日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務
パブリックセクター事業本部長
佐藤 亮太
※本ブログは、2024 年 5 月 30 日に開催した報道関係者向け説明会を元に再構成したものです。
本日は政府、自治体におけるマイクロソフトの取り組みについて、最新のお客様事例を実際にご活用いただくお客様の声と共にご紹介します。
■今と正しい未来をつなぐ、かけはしを目指す
マイクロソフトでは、一部の特別な人や組織だけでなく、様々な境遇、環境に置かれている多くの方々が、テクノロジーの恩恵を受けられるよう支援することをグローバルミッションとして掲げています。このミッションのもと日本マイクロソフトは、今年 1 月に発生した能登半島地震において、日本医師会災害医療チームと連携し、その活動を支援しています。医療データの共有化といった技術支援に加え、珠洲市や輪島市をはじめ石川県と医師会に対し、パソコンおよびライセンスを無償で提供。被災された皆様が1日も早く復旧できるよう寄り添い、支援を継続します。
このような取り組みはデジタル庁が掲げる「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というテーマにも通じるものがあります。パブリックセクター事業本部では、デジタル領域における未来のあるべき姿を正しく捉え、今と正しい未来をつなぐかけはしを目指し、その達成に向け以下 3 つの価値を提供します。
■政府の取り組みと密接に連動し、日本社会への投資を約束
2024 年 4 月、マイクロソフトは、日本のデジタル化および社会課題の解決に向けた支援を発表。パブリックセクター事業本部が担う領域も多く、例えば、AI やローコードの活用に向けたスキリング分野で約 40 万人を対象に様々な講座を提供します。また教育機関に対しても業務支援、研究開発支援を行います。
■官公庁、自治体をはじめとする行政機関への取り組み
マイクロソフトでは行政機関が抱える課題に対し、3 つの領域に注力し支援を行っています。
1: モダナイズ化と内製化の支援
行政機関の多くは様々な理由から、特殊なネットワーク環境や古いシステムを利用しているケースが多く、また組織内のデジタル人材不足の課題もあります。マイクロソフトは 2022 年 10 月にガバメントクラウドに採択され以降、ローコードツールのクラウド上での活用も含め、行政機関におけるクラウド活用を支援し、課題解決に取り組んでいます。
2: 組織風土のトランスフォーメーションを支援
DX を成功に導くためには、土台となる組織風土や文化、業務の進め方そのものを変える必要があります。マイクロソフトでは、長年蓄積したデータを基にスムーズな DX 化に貢献します。
3: AI トランスフォーメーションの支援
少子高齢化が進む日本社会において、公共サービスの維持には最先端の技術活用が不可欠です。これまでの DX に加え、AI を活用した AI トランスフォーメーションを支援します。
■具体的な事例
1: モダナイズ化と内製化支援の事例
ガバメントクラウドに採択されて以降、政府、自治体のクラウド活用を継続的に支援するほか、クラウド上でマイクロソフトのローコードツールを活用できるように。結果、2022 年からの 2 年間で Microsoft クラウドの利用は3倍に、ローコードツールの利用も2倍に達しています。
大阪市
システムのモダナイズ化支援として、クラウド基盤の構築において、日本の自治体で最大規模の Azure プロジェクトが進行中です。現在、共通クラウド基盤を構築し多数の業務システムを移行中で、既に 50 以上の既存システムがクラウド上で稼働しています。Microsoft 365 も組み合わせ、約 25,000 人に及ぶ職員の様々な働き方を支えています。
山梨県
業務効率化に向け、Microsoft Power Platform (ローコードツール) を活用した内製化を支援しています。初級者研修 (約 500 名)、中級者研修 (約 300 名) を実施し人材を育成。庁内での開発者コミュニティを Microsoft Teams 上に創出し、すでに多くのアプリケーションが作られ稼働しています。
パートナー企業との連携を強化
行政機関の DX を支えるために。2023 年には、NTT 西日本と連携協定を締結するなど、パートナー企業の人材育成にも注力しています。その成果として、Azureの資格保有者はこの 1 年で 2 倍の 1,600 名以上となり、高い成長率を誇ります。
2: 組織風土や文化の改革支援の事例
マイクロソフト自身が20年にわたり社内で蓄積した働き方改革のノウハウを、様々なお客様に提供しています。ここ 2 年ほどで Teams の利用者は約 2 倍に増え、効率的な時間の使い方や場所にとらわれない働き方など、新しいスタイルの働き方が日本の社会に浸透しています。
東京都
2023 年 2 月に連携協定を締結し多岐にわたる活動を支援しており、人材育成もその一つです。都庁職員をマイクロソフトの社内に受け入れ、当社の働き方を体感いただくほか、区市町村に対しても幅広く、現場職員から局長クラスまで年間約 30 回の研修を実施。その結果、オンライン会議数が 2.5 倍まで増加、ペーパーレスも70%削減を実現。短期間で大きな成果をあげています。
防衛省
多くの機微情報を扱う防衛省では、これまで自衛官の受け入れなど人材育成で様々な支援を行ってきましたが、この度、モダンワークサービスの最新クラウド版の導入が決定、AI 活用も検討中です。マイクロソフトのセキュリティを評価いただき、今回の採用となりました。
マイクロソフトではセキュリティ環境を重要課題として強化し、特に中央省庁向けには、省庁横断でのゼロトラスト環境実現に向け継続した支援を、自治体向けには固有のネットワーク環境を考慮しながら、最新テクノロジーを活用し安心安全なソリューションを提案します。
■DX を中心とした働き方改革、組織改革事例
人事院では 2022 年に、デジタル庁が運用する GSS (ガバメントソリューションサービス) に移行しており、さらに、2025 年度の庁舎移転に向け DX 推進計画を策定しました。新オフィスでは従来の固定席を廃止し、場所にとらわれない働き方として ABW (アクティブ ベースド ワーキング) を採用する計画です。テレワーク推進にも資する電話機の在り方などの具体策を検討し、働き方改革を進めています。
業務改善事例①<超過勤務処理の自動化>
各課室により毎月手作業で処理していた、超過勤務手当を政府共通の人事給与システムで計算、支給するための処理を自動化するツールを開発。人事院全体で毎月約 164 時間の作業時間を短縮し、人為的ミスの発生リスクを軽減しました。
業務改善事例②<制度照会対応業務の抜本的見直し>
国家公務員全体の DX 推進も担う人事院では、国家公務員制度ナレッジベース (SEDO) の構築も実施。多くの時間を要していた人事制度の照会対応業務をシステム化。代表的な事項の FAQ 化、個別対応用の質問フォーム、進捗状況のステータス確認や質問内容の蓄積などの機能を組み込み運用を段階的に開始し、2024 年 5 月に地方機関を含めた全府省への展開が完了しました。
3: AI トランスフォーメーション支援の事例
「AI を使う」と「AI を創る」の 2 つの領域で、用途に合わせた支援を加速します。
「AI を使う」を推進するために、Copilot for Microsoft 365 で、一般的な事務作業の効率化や質を高めるほか、AI 利用の理解を促進します。一方「AI を創る」ケースは、例えば法案や条例案作成など、固有の特性に合わせたデータ作成の際、AI の種類を使い分けることでより大きな成果が見込めます。マイクロソフトの Azure AI Studio では、OpenAI 社最新の GPT-4o をはじめ 1,600 以上の様々な AI から用途に合わせて組み合わせ、業務に適した AI アプリケーションを創ることが可能です。
「使う」と「創る」の 2 つの軸からAI活用を加速させるため、中央省庁向けには AI イベントを、また自治体向けにはアイディアソンやハッカソンを実施。現在 100 以上の行政機関で、マイクロソフトが提供する AI の活用および検証が進んでいます。固有の事情に寄り添いながら、最適な AI 活用をご提案、あるいは創る支援を継続して行います。
■ISMAP を取得し、行政機関の AI 活用を支援
クラウドソリューションに対するセキュリティ認証I SMAP 取得に関し、Copilot for Microsoft 365 はすでに次期審査に向け監査を終了し 6 月に申請を行う予定です。Azure OpenAI Service は生成AIとして日本初、2024 年 2 月に取得しています。
■行政機関におけるAI活用の最新事例
経済産業省 大臣官房 DX 室
月岡 航一様
情報政策を所管する経済産業省は現在、業務の補助ツールとしての AI 活用に向け、約 100 名の職員を全省から募り検証作業を行っています。機密情報を含まない範囲で限定的に、Azure OpenAI Service を使い、GPT-4 と同様の入出力を試せるチャット機能に加え、特定の PDF や URL に関する情報を返す機能のほか、翻訳や要約、広報文案作成などで検証を実施。また、高度な検索を可能にする課室特化型 AI の実装も検討しています。扱う情報の機密性といったセキュリティ面の課題を整理しながら、今年の夏頃には全省で AI の利用環境をリリースする予定です。リリース後も継続し、説明会や研修を実施します。
■自治体における AI 活用の最新事例
中野区ではマイクロソフトと連携協定を結び、デジタル基盤の整備を推進しています。2024 年 5 月に移転した新庁舎ではユニバーサルレイアウトを採用し、各フロアにおける部長席や課長席を廃止、フリーアドレスを導入しています。またモバイルノート PC を支給し、Microsoft 365 の本格導入 (Teams 電話含む) と内線電話の廃止、チャットでのコミュニケーションを軸とする運用に切り替えています。人材育成に関しては、2023 年よりマイクロソフトから講師を迎え、ワークショップをはじめ経営層、一般職員を集め AI 活用のアイディアソンを実施しています。
Copilot for Microsoft 365 の活用
現在ガイドラインを策定し、全職員がすでにブラウザベースの Copilot を利用できる状況です。また Copilot for Microsoft 365 の利用をDX推進室内で開始。会議の要約や疑問点の解消など、業務効率を実感しています。将来的にはセキュリティ面をクリアにしながら、議会答弁へのAI活用と、窓口サービスへのメールや電話への応対活用も検討しています。職員が本来すべき業務に注力するために、自治体こそAIは不可欠です。積極的に効果測定も行い、AI の活用事例を全国の自治体に向け共有したいと考えています。
■150 社以上のパートナーと共に、AIトランスフォーメーションを支援
取り組みを加速させるため、Copilot for Microsoft 365 の検証環境を 6 月から提供します。機密性の低い文書のみを評価検証できる個別環境をまずは中央省庁、独立行政法人から開始し、その後パブリックセクター事業本部のお客様全域に広げていく予定です。ぜひ Copilot の価値を体感いただき、お客様のAIトランスフォーメーション実現にお役立てください。
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