著者 アリステア スピアーズ (Alistair Speirs)
グローバル インフラストラクチャ マーケティング ゼネラル マネージャー
※本ブログは、米国時間 2026 年 2 月 10 日に公開された ”Can high-temperature superconductors transform the power infrastructure of datacenters? ”の抄訳を基に掲載しています。
AI やデータ集約型コンピューティングへの需要が高まる中、効率的かつ信頼性の高い電力供給がますます重要になっています。ここで注目されているのが高温超伝導体 (HTS) です。HTS は送電ロスを低減することでエネルギー効率を大きく向上させる革新的な技術です。超伝導体は「ロスレス」という特性により、電力伝送の効率を高めることがわかっており、マイクロソフトは、HTS 技術を活用し、増大するデータセンターの電力需要に対応し、運用の持続可能性を向上させる手法を研究しています。
超伝導体は電気を抵抗なく流します。これにより電力をより効率的に伝送し、容量を迅速に拡大できます。マイクロソフトは、この技術が電力網を強化し、データセンターが周辺地域に与える影響を軽減する可能性についても検討しています。超伝導体は大量の電力を伝送する際にもスペースを取らないため、よりクリーンでコンパクトなシステムの構築にも貢献します。
この技術を活用することでクラウド内の電気の流れが変わり、AI をはじめとする高負荷ワークロードへの対応が可能になります。その実現には、従来の電力設計やデータセンターの電力供給方法の見直しが必要です。マイクロソフトは超伝導技術関連のパートナー企業やシステムインテグレーターと連携し、この先端科学を実用的なソリューションへと転換して、お客様や地域社会に貢献することを目指しています。

超伝導体でデータセンターの性能と効率を向上

銅やアルミニウムは優れた導体であり、現在大半のクラウド インフラの配線や送電線に使われています。一方、HTS ケーブルは電気をゼロ抵抗で流せるため、さらに高い性能を発揮します。小型かつ軽量で、電流通過時に熱を発生させず、電圧降下も生じません。この技術の中核には HTS ケーブルを極低温に維持するスケーラブルな高可用性冷却システムがあり、マイクロソフトのデータセンターの運用品質を支えています。たとえば、銅の送電線では電流が常に抵抗と戦い、伝送効率が低下するだけでなく熱が発生し、伝送できる電流量にも限界があります。超伝導材料は冷却されると電流がゼロ抵抗で流れる経路を生み出し、損失、発熱、送電距離の制約が一挙に解消します。
なぜデータセンターにとってこの技術が重要なのか
HTS は決して新しい技術ではなく、エネルギー、輸送、先端科学の分野で何十年も研究されてきました。そして、やっと最近、経済性や製造面での進歩により、マイクロソフトのクラウド規模でも実用化が可能となりました。データセンターは、限られたスペースに膨大な電力負荷を集中させるため、HTS の恩恵を大きく受けられます。従来の導体では、変電所の拡張やフィーダーの増設、設置密度の低下、成長の抑制といった選択を迫られますが、超伝導体はこのジレンマを解消します。物理的なスペースを拡大せずに電力密度を高め、AI 時代の電力要件にも既存またはより小さなスペースで対応できるようになります。
データセンター内部では、ラックへの直接給電量が増えることで、高密度、高性能なワークロードをより効率的に処理できます。HTS ケーブルは銅より軽量で長距離の電流伝送が可能なため、ラックやポッド間の電力分配を最適化し、ボトルネックの解消にも貢献します。こうした新たなアーキテクチャのビジョンを OCP 2025 サミットで発表しました。
実際に HTS は、サーバーラックへの直接給電時に電力ケーブルのサイズを桁違いに小さくできる可能性をすでに示しており、データセンター内の電力分配のあり方に新たな可能性をもたらしています。

次世代電力インフラによる容量拡大
HTS 技術はマイクロソフトの長期的なクラウド戦略も支えます。AI システムが拡大する中、電力は依然として最大の制約です。超伝導体で電力システムを刷新することで、クラウド サービスの需要増加に柔軟に対応できる電力インフラを構築できます。将来的には、新しいタイプのデータセンター施設の設計も可能になるかもしれません。
私たちには、現在、新たな電力インフラを構築することなく、電力容量を動的に拡張できる現代的な電力システムが求められています。次世代の超伝導送電線は、同じ電圧レベルで従来の送電線を桁違いに上回る容量を実現します。これによりデータセンター拠点の拡張や相互接続が加速し、世界的なクラウド サービス需要の増加にも迅速に対応できます。超伝導体はデータセンターと電力網にとって根本的な変革をもたらします。ただし、その真価を引き出すには従来の電力システムの前提を見直し、送電とデータセンター設計のアプローチを再考する必要があります。
「 超伝導体は、発電からデータセンターのチップに至る電力バリューチェーン全体を変革する、この領域を再定義するような技術です。VEIR では、この優れた材料を活用した電力供給ソリューションを提供し、お客様がエネルギーインフラの重要なボトルネックを克服し、データセンターの新たな容量を迅速に確保し、電力、計算密度をさらに高められるよう支援しています。」
ティム ハイデル (Tim Heidel) VEIR 最高経営責任者
電力網と地域社会への影響を低減
HTS システムはエネルギーロスを削減し、電力供給に必要な物理スペースも大幅に縮小します。電力網の観点では、送電線の電圧降下を最小限に抑え、故障電流制限機能も導入できるため、データセンターのような高需要施設だけでなく、周辺の住宅、学校、病院、企業にとっても電力網全体の安定性向上が期待できます。

さらに重要な点は、この技術が電力インフラの物理的、また、社会的な影響範囲を縮小し、地域社会への負担を軽減することです。電力供給の拡大には通常、発電能力の増強や送電・変電システムの強化など、複雑な取り組みが必要です。従来の送電線は広い用地や大型で目立つインフラ(高い架空線や大規模変電所)に依存しますが、HTS はより小型で静かで周囲への影響が少ないシステムを実現します。HTS 送電線は従来システムと同量の電力をより低電圧で送れるため、用地制約や必要な権利範囲も縮小します。スペースの有効活用が進むことで、建設影響の低減、工期短縮、ひいては周辺地域への負担軽減にもつながります。
「超伝導体の導入により、ComEd はシカゴ市内の電力網変電所を地域の企業や住民に影響を与えることなく相互接続できました。当社独自のソリューションは、電力網のレジリエンスを飛躍的に高めます。」
ダニエル マクガーン (Daniel McGahn) American Superconductor Corporation (AMSC) 最高経営責任者
マイクロソフトは、超伝導体をはじめとする先進的電力技術の屋内外での活用を加速し、データセンター インフラの迅速かつ効果的な展開を目指しています。高温超伝導体は、中空コアファイバーやマイクロ流体と並び、データセンターの電力、ネットワーク・熱管理を支える戦略的三本柱のひとつです。HTS 技術は普段その存在を意識されることはありませんが、舞台裏で電力、容量、AI インフラの効率性とレジリエンスを支え続けます。お客様はクラウド インフラの構築と運用に専念できます。
データセンターの未来を探る
HTS は、データセンターの未来を形作る新技術のひとつにすぎません。クラウドの拡大とともに、先進的な冷却システムからクリーンな電力ソリューションまで、より高速でスマート、かつ持続可能な施設づくりをさまざまなイノベーションで支えています。次世代データセンター設計を牽引するその他のプロジェクトについては以下をご覧ください。
・マイクロソフトのデータセンター向けマイクロ流体冷却: マイクロレベルでの冷却技術について詳しく見る。
・Microsoft Azure が中空コアファイバー (HCF) の生産を外部委託製造で拡大する方法について詳しく見る。
・コミュニティを最優先する AI インフラの構築について詳しく見る。
・無料アカウントで Azure を今すぐ始める。
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