測定が前提: 持続可能性のコミットメントの進捗状況と最新情報

Made to measure_Sustainability commitment progress and updates

ルーカス ジョッパ (Lucas Joppa)
Chief Environmental Officer
ノエル ウォルシュ (Noelle Walsh)
Cloud Innovation + Operations 担当 コーポレートバイスプレジデント

※本投稿は、米国時間 7 月 14 日に公開された “Made to Measure: Sustainability Commitment Progress and Updates” の抄訳を基に掲載しています。

送電網の脱炭素化に向けたマイクロソフトのビジョンおよびコミットメント、Microsoft Cloud for Sustainability の紹介、そして自社の持続可能性の取り組みに関する最新情報をお伝えします。

気候変動が実際に見受けられ、対策について訴える声が高まってきています。今週ニューヨークで開催される UN High Level Political Forum や、11 月に開催される国連の年次気候変動会議 COP26 など、気候システムの安定化に向けた世界的な取り組みに関する意思決定のために、リーダーたちが一堂に会しています。

これらの対話は、2 つの点にフォーカスしています。それは、これまでのコミットメントの実行状況を透明性が高い形で報告すること、そして 2050 年までに炭素実質排出量ゼロの経済を実現するために必要な行動に向けて目標設定をさらに拡大することです。

マイクロソフトは、これらの進捗に注目しています。また、COP26 の Principal Partner としての役割を中心に、これらの活動に直接的に取り組んでいます。そしてこれらの活動を自社内でも行っています。このブログでは、ネットゼロカーボン経済の最も重要なインフラに対するマイクロソフトの野心的な目標を明らかにし、インフラの構築を支援する新たな目標を提示して、世界中のお客様が自社の炭素排出量を記録、報告、および削減できるよう支援するための主要な新製品を紹介します。また、2030 年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、そしてゼロウェイストになって、Planetary Computer 構築により生態系を保護するというマイクロソフトの公約の進捗状況についても説明します。

不可欠な要素: 脱炭素型送電網

科学者や政治家が描くネットゼロのあらゆるシナリオには、電化製品の大幅な増加という共通の、そして不可欠な要素があります。自動車や製造工場を電力で動かすことで、世界の炭素排出量の大部分を削減することができます。しかし、これは電力がゼロカーボンのエネルギー源 (風力、太陽光、水力、原子力または、ポイント汚染源である二酸化炭素回収・貯留) から生成され、貯蔵されて、必要な場所に転送された場合に限ります。そして、残念ながら、世界の送電網はこのようには作られていません。現在、送電網に流れる電力のほとんどは炭素を大量に消費する資源から作られており、エネルギー貯蔵技術は極めて未熟であり、現在の送電網インフラは、ゼロカーボン資源が提供するさまざまな発電能力や、急速に電化が進む社会の電力需要の増加に効率的に対応することができていません。

マイクロソフトの 100/100/0 ビジョンとコミットメント

マイクロソフトでは、100/100/0 という長期的なビジョンを掲げています。これは、100 パーセントの電力を、100 パーセントの時間、ゼロカーボンの電力源から供給するというものです。これをビジョンと呼ぶのは、結果をコントロールできないからです。マイクロソフトの世界中のデータセンターやオフィスは、送電網に接続されており、あらゆる場所におけるさまざまなソースから生成された膨大な電力のプールからエネルギーを消費しています。しかし、エネルギーの購入方法によって、結果に影響をもたらすことはできます。これが、本日、マイクロソフトが自社の 100/100/0 コミットメントを発表した理由です。グローバルな送電網インフラをコントロールする能力に限界があることを認識しつつ、それに影響を与える能力を最大化することを目指しています。2030 年までに、マイクロソフトは、電力消費量の 100 パーセントを、100 パーセントの時間、ゼロカーボンエネルギーの購入により賄うことを目指します。マイクロソフトの 100/100/0 ビジョンとコミットメント

マイクロソフトの影響力は、ある側面ではすでに大きなものになっています。2025 年までに必要なエネルギーの 100 パーセントに相当する電力購入契約を締結するという既存のコミットメントにより、マイクロソフトは世界最大級の再生可能エネルギーの購入者になっています。過去 12 カ月間に、世界 10 カ国において、およそ 5.8 ギガワットの再生可能エネルギーの新規購入契約を締結しました。これには 35 件以上の個別契約が含まれ、そのうち 15 件以上が、デンマーク、スウェーデン、スペイン、英国、アイルランドなどの欧州での契約です。この調達により、マイクロソフトの運営中および契約中の再生可能エネルギープロジェクトは、全世界で 7.8 ギガワットとなりました。

一方で、さらにできることがあります。どれだけ多くのゼロカーボンエネルギーを調達するかは送電網の脱炭素化に重要ですが、いつ、どこで、誰から購入するかも重要です。今後は、エネルギー購入契約を刷新し、より多くのゼロカーボンエネルギーを送電網に導入し、より多くの高炭素エネルギーを送電網から排除することで、マイクロソフトが利用するすべての送電網の炭素強度のバランスを取ることを目指します。マイクロソフトが接続されている送電網システム上で、ゼロカーボンエネルギーの購入と電力消費量を 1 時間単位で照合していきます。

このコミットメントは、すでに進行中の活動に基づいたものです。

  • Temporal matching (時間的なマッチング): マイクロソフト社と共同で作成された RMI による最近のホワイトペーパーでは、時間ごとのエネルギーモニタリングツールが、ゼロカーボンエネルギーの需要と供給の透明性を提供する可能性を強調しています。このホワイトペーパーでは、1 時間ごとの再生可能エネルギーの供給と需要のマッチング戦略が、脱炭素化された送電網の構築に貢献することが示されています。昨年 11 月には、パートナー Vattenfall と共同で、初の 24 時間 365 日稼働の時間当たり商用エネルギーマッチングソリューションの提供を発表しました。このソリューションは、スウェーデンのデータセンターのエネルギー使用量のモニタリングとゼロカーボンエネルギーマッチングに使用されます。さらに、この成果を活用して、エネルギー供給会社の Eneco とテクノロジ提供会社の FlexiDAO と共同で、オランダのアムステルダムにあるデータセンターの 1 時間当たりのエネルギー消費量を、オランダの洋上風力発電所である Borssele と一致させるという、24 時間 365 日体制 (24/7) の新たな試行プロジェクトを発表しました。マイクロソフトは、FlexiDAO の 24/7 ソリューションのフラッグシップカスタマーとなり、マイクロソフトを含む Eneco の顧客は、FlexiDAO の 24/7 再生可能エネルギーマッチングツールを大規模に利用することができるようになります。
  • Spatial matching (空間的なマッチング): マイクロソフトは、クリーンエネルギーが生産された時間と場所における送電網の状態を考慮した LME (Locational Marginal Emissions) と呼ばれるデータに基づき詳細な測定を実現しています。REsurety と提携し、再生可能エネルギーの供給による脱炭素化の影響をより正確に計算する LME ツールを Azure 上に構築し、初の試験運用を ERCOT で行っています。
  • 購買パートナーシップ: 世界各地のエネルギー供給会社と協力し、35 件以上の電力購入契約を締結することができました。
    • アフリカ系アメリカ人が所有する全米規模の太陽光発電開発会社である Volt Energy と、250MW の太陽光発電プロジェクトのポートフォリオを契約しました。このプロジェクトの目的は、資力の乏しいコミュニティに新たな機会を提供し、再生可能エネルギー産業の多様性を追求することにあります。
    • マイクロソフトは、bp との提携を進め、データセンターの電力需要に対応できるクリーンなエネルギーを供給できるよう、世界の複数の地域における色々な再生可能エネルギーのパイプラインを組み入れた取引システムを確立しました。
    • 持続可能なエネルギーソリューションを開発・運営する世界有数の企業である Invenergy が、米国および欧州において、1,000MW 以上の新規再生可能エネルギー契約を締結しました。
    • PJM エネルギー市場での専門知識を持つ AEP Energy が、最大 560MW の新規再生可能エネルギー資産のポートフォリオからマイクロソフトに再生可能エネルギーを提供します。
    • Shell とのクリーンエネルギーに関するパートナーシップは、EU 域内で 300MW 以上の再生可能エネルギー契約をもたらし、さらに拡大を続けています。

マイクロソフトの行動だけでは送電網の脱炭素化は実現できません。しかし、その目標達成の速度と規模に影響を与える重要な市場の需要の変化を促進するために、マイクロソフトはその役割を果たしていきます。

お客様とパートナーの支援

マイクロソフトが脱炭素化に貢献できるインフラは送電網だけではありません。新たなデジタルツールにより、お客様のオペレーションやインフラの脱炭素化の支援も行います。これが、マイクロソフトが、新ソリューション Microsoft Cloud for Sustainability を発表した理由です。このソリューションにより、世界中のお客様がネットゼロを目指して自社の炭素排出量を記録、報告、削減できるようになります。

マイクロソフトのコミットメントの進捗状況

2030 年までにカーボンネガティブ、ウォーターポジティブ、そしてゼロウェイストを達成し、Planetary Computer の開発により生態系を保護するというコミットメントに基づき、マイクロソフトは以下を達成しました。

  • 最初に実施した炭素除去の提案依頼の結果* を踏まえ、2022 年 6 月期に炭素除去の購入に関する新たな提案を評価することを発表します。適切なプロジェクトを有する、関心のあるサプライヤーは、こちらで詳細を確認し、提案書を提出できます。
  • 地域社会やパートナーと協力して、アリゾナ州の新しい持続可能なデータセンターリージョンのプロジェクトを含め、世界各地で 20 以上の水資源プロジェクトを立ち上げました。
  • Water.org とのパートナーシップにより、16 万人の人々を安全な水や衛生設備を利用できるよう支援し、初年度に 5 億リットルに相当する水資源のプラス効果をもたらしました。Woman smiling in Indonesian rice field
  • テキサス州サンアントニオとワシントン州コロンビアのデータセンターで Zero Waste 認証を取得し、バージニア州ボイドンとダブリンのデータセンターでは認証を更新しました。
  • Amsterdam Circular Center を開設し、翌会計年度にはバージニア州ボイドトン、ダブリン、イリノイ州シカゴ、そして、シンガポールにも新たに Circular Center を開設する予定です。
  • PCR (ポストコンシューマーリサイクル) 素材を使用した Xbox Wireless Controller多様な新モデルを発売開始しました。また、海、水路、海岸から回収されたプラスチック廃棄物の加工による消費者向け製品への利用について、サプライヤーと協力して検討を進めており、近日中に詳しくご紹介する予定です。
  • The Nature Conservancy と National Fish and Wildlife Federation とのパートナーシップにより、15,000 エーカー以上の重要な生態系を保護するための土地保護の公約を達成しました。
  • 持続可能性分野の実務家に地球環境データの処理機能を提供する Planetary Computer のプレビューを行いました。グローバルパートナーによるアプリケーションの例としては、CarbonPlan による森林リスクマッピングツールや、Development Seed による AI 支援型土地マッピングプラットフォームなどがあります。
  • AI for Earth プログラムを通じて、Esri と共同で Impact Observatory に投資し、地球の高解像度土地被覆図を作成しました (現在公開中)。Satellite map of Melbourne Australia 

未来への投資

10 億ドル規模の Climate Innovation Fund を通じ、いくつかの企業に以下のような直接投資を行い、ソリューションの加速と拡大を支援しています。

  • NCX (旧 SilviaTerra): 米国本土で最大の面積を持つ森林炭素プロジェクトの創設に資金を提供し、あらゆる規模の土地所有者の炭素市場への参加を容易にできるよう支援しています。
  • Twelve (旧 Opus12): さまざまな業界のサプライチェーンや主要製品からの排出量削減の規模拡大を目的としています。
  • Rheaply: 再利用による二酸化炭素排出量の削減量測定と循環型経済を促進する、炭素関連の Rheaply 製品の機能アップデートの開発に資金を提供しています。

より持続可能なサプライチェーンの形成

本日、マイクロソフトの Supplier Code of Conduct における報告要件を支援するために、企業、特にマイクロソフトのサプライヤーが温室効果ガス (GHG) の排出量を報告し、クリーンエネルギー戦略を策定し、エネルギー関連の排出量を削減するための詳細な能力開発ツールとリソースをリリースします。本ツールとリソースは、Engie、WSP、CDP と共同開発されました。また、アジアをはじめとする新興市場のマイクロソフトの一部サプライヤーと協力して、GHG 排出量を削減する技術的ソリューションを特定し、実装支援を行い、より効率的で低炭素な事業への投資を支援するための融資ソリューションを提供する IFC と提携します。Logo for UN Climage Change Conference

政策決定における意見表明

気候関連の公共政策の問題に対して、マイクロソフトは頻繁に意見を表明し、炭素、水、廃棄物、生態系に関する新たな取り組みを支持しています。

  • 最近、私たちは米国証券取引委員会に対して、気候変動に関する情報開示において米国政府や世界全体で気候変動測定の共通基準を設ける必要性を中心としたコメントを公表しました。
  • 欧州において 2030 年までに排出量を少なくとも 55 パーセント削減し、2050 年までに気候変動に左右されない欧州を実現することを目的とした、欧州委員会の Fit for 55 パッケージへの賛同意見を表明しました。
  • 今秋開催される COP26 において、ネットゼロカーボン経済にコミットし、個人としても集団としても炭素排出量を削減するための取り組みの学びを共有するために一堂に会する真の機会を得られます。これは、世界的な気候変動に関する対話における重要な機会であり、ネットゼロの意味、ネットゼロの測定、ネットゼロを支える市場という 3 つの主要分野で大きな進展があるでしょう。

持続可能性の構築

マイクロソフトは、キャンパス建設における革新的な取り組みも進めています。最近では以下のことを行いました。

  • Puget Sound と Silicon Valley の両キャンパスで Zero Carbon Certification を取得し、ゼロカーボン設計が現在でも実現可能であることを示しました。マイクロソフトは、International Living Future Institute の Zero Carbon Certification を目指しています。
  • ワシントン州レドモンドキャンパスの Thermal Energy Center を公開しました。これは、地球深部の一定の温度を利用する広大な地熱井により、二酸化炭素を排出しない電力でキャンパスの冷暖房を効率的に行う、最新の集中型電力供給システムです。Microsoft Thermal Energy Center illustration
  • 低炭素製品の選択と調達、および建設段階での炭素排出量の追跡と削減による環境負荷の低減に関するホワイトペーパーを作成しました。

今年前半には多くのことが行われましたが、まだまだやるべきことがたくさんあることは明らかであり、マイクロソフトは今後も進捗状況や教訓についての透明性を維持していきます。結局のところ、2050 年までに炭素排出量ゼロの経済を実現するためには、マイクロソフトの目標達成だけでは不十分であり、他の企業や政府が協力する必要があります。今週開催される Inspire、今秋の COP26、そして、それ以降も、行動に基づいた重要な会話を続けてく所存です。

*現在の炭素除去市場の状況や、炭素除去を調達したマイクロソフトの経験について関心をお持ちの企業向けに、7 28 日に GreenBiz VERGE Net Zero と共同で無料のサミットを開催します。

その他の Inspire に関連する発表内容はこちら https://news.microsoft.com/inspire2021/

【日本マイクロソフト株式会社について】
日本マイクロソフト株式会社は、マイクロソフト コーポレーションの日本法人です。マイクロソフトは、インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ時代のデジタルトランスフォーメーションを可能にします。「Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)」を企業ミッションとしています。
日本マイクロソフトは、この企業ミッションに基づき、「革新的で、安心して使っていただけるインテリジェントテクノロジを通して、日本の社会変革に貢献する」企業像を目指します。

マイクロソフトに関する詳細な情報は、下記マイクロソフト Web サイトを通じて入手できます。

日本マイクロソフト株式会社 Web サイト http://www.microsoft.com/ja-jp/
マイクロソフトコーポレーション Web サイト
http://www.microsoft.com/

* Microsoft は、米国 Microsoft Corporation の米国及びその他の国における登録商標または商標です。
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