※本ブログは、アジア太平洋地域時間 4 月 4 日に Microsoft New Zealand News Centre で公開された “Care in the computer: The evolution of Platforms for Good” の抄訳を基に掲載しています。
ニュージーランドには、幸い数多くの社会的支援や支援専門機関が存在します。ただし、その提供方法や対応する人、行き先などを住民が自由に選べるわけではありません。ニュージーランドで革新的なアプリを開発する Platforms for Good は、障碍のある人や高齢者の在宅ケア、長期雇用を実現するコーチング、ティーンエイジャーや若者のメンタルヘルスサポートなど、住民がさまざまなサービスをより簡単に受けられるよう、また選択の幅を広げられるよう取り組んでいます。同社は Microsoft Azure を活用し、何千人もの人たちがいつでもどこでも望ましい形の支援を見つけられるようなプラットフォームを開発、介護者とニュージーランドの人たちを全国規模のデジタルコミュニティでつなぎました。このプラットフォームが今、グローバル展開を進めようとしています。
ニュージーランドでは、日々何千人もの人たちが自宅でサポートワーカーの介護を受けています。特に高齢者や障碍のある人たちは、家事やシャワー、着替えの支援が必要です。ただ、サポートワーカーの担当はたいてい日替わりで割り当てられており、介護に継続性が失われる可能性もあります。知らない人が次々と自宅にやって来て、体に触れるような作業を担当するのですから、調子のいい時でも不安に思うことでしょう。認知症の人であれば、さらに恐怖を感じるのではないでしょうか。
こうした課題に対応しようと 2015 年に設立されたのが Platforms for Good です (当時のブランド名は Mycare でした)。Microsoft Azure 上で構築された Mycare アプリは、希望のサポートワーカーが選べるセルフサービスツールです。これにより、介護担当者と真の関係が構築できます。
同社のチーフプラットフォームオフィサーを務めるデイブ・オードリー (Dave Audley) 氏は、「Airbnb のマーケットプレイスに似ていて、お客様が “ホスト”、つまり介護担当者を選べるようになっています」と説明します。「選択権が与えられたのです。テクノロジを使って公平性の阻害要因となっているものを取り除き、自分で介護の管理をしたり好きな人に介護してもらったりすることができるのです」
Mycare アプリは、ID チェックや介護者の資格情報の確認、保険や税金の支払い管理など、介護する側・される側の双方で管理が可能です。これは Mycare のイノベーションの中でも特に際立っていました。
「業務を請け負う人は自分で税金を管理しなくてはならないのですが、これは低所得の人にとって大変な作業です。そこで内国歳入庁 (IRD) と協力し、支払いごとに納税用の資金を確保するシステムを実現しました。IRD は税金を追徴しなくても済むのでこのシステムを気に入っていますし、労働者側も年度末に多額の請求書を気にしなくてもよくなるため気に入っているようです」と、オードリー氏は話します。
「また当社では、公正な賃金が支払われるべきだと考えており、すべての人に最低賃金が支払われるよう、アプリ内にプロセスを用意しています。これは規定の最低賃金より高く設定されており、一般的な市場価格を上回っています」
わずか 6 年間で 14,000 人以上の労働者がこのアプリを申し込み、北米など、より幅広いグローバル市場からの関心も集まるようになりました。Platforms for Good は驚くほど豊富な知識を構築し、その知識をヘルプセンターとして文書化しました。同プラットフォームは Microsoft Azure を活用して海外にも迅速に展開し、ローカライズすることが可能です。これにより、パートナー各社は強力でインタラクティブなインサイトを利用し、サポートと専門知識を取り込んで短期間で市場に参入できるようになります。
Mycare のチーフエグゼクティブを務めるマット・オーウェン (Matt Owen) 氏は、「約 6 年かけて在宅介護に特化したデジタルプラットフォームを開発し、継続的に改良を加えて介護を受ける人や訪問介護員の生活をよりシンプルにしようと取り組んできました。重要なのはちょっとした細かい部分なんです」と述べています。
こうしてより多くのことを実現し、より多くのことを解決し、より多くの人を助けようとする絶え間ない意欲が、同社の進化につながっているのです。
Te Heke Mai で共に未来を構想
Mycare が Platforms for Good へと進化したきっかけは Te Heke Mai でした。Mycare チームでは、生活保護を受けている人が、長期雇用を得られるよう支援する別のアプリについてブレインストーミングしていたのです。
「調査によると、12〜13 ヶ月間雇用状態にある人は、生活保護に戻る可能性は低いとされています。ただ、家族の事情や健康問題、家庭環境といった他の要因が影響し、仕事を続けられなくなる可能性もあります。当社では、各自が目標に集中できるよう、何が障壁となっているかを特定し、コーチとマッチングさせて雇用を継続できるようなツールを作りたかったのです」とオードリー氏は話します。
そこで同社チームは社会開発省 (MSD) に連絡し、試験計画について担当者に打診しました。Azure で構築するという決断が実際の効果につながったのはこの時でした。
他の省庁と同様、MSD にはデータプライバシーとセキュリティにまつわる厳格な規則と要件がありますが、Azure にはセキュリティとコンプライアンス機能が組み込まれているため、全員のニーズを満たすプラットフォームの設計が容易だったのです。マイクロソフトも Platforms for Good チームに対し、クラウドアーキテクチャやソリューションに関するトレーニングを提供、全員のスキルと能力が最新の状態になるようサポートしました。
「それでも Azure クラウドはセルフサービス型のテクノロジだったので、自社でプラットフォームを設計することができました」とオードリー氏は述べています。
Te Heke Mai (「共に未来を」の意) という新アプリの試験運用は、2019 年初頭にオークランドで始まりました。同プラットフォームは、音声やテキスト、アプリ内メッセージなど複数のコミュニケーション形式をまとめ、いつでも遠隔で指導やサポートが受けられるため、参加者は自分に合った時間や場所、方法で参加できるようになっています。
「当社では、ツールキットを提供し、習慣を変え、コーチングによるサポートを用意して、1 か月や 1 年といった期間だけでなく、生涯にわたってさまざまな人を支え、すべての人の中にある潜在能力を引き出したいと考えています。キャリアだけでなく、人生や幅広い向上心をサポートするような目標設定のテクニックを学べるよう支援したいのです」と、オーウェン氏は説明します。
薬物とアルコールの乱用で何度も運転免許を失効させた若者キャンベルさん (仮名) のような人はたくさんいます。彼は仕事を見つけたいと考えていましたが、自信をなくしていたためそれを克服し、破壊的な習慣ではなく前向きな習慣に集中できるような支援が必要でした。
キャンベルさんは Te Heke Mai でコーチと組んで、自分の成果を認めて自分を褒めることを学びました。また、意識を集中させて感情や行動をコントロールできるようにし、自分の行動に責任を持つことも学びました。その後彼は Class 1 のライセンスを取得。塗装、交通管理、造園などの仕事を請け負うようになり、将来の展望が劇的に改善されました。
このような数々の成功を経て、Te Heke Mai は 2020 年に全国展開する予定でした。そこに新型コロナウイルス感染症が襲いかかったのです。そこで Platforms for Good では、このサービスを MSD の生活保護を受けている人だけでなく、コロナの影響を受けたすべての人にも拡大しようと考えました。
Azure パブリッククラウドのスケーラビリティはほぼ無制限なため、すぐに対応することができました。以来、1,000 人以上の労働者がアプリでサポートを受けています。約 12 か月間安定した仕事に就き、適切なツールによって自力で継続できるとコーチが認めた時点で「卒業」となります。
「Te Heke Mai は、Platforms for Good の社内でも導入しているツールです。毎週社員のウェルビーイングを診断するために使っているんです。当社の自己啓発の中心的なツールとなっており、適切なツールとフレームワークで社員が成長できるようになっています。今では政府機関と民間企業の両方で、Te Heke Mai の機会が広がっていると実感しています」とオードリー氏は説明します。
Te Heke Mai の実績が証明されたことから、Platforms for Good では現在サービスを教育分野や矯正施設、NGO にまで広げようとしています。
Gumboot Friday は「人間の心を持ったテクノロジ」
Mycare と Te Heke Mai が成功したことで、Platforms for Good は Gumboot Friday の理想的なパートナーとなりました。Gumboot Friday は、伝説的なメンタルヘルス活動家であるマイク・キング (Mike King) 氏が率いる活動で、うつ病や不安に苦しむ若者をサポートしています。
Mycare と同様、Platforms for Good のメンタルヘルスプラットフォームは、自分が希望するサポートワーカー、つまりこの場合は資格を持ったカウンセラーのことですが、そのカウンセラーを自分で選択できるようにすることを目的に構築されました。Microsoft Cognitive Services の機能により、若者は自分の地域のカウンセラーを検索してメッセージを送ることが可能です。Azure ベースの自動化ツールでフォローアップやリマインダーを送信するので、システム内で迷子にならないような仕組みになっています。慈善団体 I am Hope のキング氏のチームは、その価値をすぐに見抜いたのです。そこでこの 2 つの組織が協力し、2020 年に Gumboot Friday の公式アプリとオンラインポータルを立ち上げました。
ニュージーランドでは、毎年 120~180 人の若者が自殺で死亡し、推定 3,500 人が自殺未遂に至っていることから、同国で助けを必要とする膨大な数のティーンエイジャーや若者をサポートするメンタルヘルスのリソースが十分とはいえない状況です。Gumboot Friday アプリは、こうした人たちにとって重要なライフラインで、特にカウンセリングやメンタルケアサービスを利用できない地域に住む人には不可欠なものとなっています。
すでに約 900 人のカウンセラーがニュージーランド全域で登録されており、民族や対応言語、性別、オンラインまたは対面でのカウンセリングが可能かどうかなどの条件でカウンセラーを検索できるようになっています。カウンセリング費用はすべて慈善団体が支払います。1 年以上前に同プラットフォームを立ち上げて以来、6,000 人以上の若者が 15,000 回近くのセッションを受けています。
このプラットフォームには、特定の地域、性別、年齢層による使用を見極め、リアルタイムで豊富なインサイトを提供し対策を促す機能が備わっています。この正確なデータとインサイト機能は、政府の政策や資金調達の展開方法の確認にも活用できます。このツールによって、若者は I am Hope のウェブサイト上を数回クリックするだけで直接サポートが受けられるようになりました。これで、重要なサポートを見つける際や、サポートの継続にあたって障壁となっていたかもしれない医師の待合室や難しい対話といった従来の手法が劇的に簡素化されたのです。
マイクロソフト ANZ の Azure ビジネスグループエンジニアリングリードであるパトリック・ケネル (Patrick Quesnel) は、「クラウドで膨大な社会的配当が提供できると言っているのは、まさにこのことです。Platforms for Good のような革新的クラウド開発企業が人々の生活を変えているのですから。同社のイノベーションによって、利用するサービスを自らコントロールして選択できるようになり、目標に対する進捗状況が把握でき、これまでにはできなかったような規模感で新しいサポートコミュニティを探す支援も受けられるようになりました。これは人間の心を持ったテクノロジです」と述べています。
より多くの介護コミュニティを構築
それでも Platforms for Good は、依然としてその名誉に満足してはいません。オーウェン氏は「当社のミッションは、シンプルでアクセスしやすく、世界中のコミュニティに公平なサポートを提供する人間中心のプラットフォームのエコシステムを構築することです。世界をより良くしていきたいのです」と語ります。
またオーウェン氏は、人工知能や音声認識、アクセシビリティ機能、他の言語を話す人に向けた言語機能など、他のマイクロソフトのテクノロジをプラットフォームに取り入れることにも前向きで、こうした機能をあらゆるニュージーランド人やグローバルパートナーが簡単に使えるようにしたいと考えています。
「マイクロソフトのサポートにより、当社では迅速に展開できる拡張性の高いモジュール型プラットフォームを構築できており、高度な分析を提供しつつコミュニティのニーズを中心に考えることができています。当社はまさに『善行につながるプラットフォーム』(platforms for good) を構築しているのです」とオーウェン氏は述べます。
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