トヨタ GR Garage から始まる、HoloLens 2 を活用した自動車整備と新型車紹介のニューノーマル

トヨタ自動車株式会社 (以下 トヨタ) は、Mixed Reality (複合現実、以下 MR) デバイスである HoloLens 2 を、自動車の点検・整備の効率化やトレーニング、お客様への新型車紹介等で活用できるよう、全国の GR Garage 57 店舗 (2020 年 12 月時点) に 2020 年 10 月から順次導入を始めています。ネッツトヨタ富山 GR Garage 富山新庄 (以下 GR Garage 富山新庄) の導入事例をご紹介します。

“クルマファンが集い、語らい、一緒になってクルマを楽しむ「町いちばんの楽しいクルマ屋さん」” を目指してトヨタが 2017 年から全国で展開する GR Garage は、クルマのプロである GR コンサルタントがお客様と共に語り、楽しむ場やイベントを提供したり、GR シリーズの試乗車が常設されたりするなど、クルマファンが集まる場所になっています。GR Garage 富山新庄では、10 月下旬に HoloLens 2 を導入し様々な利用方法の検証を始めました。

  • MR を用いた配線図・艤装図で、より効率的で正確な作業を実現

GR Garage 富山新庄では、自動車の部品やコネクタの配置などを 3D で実車に重ね合わせて表示できる「MR を用いた配線図・艤装図」を利用することで、従来の 2D のマニュアルではわかりにくかった部品の位置などを正確に把握しながら点検したり、作業のトレーニングなどに活用したりしています。

ネッツトヨタ富山の整備士 川口 裕功 氏によると、以前は紙のマニュアルを見ながら点検をしていて、手順の少ないものでもマニュアルを 5 ページほどめくっていく必要があり、何かを調べたいときにその項目をマニュアルから探し出すだけでも時間も手間もかかっていたとのこと。マニュアルが入ったノート PC を持ち込んで調べながら作業する場合でも、両手がオイルなどで汚れた状態では PC を触りにくく、手を洗ってから PC で調べ物をするなど効率が悪かったのですが、今回の HoloLens 2 では空間をタッチしてマニュアルの適切な情報を見ながら作業できるようになっています。

「最近のクルマはセンサーなど部品点数が増える傾向にあり、整備士にとって、調べる作業や知識を得ることが非常に重要になっています。HoloLens 2 は直感的な操作で効率的に必要な情報にアクセスできるため、そうした知識の習得に役立ちますし、作業中に実車を見ながら、部品にかぶさる形で配線図・擬装図を表示できるため、非常に効率が良いです。調べる作業を含めると全体で作業時間を 20~30% ほど短縮できると思います。また教育やリクルート面でも期待しています。他店舗の研修などで紹介すると、「やってみたい」、「映画の世界みたいだ」と驚かれます。リクルート活動においても整備士の仕事により興味を持っていただいたり、就職後の不安をやわらげたり、当社を選んでいただくきっかけにもなるのではと思います。」

ネッツトヨタ富山 整備士 川口 裕功 氏

また、本ソリューションの影響は整備の効率化に留まらず、自動車業界の働き方改革にもつながると言います。ネッツトヨタ富山株式会社 取締役 BR 基盤強化本部 BR 戦略・人事・サービス技術 部長 村井 忠嗣 氏は、「これまでは、一部の整備士は理解しているのに、他の整備士やスタッフが理解しきれていないという状況がありましたが、HoloLens 2 を使うことで、技術の標準化、品質の担保ができます。また、今まで散在していた情報や資料が統合され、HoloLens 2 ですぐに確認できるようになることで、整備士や我々の働き方も変わります。もともと自動車業界では残業が課題の 1 つとなっており、現場の生産性向上など、自己努力や工夫で減らしてきてはいるものの、さらにもう 1 段階進めていくためには、今回のようなソリューションが必要になると考えています。」と期待を述べています。

  • 店舗でしか体験できない、リアルな新型車機能解説

GR Garage 富山新庄では、点検整備に加えて、GR Garage を来訪するクルマファンのお客様向けに、MR を活用したリアルな新型車機能解説も提供し始めています。お客様が HoloLens 2 を装着して実車の前に立つと、自動車の複雑な機能や、通常は目には見えない空力の様子などが、3D ホログラムとして車体に重ね合わせて表示され、稼働状態などをアニメーションで確認できます。

村井氏は、「2018 年 2 月に GR Garage 富山新庄をオープンして以来、おかげさまで当店ではお客様と非常に近い関係性を築くことができています。GR Garage では、クルマの機能について高度なご質問をいただくことが多いのですが、お客様にカタログから想像していただくのではなく、こちらで HoloLens 2 を装着いただくことで、実車上にリアルな 3D の解説が現れて、非常にわかりやすく理解いただけます。GR Garage でしかできない体験ですし、「もっとクルマのことを知りたい」というお客様のご要望にもお応えできます。」と語ります。

全国の GR Garage に HoloLens 2 の導入を進めている、トヨタ自動車株式会社 サービス技術部 主幹 栢野 浩一氏は、「GR Garage での HoloLens 2 の導入・活用は、まだ始まったばかりですが、どの店舗に行っても、「楽しみにしていた」とか、「想像以上に役立ちそう」など前向きな声が目立ちます。今後も現場のエンジニアの皆さんの声をよく聴いて、使い勝手や機能の改善、コンテンツの充実など、より良いサービスに進化させていくことで、現場の働き方改革に貢献していきたいと考えています。」と述べています。

GR Garage 富山新庄の取り組みは、「エンジン上に配線図 トヨタが MR デバイス導入」(2020 年 11 月 27 日 日本経済新聞 電子版) に映像が紹介されていますので、是非ご覧ください。

[参考]

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