[2013年10月31日]
英語の学習につまずく生徒を、タブレットPCで支援
日本マイクロソフト株式会社(本社:東京都港区、代表執行役 社長:樋口 泰行、以下日本マイクロソフト)は、東京大学先端科学技術研究センター(所長:西村 幸夫 、以下 東大先端研)と共同で、石川県金沢市の市立中学校を実証校として、マイクロソフト製タブレット Surface Proやデジタル教科書・教材を活用した新しい英語学習支援の実証研究(以下、本研究)を開始しました。
本研究は、東大先端研の中邑賢龍教授(人間支援工学)の率いる研究チームと、日本マイクロソフトが共同で、金沢市立泉中学校の授業において実施するものです。研究チームの調査によれば、中学校において英語学習が本格的に始まると、その習得に特異的につまずく生徒が一定の割合で存在することが明らかになっています。英語は発音と文字の対応関係に不規則が多く、その言語の特性から、他の言語に比べても読み書き障害の出現率が高いと言われています(注)。研究チームがこれまでに行った調査では、日本の中学生において『英語の読み書きに困難がある生徒』は16.3%おり、中でも『日本語に対応した英単語を書くことに特異的な難しさがある生徒』は4.2%いる(日本LD学会第22回大会で発表)ことが判明しています。
これまで研究チームでは、小学校の国語学習等において、タブレットPCの文章読み上げ機能や文字拡大機能などが、読み書きに困難のある児童の学習支援に有効であることを実証しており、本研究は、その知見を中学校の英語学習にも応用するものです。英語学習の支援に関する研究はこれまで行われておらず、本格的な読み書き困難な生徒への英語学習支援に関する研究は、日本初となります。
タブレットを活用した英語学習支援研究 概要>
通常学級に在籍する生徒のうち、希望者に1人1台のSurface Proを提供。学校だけでなく家庭での学習にも活用。学校での授業では学習者用デジタル教科書を使用。
●書字に困難を抱える生徒に対する支援例
・ デジタルノート「Microsoft OneNote」の文字認識機能と、Surface Proのペン入力機能を活用し、書字に困難のある生徒の文字入力を補助。
・ 発音と文字列が一致せず暗記が難しい英単語について、「Microsoft Word」のスペルチェック機能や「Microsoft IME」のカタカナ英語辞書機能を活用し文字入力を補助。
・ カメラアプリでの板書の撮影と、文字認識による文字入力の補助。
●読みに困難を抱える生徒に対する支援例
・ 「Microsoft Word」の読み上げ機能、専用読み上げソフトなどを活用したデジタル教材の読み上げによる補助。
・ カメラで撮影した教材の文字認識・読み上げによる補助。
<実施中学校>
金沢市立泉中学校(石川県)
<実施期間>
平成25年9月より平成27年3月まで。
本研究において、日本マイクロソフト株式会社は、Surface ProとMicrosoft Office をはじめとした各種ソフトウェアの提供と、導入・活用にあたっての技術的支援を行います。東大先端研は、研究を計画実施し、読み書き困難な生徒に対する学習プログラムを提供し、学術的研究データを得たうえで、その成果を研究終了後に公表する予定です。また2者は得られた知見を広く関係機関に共有し、児童生徒1人に1台のタブレットを使った教育環境の実現に取り組む自治体、教育機関の支援につなげます。
2者は本研究を通じ、グローバル化が加速する世界において、ますます重要性を増す英語の学力向上を図るとともに、生徒一人一人の学びの多様性が学習支援に有効であることを示し、タブレットPCを活用した新しい英語の学習支援モデルを提案します。
(注)1文字に対応する音の単位の大きさを「粒子性」、文字と音との1対1の対応関係を「透明性」とすると(タエコ N. ワイデルとブライアン・バターワース(1999))、英語は1文字が表す音の単位(音素)が小さいので粒子性が細かく、発音と文字との対応関係に不規則性が多いので透明性が低いといえ、読み書きの困難がでやすい言語と考えられている。
* その他、記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
参考資料
<参考資料:金沢市立泉中学校でのSurface Proを活用した授業の模様>