地球環境問題に AI で貢献:AI for Earth

[ブログ投稿日:2017年12月11日]

Posted by:ブラッド スミス
プレジデント兼最高法務責任者
(Brad Smith – President and Chief Legal Officer)

AI for Earth 戦略的アプローチの拡大による 5,000 万ドルのコミットメント

パリ協定の起草から 2 年目を迎える今、世界の政府機関、そして、市民活動とビジネスのリーダーたちがパリに集結し、今日最も重要な課題であり機会でもある気候変動について議論します。今回、この会議でマイクロソフト代表団の代表することを大変うれしく思っています。地球が直面する環境問題に対する専門家の警告には厳しいものがありますが、マイクロソフトは、この問題の理解と解決にテクノロジが貢献できることを信じています。これこそが、パリで AI for Earth プログラムの拡充について発表した理由です。そして戦略計画の拡大に加え、世界中で地球環境の保護に取り組む個人や組織に向けて、人工知能(AI)テクノロジを提供するために今後 5 年間で 5,000 万ドルを投資することとしました。

マイクロソフトは、AI が真の意味での革新であると考えています。AI を民主化し、世界中の個人や組織がその機能やパワーを活用して現実的な結果を出すことに企業としてフォーカスしています。地球の自然を監視し、モデル化し、管理するという差し迫った課題に対応する上でも、AI は大きく貢献します。

データは、大気、水資源、土地、そして、野生動物の健康の状況など、地球の健全性について知るきっかけとなります。しかし、大量のデータを保管、それを有用なインテリジェンスに変換するためには、テクノロジの力が必要です。AI は学習することで、地表、空中、宇宙のセンサーが生成するローデータを、人間とコンピューターが理解しやすい形に分類できます。AI は、私たちの環境システムとその地球規模での変化を観測する能力を強化し、データを有用な情報に変換し、自然資源を有効活用するための具体的な措置を講じる上での大きな助けとなります。

AI による変革は既に始まっています。エネルギー分野では、ノルウェイの再生可能エネルギー企業 Agder Energi が、マイクロソフトのクラウドと AI を活用して送電線網のデータの獲得・分析・活用を強化しています。電気自動車によるノルウェイの電力システムの負担が増す中で、Agder はこれらのテクノロジにより変動するエネルギー需要を予測し、対応できるようになりました。データと AI は、既存のインフラを強化し、高コストの新規プロジェクトの必要性を軽減します。AI は、より効率的で信頼性が高い自律型電力網の構築に貢献すると共に、顧客や国家がより多くの再生可能エネルギーを使用できるようにし、電気に基づく未来への移行を支援します。

同様に、AI とクラウドのテクノロジがビルの電力効率性の向上に使用されています。シンガポールでは、国家の産業基盤開発を担う JTC が運用業務を Microsoft Cloud 上に集約し、39 棟のビルの監視・分析・最適化を行なっています。JTC は、センサーのデータとアナリティクスを活用し、障害が起こる前に問題を発見・修復し、最初の 3 棟のビルだけでエネルギーコストを 15 パーセント削減しました。

これらのステップをグローバルな規模に拡大すればどのような効果が得られるか想像してみるとよいでしょう。米国では、総エネルギー消費の 40 パーセントがビル関連です。これは、ビルのエネルギー効率を 15 パーセント向上できれば、グローバルのエネルギー消費を 6 パーセント削減できることを意味します。そして、AI の進化が続く中でさらに多くを学び、より高い目標を目指す機会が生まれます。

AI の農業分野への応用の見通しも同様に明るいものです。オーストラリアでは、高い労働コストと輸入コスト、乾燥した気候、世界で最も激しい天気の変動が農業の大きな課題となっていました。タスマニア州のアグテック(農業技術)企業である Yield は、センサー、アナリティクス、アプリを活用し、農地単位にまで詳細化したリアルタイムの天候データを生成することで、農家が水などの消費を削減しつつ、収穫を増大できるようにしました。漁業分野では、Yield は地域の牡蠣養殖業者と協力し、機械学習を使用した養殖生産高増加のための最初の製品を開発しました。既にこのソリューションは雨による収穫の中止を 30 パーセント削減し、収穫期を年間 4 週間延長できています。

このような結果に触発され、AI for Earth プログラムもさらに拡大することにしました。将来的には、世界中の農家と協力していくことを確約します。あらゆる農家がブロードバンドと接続し、あらゆる農地にインターネットのセンサーがある未来を構想しています。Microsoft Research の最新の研究成果に基づき、土壌と降雨の状況をより適切に分析するだけでなく、予測分析によって収穫高を増大させ、環境への悪影響を削減し、農家の人々がAI を活用できるよう支援していきます。世界の人口が増加し続ける中で、これらの変革は急がねばなりません。

マイクロソフトは、AI for Earth が環境を保護するソリューションを構築するグループや個人を強く後押しすると考えています。そのため、単に多くのリソースを投入するだけではなく、AI を気象、水資源、農業、生物学的多様性という4つの主要領域に適用し、規模を拡大していくという長期的なコミットメントの元にこの取り組みを行なっています。

マイクロソフトはこれを 3 つのステップで実現します。第一に、新しい AIアプリケーションの構築とテストのための助成金の授与を、世界中で拡大します。6 カ月前の AI for Earth の立ち上げ以来、マイクロソフトは Microsoft Azure と AI テクノロジのアクセスのために 10 カ国以上で 35 件以上の助成金を授与しています。また、AI の最適な活用を目指して、大学や民間非営利団体などに高度な研修を提供しています。既に、気象、水資源、農業、生物学的多様性などへ AI を適用するプロジェクトが、世界中で成功し始めています。

次に、これらのプロジェクトと、この分野におけるマイクロソフトの研究開発成果が成熟するにつれ、最も有望なプロジェクトを識別し、その規模を拡大するための追加投資を行ないます。また、AI と環境保護の専門家を集めてマイクロソフト内に新設された学際チームとの緊密な連携も行ないます。有望な AI テクノロジの適用規模拡大を援助する中で、サービスの商業化も支援し、できるだけ迅速かつ広範に、グローバルな影響力を発揮できるようにします。これらの取り組みは、リアルタイムの正確な保護と土地被覆図の改良FarmBeats プログラムによる少ないリソースで生産高を増加させる精密農業、そして、Project Premonition による効率的な生物学的多様性管理と保護へのアプローチなど、マイクロソフトの既存の取り組みに追加して行なわれます。

最後に、これらのプロジェクトをさらに進展させ、AI の新たな技術進化をプラットフォームへサービスとして取り込み、他者が独自の環境保護の取り組みで活用できるようにする機会を特定し、追求します。ここでは、他者が提供するプラットフォームも含まれるでしょうし、マイクロソフトのプラットフォームへサービスとして取り込まれる可能性もあります。

地球の気候問題は今、私たち全員が迅速なアクションを取る必要性に迫られています。今日の気候問題は、過去の産業革命の副産物であるところが大きいことが、科学的に証明されています。テクノロジが推進する第四次産業革命に突入する中で、テクノロジを進化させることに加え、過去の問題を解決し、より良い未来を作るためにテクノロジを活用していかなければなりません。

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