Microsoft Connected Vehicle Platform に関するトレンドと投資分野について

※ このブログは、米国時間 2月 11 日 に公開された ”Microsoft Connected Vehicle Platform: trends and investment areas” の抄訳です

2020 年 2 月 11 日
タラ プラクリヤ (Tara Prakriya) Azure Mobility、Microsoft Connected Vehicle Platform、Azure Maps 担当ゼネラルマネージャー

過去 1 年間はいろんな意味でさまざまな出来事が起こりました。マイクロソフトでは、Volkswagen、LG Electronics、Faurecia、TomTom といった企業とのパートナーシップを強化し、CES などのイベントにて新たな構想を発表しました。今年 1 月に開催された CES では、車載コンピューティングとソフトウェアアーキテクチャへのアプローチを表明しています。

今後は、これまで関連があるとされていた領域が、より明確になるでしょう。そのような領域をサポートする技術が展開され、さまざまな業界の方向性が成熟していくためです。この業界とその周辺で何が起こっているのか、また今後の方向性について把握しておきましょう。

このブログでは、コネクテッドカーとスマートシティに関するトレンドについて語り、これらの領域にマイクロソフトがどう関わり、どう貢献するのかについて説明します。

トレンド

Mobility as a Service (モビリティ アズ サービス: MaaS)

MaaS (TaaS:トランスポーテーション アズ ア サービスと呼ばれることもあります) は、人が商品やサービスを手に入れ、その商品やサービスを人に届けることです。配車サービスやライドシェアが思い浮かびますが、他にも航空タクシーや自動ドローン、ラストマイル配送サービスなど、さまざまな形式の MaaS が存在します。私たちは通常、人やモノを移動させるには、自家用車やライドシェア、配車サービス、自動タクシー、自転車シェアやバイクシェアサービスなどを組み合わせ、陸路や海路、空路で輸送するものだと考えます (これが「マルチモーダルルーティング」と呼ばれるものです)。こうしたさまざまな交通手段をつなげるサービスこそ、ユーザーが MaaS を自然に受け入れるための鍵となります。

マイクロソフトは Ford と協力し、量子アルゴリズムで都市の交通渋滞を改善し、よりバランスのとれたルーティングシステムを開発できないか模索しています。また、TomTom とも強固なパートナーシップを結び、交通量を基にしたルート提案に取り組んでいるほか、AccuWeather とは天気の現状や天気予報が把握できるよう協力し、運転中に発生する天候現象への意識を高めてもらおうとしています。2020 年はこうしたルーティングの手法を統合し、Azure Maps サービスや API の一部として利用できるようにする予定です。モビリティは、さまざまな交通手段や、ピックアップする場所の検索、自宅や職場からの行程計画、その途中で用事を済ますといったことを含め、日々の体験によって構成されるため、Azure Maps ではモビリティのジャーニーをクラウド API や iOS および Android の SDK と結びつけ、アプリ内のモビリティとマッピング体験を提供しています。コネクテッドカーのアーキテクチャとフェデレーションユーザー認証との統合や、Microsoft Graph との統合、さらには車載に対するセキュアプロビジョニングと組み合わせることで、デジタルアシスタントがモビリティをエンドツーエンドでサポートします。商品の移動や小売配送システムにも同様のテクノロジが利用可能です。

収益増に向けた圧力により、MaaS プロバイダーの変化や統合が進み、自動運転などによってコスト削減する手法にも引き続き注目が集まるでしょう。自家用車の所有率が減少傾向にある中、既存の OEM 企業が事業拡大してカーシェアの要素を組み入れ、ビジネスを継続的に進化させている動きも見られます。

車のクラウド化に向けて

車に対して (交通量、天気、利用可能な手段、地方自治体のインフラといった) ルーティング情報を提供するシグナルのことを、総合的に「ナビゲーションインテリジェンス」と呼びます。このナビゲーションインテリジェンスを活用するには、コネクテッドカーでテレマティクスをクラウドに記録するだけでなく、より高度な機能が必要となります。

基本的な (車からクラウドへの) テレマティクスのレポートはたいしたことではありません。無線 (OTA: over-the-air、またはクラウドから車への) アップデートと、(スマートフォンアプリを介したクラウドから車へのより高度な) コマンド アンド コントロール (指令) が、市場競争力の高い車を提供する鍵となります。先進的な自動車メーカーが、何が可能になるのか示した功績は大きいといえます。また、こうしたメーカーのおかげで消費者は、車の購入後に新機能が登場することは、単に素晴らしいだけはなく普通のことなのだと考えるようにもなりました。

今後のステップとしては、車内外のエクスペリエンスを融合した音声アシスタントを車内インフォテインメント (IVI) と統合することが挙げられます。このほかにも、自動運転レベル 1~5 の市販車の AI モデルをアップデートすることや、エッジにてテレメトリを前処理し、クラウド上でより良い強化学習を実現すること、さらには単純にサービスを向上させることなども予定されています。

クラウドから車載やスマートフォンに価値を提供

コネクテッドカーの進化が進み、そこから得られる体験がスマートフォンで想定される体験と重なるようになれば、これらをどうやって適切に連携すればいいのかという疑問が湧いてきます。車載 IVI システムの企画もひとつの方法として考えられますが、多くの人はスマートフォンがなくても車ですばらしい体験がしたいと考えています。

一方で、特定のケースにおいてはスマートフォンが「車」の優れた代替品となることも事実です。自転車共有サービスで速度や場所、その他さまざまな調査データを提供したり、車内の低電力電子機器と接続できるようにしたり (さらには関連コストを補助したり) といったこともその一例といえるでしょう。

ここで 5G についても話しておきましょう。5G がもたらす機会は、業界全体への波及効果が見込まれます。5G が重要な基盤となって、スマートデバイスやスマートマシン、スマートなモノが次々と誕生します。こうして誕生したものは、「常時接続」状態でなくても、高感度センサー技術やデータ分析、さらには機械学習アルゴリズムを利用して、話したり、聞いたり、見たり、感じたり、行動したりできるようになるのです。これがインテリジェントエッジと呼ばれるものです。マイクロソフトでは、クラウドパートナーを通じてセキュリティや開発者の体験に注力し、5G をエッジで実現することを戦略として掲げています。

System of Systems アプローチによる最適化

モノをクラウドに接続し、データをクラウドに投入し、クラウドベースの分析で得た知見を再度モノに反映することにより、ある分野で最適化できたことを別の分野にも当てはめることが可能です。これがデジタルトランスフォーメーションの本質です。車で HD マップ改善のために収集した高解像度画像は、自治体にメンテナンスの課題を知らせることにも活用できます。事故情報と車載のテレマティクスデータを組み合わせることで、(運転行動によって保険料が決まる) PHYD 型の保険プランが最適化できるほか、初期対応者を準備して事故対応時間を短縮させることも可能です。

電気自動車が普及すれば、充電ステーションの需要も高まります。電気自動車の車載ナビゲーションの仕組みは、ルート上にある既存の充電ステーションの知識のみに基づいています。こうした充電ステーションでの現在の待ち時間や予測される待ち時間は考慮されていません。それが、過去の利用パターンや個別の充電ステーションにおける現在の利用データも活用した上でルートが提案され、充電ステーションに到着したものの 3 台の車が行列していたという状況を避けられるとしたらどうでしょうか。20 分間の充電のために 60 分間停止するよりは、地図上は走行距離が長くなったとしても別ルートの方がいいこともあるのです。

送電網や交通量のパターン、車種、事故データなどを結びつけることで、こうした状況が把握できるようになります。このシステム連携による機会の大きさは計り知れません。同時に、プライバシーやコンプライアンス、セキュリティを維持しつつ、相互接続や情報共有を促進するような形でシステムを連携させることへの課題も非常に大きなものです。

法律、政策、倫理を考える

過去数年間にわたるデータ侵害や選挙問題は、目前にあるセキュリティの脅威が常に進化しているという証です。こうした環境では、ビジネスを行う上での基本的なコストとして継続的にセキュリティに投資するプラットフォームが必要となります。

テクノロジの設計や実装にあたっては、パフォーマンスやスケーラビリティなどの目標と同様に、法律、規制順守、そして倫理を考慮しなければなりません。スマートシティ構想は、まさにこうした課題に正面から立ち向かうことにほかなりません。この構想では、人やモノ、車の動きを可視化することが、スマートシティにおける生活の質の向上を最適化する鍵となるためです。

現在、ルートは交通状況によって提案されていますが、それでも結構「わがまま」で、「私たち」のためのルートというより「私」のためのルートとなっています。さまざまな都市が、交通状況を整備するための支援を待ち望んでいます。中でも、どんな車が走行しているのか (貨物輸送か乗客輸送か)、スポーツイベントが開催される予定はあるのか、道路閉鎖はないか、天候はどうかといったように、より深い知見を考慮して交通状況が整備できるのであればなおさらです。

スマートシティ構想とは、地域のインフラと環境を認識した上でこのような状況を実現することなのです。

そこでマイクロソフトでは、Open Mobility Foundation に参画することになりました。このほかにも、スタンフォード大学の Digital Cities Program や、Smart Transportation Council、エネルギー節約連盟である 50×50 Transportation Initiative、そして World Business Council for Sustainable Development に加盟しています。

Microsoft Connected Vehicle Platform (MCVP) と業界全体におよぶパートナーエコシステムにより、マイクロソフトは顧客対応ソリューションが構築可能な一貫した幅広いプラットフォームを提供します。MCVP によってモビリティ企業は、車載プロビジョニングや双方向ネットワーク接続、コンテナ化された機能の継続的無線アップデートといったデジタルサービスを迅速に提供できるようになります。MCVP は、コマンド アンド コントロールや、テレマティクスに対するホットパス / ウォームパス / コールドパス、さらには顧客と第三者を見極める拡張フックへのサポートを提供します。MCVP は Azure 上に構築されていることから、非常に拡張性が高く、グローバルでの高可用性を維持できるほか、Azure の一部となっている規制順守にも対応しています。OEM や車載オペレーターは、一歩先に進む手段として MCVP を活用し、差別化されていないインフラにリソースを費やす代わりにお客様に目を向けています。

自動車業界のイノベーション

マイクロソフトでは、特に Azure IoT 組織内ではさらに、さまざまな業界で行われているトランスフォーメーション業務の最前線に立っており、センサーを使用してデータを収集し、インサイトを得てより良い意思決定に結びつけています。多くの業界で、収束的に相互利益に結びつく方向に向かっている状況をうれしく思います。マイクロソフトのサンジェイ ラビ (Sanjay Ravi) も、ブログで自動車業界の観点から自身の考えを語っています。

マイクロソフトのお客様やパートナーエコシステムも、業界全体で圧倒的な牽引力を示していることがわかります。

Volkswagen Automotive Cloud は、自動車業界最大級の専用クラウドで、未来のあらゆるデジタルサービスやモビリティサービスを同グループの全車両に提供する予定です。毎年 500 万台以上の Volkswagen 関連ブランドの車が、マイクロソフトの Azure クラウドとエッジプラットフォームに完全に接続されることが見込まれています。Automotive Cloud は、Volkswagen グループの全ブランドやモデルに順次展開される予定です。

Cerence は、マイクロソフトと共同で Cerence Drive 製品と MCVP の統合に取り組んでいます。この新たな統合は、音声対応プラットフォームとオペレーティングシステムの相互運用性によって車に優れたユーザー体験を届けようとする Cerence の取り組みの一環です。MCVP でコネクテッドカーソリューションを開発する自動車メーカーは、Cerence の業界をリードする会話形 AI の恩恵を享受でき、結果シームレスな音声対応型のコネクテッド体験をドライバーに提供できるようになります。

Ericsson は、180 カ国にて 400 万台以上の車を接続している同社の Connected Vehicle Cloud を MCVP と統合し、マイクロソフトのクラウドや AI、IoT 技術によって安全で快適かつパーソナライズされたコネクテッドドライブ体験を迅速に提供しようとしています。

LG Electronics は、マイクロソフトと共に自動車インフォテインメントシステムを開発しており、管理システムの構築やその他のビジネスコラボレーションにも取り組んでいます。LG は Microsoft Azure クラウドサービスおよび AI サービスと、MCVP の一部として提供されている車内ランタイム環境の Automotive Intelligent Edge を駆使し、同社の BtoB ビジネスの成長エンジンをデジタルトランスフォーメーションさせようとしています。

グローバルテクノロジ企業の ZF Friedrichshafen は、ソフトウェア型モビリティソリューションを提供する企業への変革を目指しています。同社のソリューションは、Azure クラウドサービスと開発ツールを駆使し、開発の迅速化やコネクテッドカー機能の検証をグローバルレベルで推進するものです。

Faurecia はマイクロソフトと協力し、快適さや健全性、インフォテインメント性を向上するサービスの開発を目指しているほか、自宅やオフィスから車までデジタル化された状態を維持するサービスの開発にも取り組んでいます。CES にて Faurecia は、運転席を統合することで Microsoft Teams のビデオ会議が可能になる様子を披露しました。また Faurecia は、Microsoft Connected Vehicle Platform によって外出先でもゲームがプレイできるというビジョンを紹介。これには、マイクロソフトの新 Project xCloud ストリーミングゲームのプレビューを活用しました。

Bell は、操縦者が航空機を 360 度見渡せるデジタルモビリティプラットフォームの AerOS を披露しました。AerOS は人工知能や IoT などの技術を駆使し、フリートマスタースケジュール機能やリアルタイムでの航空機モニタリングといった強力な機能を提供、Bell のモビリティ アズ ア サービス (MaaS) 体験を強化します。Bell は、Microsoft Azure をテクノロジ基盤として選択し、航空隊情報の管理や航空機の健全性監視、商品や予測データ、メンテナンスなどの処理量を管理しています。

Luxoft はマイクロソフトとの協力関係を拡大し、コネクテッドカーソリューションやモビリティエクスペリエンスの提供を加速させようとしています。MCVP を活用することで、Luxoft は車載中心ソリューションを実現し、提供までの時間が短縮できます。同ソリューションにより、自動車メーカーは高度な車載診断やリモートアクセス、リモート修理、予防保守といったユニークな機能が提供できるようになります。また、実際の使用状況データを収集することで、車載エンジニアリングをサポートし、製造品質の向上が見込めます。

マイクロソフトは、コネクテッドカーの世界に関わることをうれしく感じています。MCVP と、われわれのエコシステムパートナー、そして車載 OEM 企業および自動車技術サプライヤーをはじめとする主要な自動車企業とのパートナーシップにより、マイクロソフトは自動車業界やスマートシティ、スマートインフラ、さらには保険や運輸を含むさまざまな関連分野に対し、次のイノベーションの波を世界規模でもたらすユニークな機能を持った製品群が提供できるのです。

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