Azure Arc: ハイブリッドクラウドに対するマイクロソフトの新たなアプローチ

Azure Arc: ハイブリッドクラウドに対するマイクロソフトの新たなアプローチ

クリス ステットケビック (Chris Stetkiewicz)

※ 本ブログは、米国時間 11 月 4 日 に公開された ”Microsoft’s new approach to hybrid: Azure services when and where customers need them” の抄訳です。

ビジネスコンピューティングのニーズがますます複雑化し、高度化するにつれ、多様な要件に対応するためには複数のシステムが必要であることに多くの企業が気付いています。すなわち、ハイブリッド IT、あるいは、ハイブリッドクラウドと呼ばれる、複数拠点におけるテクノロジ環境の組み合わせが必要なのです。

テクノロジベンダーは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、そして、拡大しつつある「エッジ」コンピューティングといった、多様なサービスとプラットフォームでこの課題に対応してきましたが、これらを適切に組み合わせて使うための一貫した戦略という点では不充分でした。

Hewlett Packard Enterprise の HPE GreenLake 顧客エクスペリエンス担当グローバルバイスプレジデントのエリック ボーゲル (Erik Vogel) 氏は次のように述べています。「私たちは今までその場しのぎの対応しかしてきませんでした。お客様が活用できる戦略モデルを提供できていなかったのです。」

その結果、同じ企業の様々な事業部の責任者が異なる SaaS アプリケーションを採用したり、開発者がアプリケーション開発に Amazon Web Services、Azure、あるいは、Google Cloud Platform を使用したりする事態が生じていました。

フロリダ州オーランドで開催されたイベント Ignite において、マイクロソフトは、このようなクラウドの混乱状態に対応するソリューションを発表し、Amazon や Google などが提供するクラウドやインフラを使用するお客様に Azure のサービスと管理を提供する Azure Arc のプレビュー版の提供を開始しました。

マイクロソフトの Azure Data, Blockchain and Artificial Intelligence 担当ゼネラルマネージャーのジョン チラピュラス (John “JG” Chirapurath) は、この新サービスは、今日の多くの企業が直面する課題を率直に認め、それに対応するものであると述べています。企業は事業の様々な要素を異なるクラウドプラットフォーム上で稼働し、自社内の新規あるいはレガシーのシステム上にも大量のデータを保有しています。

これらのケースでは、お客様は、データがクラウド上にあるか否かにかかわらず Azure のクラウドイノベーションを活用し、セキュリティ保護など、ポートフォリオ全体において同一の Azure の機能を活用できることを望んでいます。

「サービスを Azure から切り離し、自社データセンターや他のクラウドで活用するための機能をお客様に提供します」とチラピュラスは述べています。

Azure Arc は、ハイブリッドクラウドのニーズに対するマイクロソフトの長年の開発努力の成果です。たとえば、2014 年にリリースされた Azure Resource Manager は、企業内や他のクラウド内のサーバーにある Azure 外部のリソースを管理することを目的としていました。

柔軟性の提供により、お客様は、新規ハードウェアを購入したりクラウド事業者を切り替えたりすることなく、自社サービスを多様なクラウド上で効率的に稼働できるようになります。企業は、パブリッククラウドにより社外ベンダーからコンピューティングパワーやデータストレージを取得できますが、重要なアプリケーションや機密性が高いデータを自社内のプライベートクラウドやサーバー上で稼働できます。

さらに、企業とパブリッククラウドの間には、ユーザーのいる場所にデータを保存するエッジコンピューティングもあります。たとえば、ユーザーが使用するモバイルデバイス、病院や工場などのスマートビルディング内のセンサーなどです。

これは、クラウドと安定した接続が行なえないシステム上で AI モデルを稼働する必要がある、あるいは、クラウドと大量のデータをやり取りすることなしに高速な計算を行ないたい企業にとって重要です。しかし、これらのシステムも企業のクラウド上でインターネット接続されたシステムと連携できなければなりません。

Azure 最高技術責任者のマーク ルシノビッチ (Mark Russinovich) は、「エッジ側のお客様は、環境ごとに異なるアプリケーションモデルを使用したいとは考えていません。クラウドとエッジで共通のコードと管理体系を活用できるアプリケーションを必要としています」と述べています。

お客様の IT 基盤を合理化し、標準化することで、複数の運用モデルを管理するための時間をアプリケーションの構築やビジネスへの価値提供に割り当てることができるようになります。そして、Azure によって、システム更新やセキュリティ強化を自動化し、管理やコンプライアンス上のニーズを全社的に統合できることにより、時間と費用をさらに節約することができるようになります。

「要員を他のプロジェクトに割り振ることができるようになり、開発期間を短縮し、タイムツーマーケットを高速化できます」と HPE のボーゲル氏は述べています。HPE は、Azure Arc を補完する製品やサービスでマイクロソフトと協業しています。

Azure Infrastructure 担当ゼネラルマネージャーのアーパン シャー (Arpan Shah) は、Azure Arc により、企業は Azure の 管理ツールを自社内の異なる拠点にあるバーチャルマシン、Kubernetes クラスタ、データに対して活用でき、当局規制、セキュリティ、予算ポリシー、監査ツール等における全社的なコンプライアンス実現に貢献できると述べています。

Azure Arc は、バーチャルマシンコンテナ、そして、コンテナ管理のオープンソースシステム Kubernetes といったお客様が現在使用しているテクノロジに対するマイクロソフトのコミットメントを反映しています。クラウド、エッジ、そして、社内サーバーといったハイブリッド IT 環境においてアプリケーションのクラスタを容易に移動できます。

「お客様は、コンテナを任意の場所に容易に置くことができます。今日はここで動かすが、明日は別の場所で動かすといったことが可能になります」とチラピュラスは述べています。

これらの最新の Azure へのアップデートは、Linux サーバー、Windows サーバー、Kubernetes クラスタ、そして、複数環境にまたがるデータを管理する必要がある今日のお客様の複雑な要件を理解しようとするマイクロソフトの継続的努力を反映したものです。

「今回の発表はこの分野におけるイノベーションの最新の波にすぎません。マイクロソフトは、お客様のニーズをはるかに広くとらえており、お客様が望むアプリケーションとサービスの稼働方法を提供できるよう腐心して参ります」とチラピュラスは述べています。

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