テクノロジを駆使してお客様とのパーソナルなつながりを構築するスターバックス

2019 年 5 月 6 日に米国で発表されたブログの抄訳をベースにしています

ジェニファー ソコロウスキー (Jennifer Sokolowsky)

スターバックスの店舗に足を踏み入れると、世界中どこでも似たような風景が広がっています。コーヒー豆を挽き、エスプレッソショットを抽出し、注文したコーヒーができあがるまでバリスタとお客様が話している風景です。

この様子は日常のありふれたシーンにしか見えないかもしれませんが、1 週間にスターバックスに訪れる 1 億人以上のお客様をもてなすために慎重に調整されています。スターバックスでは、マイクロソフトの支援を得てクラウドコンピューティングからブロックチェーンに至るまでさまざまな最新技術を採用、店舗での顧客体験をよりパーソナルでシームレスなものに作り上げているのです。

「スターバックスには、日々画期的なイノベーションに取り組む世界レベルの技術者チームが存在します。彼らの創作力や知的好奇心が、スターバックスの体験を実現しようとする献身的な取り組みにつながっています。テクノロジを体現するにあたり、こうした取り組みの重要度はますます高まっています」と、スターバックス エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高技術責任者のジェリ マーティン-フリッキンガー (Gerri Martin-Flickinger) 氏は述べています。

「スターバックスのテクノロジに対する取り組みは、すべて店舗でのお客様とのつながりが中心となっています。人間的なつながりや、ひとりのお客様、1 杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティといった、それぞれのつながりを重視しているのです」

先日開催された Microsoft Build 2019 カンファレンスにて、マイクロソフトの最高経営責任者であるサティア ナデラ (Satya Nadella) は、スターバックスが新しい技術を駆使して特徴的な顧客体験を提供している様子を披露しました。

強化学習を用いてより適切なレコメンデーションを実現

スターバックスでは、強化学習技術を活用しています。強化学習とは、機械学習の一種で、外部からのフィードバックに基づき、複雑かつ予測できない環境でもシステムが判断を下します。これにより、スターバックス® モバイルアプリを利用しているお客様一人一人に合わせた体験を提供できるのです。

アプリ内にてお客様は、Microsoft Azure で構築されホストされている強化学習プラットフォームを通じ、オーダーメイドされた注文の提案を受け取ります。この技術とスターバックスのデータサイエンティストの努力により、1600 万人におよぶスターバックス® Rewards のアクティブメンバーが、アプリから食べ物やドリンクに関するよく考えられたおすすめ情報を受け取っているのです。レコメンデーションは、近くの店舗の在庫や人気のセレクション、天候、時間帯、コミュニティの好み、過去の注文履歴がベースとなっています。

「まさにバリスタとの関係と同じで、お客様はデジタルプラットフォームからも同様に、それぞれに合った提案を受けています」と、スターバックス分析および市場調査担当シニアバイスプレジデントのジョン フランシス (Jon Francis) 氏は述べています。

スターバックスは、モバイルアプリを通じてパーソナライズされたレコメンデーションをお客様に提供しています。近い将来ドライブスルーでも提供する予定です。

このようなパーソナライゼーションにより、お客様は自分好みの商品の提案を受ける可能性が高くなります。例えば、乳製品を含まないドリンクを常時オーダーしているお客様に対しては、プラットフォーム側でこのお客様は乳製品以外が好きだと推測します。その結果、乳製品が含まれる品目を避け、乳製品を含まない食べ物やドリンクを提案するといった具合です。

基本的に、強化学習によってアプリはそれぞれのお客様についてより深く知ることができます。レコメンデーションは機械によるものですが、最終的にはパーソナルなやり取りにつなげることを目標としています。

「スターバックスは体験を提供しています」とマーティン-フリッキンガー氏は述べています。「その体験は、店舗におけるお客様とのつながり、人間的なつながり、ひとりのお客様、1 杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティが中心となっています。このミッションは、テクノロジを体現するにあたって非常に重要なことです」

現在スターバックスでは、このテクノロジをドライブスルーでの体験にも活用したいと考えています。

「スターバックスでは、エンジニアリングおよびテクノロジ組織として、現在追求している取り組みの中で非常に注力している分野があります。それは、データを駆使して顧客体験やパートナー体験を継続的に向上させることです」と、マーティン-フリッキンガー氏は述べています。「モバイルアプリにとって、データを駆使したパーソナライゼーションは欠かせません。今度はそのデータをドライブスルーでの体験向上に活用していきます」

ドライブスルーのお客様に対しては、モバイルアプリのお客様と違い、この技術で個別の注文履歴を把握できません。そこで同技術では、店舗での取引履歴や、各店舗の 400 以上もの基準に基づき、関連性の高いドライブスルー向けレコメンデーションを作成することになります。このレコメンデーションは、デジタルメニューのディスプレイにて事前に表示され、お客様はそれを見て注文できます。最終的には、より自分に合ったパレコメンデーションを自ら受けるよう選択できるようになります。

スターバックスでは現在、同社のイノベーションの中心となるシアトルの Tryer Center にて同技術をテストしており、近々公開する予定です。フランシス氏によると、スターバックスにとって強化学習は、今後他のさまざまなアプリケーションにおいても重要な役割を果たすことになるだろうとしています。

「機械学習や人工知能を駆使することで、お客様が店舗内にいても車内にいても、さらには外出先でアプリを通じてでも、場所に関わらずお客様と接することができます。こうした技術により、われわれはお客様の個人的な好みを理解し予測できるようになるのです」とフランシス氏。「機械学習は、ストアデザインやパートナーとの連携、在庫最適化、バリスタのスケジュール調整にも役立っています。この機能は、最終的にわれわれの事業経営全般に関わってくるでしょう」

IoT の実装でスムーズなコーヒー体験を

スターバックスの各店舗には、コーヒーメーカーからグラインダー、ブレンダーまで、1 日約 16 時間稼働するさまざまな器具が十数台存在します。これらの器具に不具合があると、サービス担当者を呼び出す必要があり、修理コストがかさみます。さらには、機具の故障により、常に高品質な顧客体験を提供するというスターバックスの第一の目標が乱れることにつながりかねません。

「パートナーやお客様との間に、新たなつながりの瞬間が生み出せるのであれば、その瞬間を探求し活性化させたいと考えています」と、スターバックス グローバル機具担当バイスプレジデントのナタラジャン “ヴェンカット” ヴェンカッタクリシュナン (Natarajan “Venkat” Venkatakrishnan) 氏は述べています。「スターバックスのマシンがなければ、特別なドリンクを作り出すことができません。マシンがちゃんと動くようにしておくことが重要なのです」

スターバックスでの体験に影響なくマシンを安全にクラウド上にて接続するため、同社はマイクロソフトと提携し、Azure Sphere を導入することになりました。Azure Sphere は、スターバックス店舗内の機具全般が IoT デバイスで接続されることになっても、安全性を確保できるよう設計されています。

クラウド接続されたデバイスにより、スターバックスのスタッフは完璧なドリンクを作り上げるためにより多くの時間を割くことができ、マシンのメンテナンスにかける時間が削減できます。

IoT 対応マシンは、エスプレッソショットを抽出するごとに、使われた豆の種類からコーヒーの温度、水質など、十数以上のデータを収集します。8 時間のシフト中に生成されるデータは 5 メガバイト以上にのぼります。マイクロソフトはスターバックスと共同で、保護モジュール (guardian module) と呼ばれる外部デバイスを開発、スターバックスのさまざまな機具を Azure Sphere と接続し、データを安全に集約してマシンの不具合を事前に特定できるようにしました。

また、このソリューションにより、スターバックスは新しいコーヒーのレシピを直接マシンに送信できるようになります。これまでこの作業は手作業で行われており、年に数回レシピをサムドライブで各店舗に配送していました。それが今では、ボタンをクリックするだけで、クラウドから Azure Sphere 対応デバイスに対し、レシピを安全に配信できるようになったのです。

「80 近くの市場で 3 万店舗に新たなレシピを提供する複雑さを考えてみてください」と、スターバックス Technology にてリテールおよびコアテクノロジサービス担当シニアバイスプレジデントを務めるジェフ ワイル (Jeff Wile) 氏は述べています。「レシピを簡単に配信できることで、大幅なコスト削減につながります。この技術を使う理由はそこにあります」

ワイル氏によると、Azure Sphere の全般的な目標は、事後対応型のメンテナンスから脱却し、発生前に問題を回避する予測型アプローチへと移行することだといいます。長期的には、在庫管理や備品注文などの用途にも Azure Sphere を活用するほか、同社の機具サプライヤに対しても各製品の次期バージョンに同ソリューションを搭載してもらいたい考えです。

ブロックチェーンでコーヒーへの道のりをお客様と共有

このほかにもスターバックスでは、革新的な手法でコーヒーが農場からカップに辿り着くまでの道のりを追跡し、コーヒー豆を栽培した人とコーヒーを飲む人を結びつけようとしています。

同社では、パッケージコーヒーに関するさまざまな情報をお客様に提供するモバイルアプリの機能を開発しています。提供する情報には、コーヒーの製造元や栽培場所はもちろん、スターバックスがコーヒー農家に対しどういったサポートをしているのか、豆がローストされた時期と場所、試飲メモなどが含まれます。

長年倫理的調達に取り組んできたスターバックスにとって、コーヒーの生産地を把握することは今に始まったことではありません。昨年だけでも、スターバックスは 38 万以上のコーヒー農場と協力してきました。それが、デジタルでリアルタイムな追跡機能により、お客様はコーヒー豆に関する知識をより深めることができるようになりました。もしかすると、コーヒー農家が豆を販売した後、その豆がどこに行くのか把握することで得られる農家側の潜在的利点の方が、より重要で差別化につながるかもしれません。

スターバックスでは、デジタル追跡機能でコーヒー農家の力を高める方法を模索しています。「テクノロジを通じて知識とデータを提供し農家の力を高めることにより、最終的に彼らの生活が向上するようサポートできると信じています」と、スターバックス グローバルコーヒー&ティー担当シニアバイスプレジデントのミシェル バーンズ (Michelle Burns) 氏は述べています。

可視性を高めるこの新たな機能は、マイクロソフトの Azure Blockchain Service によって提供されています。同サービスにより、サプライチェーンの関係者は、コーヒーの移動経路や、豆から袋詰めされるまでの課程が追跡できます。各経路は、変更不可能な共用台帳に記録されるため、関係者全員が製品の辿った道のりをより完全に把握できるようになります。

これにより、コーヒー農家は豆を出荷した後の情報をより詳しく知ることができ、可視性が高まります。これが農家の力を高めるだけでなく、お客様もコーヒーを購入することでサポートしている実際の人々に与える影響が実感できます。

「高品質で、人の手によって入れられたドリンクも非常に重要ですが、コーヒーにまつわる物語や人、つながり、人間性こそが、スターバックスの行動すべてを駆り立てているのです」と、スターバックス グローバルコーヒー&ティー担当シニアバイスプレジデントのミシェル バーンズ (Michelle Burns) 氏は述べています。「このように透明性を高めることで、お客様は スターバックスで味わうコーヒーが、多くの人が深く関わった結果できたものだということが実感できます」

スターバックスは、3 月の年次株主総会でデジタル追跡機能のプレビューを行いました。最終的に スターバックスのお客様は、モバイルアプリを使ってパッケージコーヒーの道のりが追跡できるようになります。

「スターバックスでは、コスタリカ、コロンビア、ルワンダのコーヒー農家にインタビューし、彼らのストーリーをヒアリングすると同時に、彼らの知識やニーズを確認し、デジタル追跡機能が農家にどう役立つのか見極めようとしています」とバーンズ氏は語ります。「今、新たな基盤を築いているところです。今後数カ月で新たな報告をするのが楽しみです」

Build 2019 で発表された最新のイノベーションについて学び、ソリューションを構築する新たな方法を構想するには、こちら (Build 2019) を確認してください。

【トップ写真】
ニューヨークの 81 番地とブロードウェイ通りに面するスターバックス店舗。この店舗はもちろん、世界中のスターバックス店舗にて、シンプルな日常に見えるシーンの裏で最先端のイノベーションが力を発揮しています。写真はすべてスターバックスの提供によるものです。追加のレポートは デボラ バック (Deborah Bach) が担当しています。

 

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフト Web サイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Web サイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Web サイト http://www.microsoft.com/

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