ブラッド スミス (Brad Smith) プレジデント、ジャドソン アルソフ (Judson Althoff) エグゼクティブバイスプレジデント 兼 チーフコマーシャルオフィサー
※本ブログは、米国時間 10 月 27 日に公開された “Advancing a net zero future: Ahead of COP26, new carbon accounting tools available with the Microsoft Cloud for Sustainability, now in public preview” の抄訳を基に掲載しています。
本日マイクロソフトは、Microsoft Cloud for Sustainability のパブリックプレビューが公開されたことを発表します。これは重要な瞬間です。世界で二酸化炭素排出量を削減する取り組みの優先度が高まっており、すべての人が個人としても集団としても集中して迅速に行動を起こさなくてはならない状況です。今回発表した新サービスは、この取り組みに重要な貢献を果たすことができるもので、より持続可能な経営へと前進するお客様を支援できると考えています。
この 2 年間、マイクロソフトを含め世界中の政府や企業が二酸化炭素削減に向け重要な公約を掲げてきました。しかし、グラスゴーで開催される気候変動枠組条約第 26 回締約国会議 (COP26) にて世界がネットゼロに向けた野心を共有しようとする中、公約以上のものが必要だということが明らかになりました。つまり、進歩が必要なのです。
グラスゴーで議論の中心となるのは、真から持続可能な結果を出すには何が必要かという点です。その答えは 3 つだと考えています。
- まず、二酸化炭素を管理するには二酸化炭素を測定しなくてはなりません。全員が理解できる言語で、一貫した正確な方法にて二酸化炭素排出量と除去量を測定する必要があるのです。つまり、二酸化炭素測定には標準的なアプローチを採用する必要があります。
- 次に、すべての企業が新しい二酸化炭素測定基準を採用し、その基準を使って二酸化炭素排出量を記録し報告しなくてはなりません。
- そして、大規模な測定には自動化が欠かせません。新たなデジタルテクノロジでツールを作り、二酸化炭素排出の源をつないで正確かつ安価に二酸化炭素のレポーティングを行う新世代を実現するような新しいエコシステムを構築する必要があります。
マイクロソフトは、このそれぞれの段階に注力しています。COP26 の主要なパートナーとして、マイクロソフトは新たな二酸化炭素測定基準を推進するよう提案し、その基準を自ら採用して自社の目標を達成したいと考えています。マイクロソフトは技術革新とテクノロジへの投資を進めており、その結果のひとつが Microsoft Cloud for Sustainability なのです。
ベストを尽くしてはいますが、二酸化炭素排出量を測定する機能は未だかなり初期段階にあります。この事実を認識するところから真の進歩が始まります。そこで、皆でどのように協力ができるか、そしてマイクロソフトが企業としてどの部分に貢献したいかについて、以下に提言したいと思います。
炭素に関しては同じ言語で語る必要があります
炭素問題やその解決策について語る際には皆同じ言葉を使っていますが、その言葉には現在それぞれ異なる意味があります。ここでは世界中の誰もが炭素に関して同じ言語を使い始めるべきでしょう。
まずは「ネットゼロ」の真の意味を定義するところから始めましょう。現在、一部の企業は「ネットゼロ」を達成するにあたって「迅速な勝利」を宣言していますが、こうした「勝利」が本物であるかどうかは全くもって明らかになっていません。これでは明白さよりも全体で混乱が生じるリスクがあり、何よりも企業が進めるべき大規模な取り組みの信頼性が損なわれてしまいかねません。
マイクロソフトでは、企業の排出量の全領域、つまりスコープ 1、2、3 のすべてを把握するところから「ネットゼロ」が始まると考えています。これらすべての排出量を考慮しない限り、良い成績を出しているように見えたとしても、結果は気候変動のニーズに対応するにあたって世界が必要とするものには到達できないのです。
また、「ネットゼロ」とは、単に排出を「避ける」だけで相殺できるものではありません。例えば、誰かに資金を渡して木を切り倒すことをやめてもらう、といったようなことです。「ネットゼロ」とは、環境から二酸化炭素を効率的かつ持続的な方法で取り除くことです。これは自然を活用した除去技術から始めることになりますが、未だ発明されていない技術が必要なことも明らかです。そこでマイクロソフトでは、10 億ドルの Climate Innovation Fund で複数の企業に直接投資しているほか、Breakthrough Energy の Catalyst という取り組みにも 1 億ドルを寄付し、新ソリューションの加速と拡大を支援しています。
正確で標準化された二酸化炭素測定法が必要です
総売上高が 11 兆 4000 億ドルを超える 1500 社以上の企業が、ネットゼロに取り組むと発表しています。これは良いことですが、企業がその目標を達成し、説明責任を果たすには、世界共通の二酸化炭素測定法を改善し、測定基準を定める必要があります。そのためには、世界で財務管理に求められているのと同じ厳格さで二酸化炭素を測定しなくてはなりません。
現在、企業やその他の組織においても、財務結果が強固に監査され、記録、報告が求められるようになっています。上場企業の場合は決算を公表し、規制当局がその正確さを確認します。世界で二酸化炭素測定に同じような厳格さが求められることは、占い師でなくても予測できるでしょう。まだその段階には至っていませんが、事業計画の主要原則は現状に留まることなくゴールに向かうことです。これには業界の意見を取り入れた標準二酸化炭素測定システムが必要で、それが規制当局にも採用されなくてはなりません。
Microsoft Cloud for Sustainability が二酸化炭素測定の自動化に向けた新デジタルツールを提供します
マイクロソフトのお客様から日々伝わってくるのは、サステナビリティへの取り組みの中でも特に大きな課題となっているのはデータ管理だということです。価値連鎖のあらゆる分野からデータが流れてくるものの、残念ながら現在その多くは質が低く、サイロ化されていて共有するのも困難となっています。二酸化炭素排出量のデータを必死で取得したとしても、分析や行動に結びつくよう適切に取り込めなければ意味がないという現実的なリスクが潜んでいます。
マイクロソフトでも、2030 年までにカーボンネガティブになり、ウォーターポジティブになり、廃棄物ゼロを達成するという取り組みを進める中で、この課題に直面しました。そこで、世界レベルのデータや環境科学のチームと、当社のエンジニアおよびプロダクトチームを集約させるべきだということにすぐに気が付きました。皆が協力することで、単に自分たちのためだけでなくお客様のためにも、新しくより良いデジタルテクノロジを構築できると考えたのです。それが Microsoft Cloud for Sustainability の発端となりました。
Microsoft Cloud for Sustainability は、Microsoft Cloud の幅広い機能を活用しています。SaaS のパッケージソリューションで、データソースへの接続や、データ統合およびレポーティングの高速化、正確な二酸化炭素測定、目標に対するパフォーマンスの測定、インテリジェントなインサイトの入手などが可能となり、組織はサステナビリティに向け効果的な行動が取れるようになります。同ソリューションは現在主に排出量の管理が中心となっていますが、将来的には水や廃棄物の管理にも対応する予定です。
Microsoft Cloud for Sustainability は、企業のサステナビリティ目標の達成に必要となる 3 つの重要なプロセスを推進できるよう支援します。
1 点目は二酸化炭素排出量の記録です。Microsoft Cloud for Sustainability は排出源にほぼリアルタイムで接続、手動でのアップロード作業を削減できるコネクタによってデータ収集を自動化します。ビジネスソリューションやエネルギープロバイダー、旅行ツール、取引パートナー、IoT、システムテレメトリーなど、あらかじめ構築されたコネクタや業務データプロバイダーのカタログからデータ接続の設定が可能です。また、共通のデータモデルを活用しているため、排出源全体のデータサイロを分類し、データ統合とレポーティングが加速できます。
2 点目は二酸化炭素のレポーティングです。Microsoft Cloud for Sustainability には、資源の消費量や環境への影響、サステナビリティの進捗状況を分析して可視化し、関係者や規制当局、そして一般に向け報告する機能が備わっています。データの可視化とダッシュボードによってベースラインを作成し、消費量を追跡し、目標に対するパフォーマンスを測定します。また、公開レポーティング用にデータを簡単にエクスポートすることも可能です。
3 点目は二酸化炭素の削減です。Microsoft Cloud for Sustainability は、排出量の削減やビジネスプロセスの改善につながる実用的な知見と提案を提供するよう設計されています。データに直接結びつく段階的で長期的な目標を設定し追跡できるようになっており、点数カードやインサイトによって目標達成への道筋から外れないよう支援します。共通のデータモデルにより、自社の進捗状況と Microsoft Cloud for Sustainability を利用している他社の進捗状況とを比較することも可能です。また、規制要件を満たすにあたって潜在的なギャップがないか見極める際にも役立ちます。
二酸化炭素測定への取り組みは、最終目標と別のものではありませんし、最終目標に到達できるものでもありません。これは効果的な二酸化炭素削減戦略における重要な基盤であり、持続可能な未来への第一歩です。これは、当社が Microsoft Cloud を通じて広範囲に提供しているものの一部です。これによってお客様は、より良いデータ資産を開発できるようになり、より良いデジタルツールを利用して現場から役員室まで組織全体をつなぐことができるようになり、トレンドを予測して積極的に変化を起こしサステナビリティへの目標を他の事業目標と共に達成できるようになるのです。
新しい二酸化炭素テクノロジのエコシステムを構築する必要があります
マイクロソフトはこの取り組みを進める中で、世界が必要としているのは単に新しいデジタルテクノロジだけではないという結論に達しました。デジタルテクノロジ以外にも、世界には二酸化炭素排出量の記録、報告、削減をより高度にサポートする新たなデジタルエコシステムが必要なのです。現在の二酸化炭素測定の状況は未だ極めて初期段階にあります。現在組織では通常、使用記録を査定し、それに関連する平均的な排出量の概算表を確認しなくてはなりません。これは世界が本当に必要としているものとはかけ離れています。必要なのは、正確でほぼリアルタイムのデータを排出源から直接引き出すことです。
そこでマイクロソフトは、Microsoft Cloud for Sustainability のベースとなるデジタルテクノロジと共通データモデルを開発するだけでなく、協力を必要とするさまざまな企業や業界を結びつける新たな幅広いエコシステムを構築することにしたのです。マイクロソフトはパートナーと協力し、データコネクタや業界特化型ソリューションを作成し提供できるよう、またそれがあらゆる二酸化炭素排出源のレポーティング自動化へとつながるよう、前進していきます。これにより、あらゆる業界で高度な分析や AI、機械学習、IoT、デジタルツインを利用した新たな職種別ソリューションや業界別ソリューションへの道が開かれ、サイロ化したシステム全体でデータの取得や把握ができるようになります。
これは単なる新製品ではなく、新たな幅広いソリューションです
こうしたことからもわかるように、マイクロソフトでは技術開発への取り組みを、世界の炭素問題のあらゆる側面を前進させるというより広範囲の取り組みと組み合わせています。新製品も重要ですが、それだけでは到達できないこともあるのです。だからこそマイクロソフトでは、共通の炭素言語を推奨し、効果的な二酸化炭素測定法を開発し、お客様が二酸化炭素排出量を削減できるよう支援し、これらすべてをサポートするのに必要な幅広いテクノロジエコシステムが構築できるよう、全力で取り組んでいるのです。マイクロソフトのサステナビリティに関するイノベーションやニュース、取り組みについての情報を入手するには、こちらからご登録ください。
COP26 は、世界中の人が集団として自らの立場を把握する貴重な機会です。さらに重要なことは、共に新たな一歩を踏み出すようきっかけを与えてくれる瞬間でもあることです。ひとつだけ明白なことがあるとすれば、その道のりは長く、とても重要だということです。
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