その他のリソース
- Enhancing AI Security Through Global AI Red Teaming
- From research to reality: An interview with Microsoft VP of Security Research Taesoo Kim
ハイヤット ギャロ (Hayete Gallot) は、AI ドリブンな世界において、組織が安全に事業を運営できるよう支援するマイクロソフトの取り組みを統括しています。グローバルな規模で ID、脅威保護、コンプライアンス、データ セキュリティを担当しています。
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