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月をさらに越えて: HoloLens 2 が NASA の宇宙船 Orion の開発を支援

Jennifer Langston Sep 22, 2020

※ 本ブログは、米国時間 9 月 22 日に公開された “To the moon and beyond: How HoloLens 2 is helping build NASA’s Orion spacecraft” の抄訳です。

Lockheed Martin の作業員が、宇宙飛行士を月から帰還させ、火星探検への道筋を築く宇宙船のシートを組み立て始める時、彼らは書類やタブレットに頼る必要はありません。

部品の組み立て方法のアニメーションやボルトの締め付けトルクなど、必要な情報はすべて装着した HoloLens 2 から得られます。

この複合現実ヘッドセットにより、工具を操作するために両手を空けることができます。音声コマンドがあらゆるステップでガイドしてくれ、Orion 宇宙船の乗員モジュール内に設置される 4 つのシートの部品上に作業指示がホログラムにより投影されます。Lockheed Martin は、Orion 宇宙船を、人類を月そして、さらに遠くまで送る、NASA の Artemis プログラムのために製造しています。

Lockheed Martin で拡張現実・複合現実を担当する主任研究員シェリー ピーターソン (Shelley Peterson) 氏は「作業中にコンピューター画面や紙の資料を参照する必要はありません。作業現場で HoloLens 2 デバイスを装着し、電源を入れると、その作業に必要なすべてのコンテンツが対象物の上に表示されるからです」と述べています。

宇宙船の製造には数 100 万の作業が必要です。電気ケーブルの正しい取り付け、ジョイントの潤滑、圧力下での宇宙船の性能を測定する何千もの小型デバイスの正確な位置決めなど、あらゆる作業でエラーは許されません。

Orion 製造の元請け Lockheed Martin は、Orion に乗組員を乗せる最初のミッションである NASA の Artemis II mission で使用される宇宙船のさまざまな組み立て作業に HoloLens 2 を採用しています。

Orion のブースターロケットのカバーの何百ものネジの位置をマーキングするといった精密な手作業を数多く必要とする作業では、ホログラフによる指示を使用した技術者は 90 パーセントの高速化を実現できます。複合現実ヘッドセットにより組み立てエラーも排除できると、ピーターソン氏は述べています。Lockheed Martin は、2017 年に HoloLens を採用しましたが、それ以来、ヘッドセットで支援された作業員による作業にエラーは発生していません。

「これらのすべての作業でエラーが発生していないということは驚くべきことです」と同社の複合現実の取り組みを統率するピーターソン氏は述べています。

「通常、新しいテクノロジを検討する時には、品質の向上、スピードの向上、コストの低下といったメリットを考慮します。これらにはトレードオフが存在するので、3 つのうち 2 つのメリットしか得られないことがほとんどですしかし、HoloLens 2 は 3 つのすべてを達成します。これはとても珍しいことです」とピーターソン氏は述べています。

9 月 22 日に開催された Ignite コンファレンスにおいて、マイクロソフトは HoloLens 2 の販売対象国を拡大し、イタリア、オランダ、スイス、スペイン、オーストリア、スウェーデン、フィンランド、ノルウェイ、デンマーク、ベルギー、ポルトガル、ポーランド、シンガポール、香港、台湾でも購入可能になったことを発表しました。

マイクロソフトのテクニカルフェロー、アレックス キップマン (Alex Kipman) は、「私たちは、人々が HoloLens を使って現場で行っていることに非常に刺激を受けています。そして、世界中の新たな地域に向けて十分な供給があることも大変満足しています」と述べています。

また、マイクロソフトは、Azure Object Anchors という複合現実サービスのプライベートプレビューを開始することを発表しました。このサービスにより、HoloLens デバイスが、現実世界の物体を認識し、専門家の知識やバーコードなしに、関係する情報や画像を重ね合わせて表示できるようになります。

たとえば、自動車メーカーが複合現実により自宅で簡単な修理作業を支援するケースでは、未熟な自動車整備士にエンジン部品の中からガスケットを見つけて指示に従うよう依頼するよりも、自分でヘッドセットを装着して取り外す必要のあるガスケットを指し示す矢印に従う方が容易だと、キップマンは言います。

「これは、コンピュータービジョンとしてはきわめて複雑な課題です。しかし、現実世界の物体を認識し、ホログラムを重ねて表示できることできわめて大きな価値を提供できます」とキップマンは続けます。

昨年の 11 月に HoloLens 2 の販売が開始されてから、このデバイス、そして、Azure の複合現実サービスには継続的需要がありました。これは、COVID-19 対策のために、リモートでのコラボレーションが不可欠になった時期に特に当てはまります。

たとえば、Microsoft Dynamics 365 Remote Assist により、異なる場所にいる人々が協業し、共有された複合現実空間で問題を解決することができます。宇宙船、飛行機、トラックを組み立てる現場作業員が、次の部品を取り付ける際に障害を見つけた場合、別の部屋や別の都市にいるエンジニアが、作業員の HoloLens 2 を通して、問題を正確に把握し、適切な対策をアドバイスすることができます。

英国の Imperial College Healthcare NHS Trust で COVID-19 患者を治療する医療従事者は、HoloLens 2、Remote Assist、Microsoft Teams を使用して、ウイルスへの曝露を最小限に抑えています。複合現実ヘッドセットを装着した医師が患者を直接治療している間、デバイスは隣の部屋のコンピューター画面に安全なライブビデオフィードを送信します。これにより、医療チームの他のメンバーは、安全な距離を保ちながら、その医師が見ているすべてのものを見ることができます。

Mercedes-Benz USA は、販売店のサービス技術者がより迅速かつ効率的に車両を修理できるよう、HoloLens 2 ヘッドセットを活用しています。Remote Assist を利用することで、さまざまな車種に精通した遠隔地のスペシャリストの膨大なネットワークを容易に活用して、リアルタイムで問題を解決することができます。

「いくつかの業界では、企業はより先進的です。ソーシャルディスタンスが求められる今、移動にリスクが伴います。テレポートしてオペレーターの目を通して物事を見る方がはるかに簡単です。これは、以前には SF 小説のように聞こえたかもしれませんが、今では本当に必要なものになっています」とキップマンは言います。

Lockheed Martin の関係者は、HoloLens 2 を使用して遠隔で共同作業ができることは、パンデミック期間中に従業員がソーシャルディスタンスを維持するのに役立っていると述べています。従業員が紙やタブレットを受け渡すのを避けることができ、飛行機に乗ったり、誰かの肩越しに機械を見たりすることなしに問題を解決できるからです。

Lockheed Martin の Orion and Human Landing Systems 担当シニアマネージャー、コリン サイプ (Colin Sipe) は「現在、出張はきわめて困難な状況です。トラブルシューティングのための出張を 1 回でも避けることができれば、HoloLens には十分な価値があります」と述べています。

また、同社は、技術者が作業から離れてマニュアルを見たり、コンピューターの画面に入力したりする必要がなくなったことで、時間とコストの大幅な削減にも成功しました。宇宙飛行士が地球の大気圏に再突入する際に安全を確保するための熱シールドの組み立てなどの重要作業では、書面による指示書は非常に複雑で、30 ポンド分の紙に相当する事務処理が必要になることもあると、サイプ氏は言います。

「典型的ケースでは、図面の確認、作業の確認、コンピューターへのデータ入力に作業時間の約半分が費やされ、実際にレンチを回して部品を組み立てる作業には約半分の時間しか費やされていませんでした。HoloLens を使用することで、データ処理や付加的作業に費やす時間をおよそ 90 パーセント削減することができました」と同氏は述べています。

たとえば、重要な検証プロセスの一環として、技術者は道具をいったん置いてコンピューターワークステーションの所に行き、今行った作業の情報を入力しなければならないことがありました。HoloLens 2 を使えば、簡単な音声コマンドで、ヘッドセットに写真や動画を撮影させることができ、仕事の流れを中断することなく、検証、品質保証、研修などの目的に使用することができます。

宇宙船製造作業員は、HoloLens 2 の使用を楽しんでいます。自分が本当にやりたいこと集中できるからです、とサイプ氏は述べています。作業員の中には Orion の製造作業を続けるために定年退職を遅らせた者もいます。

「技術者たちは、この部品にどのようなプライマーを塗るべきかを調べるために、技術文書を調べたりするのが好きではありません。自分の手で何かを作って作業するのが好きで、HoloLens 2 を使えば、ほぼ一日中そのような作業をすることができます。未来の宇宙船を作っていると真に実感することができるのです」とサイプ氏は続けます。

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