自律制御のドローンと AI を連携した外観検査ソリューション

Drones with brains and shelves with eyes — digitalizing the physical world

本コンテンツは、Asia News Center で公開された記事の抄訳をベースにしています

風力発電におけるタービンの検査では、通常、5 人から成るチームをタワーに送る必要があります。技術者は、ロープとハーネスを使い、40 から 80 メートルの長さのブレードに向けて登り、地上 100 メートルで揺れるブレードを目視で検査します。タービンが風の強い場所に置かれることを考えれば、これは危険で事故につながりやすい作業です。

加えて、このプロセスは危険であると同時に、きわめて時間がかかります。1 つのタービンの検査を完全に行うためには、最低でも 6 時間を要します。中には、数 100 ものタービンを有する風力発電所もあることを考えれば、どれほどの時間を要する作業であるかがわかるでしょう。

上海とシアトルに本社を構えるスタートアップ企業 Clobotics の開発チームは、新たなテクノロジを用いてこの問題を解決できないかと考えました。Clobotics は、 AI に基づくコンピュータービジョンを使った物理世界のデジタル化に取り組み始めました。

ドローンの使用が選択肢にあがったものの、どのようなドローンでもよいというわけではありませんでした。風力発電所の環境で、地上からタービンブレードまでドローンを手動で操縦するのは困難です。自律飛行が可能で、きわめて正確な視覚認識能力を持ったドローンが必要になりました。

そこで、Clobotics はドローンに「脳」を与えました。これにより、自律制御システムが、ブレードの位置を把握して欠陥を発見します。オンボードのコンピューターが、 Clobotics のコンピュータービジョン、AI、そして、データアナリティクスのソフトウェアを稼働します。

ドローンの視覚システムの精度はきわめて高く、ブレード上にとまった蠅も認識できます。
ドローンの視覚システムの精度はきわめて高く、ブレード上にとまった蠅も認識できます。

視覚システムはブレードの全面を検査し、3 ミリメートルのひび割れも発見することができます。精度はきわめて高く、ブレード上にとまった蠅の羽や脚も明確に認識できるほどです。認識されたイメージは、Microsoft Azure のクラウドプラットフォームに送られて処理されます。Clobotics のデータアナリティクスとディープラーニングに関わるニューラルネットワークにより、対応が必要な損傷に関する完全なレポートが作成されます。

このシステムは多くの問題を解決します。第 1 に安全性です。ドローンを使うことで、人間が危険な状況に身を置く必要がなくなります。第 2 にスピードです。5 人が 6 時間を費やす従来方式と比較して、Clobotics のドローンを用いれば、 1 人のオペレーターが 25 分で作業を完了できます。これは、10 倍の効率性向上です。また、風力発電の事業者に対して貴重なデータが提供されます。AI によってレポート提供の速度が 8 倍に向上し、各タービンの各ブレードの保守と点検に関する完全な履歴が提供されるようになりました。

このようにして、Clobotics は物理世界のデジタル化(“Di-Phy”)を実現しています。

2018 年 10 月 17 日に、同社は、中国最大級の発電機器製造企業である Shanghai Electric Group Co., Ltd.、そして、風力タービンの製造と保守サービスのリーダーである Luoyang Sunrui Wind Power Blade Co., Ltd. との戦略的提携契約を締結しました。

この公式な提携は国際市場への拡大を目指す Clobotics にとって大きな一歩でした。また、風力発電業界における既存の巨大企業も、人工知能のような革新的なテクノロジを活用したがっていることの立証にもなりました。

Clobotics は、2016 年に4人の友人たちによって創業されました。創業メンバーはみな、グローバルなテクノロジ企業での豊富な経験があり、堅牢でエンドユーザーにとって価値があるプラットフォームの構築に情熱を傾けていました。

Clobotics のドローンは自律飛行型であり、その視覚認識能力はきわめて正確です。
Clobotics のドローンは自律飛行型であり、その視覚認識能力はきわめて正確です。

創立者で CEO のジョージ ヤン (George Yan) 氏は、「当社を創業することで、プラットフォームとお客様のニーズの間のギャップを埋めたいと考えました。マイクロソフトのクラウドエコシステムには精力的な開発を行うパートナーが多数存在し、お客様に貢献できています」と述べています。

Clobotics は顧客のニーズを理解し、そのための業界専門知識を獲得することを何よりも重要視しています。

同社は、このような考え方を従来型の小売業の分野にも適用しています。「物理店舗の小売業は Amazon や JD.com などから大きな圧力を受けています。小売業には多大な支援が必要と考えました。」

このような支援を行うために、同社は、CPG(消費財)業界向けに自社のコンピュータービジョンサービスを学習させました。小売業者がスマートフォンを使って店舗の棚の写真を撮ることで、迅速なフィードバックが得られるシステムを開発したのです。この AI ベースのテクノロジは、SKU (在庫管理単位)を 95 パーセントの正確性で把握し、棚確保率、在庫切れ率などのリアルタイムで有効な情報をMicrosoft Power BI により提供します。

Clobotics のコンピュータービジョンにより、スマートフォンで店舗の棚の商品を撮影するだけで迅速なフィードバックが得られます。
Clobotics のコンピュータービジョンにより、スマートフォンで店舗の棚の商品を撮影するだけで迅速なフィードバックが得られます。

この小売業者の支援機能はきわめて効果的ですが、それは氷山の一角にすぎません。ヤン氏と彼のチームは、小売業者の古くからある課題を解決するために、店舗内のすべての商品を視覚的に認識するという「壮大な計画」を持っています。次のステップは、冷蔵ショーケースや商品棚の縁部分に眼を設けることです。

コカコーラは、現在中国全土に100万台以上の冷蔵ショーケースを所有しています。そこで、新テクノロジを使って、物理的なレイアウト、温度、ドアの開閉回数、競合他社製品の情報などをデジタル化できるとしたらどうでしょう。それは、コカコーラが100万件以上の販売現場の情報をリアルタイムで得られることを意味します。

Clobotics は、冷蔵ショーケースに「眼」を設けることでこれを実現しようとしています。IoT(モノのインターネット)デバイスが、冷蔵ケースのドアが開閉されるたびに庫内を撮影します。AI が内部にある商品を認識し、どれが取り出されたか、あるいは、加えられたかを計算します。また、競合他社の商品が入れられているなどの誤使用があった場合も検知できます。これらすべての情報は、エンドユーザーにリアルタイムで提供されます。

ヤン氏によれば、CPG 企業は可視性の増加により売り上げを30から50パーセント向上できると推定しています。

このスマート冷蔵庫を展開する中で、Clobotics は、店舗内のあらゆる棚を監視するために IoT デバイスを展開するという次の段階に取り組んでいます。この目標が達成され、店舗内のあらゆる商品が認識可能になれば、小売業者とCPG企業にとっての機会は膨大なものになるでしょう。

どの商品が最も速く売れているかを示し、デモグラフィックデータや価格データとの重ね合わせも可能なリアルタイムのヒートマップなど、様々な可能性が提供されます。このシステムは、物理的な店舗における最も基本的でやっかいな問題である品切れを確実に排除してくれるでしょう。

物理世界でデジタル化できる要素を見つけられれば、インテリジェントなコンピューターシステムが提供する恩恵を活用できます。Clobotics は、コンピュータービジョンを使った風力発電と小売の世界でこれを実現しました。CEO のヤン氏は「私たちが提供するテクノロジが世界的に広まっていく」ことを期待しています。

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。

Tags:

関連記事