2022 年 9 月 20 日｜Windows アクセシビリティリーダー カロリーナ・ヘルナンデス （Carolina Hernandez）
※本ブログは、米国時間 9 月 20 日に公開された ”How inclusion drives innovation in Windows 11” の抄訳を基に掲載しています。
今年初頭に、マイクロソフトは、障碍がある人のために、そして障碍がある人と共に設計された Windows 11 の 4 つの魅力的機能、すなわちシステムに標準のライブ キャプション、フォーカスセッション、音声アクセス、そしてナレーター向けの自然な音声を発表しました。これらの機能が本日から利用可能になることに併せ、Windows エンジニアリングチームのインクルージョンの文化が、より包括的で誰にとっても楽しい Windows 体験の開発に役立ったことをお伝えしたいと思います。その文化には、「人」「プロセス」「志」という 3 つの要素があります。
チームの構成: 支援するコミュニティと同じ多様性
Windows Accessibility チームは障碍に関するモットー「私たちがいないところで、私たちのことを決めないで」(”nothing about us without us”) を徹底しています。私たちそれぞれを支援する製品を作るためには、作り手もユーザーと同じように多様であることが理想的です。Windows 11 のアクセシビリティ体験を開発するチームを立ち上げた時、障碍がある人々を積極的に採用し、それぞれの人の実体験がまさにソリューションの設計をより良い方向へガイドしました。Windows 11 で強化されたナレーターとフォーカス機能を支えた担当者、ジェフ・ビショップ (Jeff Bishop) と アレクシス・ケイン (Alexis Kane) をご紹介しましょう。
ジェフ・ビショップは、Windows に標準的に組み込まれたスクリーンリーダーであるナレーターの開発を推進した製品マネージャーです。ジェフは生まれつき全盲であるため、同じような状況にある人々を支援できる体験を提供することに、自身のキャリアを捧げてきました。そして、この数年、ジェフはナレーターをより使いやすく、より楽しくするための取り組みを先導してきました。ジェフは次のように言います。
ジェフは、自身の生活体験とコミュニティからのフィードバックを基に、ナレーターに新しい自然な響きをもたらすことに貢献しました。この新しい音声は、より自然な話し言葉に近い最新の音声合成技術を採用しており、ウェブ閲覧や文書の閲覧および作成を、画面を見るのではなく聞くことで行うユーザーにとって、より楽しい体験を提供します。
アレクシス・ケインは、Windows 11 の新機能であるフォーカスセッションのマネージャーです。健康的なデジタル習慣を身につけ、より多くのことを成し遂げることができるように実績のあるテクノロジを用いました。アレクシスは ADHD であり、通知によって集中力が途切れ、それが生産性に悪影響を与えていることを痛感していました。
1 日のうちに起きるパソコンの挙動は、私の気分、生産性、活力に影響を与えます。常にパソコンの前にいるリモートワークでは、それがより顕著になりました。受信する通知の数が大幅に増え、不安感も大きくなりました。通知を見ると、すぐにそのメッセージのトピックは何かと考え、自分がどう反応するか、他の人はどう反応するか、すぐに返信するべきだろうかと考え始めてしまいます。また、通知をオフにすると、何か見逃しているのかもしれないと一日中気が散ってしまうので、そうすることもできませんでした。
このような思いをしているのは私一人ではありません。だからこそ、PC を静かにし、ユーザーの集中力を切るようなことを削減しなければならないと思ったのです。PC で落ち着いた環境を作るにはどうしたらよいかを広く考え始め、多くの設計の繰り返しとお客様からのフィードバックを経て、フォーカスセッションと応答不可モード (Do Not Disturb) を作り上げました。
フォーカスセッションと応答不可モードにより、ユーザーは Windows を静かにして、やるべき仕事に容易に集中できるようになります。フォーカスセッションを開始すると、Windows は、応答不可モードを有効化し、通知を停止すると共に、タスクバーのバッジとタスクバー上のアプリケーションの点滅も停止します。また、フォーカスセッションは時計アプリと連携されているため、集中力を高めるためにタイマーを起動したり、生産性向上が証明されている休憩の取り方をリマインドしたりすることができます。
チームのプロセス: 支援するコミュニティとのパートナーシップに立脚
もちろん、限られた人数のチームで、ユーザーの多様性を完全に表現するという理想は実現不可能です。だからこそ、パートナーシップと支援活動が、マイクロソフトのプロセスの重要な部分を占めています。まさに、パートナーシップは、マイクロソフトの取り組みを理解し、開発し、検証するための基本です。お客様との対話を通じて、よりインクルーシブな体験を実現するための課題と機会について共通の理解を得ることができます。
その一例として、モビリティアドバイザリーボードとのパートナーシップは、現在プレビューで公開中の Windows 11 の新しい音声アクセス体験の開発に不可欠なものでした。モビリティアドバイザリーボードは、移動に不自由のある方とそのサポートネットワーク、たとえば、作業療法士や運動が苦手な児童の保護者などで構成されています。モビリティアドバイザリーボードのメンバーとの会話を通じて、既存の音声コマンドのソリューションが、ユーザーが求めるほど効率的ではないことがわかりました。そこで、私たちはメンバーとの対話を重ね、新しい体験を構想し、共創していきました。運動に障碍がある人 (そして、誰もが) 音声で PC を操作し、あらゆるアプリケーションのコンテンツを作成できるようにする体験です。
このコラボレーションから直接生まれた新しい音声アクセスの体験の一つに、音声アクセスの双方向ガイドとヘルプ体験があります。ボードのメンバー、特に作業療法士は、新しいテクノロジが利用可能になった時に、ユーザーがその使い方を学べるよう支援することがいかに重要であるかを強調していました。そのフィードバックを基に、音声アクセスを初めて使う際には、音声で一般的な操作を行えるようにするためのガイドをポップアップ表示するようにしました。また、使用中に、”What can I say (何と言えばいいの)?” と聞けば、いつでもコマンドの完全なリストが表示されるようにしました。さらに、音声アクセスは、聞き取った内容をリアルタイムでフィードバックしてくれるので、間違えた時にどの単語が正しく認識されなかったのかがわかります。マイクロソフトは、モビリティボードが音声アクセスに与えてくれた時間とフィードバックにとても感謝しており、これからも共に取り組みを続けられることをとても嬉しく思っています。
チームの志: 誰にとっても楽しい体験を構築する
私たちは、創造する体験の質への個人的なこだわり、そして、奉仕するコミュニティとの深いつながりから生まれる大きな志を常に抱いています。私たちは、単に Windows に「アクセス」できることに留まらず、それぞれが Windows で最高の仕事をするためのインスピレーションを与えるような、楽しい体験を思い描き、創造していきたいと考えています。そして、その志を遂げるためには、新しいシステム標準のライブキャプション体験の開発のように、既存のソリューションを全面的に再考することが必要な場合もあります。
以前から、ライブキャプション機能は Windows の多くのアプリの中に存在していましたが、聴覚障碍のある従業員やアドバイザーと仕事をする中で、アプリの中にキャプション機能が入っていると、コラボレーションやマルチタスクの際に非効率になる場合があることがわかりました。アプリを閉じたり最小化したりすると、キャプション表示も消えてしまうためです。そこで、聴覚障碍のある方々と協力し、ライブキャプションをシステム全体の機能として再構築することにしました。
現在、Windows 11 のライブキャプション機能はアプリの枠を超えています。キャプションはデフォルトで画面上部、すなわち、多くのシステムではカメラの真下に表示されるため、オンライン会議参加中でも容易に目で追うことができます。表示位置は自分でコントロールすることもできます。ライブキャプションを画面下部やフローティングウィンドウに移動させれば、マルチタスクでもキャプションを見失うことはありません。また、何よりも、重要なコンテンツをブロックすることもありません。
このソリューションによって、主な問題の 1 つは解決されましたが、「楽しい体験」を提供したいという思いから、さらに先に進むことにしました。そして、対面の会話のアクセシビリティを向上するという現実的課題の解決に機会を見出しました。Windows 11 のライブキャプションは、マイクの音声を取り込むことで、対面での会話も書き起こすことができます。また、キャプションはデバイス上でローカルに生成されるため、他のキャプション付きコンテンツと同様、会話の内容が部屋の外に出ることはありません。読話の邪魔になるマスクを装着しての会議、手話通訳者がいない状況での聴覚障碍者と健聴者間の臨時の会話など、さまざまなシナリオで画期的効果を発揮できる機能です。そして、私自身は、オンラインとオフラインの両方で、その言語を母国語としない人が音声コンテンツや会話についていけるようにすることに特に関心を持っています。
私たちの旅に参加してください: フィードバックをお寄せください
Windows 11 におけるアクセシビリティとインクルージョンの提供は、長く続く旅路です。マイクロソフトは、製品、企業文化、そしてコミュニティの皆さまとのパートナーシップを通じて、この旅を進めていきます。チームと製品が正しい方向に進化し続けるためには、皆さまからのフィードバックとご意見が非常に重要です。そして、マイクロソフトにはまだまだやるべきことがあり、皆さまの協力が必要不可欠です。引き続き、フィードバックをご提供ください。まずは今日、Windows 11 の新しいアップデートを入手してみてください。あなたにとってより良い体験にしていくために、ぜひご意見をお聞かせください。Windows ロゴキー ＋F キーを押し、フィードバックハブを起動するだけで、気付いたことを共有できます。
最後になりますが、障碍があるお客様で、Windows などのマイクロソフト製品について技術的なサポートが必要な場合は、電話、チャット、ASL (テレビ電話) で Disability Answer Desk までご連絡ください。いつでもご相談いただけますと幸いです。
注記 (2022 年 9 月 21 日) – 上記の音声アクセスガイドの画像は、公開後に変更されました。
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