テクノロジとインクルージョンについて語るサーキブ シャイフ : すべての人々に可能性をもたらす AI の未来を造る

Saqib Shaikh on technology and inclusion

障碍者の課題に取り組むことでイノベーションを推進
視覚障碍者向けカメラアプリ Seeing AI の開発者へのインタビュー

ジェフ スペンサー (Geoff Spencer)
Microsoft Asia Writer
30 January, 2019
本コンテンツは、Asia News Center に掲載されたブログの抄訳をベースにしています

 

7 歳の時に視力を失ったサーキブ シャイフ (Saqib Shaikh) は、英国での学生時代にコンピューターに熱中し、今や刺激的なミッションを持つ世界有数のソフトウェアエンジニアになりました。

人工知能 (AI) とインクルーシブ デザインの境界線上で、サーキブは、障碍を持つ世界中の数 100 万人の人々がより多くのことを達成し、テクノロジで強化された生活を送れるよう、インテリジェントな機械達を創ることが出来ると信じています。特別なニーズがある人々の課題を解決することで得られた知見は、社会のあらゆる人々に恩恵をもたらすテクノロジイノベーションの推進にもつながると、サーキブは言います。

サーキブは生涯にわたり、デジタルテクノロジの進化に取り組んできました。視覚障碍者向けの学校で、自立の精神と強い知的好奇心を育み、10 歳の時に初歩的に話すパソコンを手に入れた彼は、プログラミングを学ぶことになりました。大学時代にコンピューターサイエンスへの情熱はますます強まり、様々な課題を乗り越えて、AI に関する修士課程をトップの成績で卒業しました。

サーキブは、十数年前にマイクロソフトに入社し、BingCortana といった多くの人々が日々使用している製品、サービス、アプリの開発支援にエンジニアとしての才能を発揮してきました。

サーキブの最近の目標は、アクセシビリティとインクルージョンの向上です。すなわち、あらゆる人々に公平な機会を提供することです。マイクロソフトの Seeing AI プロジェクトの主要メンバーである彼は、AIによって、視覚障碍を持つ人々が自由に、かつ、自信を持ってより多くのことを達成できるよう支援する方法を研究しています。(App Storeはこちら

彼のチームは、 2017年に スマートフォンのカメラを使って周囲の世界を理解する新たな方法を提供してくれるアプリ、 Seeing AI の提供を開始しました。それ以来、このアプリは、1,000 万件以上の作業で顧客を支援してきました。スマートフォンを差し出すだけで、そこに見えるものを音声にしてくれます。室内でも、路上でも、ショッピングセンターでも、オフィスでも、あらゆる状況で利用可能です。顔認識テクノロジにより、友人や知り合いを認識し、人々の外観、さらには、その気分まで教えてくれます。本、新聞、メニューなどのテキストを音読してくれます。さらには、紙幣を識別(日本円は未対応)することもできます。

現在、ロンドンに住むサーキブは、最近、シンガポールに出張し、テクノロジが自分の可能性を最大化してくれた点、そして、障碍を持つ人々だけでなく、あらゆる人々の生活をより良いものにしてくれる点についての講演を行いましたが、私はその際にサーキブに直接話を聞くことが出来ました。

「多くの問題があります。しかし、どのような問題にも必ず解決策があります」と彼は言います。

Q: マイクロソフトで仕事をしていてどう感じますか??

マイクロソフトに 勤務して13 年になりますが、大変素晴らしい体験の数々です。多くの人々の生活をより良いものにする機会を得ることができました。

Q: あなたの障碍が業務に何か影響を及ぼしたことはありますか?

実の所、あまり気にしたことはありませんでした。幸運なことに、私は、最初の時点から同僚たちからとても強い支援を受けていました。私の目が見えないことはほとんど関係ありませんでした。問題が発生すれば、すぐに解決策が提供されました。

Q: 社内の文化変革、そしてインクルージョンとアクセシビリティへの関係について教えてください。

ここ最近、大きな変化がありました。マイクロソフトの社内には、常にアクセシビリティ関連の技術の開発に情熱を傾ける人々がいましたが、これが、何ら特別なことではなく、通常の開発プロセスの一部になっています。自社の製品が真の意味でインクルーシブになるよう、あらゆる種類の人材を積極的に見つけ出して、採用すべきであるという認識があります。また、Seeing AI が生まれるきっかけともなったハッカソンは、従業員が情熱を傾けて製品の新機能の可能性を生み出す重要な機会になっています。

” 障碍がイノベーションの推進要因になるというのは、なんともわくわくさせられるアイデアです。重大なニーズと重大な問題があるところには、画期的な解決策が生まれる余地があるのです。”

Q: テクノロジとインクルージョンのアンバサダー的役割を担っていることをどのように感じていますか?

そのように大げさに考えたことはありませんが、そのような立場を気に入っています。障碍について、マイクロソフトのお客様に新たな考え方、すなわち、よりインクルーシブになるという考え方が生まれれば、私は幸せです。もし、そのような方向性で人々を触発できるのであればそれは素晴らしいことです。

Q: コンピューターに興味を持ったきっかけを教えてください

10 歳の時に、学校で、話すコンピューターを使う機会がありました。それによって、自分の自立性を高められる点に感銘を受けました。これをきっかけにプログラムを学び、後はご存じの通りです。

現在、その頃の年齢の子供たちを見て感慨深いのは、ほとんどのデバイスにアクセス支援のテクノロジが含まれており、インターネットによって、きわめて多くの情報にアクセスできる点です。

Q: Seeing AI のコンセプトはどこから生まれたのですか?

記憶している限りでは、このアイデアを最初に思いついたのは、15 年前にまだ大学にいる時でした。寮でアイデアの出し合いをしていた時に、「周りにあるものを声で教えてくれるカメラを備えた眼鏡を作ったらどうだろう」と口にしました。

その時は、そのような眼鏡を作ることはできませんでしたが、2014 年に行われたマイクロソフトでの最初のハッカソンにおいて、この古いアイデアを再考したのです。最初のプロトタイプはとても基本的なもので、顔認識と少数のことしかできませんでした。

しかし、その後に Microsoft Research の優秀な科学者の皆さんとの協業を開始しました。ディープラーニングのテクノロジとアルゴリズムは進化を続け、クラウドコンピューティングの利用も可能になりました。最終的に、コンピューターが写真の中で起きていることを説明できる程度の段階まで持ってくることができました。これは、真のブレークスルーです。

技術はさらに進んでいます。私たちはまだ夢を実現できていませんが、近づいてはいます。重要なのはニーズを把握し、ソリューション構築のためのテクノロジを組み合わせることです。

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” もし私が人々を触発し、影響を与えられるのであれば、それは素晴らしいことです。”

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Q: インクルージョンの課題という点ではテクノロジの役割をどのように見ていますか?

私たちの周囲にあるテクノロジを見てみると、多くのものが障碍を持つ人々のために、あるいは、そのような人々に触発されて生まれてきています。電話、話すコンピューター、テキスト読み上げ、音声認識、スキャナー、さらには、タッチスクリーンは、何らかの問題を抱えている人々のために、その問題を解決するために生まれてきたテクノロジです。タッチスクリーンは、元々、反復性ストレス障害を抱える人がタイピングの負担を軽減できるように考案されました。障碍がイノベーションの推進要因になるというのはなんともわくわくさせられるアイデアです。重大なニーズと重大な問題があるところには、画期的な解決策が生まれる余地があるのです。

Q: 未来のテクノロジはどのような姿になっているでしょうか?

私は未来については楽観的です。何年かすれば、私たちはみな独自のAI「パーソナルエージェント」による支援を受けられるようになるでしょう。これは、あたかも肩の上にとまっている友だちが周りを見回して、耳にささやいてくれるようなものです。エージェントは何が重要かを学んでいき、何を告げるべきか、いつ告げるべきか、どのように告げるべきかを理解していきます。

小さなエージェントが周りの世界を感じてくれる。これが、私たちが向かう方向であると感じています。これは、障碍を持つ人々だけのためではありません。センサーとエッジコンピューティングが私たちの周囲の世界を完全に理解してくれるような世界が訪れるでしょう。

※トップ画像 : 最近の Microsoft Asia のシンガポール本社への訪問時に、スマートフォンで Seeing AI アプリのデモを行うサーキブ シャイフ

 

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