Windows Dev Kit 2023 (Project Volterra) を提供開始

Windows Dev Kit 2023

Windows Dev Kit 2023  は、 Windows 開発者が Windows 開発者のために構築した Arm 搭載デバイスです。Arm Windows アプリケーションを Arm 上で開発するにあたって必要なものがすべて揃っています。強力な AI と、すべての機能がひとつのデバイス上に用意されています。

著者: パヴァン・ダヴルリ (Pavan Davuluri) ケヴィン・ギャロ (Kevin Gallo)

※本ブログは、米国時間 10 月 24 日に公開された ”Available today: Windows Dev Kit 2023 aka Project Volterra” の抄訳を基に掲載しています。

マイクロソフトは、Windows Dev Kit 2023 の提供を開始したことを発表します。これは、開発者が Arm 用の Windows アプリケーションを簡単かつ効率的に作成できるよう構築されたデバイスで、2022 年 5 月の Build で「Project Volterra」として発表されました。詳細はこちらからご確認ください。

Windows Dev Kit 2023 は現在、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、日本、英国、米国の 8 ヶ国にて、開発者に向け提供されています。こちらから購入することが出来ます。

コンパクトな単一デバイスで、 Arm Windows アプリケーションのビルド、実行、テストが可能に

Windows Dev Kit 2023 により、開発者はアプリケーション開発プロセス全体を 1 台のコンパクトなデバイス上で行うことができ、 Arm 上で Arm 用 Windows アプリケーションを構築するために必要なものがすべて手に入ります。

Windows Dev Kit 2023 は、 Snapdragon® 8cx Gen 3 コンピュート プラットフォームを基盤とし、32GB の RAM および 512GB の高速ストレージを搭載、内蔵 Wi-Fi 6、物理イーサネット、USB-A x3、USB-C x2 といった複数の外部接続ポートに加え、デバイスやディスプレイ、ネットワークへの接続を容易かつ柔軟に実現するミニ ディスプレイポートが備わっています。また、最大 3 台の外部モニターを同時に接続でき、うち 2 台は大半の開発者が必要とする画面領域をカバーできる 4K/60Hz をサポートします。

Windows Dev Kit 2023

妥協なきパフォーマンスで NPU による AI 機能をアプリケーションに提供

Arm の開発プロセスが簡素化されただけではありません。開発者は NPU により、AI で高度化したエクスペリエンスをアプリケーションに取り入れることが可能になります。

Windows Dev Kit 2023 により、開発者は NPU ハードウェアのパワーを解き放つアプリケーションを構築し、AI および ML (機械学習) のワークロード高速化を実現。AI で高度化した機能やエクスペリエンスを、アプリケーションのパフォーマンスに妥協することなく提供できます。

オープンソースでクロスプラットフォームの ONNX Runtime 推論エンジンにより、すぐにでも NPU のパワーが利用可能です。これにより、  PyTorch や TensorFlow といった一般的な機械学習フレームワークから AI や ML モデルを簡単に実行できるようになります。詳しくは、手順とサンプルが掲載されているページをご覧ください。

ある独立系ソフトウェアベンダー (ISV) は、 AI モデルを移行して Windows Dev Kit 2023 の NPU で実行したところ、驚くようなパフォーマンスを目の当たりにしました。特定のモデルにおいて、 NPU は CPU より約 80 ~ 90 倍、 GPU より約 20 倍高速となり、 CPU が本来の論理タスクを実行できるようになりました。

すでに Windows Dev Kit 2023 でアプリケーションを実行し、テストしている ISV も存在し、そのことをマイクロソフトは大変うれしく受け止めています。

ここで ISV による体験の一部をご紹介します。

  1. 「Arm へのネイティブ コンパイルがとてもうまくいきました。 Windows Dev Kit 2023 は、低消費電力で発熱も少なく、すばらしいマシンです。 24 時間 365 日稼働させている状態ですが、問題なく動いています。」 – Developer Express ソフトウェアエンジニアリング担当ディレクター、マイク・ロジェストヴェンスキー (Mike Rozhdestvenskii) 氏
  2. 「Volterra のパフォーマンスは爽快なほど高速です。 Actipro の x86 ベースの製品インストーラーを実行しましたが、全く問題ありませんでした。当社の WPF と WinForms のコントロールは、『API 負荷の高い』ものでも、あらゆるテスト製品同様、変更することなくすべてしっかり動作しています。」- Actipro Software シニアソフトウェアエンジニア、ボイド・パターソン (Boyd Patterson) 氏
  3. 「Volterra デバイスはすばらしく強力で、市場をリードする当社の著作権侵害対策およびゲームのチート対策のセキュリティ技術をテストするのに理想的です。非常に静かでもあり、デフォルトの設定ですぐに使えます。」- Denuvo by Irdeto マネージングディレクター、ラインハルト・ブラウコヴィッチ (Reinhard Blaukovitsch) 氏
  4. 「現在、自宅のオフィスで Volterra デバイスを利用していますが、これまでの体験はすばらしいものです。驚くほど高速で、Arm 版 Windows 製品で当社製品をテストしていても速度が落ちることはありません。」- テクニカルスタッフメンバー、アダム・バートン (Adam Barton) 氏
  5. 「これまでのところ、とてもうまくいっています。Volterra は、LLVM と MySQL のワークロードで使用していた以前の Arm ベースの Windows マシンより驚くほど高速に動いています。とても軽く効率的で、強力なデバイスです。」- Linaro Arm 版 Windows プロジェクト テクニカルリード、ニアス・セイト (Niyas Sait) 氏
  6. 「Volterra デバイスの設定は簡単でした。擬似開発とデバッグ環境として使用しており、とても堅実な開発マシンであることがわかりました。」- Riot Games セキュリティエンジニアリング担当マネージャー、ライアン・バターワース (Ryan Butterworth) 氏
  7. 「Volterra でエミュレーションを実行していますが、ネイティブの Arm64 ですべてがより高速に実行できています。」- JetBrains プロジェクトマネージャー、コンスタンチン・ブレンコフ (Konstantin Bulenkov) 氏
  8. 「主にリモートデスクトップ接続で Volterra を使用しており、Volterra 上でのリモートデバッグはうまく機能しています。コンパクトなデバイスで 32GB の RAM とストレージを利用しています。以前使っていた Arm ベースの Windows マシンよりずっと高速です。」- ソフトウェアエンジニア、コビー・カハネ (Koby Kahane) 氏

Arm ネイティブのツールチェーンが、高速で使い慣れた生産性の高い開発体験を提供

2022 年 5 月の Build にて、マイクロソフトは開発者の生産性を高める Arm ネイティブアプリケーション用の包括的な Arm ネイティブツールチェーンを用意するという計画を発表しました。当社ではこのコミットメントの実現に向け、この 5 ヶ月で大きな進歩を遂げました。

プレビューをリリースしたのは以下の通りで、その多くは年内には一般提供される予定です。

  • IDE のプレビュー (Visual Studio 2022 バージョン 17.4)
  • ツールとランタイム (Arm ネイティブ対応の Windows App SDK)
  • ライブラリ (VC++ランタイム)、ツールチェーン (.NET7)

以下はすでに利用可能です。

  • Windows 11 2022 アップデート適用済みの .NET Framework 4.8.1。これにより、.NET Framework アプリケーションの大規模なエコシステムが Arm64 上でもネイティブに実行可能になります。
  • クラウドサービス (Azure VM)
  • Arm64EC

Visual Studio 2022 バージョン 17.4 Arm 上でネイティブに実行できるようになり、パフォーマンスが大幅に向上

マイクロソフトでは、開発者コミュニティに継続的なイノベーションを提供しようと取り組んでおり、「Arm 上で Visual Studio をネイティブに実行できないのは大きな障害だ」という開発者からの意見にも耳を傾けてきました。そこでこの 3 ヶ月間、毎月 Arm ネイティブの Visual Studio 2022 バージョン 17.4 のプレビューリリースを配信しています。このバージョンでは、以下をサポートしています。

  • デスクトップワークロード (C++ および C#)
  • Windows SDK および Windows App SDK コンポーネント (Win UI)
  • ウェブ、UWP、Node.js、ゲーム開発のワークロード

マイクロソフトは、プロダクション ランタイムのシナリオ改善はもちろんのこと、それ以上に開発者エクスペリエンスを改善したいと考えました。そこで、エディット コンティニュやホット リロード、プロファイリング ツールといった開発者向け生産性向上機能をサポートし、開発者が Arm64 版 Visual Studio を使用しても現在の x64 版と同じ生産性が保てるようにしました。

Visual Studio 2022 バージョン 17.4 と .NET 7 は、今後数週間以内に正式リリースされます。後日、追加のワークロードもサポートされる予定です。

.NET 7 x64 Arm64 の差をなくして Arm に同等の機能を提供し、パフォーマンスの向上も実現

.NET 7 では、同等の機能やパフォーマンスといった面で Arm に対する改善を施しました。.NET 6 では、x64 上 で動くものの Arm64 では動かない機能がいくつかありましたが、.NET 7 では ASP.NET Core モジュール (ANCM) をサポートしてこの差をなくし、Kestrel サーバーに加えて Arm64 でも ASP.NET Core アプリケーションが IIS を使用できるようになりました。

パフォーマンスの向上に向けては、ベンダー特有の最適化を施し、さまざまな Arm ハードウェア上でアプリケーションがうまく稼働するようにしています。サーバーのスループット (RPS) とレイテンシーをターゲットとしたランタイムの改善も実施しています。詳細は、.NET 7 での Arm64 パフォーマンスの改善 (Arm64 Performance Improvements in .NET 7) について書かれたブログをご覧ください。

開発者は、Windows Dev Kit 2023 のワークロードに必要なツールチェーンをインストールする必要があります。一部のツールやサービスでは、追加ライセンスや追加料金、またその両方が必要となる場合もあります。

多くのアプリケーションやツール、フレームワーク、パッケージが、Arm 版 Windows をネイティブターゲットとして移植されており、今後数ヶ月で公開される予定です。それまでは、Windows 11 の強力なエミュレーション技術により、x64 および x86 の未修正アプリケーションやツールが Windows Dev Kit 上で実行できます。

Windows Dev Kit 2023

Ampere Altra Arm ベースのプロセッサを搭載した新 Azure VM で、コスト効率と電力効率の高いオプションを提供

現在では、多くの開発者がクラウド上でワークロードの実行やビルドとテストを行っています。

開発者は、最近発表された Ampere Altra Arm  ベースのプロセッサ搭載  Azure Virtual Machine を活用できるようになりました。この新しい Azure VM は現在一般提供されており、Windows 11 Pro および Enterprise Windows の Insider Preview リリースに加え、さまざまな Linux OS ディストリビューションをサポートしています。Azure の Arm ベース VM の詳細は、こちらをご覧ください。

Azure DevOps と GitHub CI/CD ワークロードのホスティングや実行に関する詳細は、今後数ヶ月以内にお伝えする予定です。引き続きご注目ください。

成長する Arm エコシステム

マイクロソフトでは、複数の当社アプリケーションを Arm に移植し、ネイティブサポートを提供しています。

  1. Microsoft Teams
  2. Arm64 Office
  3. Microsoft Edge
  4. Microsoft Defender for Endpoint (MDE)
  5. OneDrive 同期

また、クリエイティビティ&コラボレーション、セキュリティ、IT マネジメントなどの分野におけるサードパーティー ISV エコシステムも拡大しており、こうした企業もアプリケーションを Arm に移植、Arm 版Windows のネイティブサポートを提供しています。

  1. クリエイティビティ&コラボレーションアプリ – Adobe Photoshop、Adobe Lightroom、Adobe Acrobat/Reader、Zoom
  2. 印刷 – HP Smart Universal Print Driver
  3. セキュリティソリューション – Crowdstrike Falcon Sensor、Panda Security、ESET Endpoint Antivirus、Sophos Intercept X、NetWitness XDR
  4. VPN 製品 – Palo Alto Networks Global Protect、Cisco Anyconnect、F5 Big-IP Edge Client、Ivanti Pulse Secure、NetMotion VPN
  5. IT マネジメントソリューション – Citrix Workspace、Ivanti Endpoint Manager、Forescout SecureConnector
  6. ベンチマークソリューション – PassMark PerformanceTest、Nexthink Collector、3Dmark Night Raid & Wild Life

Arm64 へのアプリケーション移植に関するサポートは、App Assure サービスまで

App Assure サービスは、アプリケーションの互換性をマイクロソフトが保証し、お使いの Windows アプリケーションを Arm 上で稼働できるようにするために立ち上げたサービスです。Windows Dev Kit 2023 を使用してアプリケーションを移植する際に互換性の問題や技術的な障害が発生した場合、App Assure のエンジニアが支援します。このプログラムは、これまで多くの主要な ISV が Arm64 にアプリケーションやドライバを移植する際にも支援を提供してきました。

App Assure の互換性に関する支援の詳細は、こちらをご覧ください。App Assure へのご連絡は、aka.ms/AppAssureRequest にアクセスいただくか、[email protected] までメールを送信し、Windows Dev Kit 2023 のアプリケーション互換性サポートをリクエストしてください。

今後に向けて

Build 2022 では、NPU 対応デバイスを駆使したハイブリッドコンピューティングと AI の新しいモデルを通じて、クラウドとクライアント全体でシームレスな AI 推論を実現するビジョンを発表しました。マイクロソフトはこのビジョンに向けた取り組みを進めており、今後数ヶ月以内には詳細をお伝えする予定です。

Windows Dev Kit 2023 は、志高いクラウドネイティブ AI アプリケーションの構築を実現する新しい開発者プラットフォームの創造に向けた新たな一歩です。マイクロソフトでは、Arm64 にネイティブ対応した Visual Studio と .NET、そして Windows Dev Kit 2023 により、皆様がこの道のりの第一歩を踏み出せるよう支援したいと考えています。当社のクラウド上にてまずは構築を開始し、ツールやサービスをご活用いただければと思います。

またマイクロソフトでは、Arm ネイティブツールチェーンへの投資を継続し、このエコシステムを成長させるパートナーシップやコラボレーションを構築していく予定です。Unity では、Unity Player を Arm 版 Windows にネイティブ対応しようと取り組んでおり、この取り組みをマイクロソフトは大変うれしく思っています。この最先端ゲームエンジンを使用している開発者は、既存および今後のゲームタイトルで容易に Arm 版 Windows デバイスをターゲットとし、ネイティブ パフォーマンスを得ることができるようになります。時期についての詳細はあらためてお知らせします。

ここで紹介した内容は、今後実現可能となることの始まりに過ぎません。これから皆様が何を構築されるのか楽しみです。

Windows Dev Kit 2023 の詳細については、10 月 26 日にオンラインで開催される Arm Dev Summit にご参加いただければと思います。

本ページのすべての内容は、作成日時点でのものであり、予告なく変更される場合があります。正式な社内承認や各社との契約締結が必要な場合は、それまでは確定されるものではありません。また、様々な事由・背景により、一部または全部が変更、キャンセル、実現困難となる場合があります。予めご了承下さい。

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