Microsoft Healthcare Bot で新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) との戦いに挑む国際医療機関

※このブログは、米国時間  4 月 8 日に公開された ”How international health care organizations are using bots to help fight COVID-19” の抄訳です。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) によるパンデミックが数ヶ月前よりヨーロッパ全体に広がり始め、Emergency Medical Services Copenhagen 宛の通話が瞬く間に急増しました。

Emergency Medical Services Copenhagen は、デンマークの人口約 3 分の 1 に救急医療を提供する組織です。同組織では、アウトブレイクの兆しとともに緊急通報への電話の数が約 2 倍になったといいます。3 月初旬には、COVID-19 の症状があったり、病気に関して質問したい人など、不安を感じている人たちから、1 日に約 2000 件もの電話がかかってくるようになりました。

同組織では、新たなコールセンターを開設して問い合わせに対応しましたが、それでもまだ十分ではありませんでした。

Emergency Medical Services Copenhagen の最高経営責任者で医師のフレディ リッパート (Freddy Lippert) 氏は、「多くの人が同じような一般的な質問をしていることに気づきました」と語ります。「バーチャルアシスタントが、スタッフの負荷を軽減できる素晴らしい選択肢に思えました。コールセンターよりも大量に処理ができますし、症状チェッカーを使って、医療スタッフと同じ医療手順に沿ってリスクの高い患者を特定することも可能です。こうすれば、治療が必要な人を人間の担当者にスムーズに引き継ぐことができます」

 Emergency Medical Services Copenhagen は、現在、ヨーロッパをはじめ世界各国の医療機関のように、Microsoft Healthcare Bot サービスを使って、COVID-19 感染の可能性があるかどうかのスクリーニングと治療を支援しています。Microsoft Azure をベースとした同サービスは、人工知能 (AI) と自然言語処理技術を駆使し、組織で独自のボットを作成できるようになっています。ボットのデータは、ボットを作成した組織が所有し、その組織のみアクセス可能です。このボットが問い合わせに対応することで、医師や看護師、その他の医療従事者の負担が軽減され、治療を必要とする重篤な患者の手当ができるようになります。

Microsoft Healthcare Bot サービスは、1 年以上前から医療機関で使われており、本来は一般的なバーチャルヘルスアシスタントとして対応できるよう設計されたものでした。それが、COVID-19 の大流行によって世界中の医療システムを圧倒する脅威にさらされる中で、米国、ヨーロッパ、中東の組織が、COVID-19 に感染した疑いのある患者をスクリーニングするツールとして使うようになったのです。

3 月以降、Microsoft Healthcare Bot サービスをベースに医療機関が作成した COVID-19 症状に関する自己評価ボットは 1,230 件にのぼり、1,800 万人とやりとりし、 1 億 6000 万件以上のメッセージに配信しています。

マイクロソフトヘルスケア担当グループマネージャーで、Microsoft Healthcare Bot チームの責任者であるハダス ビットラン (Hadas Bitran) は、「新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中で医療システムや医療スタッフに対する需要がこれまでにないほど高まっています」と話します。

「ボットを使えば、患者からの問い合わせに対応し、COVID-19感染の症状が出ている場合は次に何をすればいいのか情報を提供できるので、医療機関へのプレッシャーを軽減することが可能です」

Emergency Medical Services Copenhagen では、3 月中旬に Microsoft Healthcare Bot サービスを利用した独自の COVID-19 ボットを、わずか 2 日足らずで作成しリリースしました。リッパート氏によると、同ボットは初日に 3 万件の電話に対応し、デンマークの救急通報への問い合わせ数の減少と医療従事者に対する需要緩和につながったといいます。

「ボットを利用した人にとって素晴らしいサービスとなりました。私たち医師も、ボットのおかげで本当に助けが必要な患者に対応できるようになりました」とリッパート氏。「効果はすぐに実感できました」

同ボットは大成功とみなされ、全国に展開されるようになりました。デンマーク地域のプレジデントを務めるステファニー ロース (Stephanie Lose) 氏は、同ツールによって全国の緊急回線の負担が軽減され、最も助けを必要とする通報者がより迅速に支援を受けられるようになると語ります。

「COVID-19 の感染拡大という危機的状況において、ひとつの地域から全国にソリューションがうまく展開できたことを誇りに思います」と、ロース氏は述べています。

 イタリアは、早期から今回のパンデミックの影響を受け、その打撃も特に大きかった国ですが、同国でも独自の COVID-19 ボットを用意しています。ローマのスパランツァーニ病院 (Spallanzani Hospital) は、1 月下旬にヨーロッパで最初に確認されたコロナウイルスの症例 2 件の治療にあたった病院です。同病院では、症例数の増加に伴い急速に高まった情報への要求に対応するため、マイクロソフトのソリューションを使ってボットを数時間で構築しました。

同病院で IT マネージャーを務めるガブリエーレ リノナポリ (Gabriele Rinonapoli) 氏は、現在イタリアでは未だ「極度の医療危機」に対応することに注力しているものの、今後数ヶ月でボットは慢性的な症状を持つ患者の治療を管理するために使われるようになるだろうとしています。

「ボットによって市民が情報を入手しやすくなります」とリノナポリ氏は語ります。「緊急管理には情報の標準化が不可欠です。それが不要に医療機関を訪れる人を減らし、広報部門の負担軽減にもつながります。また、質問表への回答を分析することで、新たな研究を発展させる興味深いデータベースができるかもしれません」

リノナポリ氏は、ボットが医療機関で幅広く使われることで、データを収集してさまざまな病気への理解を深め、先見的な医療対策の開発につながる可能性があると見ています。

「すべての医療機関にこのようなツールが提供されれば、リアルタイムで現実的なデータがより簡単に収集できるようになるでしょう」とリノナポリ氏は述べています。

 フィンランドのヘルシンキ大学病院は、Microsoft Healthcare Bot で独自の Coronabot を作成しました。Coronabot は、症状や、コロナウイルス感染者と接触や交流した可能性などを確認し、治療に向けた情報を提供します。また、不安に対応できるような情報やエクササイズに関する情報のほか、病院の精神科医が作成したコンテンツも用意しています。

人口約 550 万人というフィンランドで作られた Coronabot は、3 月 16 日にリリースされました。4 月上旬までに 7 万 3000 人以上が利用し、150 万件以上のメッセージログが残っています。これにより、医療従事者は病気の患者に集中でき、フィンランドでの検査レベルが高まり感染者が増加した場合に備えることができます。

ヘルシンキ大学病院の開発ディレクターであるビザ ホンカネン (Visa Honkanen) 氏は、「このように前例がない状況においては、正しい情報を提供し、その情報をオープンにして一般に広めることが非常に重要です」と話します。「ここでは幸いにも、間違った情報を流すと難しい立場に追いやられる文化があります。ボットは、一般市民に情報を伝える上でとても重要な役割を果たしました」

同病院では、他にもボットの活用方法がないか模索中です。例えば、予定している治療について患者と積極的にコミュニケーションしたり、処置に関する情報を提供したりする場合にも使えるのではないかと検討しています。

「ボットのおかげでチームのリソースに余裕ができ、コロナウイルス危機への対応に集中できるようになりました」と、ホンカネン氏は述べています。

マイクロソフトのソリューションは、イスラエル最大の救急治療施設であるテルアビブ ソウラスキー メディカルセンター (Tel Aviv Sourasky Medical Center) でも使われています。同施設では、Corey という名の COVID-19 ボット を 1 日足らずで作成しました。同ボットは、3 月下旬の運用初日に数千件の問い合わせを受け、これまでに 3 万人以上から寄せられた 41 万 2000 件のメッセージを処理しています。

 同センターの最高経営責任者であるロニー ガムズ (Ronni Gamzu) 氏は、「医療ケアシステムの負荷を軽減でき、医療スタッフが患者を治療する時間も増やすことができました」と話します。

「ボットの導入には技術専門家が必要ないことを他の組織に伝えたいですね。とても簡単で迅速に導入でき、直感的に操作できます」

マイクロソフトは、各医療機関が独自の Healthcare Bot を構築できるよう、世界中の医療組織と協力し、医療システムがパンデミックに対応できるよう支援することに注力しています。

「マイクロソフトでは、医療組織が Microsoft Healthcare Bot サービスをベースとして迅速に COVID-19 自己評価ボットをコミュニティや患者に提供できるよう支援しています」と、ビットランは語ります。「テクノロジ企業として重要なのは、この世界的な健康危機に患者や臨床チームが立ち向かえるようなソリューションを提供することです」

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