アジア太平洋地域の小売業者がインテリジェントな未来に向け投資 AI の活用は道半ば

(当資料は 2020 年 1 月 14 日に公開したブログの翻訳です)

ビデオおよびセンサー技術に定評のあるシンガポールのスタートアップ企業 Trakomatic は、インテリジェントリテール体験の提供に向け、マイクロソフトアジアの AI ソリューションに投資します。シームレスなオンラインショッピングソリューションと持続可能なビジネス手法に対する消費者ニーズが高まる中、多くの企業が Microsoft Azure をプラットフォームとして選択し、在庫管理を変革して断片的なデータを実用的なインサイトに結びつけようとしています。Trakomatic は、ColesHarvey Norman、EZR といった企業と共に、AI を駆使して同分野のリーダーになろうとしているのです。

マイクロソフトアジアと IDC Asia/Pacific が実施した調査「未来に向けたビジネス : アジア太平洋地域の小売分野と AI の評価[1] によると、AI を採用した小売企業はすでに、顧客エンゲージメント、ビジネスインテリジェンス、利益率、競争力、イノベーションといった分野において 16~19% の改善を実感しているとのことです。同地域の小売企業は、2021 年までに AI によってさらにこうした分野が 37~44% 改善されると見込んでいます。

1「未来に向けたビジネス : アジア太平洋地域の小売分野と AI の評価」について
・ 合計 1605 人のビジネスリーダーと 1585 人の労働者のうち、小売業界から 218 人のビジネスリーダーと 94 人の労働者が同調査に参加しました。
・ ビジネスリーダー : 250 人以上のスタッフを抱える組織のビジネスリーダーおよび IT リーダーを対象としています。回答者は、組織内でビジネス戦略とデジタル戦略に関わる意思決定者です。
・ 労働者 : 最新の AI に関する知識を持ち、組織内で意思決定プロセスには関与していない人を対象としています。
・ アジア太平洋の 15 市場を対象とした調査で、対象国はオーストラリア、中国、香港、インドネシア、インド、日本、韓国、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、スリランカ、台湾、タイ、ベトナムです。

図1 : AI を採用している小売企業は 5 つの分野でメリットを感じており、2021 年までにこれらの分野が最大 2.6 倍 改善されると見込んでいる

「1 兆 5000 億米ドルという電子商取引市場の影響もあり、アジア太平洋地域の小売業者は知識豊富でネットに精通した消費者に迅速に適応しなくてはなりません。消費者はデジタル上でオムニチャネルにおよぶ痕跡を残すため、その痕跡を分析できるのです」と、マイクロソフトアジアで小売および消費財担当の地域ビジネスリードを務めるラジ ラグニーサン (Raj Raguneethan) は述べています。「その痕跡は、購買プロセス全般においてモバイル、アプリ、店舗、デスクトップなど、さまざまなチャネルを組み合わせて利用する消費者が生み出しています」

「競争力を維持するには、インテリジェントリテールが必須となります。インテリジェントリテールは、ビジネスプロセスからオペレーション、顧客体験、さらには提供する製品やサービスに至るまでのすべてに対し、使いやすさ、利便性、カスタマイズ性、自動化を提供するためです」とラグニーサンは続けます。「これを実現するには、デジタル化とビジネストランスフォーメーションの基盤かつ結合組織として、クラウドと AI ツールを利用することです」

オムニチャネルデータの統合で顧客を理解し、小売体験の再考へ

Trakomatic は、Microsoft Azure の AI および顔認識技術を活用し、顧客ロイヤリティプログラムと統合した「カスタマーサービスエコシステム」ソリューションを小売業者に提供しています。同ソリューションは、シンガポール政府のデジタル経済成長戦略の一環である SG:D プログラムに認定されています。

Trakomatic の AI 技術は、モールに入店した重要人物を認識します。認識する人物は、プログラムにオプトインした人たちで、サービスに登録して自分の画像を自ら提供しています。次に、同ソリューションは対象者にパーソナルメッセージを送ります。例えば、スポーツ好きな人に対してトレーニングシューズのお薦め商品を SMS で送り、店舗に来てもらうよう促すのです。店舗に向かう途中も、対象者がモールのデジタルサイネージに近づくとコンテンツを変更し、送信したメッセージの効果を高めます。店舗に到着するとシステムがサービススタッフのデバイスにアラートを送ります。スタッフはお客様に対応し、パーソナルな体験やさらなる割引などを提供します。

Trakomatic の買い物客向けエンゲージメントモジュールは Lenovo Flagship Store で導入され、お客様のニーズに応えています。これにより、現場スタッフはデータやインサイトを駆使してお客様を認識し、予測し、積極的に対応できるのです。

シンガポールの Lenovo 販売代理店である AddOn にてセールスディレクターを務めるコンスタンシャ アン (Constantia Ang) 氏は、「実店舗で優れたカスタマーサービスを提供することは、決して容易なことではありません。お客様は、従来の店舗とデジタル店舗でシームレスなショッピング体験ができることを以前にも増して望んでいるためです。このソリューションにより、ようやくスタッフもより多くの情報に基づいたビジネス上の意思決定ができるようになりました」と述べています。

Trakomatic のツールは顧客体験を向上するだけでなく、マーケティングキャンペーンの効果測定や改善、販売コンバージョン率の確認、買い物かごに入っている平均的な商品数の把握、トラフィックが高まる日や場所の予測などが可能です。

Trakomatic の共同設立者 兼 COO であるショーン クワン (Shaun Kwan) 氏は、「電子商取引が発展していても、消費者は未だ商品に触れたり感じたりしたいと思っています。そこで小売業者は、店舗の設置面積を削減し、オムニチャネルにて消費者を惹きつけると同時に売上も伸ばせるよう、物理店舗とデジタル店舗の融合を目指しているのです」と語ります。「長年にわたり、Trakomatic では買い物客のデータを安全に収集して匿名化する技術を開発してきました。マイクロソフトとのパートナーシップにより、デジタルとオフラインの小売体験を統合する機能の実用化を目指します」

AI の可能性を最大化する機能やインフラの強化

Trakomatic のように、AI の投入が成功戦略につながることは証明されていますが、マイクロソフトアジアと IDC Asia/Pacific の調査では、アジア太平洋地域の小売業界が AI の可能性を最大化するにはまだ多くのことが必要であることも明らかになっています。

  • 小売業者における意思決定者のうち 71% は、この先 3 年間にわたって AI が組織の競争力強化に役立つと考えています。一方、AI に向けた取り組みを始めたのは 33% のみで、小売業界は他業界よりも遅れを取っています。
  • アジア太平洋地域の小売業者は、顧客体験のトランスフォーメーションと、運用効率化やインサイトに向けたデータ活用を優先していますが、多くの企業はうまく AI を実装してビジネスの成長に結びつけるためのインフラや機能がそろっていません (下図 2 参照)。
  • 小売業界の意思決定者は、労働者に再教育の意思があることを過小評価しています (下図 3 参照)。

AI の実現に向け、機能やインフラを変革した小売業者はほかにも存在します。次世代顧客関係管理 (CRM) プラットフォームを提供する中国の EZR です。同社は、ブランドやお客様に関する断片化された情報を、統合商取引プラットフォームにまとめています。Microsoft Azure Machine Learning Service と Microsoft Dynamics 365 を活用することで、EZR では小売業者がお客様のデジタル行動を把握できるようにしているほか、店舗やソーシャルメディアで各お客様に向け適切な対応ができるようにし、購買の決定に至るジャーニーを支援しています。

IDC Asia Pacific の小売インサイトリサーチディレクターである ステファニー クリシュナン (Stephanie Krishnan) 氏は、次のように述べています。「アジア太平洋地域における小売業界は、再考プロセスに入っています。今回のマイクロソフトとの調査では、業界全体で物理的な世界とデジタルの世界が融合する中、この融合によっていかにデータに機会が巡ってくるのか、そしてそのデータがいかに AI と共に責任を持ってインテリジェントに活用されるのか把握できました。新しい年においても、小売業界には引き続き明るい兆しが見えています。小売業者が事業と従業員の可能性を完全に解き放ち、最終的にビジネスの未来を保証するには、AI で実現する機能やインフラへの投資を促進する必要があります」

参考

図 2 : AI の準備体制モデル (アジア太平洋地域の AI 担当リーダーと、小売業界の対比)。今回の調査で対象となった小売業者のスコアは、0.0~4.0 の数値で表示されている
図 3 : 意思決定者が労働者の再教育に向けた意思を過小評価

 

お客様の声

「オーストラリアの小売業者として 105 年の歴史を持つ Coles は、お客様の要望に応えようと進化し続けてきました。メルボルンで雑貨のみを扱う店舗から始まりましたが、初のスーパーマーケットへと進化し、今ではお客様のキッチンへと即日配達するようになりました。長年にわたるマイクロソフトとのつき合いで、効率性と変化の速度が高まり、当社の戦略であるスマート販売の中核ができあがったのです」
Coles チーフインフォメーション&デジタルオフィサー ロジャー スニゼク (Roger Sniezek) 氏

「デジタルで接続された世界では特に、お客様が総合的に意思決定できなくてはなりません。当社製品の品揃えを決める際も、常にデジタルで接続された世界を意識していますし、今ではこの世界を前提として、お客様がオンラインとオフラインのチャネルをシームレスに行き来できるよう取り組みを進めています。シンクロナイズドショッピングは、私たちがこの”コネクテッドライフ”の中で正しい方向に進む際の大きな一歩となるのです」
Harvey Norman. 最高経営責任者 ケイティ ページ (Katie Page) 氏

「中国の電子商取引業界は巨大で、小売業者のお客様データはさまざまなソースやプラットフォーム、ウェブサイト上に、オンラインであってもオフラインであっても断片化されて広がるでしょう。EZR ではマイクロソフトと密接に連携しており、小売業者がソースを結合し、ユーザーのプロフィールを分析し、販売予測を提供し、Power BI で見た目も美しくして予測を提示し、マネージャーが重要な決定を下せるよう支援します」
EZR 最高経営責任者 ジエ ミン (Jie Min) 氏

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