●Feature Story: クラウドの効率化に向けたマイクロソフトの挑戦

[2011年4月20日]

日本マイクロソフト株式会社

~ (当リリースは20011 年 4 月 19日に米国で発表されたリリースの抄訳をベースにしています) ~
マイクロソフトコーポレーション(Microsoft Corporation、本社:米国ワシントン州レドモンド)は、米国時間4月19日、以下のFeature Storyを発表しました。

マイクロソフトは、長期的な環境保護施策の一環として、Bing、Hotmail、ならびにOffice 365などを中心とする200以上のクラウドサービスの基礎を形成するデータセンターやネットワークに対して環境保護の観点に立った改善活動を推進しています。
クリスチャン ベラディは、これまでサーバー製品とその設置環境についての研究ならびに設計の専門家として、自身のキャリアを積み重ねてきました。この10年間、彼はクラウドへの移行を進める消費者や企業の増加に伴う、データセンターの物理的設置面積の拡大状況を観察してきました。現在、マイクロソフトが所有する最大のデータセンターの設置面積は、フットボール競技場17面分に相当します。

<米国ワシントン州クインシーに設置されたデータセンターでは、単独でも機能する完成済みのユニットを複数組み合わせたモジュラー方式(PACs)を採用することで、効率の向上を目指しています。>
ベラディは、マイクロソフトのDatacenter Advanced Development 部門担当のゼネラル マネージャーとして、従来の概念を根本的に変える究極的手法とは何なのかを追求する作業に取り組んでおり、「私の生涯の目標は、データセンターを『消滅させる』ことですよ」と語っています。それは半分冗談でもあり、半分は本気です。ベラディとマイクロソフトが取り組んでいるのは、データセンターの運用に現在必要とされている膨大なインフラストラクチャーを縮小する作業です。ベラディの試算によれば、一般的なデータセンターが消費する電力の50パーセントはサーバーそのものではなく、冷却装置、発電機、無停電電源装置(USP)、バッテリー、空調設備といった、サーバーの稼働を支える機械的、電気的なインフラによって消費されています。
一方、過去4年間にわたるマイクロソフト チームの改良作業の結果、現在ではそうしたインフラが消費する電力を全体の10パーセント以下に抑える事が可能なデータセンターの構築を進めるまでになっています。ベラディによれば、このデータセンターの電力効率は業界の水準をはるかに凌ぐものです。
2010年に、“データセンターを変革した5人(Five People Who Changed the Datacenter)”として業界から表彰されたベラディは、「消費者や企業がクラウドをベースにしたコンピューティング モデルへの移行を継続するのに伴って、データセンターへの要請は幾何級数的に拡大するでしょう。エネルギーコストの上昇や炭酸ガス放出による地球温暖化の問題も考慮すべきことを考えれば、データセンターの効率的運用は今や緊急の課題です。すなわち、エネルギー使用量や炭酸ガス放出の測定評価、監視、ならびに削減を可能にする新たな手法をデータセンターに導入することは、競争力の維持だけでなく地球環境への適切な配慮といった観点からも必須の施策です」と述べています。

効率の評価基準

<Datacenter Advanced Development部門担当 ゼネラル マネージャー、クリスチャン ベラディ>
データセンターを「消滅させる」というのは、恐らく、ベラディが10年以上も前から続けている研究の理論的な終着点でしょう。彼が効率的コンピューティングの発想に初めて興味を抱いたのは、ヒューレット・パッカードでサーバーやデータセンターの設計に携わっていた90年代の頃でした。当時のことを、彼は今でもはっきりと覚えています。電話会議で、データセンターを効率的に運用することの重要性を役員達に理解してもらおうとしていた、まさにその時のことでした。電話の向こうから計画停電の開始を知らせるアナウンスが聞こえてきたのです。「私は即座にプレゼンテーションを終え、『もうご説明の必要も無いようですね』と言葉を添えました。だからこそ、効率的なデータセンターの設計を進める必要があるのです――これが、私のキャリアを変えるきっかけになった出来事です」とベラディは述べています。
ベラディはまた、企業が効率改善に向けて実践すべき施策を一覧にまとめ、外部のお客様に対してもデータセンター効率向上の重要性を説くことに全力を尽くしました。問題は、当時の企業には、そうした施策効果の有無を評価する手段が皆無だったことです。ベラディはある時、日本から帰国する際に、効率の改善を評価できないがために昔の手法に戻してしまったと語るお客様に出会ったことから、改善効果を企業に理解してもらうための評価方法とは何かを真剣に考えるようになります。そして、このことがきっかけとなって、彼は2001年にPower Usage Effectiveness (PUE)と呼ばれる評価方法を生み出します。PUEは、現在では欧州連合委員会(the European Union Commission)、環境保護局(the Environmental Protection Agency)、ならびにグリーングリッド(Green Grid――約200社が参加する世界的なコンソーシアムであり、ベラディはその創設に尽力した)などの業界団体において、世界的な基準として利用されています。
PUEとは、数学的に見れば非常にシンプルなものです(施設全体が消費する総電力を、サーバー、ストレージ、ならびにネットワーク機器のような、コアとなるIT構成要素群が消費する電力量で割ることによって算出)。例えばPUEが1.5の場合は、サーバーが1ワットを消費するごとに、0.5ワットがその他の間接的電力として消費されるということになります。「業界としての目標はこの数値を可能な限り1に近づけることで、こうした目標に到達するには、マイクロソフトと業界がサーバー周辺を覆っているインフラの層を剥ぎ取っていかねばなりません。こうした層こそが、データセンターの電力消費を膨大なものにしている主な要因となっています。データセンターの中には、1か所の原子力発電所が発電する電力のおよそ5パーセントに相当する、50メガワットの電力を食いつくすものもあります」と、ベラディは述べています。
数年前、ベラディは、データセンター周辺のインフラを取り除いた状態でサーバーを運用すること(そして1.0のPUEを達成すること)が可能であると示すための実験を行いました。ベラディと同僚の技術者は、マイクロソフトのデータセンターの裏手の屋外にテントを張り、ラックに積んだ複数台のサーバーをその中に設置したのです。サーバーは7か月にわたって完璧に稼働しました。「これは、データセンターインフラを『消滅させた』環境下でサーバーを運用した、1つの実例です。世界では、数10億台のPCが動いていますが、家庭だけでなく地域の商店や事務所などを見ても、このような大がかりなインフラによる厳格な制御環境の下で運用されているものは1台もありません。電源プラグを差し込んで動かすだけのことです。クラウド サービスの環境においても、必ずしもすべてのインフラ層を必要とするわけではないことを、私たちが示していく必要があります」と、ベラディは述べています。
マイクロソフトが、アイルランドのダブリンや米国ワシントン州のクインシーに最近構築したデータセンターは、こうした革新的な発想に基づいて設計されています。これらのデータセンターでは、冷却用の装置やシステムを使わず、外気をそのまま利用することで経費の節減をはかっています。窓を開け放ち新鮮な空気を取り込むだけという、素晴らしいやり方です。「ダブリンの施設は、1.25のPUEを維持するとともに、これまで業界で使われてきたデータセンターに比べて、エネルギー効率をおよそ50%改善したほか、年間の水の消費量も従来のわずか1パーセントに抑えることに成功しています」と、ベラディは述べています。
マイクロソフトがクインシーに設置した完全モジュラー方式のデータセンターでは、さらなる研究開発の成果から得られたベストプラクティスを採用することによって、1.15から1.2のPUEを実現するとともに、通常であれば2年を費やすデータセンターの建設期間を半分に短縮することにも成功しました。さらに、ベラディによれば、ダブリン、クインシーのいずれの施設においても、炭酸ガスの排出を抑制するため、100パーセント再生可能なエネルギー源(クインシーでは水力発電、ダブリンでは風力発電)が活用されています。
といっても、マイクロソフトや業界の活動が、単なる評価方法の改善や電力効率化の追求だけに留まっているわけではありません――とベラディは付け加えます。例えば、IT電力の消費に伴う炭酸ガスの排出量を評価するための基準である炭素利用効率(CUE: Carbon Usage Effectiveness )や、IT電力の消費に伴う水の消費量を評価するための基準である水資源利用効率(WUE:Water Usage Effectiveness)といった新しい評価基準が現在開発の段階にあります(双方とも、ベラディとの共同開発として進められています)。
「PUE、CUEならびにWUEといった評価基準には、データセンターにおける電力消費、炭酸ガスの排出、そして水の消費を削減するための取り組みを飛躍的に進展させる効果があるはずです。マイクロソフトでは、データセンターにおけるこれら三要素すべての削減に、積極的に取り組んでいます」と、ベラディは述べています。

データ:エネルギーの新たな形態
ベラディはすでに、業界におけるデータセンター設計の常識を根本的に変えるような、さらなるパラダイムシフトを考え始めています。

<マイクロソフトのダブリン データセンターでは、無償で使える外気を活用してサーバーを冷却し、効率の向上をはかっています。>
「データとは、まさにエネルギーの新たな形態だと言えます。電力を配電するのではなく、データを配送することを私たちは考えるべきです。電力よりもデータを保存する方がよほど簡単ですし、効率的でもあります。『データとは入念に加工されたエネルギーの一形態に過ぎない』というのが、私の見方です。現在、電力は発電所で作られた後、伝送過程での損失を伴いながら、高電圧の送電線を介して送られています。データセンターでは、送られてきた電力を消費しながら、実際にはそれを保存したり配信したりするためのデータへと変換しています。変換されたデータは、ファイバーケーブルなどを使って最終的には消費者や企業に届けられます。銅線上に電気を流すよりも、ファイバー ケーブルを介して(データという形態を持った)エネルギーを配送する方が簡単かつ効率的です。実際に、同じファイバーケーブルを使ってより多くのデータを配信するための新たな方法が毎年のように開発されています。一方、銅線上により多くの電子を乗せる方法を見いだすことはほとんど不可能でしょう。すなわち、発電所とデータセンターの設備を一体化して、実質的な側面からデータ配信の効率化を実現できるような『データプラント』を構築することが、最適の策だといえます」と、ベラディは述べています。
ベラディは、彼の言う「データ プラント」が、今後5年の間によりGreen ITを実現するためのクラウド基盤のモデルになるものと考えています。一方で、「データ プラント」の実現をはかるには、コンピュータ用の半導体からインフラに至るあらゆる構成要素を一体化することが必要であり、そのためには、ソフトウェア、セキュリティ、そして数々のアプリケーションをより効率的に連動させるための手法を再考し、進化させていくことによって、そうしたIT業界全体の進化を推進していくことが重要であるとも指摘しています。
「将来に向けては、こうしたクラウド エコシステム全体を統合化していくことが、効率化追求の手法を根本から変革し、環境保護をさらに推し進めるための鍵となることでしょう。恐らくそうした時代には、データセンターの姿を見えなくすることが可能になるでしょう」と、ベラディは述べています。

【日本マイクロソフト株式会社について】
日本マイクロソフトは、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、モバイル ファースト& クラウド ファーストの世界におけるプラットフォームとプロダクティビティのリーディングカンパニーで、「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」企業像を目指します。

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフトWebサイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Webサイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Webサイト http://www.microsoft.com/

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