Melanie Nakagawa – マイクロソフト最高サステナビリティ責任者
※本ブログは、米国時間 3 月 22 日に公開された ”The journey to water positive” の抄訳をもとにしています。
今週、国連が 46 年の歴史で初めて主催する水に焦点を当てたイベントに、世界中のリーダーが参加します。最近の IPCC の報告書でも注目されていたますます厳しくなる水に関する課題に世界が悪戦苦闘する中で、これはその答えを探るための良い機会です。水は、生活に欠かせない、貴重な限りある資源です。マイクロソフトにとって、水の管理は、データセンターの冷却や建物全体の運営など、業務に不可欠なものです。そのため、2020 年には、2030 年までにウォーター ポジティブを実現するという公約を発表し、Water Resilience Coalition に参加しました。ウォーター ポジティブを達成するということは、水の使用量を削減し、水源を補充するだけでなく、世界中の人々に水と衛生設備を提供し、公共政策に取り組み、イノベーションを推進するということでもあります。
本日は、2020 年の公約の発表以降の進捗状況をお知らせします。これには、お客様やパートナーと連携して、組織が水に関するデータをより効率的に監視および管理できるようにする取り組み、気候イノベーション基金を通した、水の補充と水へのアクセスのプロジェクトをグローバルに拡大するための投資、および FIDO Tech とのこの種では初の漏水検出テクノロジの補充プロジェクトに関する詳細が含まれます。
ウォーター ポジティブの 5 本の柱
この 3 年間、私たちは次の 5 本の柱について活動し、これらに従って行動を起こしてきました。そしてこれらは今後の決定にも影響を与え続けます。
1. 直接事業全体でのウォーター フットプリントの削減
私たちは、設計から効率化まで、事業全体で総合的な水削減アプローチを取り、その直近の機会は運用上の使用を通じて探り、長期的には水の削減、リサイクル、再利用に関する設計イノベーションを通じて削減に取り組んでいます。やるべきことはまだありますが、このアプローチにより、データセンター全体が進展しました。データセンターの冷却に水ではなく直接空気を使用すること、雨水の利用、および淡水への依存を減らすために公共事業から再生水を調達することに成功しました。たとえばスウェーデンやフィンランドなど、温度の低い環境のデータセンターでは、冷却のために公共事業からの淡水は必要ありません。私たちは、キャンパスにおいても効率化を求め、削減を推進しています。シリコン バレー キャンパスでは、International Living Futures Institute (ILFI) のネットゼロ ウォーター認証獲得を進めており、この認証を受けた最初のテクノロジ キャンパスとなる予定です。
2. 水と衛生設備の利用拡大
今日、地球上の 4 分の 1 の人々は、安全な飲み水を得ることができず、世界の人口の半分には、安全に管理された衛生設備がありません。2020 年以降、私たちは Water.org と提携して、インド、インドネシア、メキシコ、ブラジルの人々に、トイレや蛇口の設置、貯水槽の改善などの水ソリューションに関する小口融資を提供しています。これまでに、私たちの支援により、100 万人以上の人々に安全な水と衛生設備が提供され、150 万人への支援達成という目標に向けて順調に進んでいます。この進展はうれしく思っていますが、まだ十分でないこともわかっています。私たちは、世界中の事業を展開している地域における活動範囲を拡大するための新たな方法を引き続き模索し、小口融資を受けることのできない人々にも機会を提供していきます。この基本原則が、私たちが行っている新たな補充投資を特徴付けています。
3. 事業全体での消費量を上回る水を補充
水を元の水源に戻す機会を見つける中で、補充はこの水に対する取り組みの重要な要素です。マイクロソフトでは、事業を展開している 40 の優先度の高い流域で、事業全体での消費量を上回る水を補充しています。2019 年以降、私たちは流域の保護から農業用水の効果の評価まで、世界中の補充プロジェクトに 700 万ドル以上を投資してきました。
水へのアクセスと水の補充に関する投資を拡大する継続的な取り組みの一環として、私たちは Water and Climate Resilience Fund への最初の投資家となることについて、最終文書の締結を条件に、WaterEquity と暫定的な合意に達したことを発表します。この基金は、南アジア、東南アジア、サハラ以南のアフリカ、ラテン アメリカの低所得者層に対する、自治体レベルの気候変動に強い水および衛生インフラストラクチャへの投資に特化しています。この基金を通して、WaterEquity は、水の調達、処理、分配、再利用を改善することを目的とした適格なプロジェクトおよび企業に資金を提供します。この投資は、マイクロソフトの 10 億ドルの気候イノベーション基金を通じて進められた 3 つ目の水関連プロジェクトです。
無収水、すなわち漏れによって失われる淡水は、1 日に 3.46 億立方メートルと推定されており、これは世界の水道システムの流入量の 30% に相当します。水のデータと AI を利用したツールは、この課題に対処するのに役立ち、漏水の検出などの水ソリューションに多大な影響を与えます。このたび、ロンドンにおける FIDO Tech とのこの種では初の漏水検出テクノロジの補充プロジェクトについて発表します。これは、FIDO Tech の AI 対応音響漏水分析を活用して、ロンドンの老朽化した配水網での漏れで失われる水を削減するものです。このプロジェクトにより、年間で数百万立方メートルの水を節約できると期待されます。
水の課題は世界中で悪化し続けているため、従来の補充プロジェクトのみでは、このような世界で必要とされる規模を満たすことはできません。WaterEquity や FIDO Tech との新しい取り組みは、深刻な水の課題の解決に取り組んでいる非営利団体と民間セクターの両方とのパートナーシップを通じて、私たちがいかに補充活動の拡大のための投資に関心を向けているかを表しています。
4. イノベーションとデジタル化による水ソリューションの拡大
私たち自身の事業で使用される水、およびアクセスおよび補充プロジェクトを通じて使用される水の管理のためにマイクロソフトで継続されている活動は重要です。しかし、世界が淡水資源を守れるように、革新的なテクノロジを構築しているお客様やパートナーに投資し、私たちのテクノロジを提供することにより、私たちは潜在的な影響を拡大できると認識しています。水データのイノベーションとデジタル化は、水ストレスがどこで生じているかを特定および把握するのに役立ち、世界の水に関する取り組みにおいて不可欠な要素です。
このたびは、Ecolab との共同ソリューションを発表します。これは、Ecolab の ECOLAB3D™ デジタル プラットフォームと Microsoft Sustainability Manager を組み合わせ、水データを監視および管理して、組織が水のサステナビリティ目標を達成し、全体的なサステナビリティの進展を加速させるのを支援するものです。Ecolab と連携して、お客様の水使用量、エネルギー使用量、炭素排出量の削減に向け、生産プロセスでのより効果的な水の管理を促進できるのを非常にうれしく思っています。
5. 効果的かつ革新的な水政策の提唱
私たちは、世界の水危機への政府の関与が、地球上の淡水資源を保護するうえで、重要な要素となることを認識しています。マイクロソフトには、環境のサステナビリティに関するアクションおよび支持の長い歴史があります。そして、私たちの声により、水の削減と補充を奨励し、その規模を拡大して、水ストレスのある地域でのきれいな水へのアクセスを増大させる政策を促進する機会を、引き続き探っていきます。
次のステップ
2020 年に、私たちは、ウォーター ポジティブになるという野心的な公約を掲げ、2050 年までに水ストレスを軽減するという CEO 主導の取り組みである Water Resilience Coalition (WRC) を共同創設しました。このたび、私たちは、より強力なウォーター レジリエンスを構築するにあたって事業が持つことのできる集合的な影響を促進するため、WRC による強力な基盤に Open Call for Water Action を構築し、これに署名します。これは、本日発表した投資やプロジェクトと共に、水を環境サステナビリティ戦略の中心に据えるという私たちの継続的な取り組みの良い例です。
今後数年間、私たちはウォーター ポジティブの公約の 5 本の柱に対して前進を続けます。代替調達を増やしながら、事業全体で水の使用量を削減する取り組みを拡大し、投資する革新的な補充およびアクセスのプロジェクトの数を増やしたいと考えています。
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