量子コンピューターの開発者が解決不可能な問題解決に貢献

※ このブログは、米国時間 5 月 19 日 に公開された ”Do you want to become a quantum developer and help solve the unsolvable?” の抄訳です。

多くの開発者にとって、量子コンピューティングは依然として未来のテクノロジであり、理解不能なものとして避けられたり、逆に非現実的な期待が寄せられたりしています。今までは宇宙の歴史に相当する時間を要していた計算問題を解決するのは 1 と 0 の神秘的なダンスです。これは、箱の中で生きているか死んでいるかわかならないシュレディンガーの猫にも多少関係しています。

開発者の方から最もよく聞かれる質問は、量子コンピューティングの何が現実なのか、そして、手始めに何をすればよいのかということです。

昨年、マイクロソフトは、量子コンピューティングのパイオニア的開発者と協業し、あらゆる開発者にとって何がスケーラブルな量子コンピューティングに必要なのかを理解しようとしてきました。また、量子コンピューティングが今日のビジネスにどのような影響を与えるかをより深く知りたい、という声もいただきました。量子コンピューティングのコーディングを容易に始める方法を知りたい、量子コンピューターだけではなく従来型ハードウェア上でもアプリケーションを実行したい、という声もいただいています。

このような声に応え、マイクロソフトは、Build 2020 において、量子コンピューティングに向けた取り組みにおいて開発者を支援するための新サービス Azure Quantumを 発表します。

プレビュー提供が開始された Azure Quantum で 20 年間の研究の成果を活用してください

Azure Quantum は、量子コンピューティングに向けて各自が独自の道を進んで行けるような自由度を提供するワンストップショップのサービスです。なじみのある Azure 開発環境により、スキルを迅速に獲得し、将来に備えながら、今日でも活用できるあらゆるツールやリソースにアクセスできます。特定のお客様とパートナーの皆様に向けて Azure Quantum をプレビューとして提供できることを大変うれしく思っています。

開発者の皆様は Azure Quantum の各階層に取り込まれたおよそ 20 年にわたる量子コンピューティングの研究成果を活用できます。

  • オープンなエコシステム: マイクロソフト、そして、1QBit、Honeywell、IonQ、QCI といったパートナー企業の多様な量子ソフトウェア、ハードウェア、ソリューションにアクセス可能になります。
  • 信頼でき、スケーラブルで、安全なプラットフォーム: 変化する量子コンピューティングの未来に適切に追随できます。
  • 量子コンピューティングの価値を今享受可能: 従来型コンピューターで稼働する構築済ソリューション(量子着想ソリューションと呼びます)が提供されます。

マイクロソフトは、ユーザーが直ちに取り組みを開始できるよう、量子コンピューティングに関する長年の研究成果を柔軟なクラウドサービスへと転換するという困難な作業を完了しました。量子コンピューティングに着想を得たソリューションを考案し、量子コンピューターでの実行に向けた開発を行い、将来のスケーラブルな量子コンピューティングへの準備を進めていきましょう。

ビジネスが直面する最適化問題を Azure Quantum で解決

長い赤信号で止まり、やっと青信号になり動き出したと思うと、また次の信号が赤になるような経験を誰もしたことがあるでしょう。交通信号機のタイミングを最適化できれば、停止中の車の数を減少し、ドライブの体験を快適にし、交通渋滞を緩和し、最終的には炭素排出量を削減できます。

Microsoft Quantum Network のメンバー企業である株式会社 Jij とその顧客、豊田通商株式会社は、Azure Quantum のプレビュー版を活用してこの交通信号機問題の解決に取り組んできました。量子着想最適化 (QIO) (quantum-inspired optimization) を活用し、同社のチームは従来型の最適化方式と比較して車両の待ち時間を 20 パーセント削減することができました。

Jij diagram

「以前は、適切な結果を得るために各信号機に対する車の流れをシミュレートする必要がありました。しかし、このアプローチでは複数の信号機間の車の流れの影響を含めることができませんでした。今では、Azure Quantum により、この問題に対してよりシステム的にアプローチできます。豊田通商様との協業により、大規模な交通ネットワークの信号機タイミングを改良し、多くの都市において経済と環境面での成果を上げたいと考えています。」(株式会社 Jij CTO 西村 光嗣)

OTI Lumionics は、Azure Quantum プレビューを使用して、次世代の家電製品向け有機素材のシミュレーションの作業を継続しています。量子コンピューティングに適した最適化により、OLED ディスプレイで使用される有機金属錯体の一例である Ir (ppy) 3 の電子構造をシミュレートすることができました。

OTI diagram

「このサイズの有機金属錯体のシミュレーションには、エラー訂正付き全結合 56 量子ビットを備えた量子コンピューターが必要ですが、今日そのようなマシンはありません。しかし、Azure Quantum により、当社の iQCC 量子アルゴリズムを使用して錯体のシミュレーションを今行えるようになり、量子コンピューティングの手法を活用した、新しい素材、化学物質、薬剤の設計に向けて進むことができるようになりました。」OTI Lumionics プレジデント兼 CEO マイケル へランダー (Michael Helander)

量子コンピューティングの開発を今始めましょう

Azure Quantum による困難な課題への挑戦を支援するために、無料のオンライン研修プラットフォーム Microsoft Learn 上で 2 つの新しいモジュールが提供されます。また、今後、開発者向けバーチャルワークショップも開催します。

  1. 量子着想最適化を学ぶ。今日のあらゆる業界が直面する最適化問題、そして、Azure Quantum のソリューションによる現時点の解決策について学びましょう。<LINK>
  2. Q# 言語と Quantum Development Kit に量子コンピューターのコードを作成する。ハードウェアや物理学について気にすることなく、初めての量子プログラムの作成方法を学びましょう。Visual Studio、VS Code、Python といった既になじみのあるツールを使うことができます。 <LINK>
  3. Azure Quantum Developer Workshop に参加登録する。7 月 16 日に開催される開発者向けバーチャルワークショップに参加しましょう。Azure Quantum によるアプリケーション構築についてより深く学ぶことができます。 <LINK>

量子コンピューターにより、解決不可能な問題の解決に貢献できます。量子コンピューティングの真の意味のインパクトをもたらすのは、人のレイヤー、すなわち、開発者のコミュニティに他なりません。

Build で皆様にお会いできるのがとても楽しみです。

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