アジアの成長に AI の潜在力を活用する

Exploring the power and potential of AI to drive progress in Asia

本コンテンツは、以下 Asia News Center のブログの抄訳をベースにしています

アントニー クック (Antony Cook)
Corporate External and Legal Affairs 担当アソシエイトゼネラルカウンセル Microsoft Asia
本記事は LinkedIn に掲載されたものです。

 

革新的なテクノロジによって、かつては常識外れ、もしくは不可能とされていたことが、当たり前のことになり得る世界に私たちは生きています。遠い大陸に旅行し、どこからでも仕事ができ、離れた場所にいる人々とつながり、世界中のニュースにアクセスできます。そして、これらのことを、ほとんど何も考えずに行うことができるのです。

しかし、テクノロジが多くのことを実現してくれた一方で、人類の根本的な課題の多くはまだ解決できていません。気象学や農業に関する知識が大幅に増大したにもかかわらず、農家は、依然として予測不可能な気象変動に悩まされており、収穫の前に作物が全滅してしまうことすらあります。世界中の 10 億人以上の人々(英語)が障碍を抱え、自立や経済的機会へのアクセスを妨げられています。過去四半世紀において、極貧状態で暮らす人々の数は半減しましたが、それでも 8 億人以上の人々(英語)が饑餓と栄養不足に苦しんでいます。

しかし、今や私たちは、これらの問題すら解決可能な段階に来ているのかもしれません。今日、新世代のテクノロジイノベーションが、最も複雑で困難な課題の解決に向けた大きな進化を提供してくれる可能性を開いています。そのプロセスでは、デジタル経済に参画する人々がますます増加し、アジア全域において経済的機会へのアクセスが拡大し、強力な地域社会が築かれていくことになるでしょう。

たとえば、アジア全域で視覚障碍を抱える人々が、標識やメニューを音読し、通貨を識別し、さらには、人の表情を解釈し、周囲の状況を説明してくれる無料アプリである Seeing AI を活用しています。これにより、生活の利便性が大きく向上しました。

インド南東海岸地域のアーンドラ・プラデーシュ州の農家は、数世紀にわたり、これまでの習慣と勘だけで収穫を管理してきましたが、現在、気象データ、リアルタイムの天気情報、高度な予測モデル、そして、テキストメッセージを使って、研究者が農家に種蒔き、施肥、収穫の最適なタイミングを通知する試行プロジェクト(英語)が展開中です。このプロジェクトは、1 年目に近隣の収穫を全滅させた 1 カ月間にわたる飢饉から 175 軒の農家を救い、2 年目には 3,000 軒の農家の収穫高を 30 パーセント向上させました。

そして、中国では、眼球の後方の網膜の高精細イメージを捕獲し、糖尿病、高血圧、動脈硬化、視神経疾患、加齢性黄斑変性症などの疾病を発見できる AI システムが開発されました。この  Airdoc と呼ばれるシステムは、人間の網膜の検査が眼だけではなく、他の疾病の兆候を得るためにも有効であるという事実を活用したものです。

これらのプロジェクトは、いずれも認識、学習、推論、推量が可能な次世代のコンピューターを生み出す機械学習、自然言語理解、オブジェクト認識といった人工知能 (AI) 機能の進化から生まれたものです。AI は既に行き先まで最速の経路を教えてくれたり、顧客が何を購入・視聴したがっているかの予測を支援したり、迷惑メールやマルウェアを検知したりするアプリを実現しています。

これらは明らかに始まりに過ぎません。科学、製薬、教育、農業、運輸における AI のインパクトは、生産性の向上とイノベーションの爆発的な増大が経済成長を推進し、長期的な問題に新たな解決策が提供される未来が約束されています。

経済成長にはどの程度寄与するでしょうか?PwC の最新レポート(英語)によれば、AI は、2030 年までにグローバルの GDP を最大 14 パーセント増加させ、世界経済におよそ 16 兆ドルの貢献をもたらします。アジアはこの増加額の半分以上を占め、中国、日本、韓国、台湾、シンガポール、香港が、AI テクノロジとソリューションの開発に重要な役割を果たしていきます。PwC は、アジアの開発途上国では、今後 12 年間に AI がGDP を 5 パーセント以上増加させると予測しています。

しかし、このような大規模な変化が混乱なしに訪れないことは、歴史が証明しています。今日、世界中の国々が、AI の恩恵を最大限に得つつ、その悪影響を最小化する方法を模索しています。最適な道を見つけることは容易ではありません。今後数年間に、プライバシー、イノベーション、公共安全のバランスを再定義し、AI がもたらす恩恵が広く享受され、誰もがその機会にアクセスできるようにするための方策を取る必要があります。

マイクロソフトは、これらの課題に対する答の追求が「人間中心型」アプローチから始まると考えています。これは、AI を人間の洞察や判断を代替するものではなく、世界をより適切に理解して意思決定を行うよう支援してくれる強力なツールととらえるという考え方です。人間を機械で置き換えるのではなく、人間の創造性を強化し、人々がより戦略的で価値のある作業にフォーカスできるよう、定型的な作業を排除することに機械を用いるべきという考え方です。

信頼も重要です。私たちは今日のテクノロジイノベーションが、世界中の国やコミュニティに広範な恩恵をもたらすことは楽観的に見ていますが、そのような未来は、テクノロジ企業が自社の利益追求だけではなく、人々の生活の向上を目指していると人々が信頼しないかぎり実現されません。

では信頼はどこから生まれるのでしょうか?

プライバシーが人間の基本的権利であることを認識し、マイクロソフトのようなテクノロジ企業が顧客の個人情報を顧客の期待に添う形でのみ使用すべきことを認識することが何よりも重要であると考えます。また、サイバーセキュリティもきわめて重要です。人々のデータとプライバシーを守り、私たちが依存するデジタル基盤を保護することが信頼の構築に不可欠です。

加えて、透明性も重要な要素です。AI が推進する変革の新時代に突入する中、企業は、顧客の情報をどのように活用しているかを明確にするだけでなく、業務の遂行やパートナーとの協業の方法についても透明性を維持しなければなりません。

そして、当然のことですが、AI がもたらす機会からすべての人が恩恵を受けられることも、信頼の構築には不可欠です。これこそが、人間中心型テクノロジの考え方の中核であり、アジアのデジタル経済に参画するために必要なスキルを備えたあらゆる年代の人々を支援するためには広範な努力が必要です。

しかし、今後私たちが直面する課題は、プライベートセクターだけに任せるには重大すぎます。アジア全域の政府機関も、これらのテクノロジの社会と経済への影響を評価し、国家の価値観と伝統を反映した新たな枠組みを作り出し、イノベーションと技術進化を育成する上で重要な役割を果たします。最終的には、政府、産業界、地域社会が協力して、発見と発明を奨励する環境を構築し、その結果がもたらす能力と機会に対する公正で公平なアクセスを提供することで、最善の解決策が得られるでしょう。

この変革を推進するテクノロジ開発のリーダーとして、マイクロソフトは、新たな課題の解決のために、政策決定者、研究者、学術界、ビジネスと市民社会のリーダー、意識の高い市民間の対話を促進する責任があることを認識しています。これらの議論の触媒となるべく、マイクロソフトは、A Cloud for Global Good (英語)そして、The Future Computed: AI and Its Role in Society といった刊行物により、このテクノロジの潜在的影響について議論してきました。

今、私たちは重要な転換点にいます。AI によってアジア、そして、世界中で人々の生活を向上するソリューションを構築する機会は現実のものです。AI があらゆる人々に提供され、破壊的変化によって誰もが恩恵を得られるよう支援するアプローチにより、アジアにおける強力な信頼の基盤を構築していきたいと強く感じています。

 

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