過去数年間で小売業界には大きな変化と機会が巡ってきました。小売業者が販売する時間や場所、商品を選んでいた時代は終わったのです。いまやその主導権を握っているのは消費者で、小売業者は消費者といかにうまく関わっていくか模索しているところです。また、小売業界で持続可能性が求められていることや、データが急増していること、「どこでも商取引」に向けた取り組み、店舗スタッフにテクノロジを駆使してもらう必要性が高まっていることなど、さまざまな業界トレンドによるプレッシャーにも小売業者は立ち向かっています。一方で、変化はイノベーションを促進することもあります。小売業とテクノロジが交わる場において、小売業者でいることがこれほどまでに面白い時期はないと思います。
マイクロソフトは、小売業者と共に引き続きイノベーションに取り組み、小売業者が最大のチャンスをつかみ、事業を強化してインテリジェントリテールを実現するとともに、自社のデジタル進化を自ら舵取りできるよう支援します。マイクロソフトのソリューションにより、小売業者はお客様をより深く理解する方法や、従業員がより多くのことを達成する方法が明確になります。また、適切なテクノロジを取り入れてインテリジェントサプライチェーンを実現し、最終的にビジネスを再考できるようになるなど、さまざまな事業のトランスフォーメーションが可能となります。過去 1 年半でマイクロソフトは、Walmart や Kroger、Walgreens Boots Alliance など、世界最大規模の小売業者と提携し、信頼関係を確立してきました。これらの企業に向け、あらゆる事業のイノベーションを支えるプラットフォームを提供し、トランスフォーメーションを支援してきたのです。
マイクロソフトは、小売業界のお客様からも、マイクロソフトが自ら展開する小売店においても、数多くのことを学びました。最大のチャンスをつかみつつ、最大の課題に立ち向かうにあたり、技術がいかにこの業界を支援できるか学んできたのです。そこで今回は、小売業界におけるさまざまな事業でインテリジェントリテールの未来を推進するにあたり、マイクロソフトのイノベーションがどう役立っているのかご紹介します。
お客様をより深く理解する
小売業界の中心にいるのがお客様だとすると、データは欠かせません。小売業者の事業のさまざまな側面で、データが大きく影響を与える可能性があるためです。お客様の要望に対し、差別化したユニークな体験で対応できるかどうかもデータにかかっています。
マイクロソフトでは、Azure Synapse Analytics や Dynamics 365 Customer Insights などのデータソリューションにより、実用的なカスタマーインサイトを小売業者に提供しています。Azure Synapse Analytics は、膨大な量のデータを分析するだけでなく、機械学習を適用して事業に影響のあるインサイトを迅速に提供します。また、Dynamics 365 Customer Insights は、お客様を 360 度全方向で表示し、個別のエンゲージメントを推進することで生涯価値を最大化します。つまり、エンドツーエンドのサプライチェーンに数千のサプライヤーが存在し、数百万の商品やストアの組み合わせがあるような非常に複雑な小売業者でも、必要な意思決定が迅速にでき、効率的な事業運営につながるだけでなく、お客様を満足させることができるのです。
また、Dynamics 365 Connected Store を利用すれば、実店舗内でデータの生成が可能で、デジタルストアで得るものと同様の実用的なビジネスインサイトが手に入ります。同ソリューションは、Marks & Spencer がロンドンの店舗で試験運用中です。Marks & Spencer では、ビデオカメラや IoT センサーといったスマートデバイスのデータを分析し、リアルタイムの予測インサイトを入手しています。これにより、現時点でのレジの行列の長さや、エンドキャップ製品のディスプレイに集まっている人の多さが把握でき、従業員がより良い意思決定を行えるようになります。マイクロソフトでは、新たな小売業者にも Connected Store を体験してもらいたいと考えています。プレビューをご希望の小売業者の方は、こちらからご連絡ください。
小売業者がデータを解析する中で、お客様からの高まり続けている要望が明らかになりました。それは、いつどこでショッピングしても、どのような購入方法を選んでも変わらない、シームレスなショッピング体験です。マイクロソフトでは、Dynamics 365 Commerce によって、どこでも商取引ができるという Anywhere Commcerce (aCommerce) のコンセプトを小売業者が受け入れられるよう支援しています。Dynamics 365 Commerce は、Dynamics 365 Retail が進化したもので、小売業者のバックオフィスや店舗、コールセンター、電子商取引などの体験をすべて統合し、カスタマーエクスペリエンスの革新を実現する真のマルチチャネルソリューションです。いまお客様が求めているのは、どのチャネルにおいても同様の体験ができることです。その結果、お客様とのエンゲージメントが個別に最適化され、従業員は最高の顧客体験を提供できるようになり、小売事業全般にわたって高度な意思決定につながる深いインサイトが手に入るのです。Dynamics 365 Commerceは現在プレビュー段階ですが、2 月 3 日より小売業界のお客様に向け一般提供される予定です。
より良いサービスに必要なツールを従業員に
ここ 2 ~ 30 年で電子商取引は発展してきましたが、世代に関わらず今でも大半のショッピングは実店舗にて行われているのが現状です。Forbes Insights の調査によると、60% の消費者は未だ実店舗環境にて購入したいと考えており、この比率はどの世代でもほぼ変わらないとのことです。つまり、第一線で働く人たちが今でも非常に貴重な資産であることは変わりません。彼らはお客様がブランドに対して抱く第一印象となり、お客様の獲得と定着に重要な役割を果たすのですから。
小売店舗の従業員に必要なのは、生産性を維持し、店舗内でできる限り最高の顧客サービスを提供するための最新ツールと経験です。生産性クラウドとして世界中で使われている Microsoft 365 と、今年後半 Microsoft Teams に導入される新たな第一線向け機能により、マイクロソフトは見過ごされがちな業務に就く従業員がうまく仕事をこなせるよう支援していきます。ここで、より生産性を高め、コラボレーションを促進する機能を Teams に追加することを発表します。その機能とは、タスクターゲティング機能や、パブリッシングおよびレポーティング機能、シフト管理を簡素化する新たな労働力管理の統合、そしてトランシーバー機能です。押して話せる Push-to-Talk 機能を Teams に組み込むことで、会社のスマートフォンやタブレットが安全なトランシーバーとして使えるようになり、従来のトランシーバーよりも通信範囲が広がります。また、小売業の IT スタッフによるライセンスやプロビジョニングの作業が効率化できます。
第一線で働く従業員に向けた最新ツールや体験を拡張するにあたり、マイクロソフトでは、その管理を担当し、安全でコンプライアンスに準拠した体験を全従業員に提供する IT 部門にとっても扱いやすいツールでなくてはならないと考えています。そこで今回、ID とアクセス管理機能を強化したことも発表します。その機能には、Android 向け共有デバイスからログアウトする機能や、SAP Success Factors、Workday といった主要な従業員管理サービスからインバウンドプロビジョニングができる機能などが含まれます。これにより、小売店に従業員が新たに入社し、共有デバイスを操作する際の安全性と拡張性が確保できます。これは、小売業界のお客様が以前より追加してほしいと要望していた機能です。また、今四半期後半には、小売業者が SMS を使って Microsoft 365 と小売業向けカスタムアプリケーションにログインできるようになるほか、店長が代理ユーザー管理機能を使えるようになり、IT スタッフにあらためて依頼しなくてもパスワードをリセットしたり従業員の ID を管理したりできるようになります。
サプライチェーンをよりインテリジェントに
小売業者のサプライチェーンは、顧客満足度を左右する重要な部分です。時代遅れのサプライチェーンプロセスでは、遅延や注文漏れなどが発生してしまいます。デバイスをネットに接続してデータ収集することで、情報を分析して新たなインサイトが取得でき、最終的に真にインテリジェントなサプライチェーンを構築し、お客様に最高のサービスが提供できるのです。これがモノのインターネット (IoT) です。IoT の普及に伴い、小売業者もデータを取得しようと考えるようになりました。事実、マイクロソフトが実施した小売業者向け IoT に関する調査 IoT Signals for Retail では、小売業者の 92% が IoT を採用し、試験やデプロイなどさまざまな段階で活用しているとの結果が出ています。最も一般的な IoT の使われ方は店舗分析 (57%) で、以下サプライチェーンの最適化 (48%)、セキュリティ (46%)、損失防止 (45%) と続きます。
新しい Azure IoT Central ソリューションテンプレートを活用することで、小売環境にて IoT アプリケーションを構築しデプロイすることが容易になります。これにより、小売業者が IoT の展開を簡素化し、迅速に結果が出せるようになります。今回、小売業界向けの既存テンプレート 5 つに加え、新たに Azure IoT Central Micro Fulfilment Center テンプレートを用意しました。これは、コネクテッドロジスティクス、デジタル配送センター、店内分析、スマート在庫管理など、さまざまなシーンに向けたものです。小売業者が必要とするものはすべて揃え、すぐにでも使えるマネージドサービスで、より簡単にフルフィルメント関連のプロセスが最適化できます。
小売業界のビジネスモデルとカスタマーエクスペリエンスの再考
いま物理的な小売店舗が成功するには、自らの殻を破って現状を打破し、新たなビジネスモデルへと突き進み、新しい体験や形式を提供してお客様とのエンゲージメントを高め、お客様に再訪してもらわなくてはなりません。
マイクロソフトは、このことを他のテクノロジベンダーより深く理解しています。マイクロソフトも自ら小売店舗を展開し、トランスフォーメーションに向けた同様の道のりを歩み続けているためです。ここ数年間、マイクロソフトはデジタルトランスフォーメーションに取り組み、お客様に対応することだけを目的とした物理店舗戦略から脱却しました。今では店舗をコマースエンジンと捉え、営利目的の企業から小規模ビジネス、そして一般消費者に至るまで、すべてのお客様とつながる場としています。エンタープライズセールス部門と連携し、J. Crew や Office Depot、Marks & Spencer などマイクロソフトの企業顧客をターゲットとしたストア全般にわたる新しい体験も用意しています。マイクロソフトの店舗は、クラウドや予測分析、機械学習、認識サービスなど、新たなマイクロソフト技術を採用して最も複雑な課題を解決する場ともなっています。こうした体験から学び、その教訓を最終的にはお客様にも伝えたいと考えています。もちろん一方的に伝えるだけでなく、マイクロソフトも小売業界のお客様から店舗の管理や運営方法を学んでいます。これこそ真のパートナーシップの証です。マイクロソフトは小売業界の全パートナーとこうした関係を築けるよう取り組んでいます。
小売業を再考することで、マイクロソフトの店舗で実施したようなビジネストランスフォーメーションにつながることもありますが、異なる形で結果が出ることもあります。例えば、小売業者が新たな収益源に取り組み、実店舗をデジタル化してお客様と従業員に新たな体験を提供するといったことです。
Microsoft PromoteIQ は、エンドツーエンドのコマースマーケティングプラットフォームで、大規模なベンダーマーケティングプログラムにより、小売業者が事業に欠かせない新たな成長エンジンを構築できるというものです。Microsoft PromoteIQ を活用すれば、小売業者は強力なマーケティング技術でブランドパートナーを支援できるようになり、市場の買い物客に直接製品を宣伝し、適切なタイミングでお客様にアプローチしてデジタル上での売上を増加させることが可能です。これはすべて、影響力のあるオーディエンスインサイトを提供する深層分析スイート製品によって支えられています。今回 Microsoft Advertising との統合により、マイクロソフトはこの小売業者プログラムにて、強力で新しい需要増加の元となるものを提供できるようになりました。Home Depot の例を挙げましょう。世界最大のホームセンターを展開する同社であれば、事業の大半は実店舗で直接行っていると思われるかもしれませんが、同社の HomeDepot.com は米国で 5 番目に大きな E コマースサイトでもあります。そのため同社では、エンドツーエンドのコマースマーケティングプラットフォームと、ベンダーが資金提供するデジタルマーケティングの管理および拡張機能を統合することで、1 カ月に約 1 億 7000 万人が訪れる同社サイトのビジターを最大化するソリューションが必要だったのです。PromoteIQ を導入して以来、Home Depot では同プログラムを通じてプロモーションした製品の売上が 2 桁成長するなど、非常に良い結果を出しています。
もちろん、適切なタイミングでお客様にリーチするだけでは成功したと言えません。お客様が探しているものをちゃんと提供できなくてはならないためです。事実、買い物客の 80% は検索結果の質が悪いとサイトから離脱してしまいます。マイクロソフトが製品検索というデジタルコマースにとって重要な部分に投資しているのはそのためです。Microsoft Bing for Commerce は、インテリジェントな人工知能をベースとしたソリューションで、製品検索やパーソナライゼーション、製品レコメンデーション機能などにより、現代の買い物客の期待に応え、関連性の高いカスタマイズされた検索結果でコンバージョンを高め、収益増加につなげます。また、Bing for Commerce に含まれるビジュアル検索のイノベーションにより、お客様がどこでどのように買い物をしても対応できるようになります。これにより、新たに登場するショッピング行動からも売上アップが望めます。
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