※ 本ブログは、米国時間 7 月 8 日に公開された “The future of work—the good, the challenging & the unknown” の抄訳です。
過去 4 カ月に、仕事のあり方は激変しました。しかし、この変化は永遠に続くのでしょうか? 第 2 回目となるマイクロソフトの「Work Trend Index 調査」では、3 つの情報源をベースにこの問題を追究します。3 つの情報源とは、マイクロソフトのお客様のツール活用状況、6 カ国の 2,000 人以上のリモートワーカーに対する Harris Poll のサーベイ結果 (注1)、そして、サーベイ、インタビュー、記録調査、フォーカスグループ、脳の研究等を通じたマイクロソフト社内の 30 以上の研究プロジェクトです。
この調査における目標はリモートワークの良い点と課題の両方を明らかにすることで、適切な領域の製品開発を推進し、仕事が将来的にどのように変化するかを予期し、お客様が新しい仕事の世界で発展できるよう支援することです。
データに反映されている母集団は、中小企業および大企業の情報関連の従業員であり、全従業員は含んでいません。以下に重要な調査結果について述べます。
脳波調査によりリモート会議による疲労が明らかに
リモートワークの問題としてよく論じられる点に、対面型のコラボレーションと比較して負担が大きく、疲労を招くということがあります。マイクロソフトの Human Factors Labs の研究者はこの現象を良く理解しています。リモートワークやビデオ会議は対面型の仕事と比較して脳に与える負担が大きいのでしょうか?脳科学はその答がイエスであることを示唆しています。
リモートのコラボレーションは負担が大きいが、対面型の仕事に戻ることも同様に負担が大きい
人間がテクノロジとどのように相互作用するかを研究している Human Factors Labs にて、科学者たちは、コンピュータの画面を介してリモートで共同作業をする際に、対面で行う場合と比較して、脳がどのように反応するかを明らかにするための実験を実施しました。この研究は、マイクロソフトのリモートワークの体験に関する継続的な研究の一環として、COVID-19 の前から実施していました。この研究では、2 人から成る 13 のチームに、類似の作業を対面型とリモートとで行なわせました。研究対象者は脳波の変化を検出するための EEG デバイスを装着されました。この研究により、リモートのコラボレーションは対面型のコラボレーションよりも精神的負担が大きいことが明らかになりました。具体的に言えば、ストレスや過労に関連した脳波パターンは、対面の時よりもリモートの時の方がはるかに顕著だったのです。しかし、想定外の発見もありました。チームが最初にリモートで作業すると、後で対面型作業に戻ることがより困難になることが脳波の調査によって判明したのです。対面で作業した時の社交的つながりや作業戦略はリモートに移行しても引き継がれるように思われますが、その逆は当てはまりません。この調査は 2 つの重要な教訓を与えてくれました。すなわち、リモートワークへの移行が進む世界において、リモートのコラボレーションによる人々の精神的負担が大きくなっているということ、そして、COVID-19 が沈静化した後に人々が対面型の仕事に戻っても、パンデミック以前よりも仕事の負担が大きくなる可能性があるということです。
ビデオ会議は疲労につながる
2 番目の発見として、過労やストレスを示す脳波が、メールなどの作業と比較してビデオ会議において特に顕著だったということがあります。さらに、集中力の持続により会議開始後の 30 から 40 分後から疲労が見られるようになります。ビデオ会議が連続する日では朝から約 2 時間でストレスの兆候が見られるようになります。調査結果は、このような会議疲れにつながるいくつかの要因を示唆しています。すなわち、必要な情報を得るために画面に継続的に集中すること、会議の雰囲気や誰が次に話すかを知るための非言語的なヒントが減少すること、そして、やり取りをしている参加者があまり見えない状態で画面を共有することです。
この問題を軽減するために、マイクロソフトは、脳を休息させるために 2 時間おきに定期的な休憩を取り、会議時間を 30 分以内に抑え、可能であれば長い会議には小休憩を設けることを推奨します。
テクノロジによってこれらの課題に対応するために、本日、マイクロソフトは、働く人々の結び付きを強めると共に会議の負担を軽減できるよう、Teams に複数の機能強化を行ないました。その代表的なものの 2 つが、Togetherモードとダイナミックビューです。
Together モードは Teams における新たな会議体験のオプションであり、AI セグメンテーションテクノロジにより参加者を共通の背景上に置いてくれます。これにより、会議や授業で同じ部屋にいるかのような感覚が得られ、個々の背景に注意を奪われることが減り、非言語的な合図に気付くことが容易になり、会話への参加がより自然になります。このモードは、ブレーンストーミングやラウンドテーブルのような、複数の人々が話す会議に最適です。バイオセンサーを使用して脳活動を測定した研究 (注 2) では、グリッドビューと比較して、Together モードを使用して会議を行なった場合の方が脳の負担が小さいことが判明しています。これは、Together モードが、一部のリモートワーカーが経験している会議疲れを軽減してくれる可能性があることを示唆しています。
ダイナミックビュー – Teams 会議の従来型ビューにも、会議をより魅力的にするために一連の強化が行なわれました。AI の活用により、共有コンテンツと参加者の表示がダイナミックに最適化されます。新しいコントロール機能により、自分の嗜好とニーズに合うようにビューをパーソナライズできます。たとえば、共有コンテンツと参加者を横並びで表示することも、参加者の表示を増やすために共有コンテンツを最小化することもできます。
他の調査結果
パンデミックが仕事のあり方に影響を及ぼす
9 時から 5 時までの勤務時間が消滅する可能性
未来の仕事でも物理的オフィスはなくならない
パンデミックが仕事のあり方に影響を及ぼす
今回の調査で全体的に言える点として、現在の独特な状況が仕事と生活の融合を加速している兆候が一貫して見られるということがあります。これにより、職場のカルチャーは永遠に変わるかもしれません。
親である調査対象者の半数以上 (54 パーセント) がリモートワークにおいて家事と仕事のバランスを取るのが困難であったと述べています。この傾向は、ミレニアル世代において最も顕著で、ワークフォースへの新たな参入者であるジェネレーション Z においても同様です。これは、これらの人々がフルタイムの仕事をしながら、小さな子供を育てている、あるいは、ルームメイトと仕事場所を共有している可能性が高いためと考えられます。
「家族 4 人が在宅している現状では自分の場所を見付けるのが困難です。」– インフォメーションワーカー
子育てとリモートワークのバランスの課題が一時的なものである一方で、それが同僚に対する考え方を長期的に変えてしまう可能性もあります。調査対象の 62 パーセントが家での暮らしの理解が進んだため、同僚に対して思いやりの気持ちを持てるようになったと回答しています。この感情は、中国とメキシコにおいて特に顕著であり、それぞれ、91 パーセント、65 パーセントの回答者が、思いやりの気持ちが増したと回答しています。
「在宅勤務のライフスタイルは受け入れられています。私の会社では、日中でも子供の世話をしてもよく、仕事の時間を後回しにしても良いとされています。子育ての大変さを理解してもらったことに安堵しています。」- インフォメーションワーカー
リモートワークへの移行により仕事への参加意識が高まるケースも見られます。調査対象の半数以上 (52 パーセント) がすべての人が同じバーチャルルームにいることでリモート参加者としての意識が高まったと回答しています。このような感情は、中国 (65 パーセント) およびドイツ (65 パーセント) においてより顕著です。また、会議中のチャットが、人々が意見を交換するためのチャネルになる傾向も見られます。具体的には、Teams 会議中のチャットメッセージ数は 3 月 1 日から 6 月 1 日までの間に 10 倍以上増加しました。
「今までは在宅の参加者は目に見えませんでした。しかし、もはやそうではありません。」– インフォメーションワーカー
9 時から 5 時までの勤務時間が消滅する可能性
マイクロソフトによる前回のレポートで示されたように、3 月 1 日から 31 日にかけて、お客様の Teams の使用開始時間と終了時間の平均間隔は 1 時間以上長くなりました。本レポートでは、この点をさらに追究します。すなわち、週 5 日、9 時から 5 時までの勤務形態は消滅するのかという点です。データは肯定的です。Teams では人々が、朝や夜に、さらには、週末にも働くケースが増えています。一般的な勤務時間外の午前 8 時から 9時および午後 6 時 から 8 時 には、Teams のチャットが他のどの時間帯よりも多く15 パーセントから 23 パーセント増加しています。週末の仕事量も増加しており、土曜日と日曜日の Teams のチャットは 200 パーセント以上増加しています。
「より柔軟な勤務時間で働ければ、生産性を向上できます。何の躊躇もなく休憩を取ることもできます。」– インフォメーションワーカー
「私の勤務時間は長くなります。これが現実です。今やキッチンにもラップトップがあり人々が最新情報を求めてきます。」– インフォメーションワーカー
この新たな環境で、お客様が適切に時間を管理できるよう支援するために、マイクロソフトは Teams にフォーカスステータスなどの機能を提供し、仕事に集中したい時間帯をカレンダーに設定し、チームに知らせることをできるようにしています。また、集中時間と集中曜日を設定し、Teams から通知が来ないようにすることもできます。今後数週間内に、マイクロソフトは、Teams に Reflect メッセージング拡張をリリースします。これにより、マネージャーはワークライフバランスなどのトピックに関する質問を容易にチームに投げかけられるようになります。多様なトピックに対応してカスタマイズ可能なチェックイン時の質問により、チームメンバーの精神的な健康状態を把握できるようになります。回答はチーム内で公開することも匿名にすることもできます。
マイクロソフトは、この仕事と生活の融合は長期的動向であり、そこで生じる課題の一部をテクノロジが解決できる可能性があると考えています。組織的分析、そして、従業員の健康維持の領域で、マイクロソフトはイノベーションを継続していきます。
未来の仕事においても物理的オフィスはなくならない
過去 4 カ月間に、世界中の多くの人が少なくとも一部の時間をリモートワークで勤務しました。この新たな現実に慣れ親しんでいく中で、多くの人が未来の仕事では物理的オフィスがなくなるのではないかと思ったでしょう。マイクロソフトの調査では、未来の仕事は対面型とリモートが混在したものになる可能性が高いことが示されています。
たとえば、調査対象のマネージャーの 82 パーセントがパンデミック後にはより柔軟なリモートワークのポリシーを策定すると述べています。より広範には、従業員とマネージャーの 71 パーセントが少なくとも勤務時間の一部でリモートワークを継続したいと述べています。フォーカスグループにおいても同様の意見が聞かれています。
「過去においては、上司から部下が見えていない時は、部下は仕事をしていないことを意味していました。しかし今は、仕事が完了するのであれば、部下がどこにいようが関係ありません。」– ビジネスデシジョンメーカー
とは言え、本調査では、リモートワークに関するいくつかの問題も明らかになりました。調査対象の約 60 パーセントが、リモートワークを頻繁に行なうようになってから同僚との連帯感が薄れたと回答しています。中国では、この数字は 70 パーセントに跳ね上がります。
さらに、ある調査 (注3) では、専用のホームオフィスを使用できる人は回答者の 35 パーセントに過ぎませんでした。今回の Harris Poll の調査では、1 人で住んでいる回答者は 5 パーセントに過ぎませんでした。ゆえに、今回の調査全体を通じて、集中力の阻害要因、ネットワークの問題、人間工学的に優れた環境の欠如が、リモートワークの課題として挙げられていることは驚くに当たりません。これは、未来の仕事が今まで以上にリモートワークに依存したものになる一方で、ネットワーク環境が充実し、人間工学的に優れ、社交関係やチームの絆を維持する機会を提供してくれる、物理的なオフィスも重要な要素であり続けることを示しています。
「在宅勤務の場合には、キッチンテーブルで仕事をしています。オフィスであれば、キーボードと 2 台のディスプレイ、そして、快適な椅子が使用できます。」– インフォメーションワーカー
「複数の人が在宅勤務を行なうと無線 LAN の問題が発生します。」– インフォメーションワーカー
最後に
結局のところ、リモートワークへのグローバルなシフトは未来のワークフォースにとって機会と課題の両方をもたらします。良い面について言えば、家族と共に家から仕事や勉強を行なうというユニークな状況は、チームメンバー間の思いやり、そして、仕事はリモートでも可能であるというマネージャーと従業員による認識を強めます。また、リモートワーカーの参加意識も高まります。
一方、リモートワークにより、勤務時間の長期化、会議疲れ、そして、チームの絆を強めてくれる廊下での雑談などの機会の欠如といった課題もあります。そして、家の中に、ネットワーク環境が充実し、落ち着ける場所がなければ生産性が低下する可能性があります。
マイクロソフトは、お客様が課題に対応すると共に機会を最大化できるよう様々な支援を提供できるユニークなポジションにいます。仕事の環境の変化に合わせて、マイクロソフトのツールも進化していきます。そして、変化が加速する未だかつてない状況においても、マイクロソフトは、地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにするというミッションを追求していきます。
マイクロソフトはプライバシーを最重要事項ととらえています。レポートの作成に使用するデータからは、すべてのパーソナルデータや組織を識別するデータ (企業名等) を削除しています。E メール、チャット、文書、会議などの、お客様のコンテンツを調査に使用することはありません。マイクロソフトの目標は、Microsoft Graph から収集したデータに基づきワークプレースに関する広範なトレンドを発見し、共有することにあります。
注1: マイクロソフトのスポンサーによる Harris Poll Survey は、2020 年 5 月 26 日から 30 日までの間、米国、英国、ドイツ、イタリア、メキシコ、中国で、現在リモートワークを行なっている 18 歳以上の成人 2,285 人に対して行なわれました。
注2: 2020 年 6 月にマイクロソフトが行なった、生理的信号センサー (EEG) による人間の脳活動の調査であり、Microsoft Teams の 2 つの会議ビューである Together モードとグリッドビューの比較が行われた。画像は、調査対象者の平均的な脳活動を示している。色は、脳波により生成されたエネルギー量を示している。
注3: マイクロソフトによる継続中の調査のスクリーニングプロセスにおいて、フルタイム勤務のインフォメーションワーカー (N=570) の 35.3 パーセントが専用のホームオフィスを所有していることが判明。
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