ネットゼロへの道のりを支援: Microsoft Cloud と脱炭素化

Cloud Operations + Innovation 担当コーポレートバイスプレジデント
ノエル ウォルシュ (Noelle Walsh)

※本ブログは、米国時間 10 月 27 日に公開された “Supporting our customers on the path to net zero: The Microsoft cloud and decarbonization” の抄訳です。

データとデジタルサービスに対する需要は今後も急激に増加し、世界のインターネットトラフィックは 2022 年までに倍増[i]すると予測されています。Microsoft Cloud は、仕事や家庭で日々のデジタル体験を支える信頼できるクラウドであり、生命や安全に関わるサービス、教育機関や政府機関などの重要アプリケーション、気候変動を含む世界で最も差し迫った課題に対する科学研究の推進など、多様な用途に活用されています。クラウドを支えているのは、世界の発電網に接続された物理的データセンター、ネットワーク、そして光ファイバーです。すでに、クラウドはその大規模な効率化によって世界の計算需要に必要な二酸化炭素排出量を削減しており、お客様はその恩恵を受けています。それでも、クラウドの需要増はデータセンターの需要増につながり、その運用には電力、土地、そして水が必要となります。その結果、マイクロソフト、そしてクラウド業界全体が、重要な課題に直面しています。それは、デジタル経済、科学研究、そしてインクルーシブな経済機会を発展させるために私たちのコンピューティングパワーを拡大しながら、私たちのかけがえのない地球を保護していく必要があるということです。

マイクロソフトのコミットメントは、2030 年までにカーボンネガティブとなり、1975 年の創業以来直接的に、そして電力消費によって排出したすべての炭素を 2050 年までに環境から取り除くことです。そのためには、データセンターが広範な脱炭素化のためのソリューションの一部となる必要があります。私たちが直面している気候変動の問題は、1 企業や 1 業界だけで解決できるものではありません。

本日は、マイクロソフト自身の目標達成に加えて、進捗状況を測定するツールにより、お客様やパートナーを支援し、お客様に信頼いただいているデータセンターの運用やサプライチェーンを通じて、より大きな影響を与えていくためのアプローチについて詳しくご紹介します。また、マイクロソフトは、将来のデータセンターの設計と運用におけるサステナビリティを多面的に考えるきっかけとなる画期的な技術を追求しています。

カーボンネガティブな未来に向けて、持続可能なデータセンターを進化させる

官民問わず、クラウドに対する需要の高まりを支えるために成長を続けるマイクロソフトにとって、サステナビリティの意欲的な目標を達成するためには、今日のデータセンターの運用とエンジニアリングの課題に対して創造的で革新的なソリューションにリソースを投入することが不可欠です。データセンターへの研究開発投資は、建設と運用における炭素排出量の削減、冷却用の水の使用量の大幅な削減または廃止、サーバー部品再生による E-waste の削減、データセンター周辺地域の生態系の維持など、重要な課題に対応しています。マイクロソフトのミッションは、データセンターの運用の向上方法を見つけることだけでなく、これらの学びをクラウド業界や建造環境業界に広く伝えていくことです。

本日、いくつかの重要な先行的取り組みの進捗状況を発表します。これらの取り組みは、マイクロソフトの既存のオペレーションに反映され、データセンターの未来を形作るのに役立つ新たな知見や洞察を提供するものです。

  • 2024 年までにデータセンター運用における水の使用量を 95 パーセント削減: 2030 年までにウォーターポジティブになるというマイクロソフトのコミットメント実現には、水の使用量を削減・排除するために事業のあらゆる側面に目を向けることが必要です。本日、2024 年までに世界の蒸発冷却型データセンターで使用される水の量を 95 パーセント (年間約 57 億リットルに相当) 削減する、データセンターの温度管理の新たなアプローチを発表します。温暖な場所でのサーバーの性能に関するマイクロソフトの広範な世界的リサーチにより、サーバーの性能と信頼性を維持するために水を使った蒸発冷却が必要な場合、さまざまな気候に合わせて高い設定値を定めることができるようになりました。このプロジェクトは 2024 年までに完全に実施される予定で、アムステルダム、ダブリン、バージニア、シカゴなどの地域では冷却のための水の使用をなくし、アリゾナなどの砂漠地域では水の使用を 60 パーセント削減できる可能性があります。
  • 水を使わない冷却方法を目指した液浸冷却の研究を継続: 本年、マイクロソフトは液浸冷却技術の研究開発において重要なマイルストーンを達成しました。本番環境で二相式液浸冷却を実行している最初のクラウドプロバイダーとなり、自社データセンターでの広範な使用が可能であることを実証しました。また、マイクロソフトの液浸冷却技術に関する最新の研究では、オーバークロックという概念に取り組んでいます。オーバークロックとは、チップ部品をあらかじめ設定された電圧、熱、電力の設計限界を超えて動作させ、性能をさらに向上させることです。マイクロソフトのテストによると、一部のチップセットでは、液浸冷却を使用することでパフォーマンスが 20 パーセント向上することが判明しています。これは、データセンターの冷却に使用する水を削減し、最終的には廃止するというサステナビリティの目標達成だけでなく、高度な AI や ML ワークロードのために、より高い冷却温度で動作する高性能のチップ実現にも液浸冷却技術が利用できることを示すものです。液浸冷却による電力と冷却の両面での効率化により、データセンターのラックデザインに新たな可能性が生まれます。すなわち、液浸冷却により、より小さなスペースに高密度にサーバーを設置できるようになり、その結果、データセンターの床面積あたりの処理容量を増加でき、さらに、将来的にはより戦略的な場所に小規模データセンターを設置できるようになります。これは、水を使用しない冷却設計のもう 1 つの利点です。
  • 地域の生態系を支えるデータセンターの設計: マイクロソフトが、世界各地で運営するデータセンターの設置地域の原生種、気温、気象パターンはさまざまです。地域の生態系をサポートするデータセンターの設計方法を理解するには、生態系が単独でどのように機能しているかを理解することが必要です。マイクロソフトは、12 のデータセンターの設置地域で生態系の状況をベンチマークしており、その作業を年末までに完了する予定です。この調査を通して、マイクロソフトは、水の量と質、空気、炭素、気候、土壌の質、健康状態、生物多様性といった観点から、生態系のパフォーマンスを定量化しています。マイクロソフトの目標は、周辺地域を一新して活性化することで、地域社会や環境に再生価値を提供するための道筋を回復し、創造することです。この調査結果は、アムステルダムのデータセンターリージョンの一部である北オランダにおける最初のプロジェクトに反映されています。まず、データセンター周辺に低地の森林地帯を設けると共に、水飽和率が高く、水のろ過に適した植生を持つ森林性の湿地帯を設けて、雨水や流出水を自然に処理していきます。こうしたさまざまなアプローチは、生態系のパフォーマンスを最大で 75 パーセント回復できることを示唆しています。この領域ではまだやるべきことは多いですが、今までの成果に励まされ、刺激を受けています。
  • データセンターの設計・建設におけるカーボンフットプリントの削減: Global Alliance for Buildings and Construction の最新データによると、内包二酸化炭素 (エンボディドカーボン) は、世界の温室効果ガス排出量の少なくとも 11 パーセントを占めています。内包二酸化炭素とは、建築物やインフラのライフサイクル全体における、材料や建設プロセスに関連した排出量です。その多くは、コンクリートや鉄鋼に起因しています。低炭素のオプションを選択することで、すべての新しい建築物に関連した二酸化炭素排出量の削減に大きな影響を与えることができます。マイクロソフトは、お客様のご要望にお応えして、毎年 50 から 100 のデータセンターを新設していますが、これらのデータセンターの設計・建設における内包二酸化炭素を削減するために、非営利団体 Building Transparency が開発した EC3 (Embodied Carbon in Construction Calculator) というツールを使用しています。現在、すべての新規データセンター建設の最初の重要なステップとして、マイクロソフトは建設チームに EC3 ツールを使用して、内包二酸化炭素を削減する建築材料を特定することを求めています。EC3 により、コンクリートや鉄鋼の内包二酸化炭素を 30 から 60 パーセント削減できる機会があることが判明しました。

マイクロソフトの目標は、自社だけでなく業界全体で炭素貯蔵材料の採用を推進することであり、カーボンポジティブな建築に貢献できる、建物の基礎、構造、筐体向けの持続可能な素材を見つけるための研究に投資しています。その 1 つが、ワシントン大学の非営利産学連携組織である Carbon Leadership Forum (CLF) との連携です。私たちは、建築物の二酸化炭素排出量を削減し、気候変動への影響を低下できる 6 つの低炭素材料 (土のスラブ、非ポルトランドセメントのコンクリートスラブ、藻類で作られたレンガ/パネル、菌糸 (キノコ) の構造チューブ、特定目的繊維、農業廃棄物のパネル) について調査した研究を共同発表しました。この冬を通じて、データセンターなどの建築物の耐久性を検証するためのテストを行い、得られた知見を業界の他の人々にも伝えていきます。最後に述べたい点として、生分解性プラスチック、持続可能なプリント回路基板、バイオコンクリート材料などを用いて、データセンターおよびその他の建築物において、内包二酸化炭素量と廃棄物量をネットゼロにすることを目的とした Project Zerix を最近発表した Microsoft Research の同僚とも協力していきます。

マイクロソフトの取り組みの進捗

今日における進展は、先進的データセンターの開発や、パートナーとの共同開発によるクラウドベースのソリューションやツールへの先行投資があったからこそ可能になったものですが、これらはマイクロソフトが直接的に事業で活用できるだけはなく、広く市場全体でも活用できるものです。最近のマイルストーンには以下のものがあります。

  • 再生可能エネルギーとグリッドの脱炭素化: 7 月には、2025 年までに再生可能エネルギーの供給を 100 パーセントにするというコミットメントをさらに拡大し、2030 年までに電力消費量の 100 パーセントを、二酸化炭素を排出しないエネルギーの購入で賄うことをコミットしました。マイクロソフトは、これを 100/100/0 コミットメントと呼んでいます。マイクロソフトは、過去 12 カ月間で、世界 10 カ国において、約 5.8 ギガワットの再生可能エネルギーの電力購入契約を新たに締結しました。これには 35 件以上の個別契約が含まれ、そのうち 15 件以上が、デンマーク、スウェーデン、スペイン、英国、アイルランドなどの欧州での案件です。今回の調達により、当社の運営中および契約中の再生可能エネルギープロジェクトは、全世界で 7.8 ギガワットとなりました。Bloomberg NEF によると、現時点でマイクロソフトは 2021 年に最大の再生可能エネルギーを購入した企業となっています。しかし、それだけでは終わりません。
  • Microsoft Circular Center: マイクロソフトは、サーバーのライフサイクルを延長し、再利用することで廃棄物を減らすことができる、前例のない施設 Microsoft Circular Center を開設しました。また、最近、アムステルダムにも Circular Center を開設し、翌会計年度にはボイドン、ダブリン、シカゴ、シンガポールにも開設する予定です。2020年には、CDP の報告によれば、マイクロソフトのトップサプライヤーは、合計 2,100 万トンの二酸化炭素換算量(CO2e)を削減しました。来年以降は、このモデルをすべてのクラウドコンピューティング資産へと拡大し、90 パーセントの再利用を達成する予定です。
  • LEED 認証: マイクロソフトは、すべての自社データセンターで LEED (Leadership in Energy & Environmental)のゴールド認証を得ることにコミットしました。これは、マイクロソフトの建築物がエネルギーと資源の面で効率的であることを実証するものです。6 月に開設されたアリゾナのデータセンターリージョンは、すでに LEED ゴールド認証を取得しています。
  • エネルギーマッチングの常時実施: マイクロソフトは、最も持続可能性が高いクラウドリージョンをスウェーデンに建築中であり、年末までにサービスを開始する予定です。そこでは、パートナーの Vattenfall と共同開発した初の 1 時間ごとのエネルギーモニタリングソリューションを使用することで、すべての消費時間において再生可能エネルギーを 100 パーセント使用することが可能になります。このソリューションは、現時点で Vattenfall のお客様に提供されています。
  • クラウドサプライチェーンとの協力によるスコープ 3 の排出量削減: CDP (Carbon Disclosure Project) の最新の報告サイクルによると、マイクロソフトのスコープ 3 排出量 (事業活動に伴うすべての間接排出量) の削減を支援するため、当社のトップサプライヤーは、全体で 2,320 万トンの二酸化炭素換算量 (CO2e) を削減し、総額 14 億 7,000 万ドルを節約しています。2021 会計年度では、プログラムに参加するサプライヤーの数を増やし、排出量削減を確実に達成するための協力関係を深めています。これは、前述の、内包二酸化炭素を削減することでデータセンターの設計と建設におけるスコープ 3 の排出量に対処するための取り組みに基づくものです。

Microsoft Cloud for Sustainability パブリックプレビューの発表

これらのクラウドインフラへの投資に加えて、本日、Microsoft Cloud for Sustainability のパブリックプレビュー版を発表します。これにより、企業はより効果的に二酸化炭素の排出量を記録、報告、削減し、ネットゼロを目指すことができるようになります。測定できないものを改善・変更するのは困難です。世界は、二酸化炭素排出量と環境への影響を削減するために、正確で一貫性があり信頼できる方法で二酸化炭素排出量を測定するための世界標準と革新的テクノロジソリューションを必要としています。

マイクロソフトは、パートナーやお客様と共に、ネットゼロを達成し、カーボンマイナスへの道を切り拓いていきます。そのためには、自社の学びや進歩を共有し、新しいツールやソリューションを生み出し、現況をベンチマークし、進捗を測定し、広く情報公開していく必要があります。今日のデータセンターの運用とコミットメントに関する追加情報は、microsoft.com/sustainability をご参照ください。また、こちらのデータセンターのバーチャルツアーにもご参加ください。


[i] Data Centres and Data Transmission Networks – Analysis – IEA

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