※ 本ブログは、米国時間 11 月 4 日 に公開された ”Experience quantum impact with Azure Quantum” の抄訳です。
量子コンピューティングのコンソーシアム Microsoft Quantum におけるマイクロソフトの目標は、世界で最も拡張性に優れた量子コンピューティングシステムで、今日の最も複雑な課題を解決できるよう支援することにあります。
その目標を達成するために、マイクロソフトは、量子コンピューティングのグローバルなコミュニティと協力し、アプリケーション、ソフトウェア、制御機能、デバイスといったスタックの全域にわたるイノベーションを目指してきました。
- Microsoft Research の暗号学者は、お客様やデータセンターが、量子コンピューターが普及した未来に備えられるよう、量子コンピューターでも解読不能な公開鍵暗号アルゴリズムとプロトコルを開発しています。
- 既に、開発者は、Q# 言語、そして、マイクロソフトが提供するオープンソースの Quantum Development Kit(現在、ダウロード数は 20 万回を超えています)により、量子コンピューターの拡大しつつあるコミュニティに貢献しています。
- 最近になり、University of Sydney 内にあるマイクロソフトの Quantum Lab がキュービットの制御におけるブレークスルーを達成し、従来型システムの物理的制約を超えた拡張性を実現可能にしました。現時点では、3 線式、極低温 CMOS 設計、1平方センチメートルのチップをおよそ絶対零度で稼働させるだけで、最大 50,000 キュービットを制御可能になっています。
これらは、現時点で、マイクロソフトが、量子コンピューターの価値を現実のものにするために全スタックにわたって取り組んでいる研究開発のほんの一例です。本日、マイクロソフトは、量子コンピューターのインパクトを提供する次のステップとして Azure Quantum を発表します。
Azure Quantumによる学習、構築、そして問題解決
Azure Quantum は、世界中の人々と組織に量子コンピューティングの価値を提供するフルスタックのオープンなクラウド上のエコシステムです。1QBit、Honeywell、IonQ、QCI といったパートナー企業と共に、マイクロソフトは Azure 上で、業界で最も多様な量子コンピューティングのソリューション、ソフトウェア、ハードウェアを構築しています。
- 学習: 誰でも Azure Quantum のツールや「量子の”型”」(quantum kata)などのチュートリアルを使って量子コンピューティングについて学ぶことができます。
- 構築: 開発者は、Q# と QDK を使用してプログラムを作成し、シミュレーターや様々な量子ハードウェアを使用してコードを実行し、実験できます。
- 問題解決: お客様は、Azure 上で稼働するマイクロソフトの構築済ソリューションやアルゴリズムを用いてビジネスの複雑な課題を解決できます。
Azure Quantum では 1 つのプログラムで、Azure の従来型コンピュート、量子シミュレーターとリソースエスティメーター、パートナーによる量子ハードウェア、そして、革新的なトポロジカルキュービットで実現されるマイクロソフトの将来の量子システムといった多様なハードウェアに対応できます。量子システムが進化してもプログラムは継続的に使用できます。
量子コンピューティングのインパクトを今すぐに提供
既に、様々な業界のお客様が、Azure で利用可能なツールやサービスを使用したマイクロソフトの量子コンピューティングソリューションのインパクトを体験しています。
Case Western Reserve University はマイクロソフトとの協業により、従来型ハードウェアで稼働する量子ソリューションを利用して、従来型と比較して処理時間を 3 分の 1 に短縮した MRI スキャンを実現しました。この速度向上により、医師は疾病をより迅速に発見し、進行状況が測定困難な症状に向けた新薬を開発し、生検なしに画像検診のみで癌を診断することなどが可能になります。
OTI Lumionics は、次世代の家電で使用可能な OLED 向けの先進的素材を開発しています。これには、ディスプレイ背後のカメラを統合した完全透過型のディスプレイなどがあります。マイクロソフトの量子コンピューティングにヒントを得た Azure 上で稼働するアルゴリズムを使ったアプリケーションにより、開発チームは、OLED の発光材料である Alq3 の挙動を現在一般的な方法と比較してはるかに正確にシミュレートできるようになりました。この量子コンピューティングソリューションにより、開発チームは、高性能のコンピューターや大規模な量子システムを必要とせずにシミュレーションを実行できました。これは、化学物質シミュレーションにおけるマイルストーンであり、より効率的で拡張可能な素材、化学物質、薬品の発見方法へとつながる可能性があります。
また、最近になり、マイクロソフトは、1QBit と IonQ との協業により、Azure Quantum 上でのエンドツーエンドの量子コンピューティングのデモを行ないました。同チームは、Dow との協業により、水素原子の軌道の分子エネルギーの評価が必要な課題の特定を行ないました。1QBit’s の Q# 言語で記述された問題分割ソリューションを活用し、Azure 上で開発チームは IonQ の トラップトイオン型量子コンピューターによって計算を実行できました。この事例は、Azure Quantum が、アプリケーション、アルゴリズム、シミュレーター、ハードウェアといったスタック全域にわたるイノベーションを推進し始めていることを示しています。これらのエンドツーエンドの機能を 1 つのプラットフォームに集約することで、量子コンピューティングのコミュニティは、将来的により大規模に拡張可能な新たなソリューションを開発できるようになるでしょう。
グローバルな量子コンピューティングコミュニティに参加しましょう
今後数カ月間内にプライベートプレビューが提供される Azure Quantum を通じて、開発者の皆様や様々な組織との協業を継続できることを楽しみにしています。是非、初期採用者としてサインアップしてください!
Azure Quantum におけるマイクロソフトの目標は、あらゆる開発者と組織に、量子コンピューティングの革新のあらゆる段階におけるインパクトを今、そして、将来にわたって体験してもらうことです。
Azure Quantum の初期採用者としてサインアップし、今すぐに Quantum Development Kit の使用を始めてください。
また、パートナー、顧客、研究所から成るネットワークである Microsoft Quantum Network への参加を希望される方は是非お申し込みください。
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