エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井 達人
日本マイクロソフトは、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ことをミッションに掲げており、金融を含む様々な業界および市場におけるデジタルトランスフォーメーション (DX) の推進を支援しています。特に、多くのお客様が既存のデータをオンプレミス上で管理している反面、DX が進むとクラウドを含む様々な環境で新しいデータが創出されることが予想されるため、マイクロソフトでは異なる環境においてもデータの取り扱いを可能とする包括的な支援を提供しています。
昨今、新型コロナウィルス感染症 (COVID-19) の影響によって、企業の業務形態は一変しました。特に今年は、多くのお客様が DX を推進するために、積極的に組織構造の見直し、社外人材の採用、そしてリーダーの変更などを行っています。金融業界においても、DX およびテクノロジーの活用は急速に進んでおり、ビジネスのあらゆる側面で変化が見受けられます。
例えば、金融機関ではデジタルバンクを含むデータドリブンな顧客対応が増えてきており、今までのようなデータが集約されていない、複数のチャネルを経由した個別のアプローチは減りつつあります。加えて、オムニチャネルで一貫した、没入感のある顧客体験がユーザーから求められるようになりました。これらは、数年前と比べて、モバイル環境の充実などを含むユーザーの利便性が向上したことにより、金融サービスにおいて最新のテクノロジーの利活用が不可欠になったことに起因します。このような現状を受けマイクロソフトは、金融業界のお客様が最新のトレンドに追随し、市場で高い競争力を発揮できるように、信頼性の高いクラウドテクノロジーを提供することを目指しています。
■ 金融機関における DX を推進するためのマイクロソフトの取り組み
近年、テクノロジーの重要性が増している金融業界では、パブリッククラウドを最大限に活用し、ビジネスに俊敏性をもたらす体制作りが、企業の IT 戦略において注目されています。また、新しく生じた業務に合わせて企業が自らプラットフォームを立ち上げるなど、Tech Intensity に沿ったアプローチも多々見受けられるようになりました。このような現状を受けマイクロソフトは、テクノロジーによって金融機関のクラウド活用を促し、お客様と一丸となって DX を実現するため、精力的にソリューションやサービスの開発を進めています。
テクノロジーの提供以外にも、市場への参入を目的とした協業、人材育成、データ活用など、様々な側面から包括的にお客様を支援できることがマイクロソフトの強みです。例えば、今年の 1 月に発表した、FinTech および InsureTech 企業と共に DX に関するプロジェクトを提案する「Microsoft Enterprise Accelerator」や、クラウド活用を加速させる「Financial-grade Cloud Fundamentals」といったアーキテクチャなど、一般的なソリューションやサービス以外にも、様々な取り組みを行っています。また、マイクロソフトは安定性やセキュリティを高いレベルで実現しているパブリッククラウドをお客様に提供しており、今回は金融市場における支援策の詳細とあわせて紹介します。
■ グローバルな金融機関に対する支援策としてモルガン・スタンレー様、AXA 様との DX パートナーシップ事例
マイクロソフトは、グローバル投資銀行であるモルガン・スタンレー様の行内システムのクラウドシフト、および顧客体験の改善に沿ったデジタルサービスをクラウドベースで迅速に開発するための体制作りを支援することを、今年の 6 月に発表しました。巨大企業である同社は、クラウドシフトの対象となるシステムが多岐にわたることもあり、複数の業務領域において、後述するマイクロソフトが開発を続けている金融業界向けクラウド機能「Microsoft Cloud for Financial Services」を活用することを発表しています。
また、マイクロソフトは生命保険やヘルスケア体験などを提供している AXA 様ともパートナーシップを締結しています。同社は、病院の検索や健康維持サービスを実現するためのヘルスケアプラットフォームを、マイクロソフトのヘルスケア業界向けクラウドテクノロジーを活用して、協同で構築することを今年の 4 月に発表しています。
■ 国内金融機関に対する支援策として三菱 UFJ フィナンシャル・グループ様、ジェーシービー様、北國銀行様の DX 推進事例
国内でのマイクロソフトの金融業界における DX 推進活動の一例として、日本最大手の金融機関である三菱UFJ フィナンシャル・グループ様への支援が挙げられます。ここ数年、クラウドテクノロジーを積極的に活用および吟味していた同グループは、今回、グループ全体で利用する共同システム基盤を構成する際に Microsoft Azure を採用することを発表しました。また、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券様のリスク管理システムが 2020 年末にサポート終了を迎えるにあたって、次期システムを Azure に移行しました。
Azure が選択された主な理由として、Azure ハイブリッド特典 (AHB) によるコストメリットなど、システム運用におけるトータルコスト削減の観点で優位性が高かった点が挙げられます。他にも、Windows Server や SQL Server を動かす基盤として親和性が高かったことや、オンプレミス上で実現していたセキュリティレベルの確保、Linux のサポートや仮想ネットワークを含む機能面での充実性なども、採用決定の要因でした。
さらに、クレジット業界のパイオニアであるジェーシービー様も、今年に入って Windows Virtual Desktop (Azure Virtual Desktop) を採用することを発表しています。同社は、2018 年より全社的にイノベーションを推進する統括部を中心に、生産性向上を目的としたリモートワーク環境の導入を検討していました。様々なソリューションの導入を検討した結果、最終的にはマイクロソフトの仮想デスクトップを選択し、全社的に展開することを目指して段階的な導入を開始しています。
ジェーシービー様が Azure を選択した一番の要因としては、最新技術を活用したインフラ構築を、マイクロソフトのコンサルティング部隊が迅速に支援することが可能だったことが挙げられます。実際、コロナ渦の影響により短期間での導入が求められた状況で、9 ヵ月程度のプロジェクト期間でリリースを実現することができました。この他にも、リモートワーク環境を構築するにあたって、マイクロソフトが提供する Microsoft Teams や Microsoft SharePoint などのコミュニケーションツールの導入検討を平行して進められる親和性の高さや、問い合わせ後のレスポンスが非常に早かった点、協力会社側との体制的な連携や相性のレベルの高さなどが評価されました。
また、北國銀行様は今年の 5 月に、国内初となる勘定系 (フルバンキングシステム) のパブリッククラウド環境を Azure 上で構築し、稼働を開始させたことを発表しています。北國銀行様は「次世代版 地域総合会社」を目指して様々な取り組みを進めており、マイクロソフトはクラウドバンキングなどの分野で Azure を含むソリューションを提供することで支援しています。
■ 金融業界を支援するクラウドサービス機能「Microsoft Cloud for Financial Services」
マイクロソフトは今年の 2 月に、Microsoft Cloud for Financial Servicesの開発およびパブリックプレビューの開始について発表しました。こちらは、金融機関の業務を実施する上で必要となる機能を、マイクロソフトがファーストパーティとして、Azure、Dynamics 365、Power Platform などに構築し、提供する金融業界向けクラウドサービス機能です。また、Microsoft Cloud for Financial Services は、単体でお客様に販売するのではなく、パートナー企業様がソリューションの中に組み込み、展開していくことを想定しています。
現在、マイクロソフトでは同サービスについて、お客様に関する様々なデータを統合分析して顧客体験を改善する「統合化された顧客プロファイル」機能、口座開設やローンの申し込みなどを含む銀行への申し込みプロセスを簡略化する「カスタマー オンボーディング」機能、顧客とのコミュニケーションを強化して解約削減を目指す「バンキング カスタマーエンゲージメント」機能、そして自動化などによる融資プロセスの迅速化や顧客体験の向上を促す「ローンマネージャー」機能という、4 つのリテールバンキング向け機能を開発しています。今後も、ホールセールバンキングに関する機能など、他の業務領域を支援する機能を開発していく予定です。
現時点では、Microsoft Cloud for Financial Services は欧米の金融機関などにおいてテスト環境で利用していただいています。今後も、正式版のリリース時期などの情報について、準備が整い次第発表していきます。
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