人種的不当行為に立ち向かう

CEO のサティア ナデラ (Satya Nadella) からマイクロソフト社員に向けたメールより

※本ブログは、米国時間 6 月 23 日に公開された “Addressing racial injustice” の抄訳です。

先月 Employee Town Hall にて触れた内容でもお伝えしましたが、マイクロソフトは人種的不当行為や不平等に対して真摯に向き合っており、“Black lives matter” の確固たる信念を持っています。この件についてマイクロソフトでは、以下のような行動を起こしています。

シニアリーダーシップチームと取締役会、そして私は、過去数週間にわたり、マイクロソフト社内とコミュニティ双方での変化を促すにあたり、企業としての役割、そして私たち全員が一体となって果たすべき役割は何なのか考え、耳を傾け、学び、議論してきました。その中で、黒人およびアフリカ系アメリカ人のコミュニティに所属する社員やリーダーから数多くの意見を聞くことができました。その意見を参考に、マイクロソフトでの実体験を改善し、生活や仕事の場とするコミュニティでの変化を促すことにつながる行動を展開してきました。

本日、マイクロソフトは米国の黒人およびアフリカ系アメリカ人コミュニティにおける人種的不当行為や不平等に対し、真摯に向き合い対処することを表明します。また、今後 5 年間で全社的に、ヒスパニックやラテン系コミュニティも含めた他のコミュニティのニーズに対応する重要な措置も講じていきます。複数年にわたって継続的に注力する内容は、以下の 3 点です。

  • インクルージョンの文化を促進します。過去 5 年間のダイバーシティ&インクルージョン (D&I: 多様性と包括性) に向けたモメンタムを基盤とし、新たに D&I の活動に対して 1 億 5000 万ドルを追加投資するほか、米国において黒人およびアフリカ系アメリカ人のマネージャーや個人貢献度の高い上級社員、そしてシニアリーダーの数を 2025 年までに倍増させます。
  • エコシステムへの関与を高めます。バランスシートを使い、サプライヤーやパートナーをつなぎ、エコシステム全体の社会的変化に向けたビジョンを拡大し、サプライヤーやパートナーのその先にいるコミュニティに対しても新たな機会を創造します。
  • コミュニティを強化します。マイクロソフトのデータやテクノロジ、パートナーシップの力をそれぞれ活用し、米国全土の黒人およびアフリカ系アメリカ人の生活改善を支援します。これには、社員に対する安全と福祉に向けた取り組みも含まれます。

上記を実現するにあたって鍵となるのは以下のとおりです。

マイクロソフトの文化

社員全員がインクルージョンの文化を最優先事項と捉えているか、社内で確認しておく必要があります。まず、マイクロソフトでは敬意 (Respect)、誠実さ (Integrity)、説明責任 (Accountability) を重視しています。1 人ひとりが多様なチームで成功していかなくてはなりませんし、すべてのマネージャーにはさまざまな経歴を持つ社員を惹きつけ、維持し、成長させることが求められます。これは、マイクロソフト社内はもちろん、より幅広い分野にも言えることで、世界中のさまざまな業種において優れたマネージャーでいるための新たな基準となります。

この新たな目標を達成するために、主に以下の 3 つの取り組みを進めます。

  1. インクルージョンに向けてさらなる投資を行い、文化の変革を促進します。インクルージョン文化の構築について深く理解し、真摯に取り組むマネージャーが、マイクロソフトの成功の鍵を握ることになります。2021 年度より、職場での同盟関係や、カバーリング (自己防衛)、特権 (Privilege) についてのトレーニングを全社員に受けてもらいます。黒人およびアフリカ系アメリカ人コミュニティの体験を理解する新たなコンテンツも用意しています。職場の雰囲気を決めるのはリーダーであることから、コーポレートバイスプレジデント (CVP) およびエグゼクティブバイスプレジデント (EVP) にはライブセッションを義務化し、こうした特定のコミュニティにおける実体験への理解を深めます。
  2. 計画的なキャリアプランニングと能力開発に向けた取り組みを強化します。まずは黒人およびアフリカ系アメリカ人の社員から開始し、全社員に適用していきます。このプログラムは、学びと成長に合わせて他の社員グループにも拡大していきます。また、一部の黒人およびアフリカ系アメリカ人の中堅社員やそのマネージャーには、リーダーシップ開発プログラムを拡大し、ディレクターやプリンシパルへの昇格に備えてもらいます。ディレクターやプリンシパルには新たな人材開発の機会を設け、パートナーやゼネラルマネージャー (GM) レベルで期待されるリーダーシップについて理解してもらい、シニアレベルのスポンサーやメンターとのマッチングを実施します。パートナーや GM に対しては、専用のリーダーシップ開発プログラムへの投資を継続します。
  3. 発信力を高める取り組みの進捗状況について、企業としての説明責任を強化します。各 CVP や GM の評価 (Impact) や報酬、そして昇進を検討する際は、彼らの D&I に向けた取り組みの進捗状況を評価するという指標を強化します。CVP には専任の D&I コーチを用意し、組織内で障壁となる体系的な課題に立ち向かい、解決できるようになってもらいます。グローバルでの四半期ごとの昇進プロセスを拡大し、すべての役職で多様なリーダーシップチームを構築していきます。これには、管理職、ディレクターやプリンシパル、パートナーや GM といった役職の全候補者をレビューするビジネスリーダーとの直接的な関係も含まれます。

マイクロソフトのエコシステム

マイクロソフトには、サプライチェーンからパートナーコミュニティに至るまで、幅広いビジネスエコシステムが存在します。より強力で生産性の高いエコシステムを構築するには、私たちのコミュニティが多様性に満ちていることを発信していく必要があると感じています。そこで、この取り組みにおいて、サプライチェーンや銀行パートナー、さらには幅広いパートナーエコシステムとの連携を進化させていく予定です。

  1. マイクロソフトは今後 3 年間で、黒人およびアフリカ系アメリカ人が運営する認定サプライヤーの数を倍増させると共に、こうした既存および新規サプライヤーに対し 5 億ドルの追加投資を実施します。この目標に向け、すべての提案依頼書にさまざまな少数民族が運営するサプライヤーを含めるという既存のガイダンスをしっかり浸透させ、サプライヤーのポートフォリオ構成を査定し、サプライヤーの評価と選定プロセスにおいて (経営者と従業員双方の) 多様性をより重視するようにします。また、マイクロソフトの間接費の 50% 以上を占める上位 100 社のサプライヤーに対し、今後当社の提案依頼書の評価に組み入れることになる多様性統計情報 (従業員の多様性や目標など) の年次開示を求め、黒人およびアフリカ系アメリカ人の存在を高めるよう促します。
  2. 我々の金融部門に対するニーズを活用し、黒人およびアフリカ系アメリカ人が運営する金融機関とのポートフォリオ投資活動を拡大します。今後 3 年間で、黒人およびアフリカ系アメリカ人が運営する銀行や、現在強力な金融取引のある外部マネージャーとの取引量の割合を倍増させてこの基盤を拡大し、こうした企業がより多くの資本を集められるようにします。また、少数民族が運営する預託機関 (MDI: Minority Owned Depository Institution) を対象に初期投資を行う 1 億ドルのプログラムを、連邦預金保険公社 (FDIC) と協力して用意します。これにより、(企業やレストラン、住宅などの) 地域社会により多くの資金が直接行きわたるようになります。さらに、黒人およびアフリカ系アメリカ人が運営する小規模企業の支援を目的とした 5000 万ドルの投資ファンドを設立します。同ファンドではまず、資本を手に入れやすくすることや、スキル開発の向上、現在存在する技術格差をなくすことなどを目的とした投資に注力します。
  3. 事業の成長にとってパートナー企業がどれほど重要か、私たちはよく理解しています。今後 3 年間で、米国のパートナーコミュニティにおける黒人およびアフリカ系アメリカ人が運営するパートナーの数を 20% 増やすことを目的とした投資を行う予定です。新たな 5000 万ドルのパートナーファンドでは、資本が入手しやすくなり、こうしたパートナーのスタートアップ段階をサポートする融資となります。この融資は、パートナーの事業成長に伴い時間をかけて回収していきます。既存および新規パートナーに対しては 2000 万ドルの融資を提供し、キャッシュフローのニーズに対応します。また、財務管理や技術ソリューション、市場進出の準備に向けたトレーニングプログラムにも 300 万ドルを追加投資します。

マイクロソフトのコミュニティ

どんな企業であっても 1 社だけで世界を変えることはできません。それでもマイクロソフトは、データやテクノロジ、パートナーシップの力を駆使することで、全米の黒人およびアフリカ系アメリカ人の市民生活向上に貢献できると信じています。これこそマイクロソフトが真摯に取り組んでいることで、以下の 4 分野がそれにあたります。

  1. マイクロソフトでは、5 年間にわたる 5000 万ドルをかけた持続的な取り組みにおいて、現在の司法改革構想を強化し拡大していきます。2017 年に開始したこの取り組みを通じて、この問題が国家のみならず、社員やその家族の個人生活にとっても重要であることがわかってきました。肌の色が原因で警察に止められたり、買い物中にいやがらせを受けたり、学校でいじめられたりすることを恐れながら生活することなどあってはならないのです。この信念の下、マイクロソフトでは社員が生活するコミュニティも含めピュージェット湾および全国に意見を広める活動を行ってきました。マイクロソフトは今後、司法制度の透明性と説明責任の改善に向け、データやデジタルテクノロジーを駆使して基盤を構築していきます。この取り組みはすべて、人種的格差を特定し、警察活動を改善させるためにデータへのアクセスを増やすという公共政策の提唱によって支えられています。またマイクロソフトでは、自社の技術と専門性を活用し、証拠に基づいた偏見のない転換プログラムを通じて投獄ではなく治療へと導くよう支援します。さらにマイクロソフトは、データを活用して検察官が下す決定事項で人種間の公平性を保てるよう促します。検察官が下す決定事項には、誰を罪で告発するかといったことや、告発の性質、司法取引の申し出、判決の勧告などが含まれます。
  2. マイクロソフトでは、黒人およびアフリカ系アメリカ人の生徒や成人がデジタルエコノミーで成功するために必要なスキルを身につけられるよう、スキルへの取り組みを拡大します。今後 5 年間で 13 の州とコロンビア特別区において、マイクロソフトの TEALS (学校での技術教育とリテラシー) 産業ボランティアプログラムを拡大し、主に黒人およびアフリカ系アメリカ人の生徒が通う新たな 620 高校にてコンピュータサイエンス教育を提供します。また、マイクロソフトは歴史的に黒人の多い大学へのサポートも強化し、コンピュータサイエンスおよびデータサイエンスプログラムや、キャンパスイニシアチブとパートナーシップ、カリキュラム開発などを支援していきます。さらに、求職中の黒人およびアフリカ系アメリカ人に対し、デジタルスキルのトレーニングを提供します。グローバルスキル構想の一環として、有色人種コミュニティによって運営されているか、有色人種コミュニティを対象としているコミュニティベースの非営利団体に 500 万ドルの給付金を現金で提供し、こうした非営利団体がデジタルスキルプログラムをサポートできるようにします。
  3. マイクロソフトは、有色人種コミュニティや有色人種をサポートする主な機関に対し、主要都市部でブロードバンドにアクセスできるよう、またデバイスが手に入りやすくなるよう支援していきます。キャリアや OEM、マイクロソフトのハードウェアチーム、改修業者、非営利団体と連携することでこの支援を実現し、安価な PC やマイクロソフトのソフトウェアを提供して低価格ブロードバンドへのアクセス環境を充実させます。遠隔健康サービスや教育サービスなどに焦点を当て、こうしたサービスが有効に使われ生活の向上につながるよう取り組みます。この取り組みは市民からの支持を得ており、まずは現在最も都市ブロードバンドのギャップに直面している 6 都市に焦点を当てていきます。
  4. 最後に、マイクロソフトは、有色人種によって運営されている非営利団体に向け、テクノロジの支援を拡大します。マイクロソフトはデジタルトランスフォーメーションによって非営利団体がより効果を高められるよう支援します。対象団体に Azure および Dynamics のクレジットと助成金を提供し、必要な IT スタッフを追加してテクノロジを展開し最大限活用できるようにします。マイクロソフト社員の知識と専門知識を活用し、より強力に支援できる効果的なグループを見つけ出す予定です。

変化は内部を見ることから始まります。つまり、マイクロソフト自身の変化が求められているのです。社員はリーダーに変化してもらいたいと考えていますし、お客様やパートナーはマイクロソフトに変化してもらいたいと考えています。世界がこの変化を求めているのです。

これは一度で終わるような活動ではなく、今後も真の努力と集中が求められることです。マイクロソフトは耳を傾け、学んでいきます。フィードバックによって調整も行っていきます。そしてなにより、私たちひとりひとりが真摯な取り組みを進め、変化を促進し、意思を持って行動することから始まるのです。

サティア

マイクロソフトのダイバーシティ&インクルージョンに向けた継続的な取り組みについては、2019 D&I Report をご覧ください。

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