次世代のコーダーを育成する – ninja style

(本内容は、2019 年 5 月 15 日に米国で公開されたブログの抄訳をベースにしています)

行進曲「威風堂々」が突然デンバーの道場に響き渡りました。この曲が、いつもコンピュータゲームから流れてくるベル、笛、鐘の音やダンスビートをかき消しています。

「忍者」たちが手を止めました。なぜならこの曲は、彼らの中の誰かが初めて待ち望んでいた黄色いベルトを手に入れた時に流れる曲だったからです。正面には 3 人の先生が笑顔で立っています。11 歳のグレイディ ハーデン (Grady Harden) の名が呼ばれました。グレイディは、今まさに恐竜をテーマとした「走ってジャンプ」という最新のゲーム作品を仕上げたばかりです。

先生はグレイディの頭に黒いはちまきを結び、式典を始めました。そのはちまきには「Code Ninjas」(コード忍者) と書かれています。これは、子どもたちがコーディングと問題解決の方法を学ぶ武道方式のプログラムなのです。次に、先生はグレイディに新しい帯を手渡しました。今回手渡されたベルトは黄色で、RFID 対応のリストバンドです。最後に、歓声が上がりました。

グレイディは「やった」と言ったあと、はちまきに手をやり静かに「これ、取ってもいいですか?」と聞きました。早く次のプログラミング言語である JavaScript に取りかかり、新しいゲームを作りたいのです。ここで他の忍者たちも自分のコンピュータ画面に戻り、ベルや笛の音が再び道場に鳴り響きます。

Code Ninjas sensei Peter Edmonds with Dilan Sikka, 6, and his sister Aashna Sikka, 9.

Code Ninjas (英語) は、全米約 40 州の 116 カ所でフランチャイズ展開しています。7 ~ 14 歳の子どもたちが放課後や週末に各拠点に通ったり、サマーキャンプに参加しています。コーディングカリキュラムを終了すると、白帯から黒帯まで順に階級が上がっていき、Minecraft や Roblox などのプラットフォーム上でビデオゲームが構築できるようになります。

David Graham. (Courtesy of Code Ninjas.)

ヒューストン郊外に住むプログラマーで、Code Ninjas の創業者であるデイビッド グラハム (David Graham) 氏は、「ゲームで遊ぶことは、今でも一番の学習方法です。動物界では遊びながら学んでいますし、それは人間も同じです」と述べています。

3 年前、グラハム氏は息子がテコンドーを習得するのを見ていた時、子ども中心のコーディングレッスンと、古典的な武道を組み合わせようとひらめきました。

「道場で何をするのかは皆すでに知っています。そこで蹴ったり殴ったりするのではなく、キーボードとマウスを用意してみてはどうかと思いついたんです」と、グラハム氏は語ります。

Code Ninjas では、一般的に十代後半の技術に強い先生が、ほうき掃除の代わりに Scratch を教え、ボクシングパンチの代わりにロボット工学を教えています。親にとっても居心地のいい待合室があり、コーヒーや Wi-Fi が提供されています。大きな窓と、生徒である忍者達と先生のみ入室可能と書かれたサインの向こうに道場があり、コンピュータとキーボードの音が鳴り響くスペースが用意されています。まさに、若者向けの開発文化です。

Sensei Sudachom (Wow) Samitthan with Dilan Sikka.

「ここは、子どもたちが自分らしくいられる場所なんです。騒ぎが起こることもありますが、こちらから特に騒ぎを収めようとはしません」とグラハム氏。「子どもたちには、アイデアやコードを共有し、どのように物事を進めているのか話し合うようにと伝えています。いつも開発者が話している会話そのものですね。」

Dad Andrew Stoltzfus with his daughter in a Code Ninjas lobby.

「Code Ninjas には、カリキュラムや製品以上の価値があります。それは体験です。笑顔を家に持ち帰っているのです」と、グラハム氏は付け加えます。

グラハム氏によると、2016 年の Code Ninjas 創設以来、約 1 万 5000 人の生徒がさまざまな場所で道場に通い、1 週間のサマーキャンプでは 1 万 7000 人の子どもたちが学習プログラムに参加しました。参加者のうち、 40% は女の子です。

グラハム氏は、マイクロソフトのツールを使って Code Ninjas のカリキュラムを構築しました。マイクロソフトのスイート製品は、使いやすく長年利用していると同氏は話します。

2000 年に初めて就いた技術系の仕事で、グラハム氏はマイクロソフトが .NET 構想の一環として開発したプログラミング言語である C# のアーリーアダプターとなりました。以来、同氏はずっとマイクロソフトのエコシステムを利用して、開発者としてのキャリアを積み上げてきました。

現在、Code Ninjas の先生は、上位のベルトを目指す子どもたちに C# を教えています。(近い将来、Code Ninjas では 14 歳以上の生徒に向け、新たな上級プログラムを開始する予定です。同プログラムでは、無料のオープンソースウェブフレームワークである ASP.Net を使った開発スキルが学べます。)

忍者たちが使っているパソコンは、すべて Windows 10 デバイスです。また、グラハム氏と同氏のチームでは、Microsoft Azure 上に Web ベースの JavaScript で開発したゲームエンジンを構築し、上位のベルトを持つ忍者が同エンジンを利用して、想像力を駆使したゲームを開発できるようにしています。

Code Ninjas では、すべてのフランチャイズ拠点である道場にて Office 365 を採用しています。利用しているアプリケーションとしては、Microsoft Teams、SharePoint、OneNote、To-Do、Stream などが挙げられます。

「迷いはありませんでした」とグラハム氏は話します。「スタートアップ企業は、これらのツールを使うことで再構築にかける時間や費用、エネルギーを節約できます。そのリソースを、自分たちにとって大切な事業や自社ツールの構築に費やせるのです」

Cole Weaver, 11, ponders the next line of code.

それが最終的に Code Ninjas の安価な授業料につながっています。平均的な月額会員料金は 225 ドルで、この金額で生徒は週に 2 回道場に通うことが可能です。(授業料は場所によって異なります。)

授業料が高すぎると感じる家庭に対しては、Code Ninjas Cares (英語) という非営利団体が参加費用を寄付でまかなうほか、遠方からの参加者には地元のフランチャイズまで送迎も行います。

Logan Xu, 6, wears a white belt — an RFID wristband.

グラハム氏の短期的な目標は、より多くの子どもたちに「21 世紀の能力」とも言われるコーディングの学習機会を提供すると同時に、技術スキルと生活スキルを高める楽しい環境を設計することです。また同氏は、米国の子どもたちが STEM (科学・技術・工学・数学、理系) の学科で世界に遅れを取っていることも指摘しています。

より幅広い観点では、Code Ninjas が「単にテクノロジを消費する側ではなく、テクノロジのクリエイターになる」若者たちの波を作る場になってもらいたいとグラハム氏は考えています。

同じような見解を持つ親や教育者、起業家が Code Ninjas のフランチャイズを新たにオープンするにあたっては、11 万 8640 ドル ~ 38 万 7270 ドル程度の費用がかかるとのことです (フランチャイズ料金は 2 万 9000 ドル)。

今年は新たに 100 以上の Code Ninjas がオープンする予定です。グラハム氏によると、フランチャイズ展開の数はこれまでで合計 460 にのぼるとのことです。

RFID bands, representing belts, are ready for future ninjas.

デンバー東部で、以前はローリー空軍基地だった周辺に、そのフランチャイズのひとつが存在します。そこには 45 人の忍者たちが放課後や土曜日にやって来ます。うち、4 分の 1 は女の子です。3 月にオープンしたばかりの同フランチャイズ拠点では、リサ サミュエルセン (Lisa Samuelsen) 氏とジョン サミュエルセン (John Samuelsen) 氏が共同オーナーを務めています。同センターの開校前、両氏は 9 歳の娘のためにコーディングプログラムを探していたに過ぎませんでした。

「子どもたちが自宅でコーディングできるのはすばらしいことです。ただ、難しいところがあると、ほとんどの子はおじけづいて自分の得意な他のことに注力するようになります」と、リサ サミュエルセン氏は口にします。同氏は、Autodesk のソフトウェアライセンスマネージャーとしての仕事も続    けています。

「ここでは、子どもたちがプロジェクトの完成に向け、一定のコースを進みます。他の忍者が同じコースを進んでいるのを見ているため、本質的に次のレベルに行くためのモチベーションが保てるのです」(リサ サミュエルセン氏)

Logan Xu builds his game.

ある日の午後、白いベルトの子どもたちが親を連れてロビーに入って来ました。10 歳のベン メナード (Ben Menard) もそのひとり。ジョン サミュエルセン氏は親子に挨拶し、子どもたちの RFID リストバンドをスキャンしています。忍者たちがどんどん道場に入っていく中、一部の親はその場を去りますが、ベンの母親であるサマンサ メナード (Samantha Menard) をはじめとする一部の親はその場に残り、ロビーで雑談します。

母親のサマンサ メナードは、「あの子が自分のゲームを作れるなんて、とてもすばらしいと思います。私にもその話をしてくれるんですが、私は『話の内容がさっぱりわからないわ』という状態です」と、笑いながら話します。「いつもあの子の興味をそそるものがないか探しているんですが、これがそのひとつとなるかもしれません」

子どもだけが入室できる部屋では、ベンがすでにカリキュラムベースのゲーム「道場インベーダー」にコードを追加していました。

Grady Harden, in ninja headband, celebrates his yellow belt in Denver. He is flanked, left to right, by senseis Niki Choummanivong, Ryan Achenbach and Yoni Manor. (Courtesy of Lisa Samuelsen.)

ベンは、母親がさらに困ってしまうのも構わず説明を続けます。「このマストが倒れるんだ。僕は忍者と手裏剣のかわりにエイリアンとレーザーを使っているんだよ。マストが地面につく前に全部破壊しなくちゃいけないんだ」

ベンと同じテーブルで向かいに座っているグレイディ ハーデンが、彼の最新ゲームに最後のコードを適用させ、これでカリキュラムの初期段階が終了です。終了に伴って「威風堂々」が流れ、この道場初となる黄いベルトの式典が始まるのです。

ベンはこの喜ばしい瞬間をコンピュータの前から眺め、グレイディに拍手を送ります。

「すごく面白いよ」とベンは言います。「もっといろんなことをやろうって気になるし、白いベルトから上のレベルに進もうって目標も持てるしね」

「このプログラムはすごく楽しくてわくわくするね。とにかく最高だよ」

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