世界のためにより多くのことを達成する

本ブログは、1 月 20 日に CEO サティア ナデラが LinkedIn へ投稿した内容の抄訳です。

今年は、2020 年代の始まりでもあり、熟考し、計画し、大胆な目標に向けて進み始めるのには最適なタイミングです。

世界中のリーダーが、デジタルトランスフォーメーションが浸透し、あらゆる物がつながっていく、民主主義と資本主義の未来についてのグローバルな対話を行っています。それぞれの国に貢献できるようなグローバル企業になるためには何が必要なのでしょうか? マイクロソフトの製品やツールといったデジタルテクノロジは、どのようにして世界の最も困難な課題を解決してくれるのでしょうか?

マイクロソフトにとって、これは企業ミッション「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」を熟考する良い機会です。

このミッションは長期的なものです。人々、そして、人々が作り出す組織を支援したいという熱意を表現し、マイクロソフトという企業を形作り、その行動を促すミッションです。

地球上の 70 億の人々を支援するマイクロソフトにおいて、世界が今直面する機会と緊急課題を考えてみるに、このミッションに対するコミットメントを新たにし、「より多くのことを達成できる」が世界にとって意味することを再定義しなければならないと感じます。ここでは、オックスフォード大学のコリン メイヤー (Colin Mayer) 教授による企業の目的の定義が有用です。メイヤー教授は企業の目的が「人々そして地球の問題に対する利益性のある解決策を作り出す」ことであると述べています。

将来を見越して考えると、より多くのことを達成するための推進要素には以下の 4 つの総合に関連した要素があります。

  1. Tech Intensity (テックインテンシティ: テクノロジ活用の強度) による広範な経済成長の推進
  2. 経済成長における多様性の確保
  3. テクノロジとその活用における信頼の構築
  4. 持続可能な未来へのコミット

1. Tech Intensity による広範な経済成長の推進

デジタルテクノロジとソフトウェアが、あらゆる業界、あらゆるコミュニティ、あらゆる国のあらゆる人と組織を支援することで、今後 10 年間に広範な経済成長が達成されるでしょう。

私たちは、至る所にコンピューティングが存在する世界に生きています。2030 年には、相互接続されたデバイスの数が現在の倍以上の 500 億個になること、そして、2025 年には、世界に存在するデジタルデータの量が現在の 40 ゼタバイトから大きく増加した 175 ゼタバイトになることを考えてみましょう。プラットフォーム企業として、マイクロソフトは、この新たな時代に備えたテクノロジスタックを構築し、インテリジェントクラウドからエッジに至るまでの世界規模のコンピューティング、強力な AI スーパーコンピューティング、マルチセンスでマルチデバイスの体験を提供する環境一体型のコンピューティングを実現しています。

人々の生活、その訪れる場所、やり取りする物がデジタル化されるにつれ、精密医療や精密農業、パーソナライズされた電子商取引や教育、相互接続された工場や住居といった新たな機会とブレークスルーが生まれます。AI は、今日で最も革新的なテクノロジです。マイクロソフトは、このテクノロジの最先端を推進し、次世代のデータと AI ワークロードを構築するだけでなく、デバイスの枠を超えた没入感の強い体験を構築しています。これは、私たちの生活にバランスとコントロールを取り戻す役割を果たします。マイクロソフトは、人々がパブリックとプライベートの区別を明確にし、コンテンツの消費と作成のバランスを取り戻すことができるよう熟考しています。このデジタル化と相互接続が進む世界は、私たちが生成するデータから新たな経済的価値を生み出します。すなわち、より正確な予想が可能になり、サービスの個別化が進み、より深い洞察が得られるようになります。デジタル経済はより多くのデータを求め、それによって、誰もが生産性を向上し、経済的利益を得られる機会を得られます。

マイクロソフトは、このような動きを Tech Intensity と呼んでいます。新たに独自の製品とサービスを開発していくために、最良のデジタルツールとプラットフォームを採用していくことです。しかし、スキルを備えたワークフォースがいなければ企業、コミュニティ、国は独自のテクノロジ製品やサービスを構築できません。マイクロソフト傘下の LinkedIn のデータでは、開発者に対する求人の 60 パーセントがテクノロジセクター以外の業種からのものになっています。メンバー、企業、仕事とスキルをマップすることで、LinkedIn は新たな方法で労働者と経済的機会を結び付けています。このデジタルスキルと雇用の幅広い普及により、過去 10 年間には米国の西海岸地域や中国の東海岸地域でのみ見られた経済的集約が今後 10 年間でより多くの地域へと広がっていくでしょう。すべての国が独立した成長を達成可能です。

2. 経済成長における多様性の確保

しかし、多様性への考慮がなければ広範な経済成長は達成できません。あらゆる国、業界、市民は、その優位性と Tech Intensity の活用により成長できますが、マイクロソフトなどのプラットフォーム企業は、そのビジネスモデルの中核として多様性を伴う成長を推進する義務があります。

マイクロソフトが事業を行うすべての地域において、新たなエコシステムによって雇用が創生されていることを喜ばしく思っています。地域にデジタルなエコシステムが構築されることで、その地域の小規模企業が生産性、国際性、競争力を向上し、公共機関が効率性を向上し、医療や教育システムの価値が増大しています。

多様性のある成長には、未来の雇用に必要なスキルとテクノロジをあらゆる人に提供し、生産性を向上していくことが必要です。

たとえば、今日の世界には、自分の仕事のために新たなスキルを習得しなければならない 8 億人以上の人々がいます。今日の学生の 3 分の 2 が、現在では存在しない職業に就くことになるでしょう。このスキルのギャップは、個人の将来だけでなく、企業、産業、コミュニティによるデジタルトランスフォーメーションの潜在的価値の実現にも影響します。マイクロソフトが、次世代の教育とスキル習得に投資し、21 世紀の雇用に新たな道筋を作ろうといているのは、これが理由です。

また、今後 4 年間に、5 億種以上のアプリが開発され、あらゆる企業の変革と生産性向上を推進することを考えてみましょう。この動きを加速するためには、新たなカテゴリーの開発者を作り出す必要があります。マイクロソフトは、これを市民開発者と呼び、あらゆる業界の専門家に独自のビジネスニーズを解決するための、コーディングがほとんど必要ない (ローコード/ノーコード) のツールを提供しています。

さらに、世界には現場の最前線で働く 20 億人の労働者がいることを考えてみましょう。ホテル業、製造業、小売業、ヘルスケアなどの業界において、これらの労働者はグローバルなワークフォースの大多数を占めます。しかし、その 77 パーセントは生産性向上に必要なツールが提供されていないと述べています。複合現実やコラボレーションプラットフォームといった強力なテクノロジを提供することで、マイクロソフトはこれらの労働者が新たなスキルを獲得し、組織にとっての生産性を向上できるよう支援しています。

この成長する経済にあらゆる人が参画できるようにしなければなりません。

世界には 10 億人以上の障碍を持つ人々がいます。これらの人々のワークフォースへの貢献は喜ばしいことですが、同時に多様な体験へのニーズを反映した製品やサービスを提供する必要性も増しています。これが、マイクロソフトが自社の製品やサービスにおいて、開発プロセスで多様性のあるチームを構築し、コミュニティからのインプットを求めるなど、アクセシビリティ機能の優先順位を高くしている理由です。

デジタル化と相互接続が進む世界において、高速インターネットへのアクセスが不可欠になっています。都市地域に住む人にとっては当然のことですが、そうでない地域もあります。マイクロソフトは、Airband Initiative によりこの格差を解決しようと取り組んでいます。これは、2022 年の 7 月までに米国の農村地域の 300 万の人々にブロードバンドのアクセスを提供する、5 カ年にわたる取り組みです。

最後に述べたい点として、マイクロソフトのサプライヤーに勤務する人々も含めた、マイクロソフト社内のコミュニティの成功も支援しなければなりません。従業員の健康と多様性がマイクロソフトの成功にとって重要です。これが、マイクロソフトが業界最高レベルの福利厚生を提供している理由です。また、サプライヤーに勤務する人々の貢献もマイクロソフトの成功にとって重要です。これが、マイクロソフトが米国内のサプライヤーに対して最低 12 週間の有給育休、および、有給のバカンス休暇と病欠制度を義務付けている理由です。また、2019 年には、ピュージェット湾地域において、コミュニティベースの安価な住宅の資金を提供することを発表しました。

3. テクノロジとその活用における信頼の構築

あらゆるプラットフォーム企業は、その中核的価値として、お客様とパートナーからの信頼を獲得し、それを維持できなければなりません。信頼がなければ成長は不可能です。マイクロソフトのアプローチには、プライバシー、サイバーセキュリティ、責任ある AI という 3 つの柱があります。それぞれの柱において、マイクロソフトは具体的行動を取っており、お客様にツールやフレームワークを提供すると共に、政府機関と協業して政策へのインプットを行っています。

最初の柱はプライバシーです。マイクロソフトは、プライバシーが基本的人権であると考えます。プライバシーとデータ保護に対するマイクロソフトのアプローチは、お客様のデータを所有するのはお客様自身であるという信念に基づいており、マイクロソフトが提供する製品やサービスはプライバシーを最初の段階から設計事項として取り込んでいます。マイクロソフトのプライバシー規範には、自社のプライバシー活動に関する透明性の提供、適切な選択肢の提供、保管・処理するデータの責任ある管理などが含まれます。これが、マイクロソフトが欧州共同体の General Data Protection Regulation (GDPR) の初期サポーターであり、GDPR の中核的権利を世界中のお客様に拡大した最初の企業である理由です。現時点までに、2,600 万人以上の人々のこれらのツールを利用しており、マイクロソフトは、お客様が十分な透明性とコントロールを確保できるようにするための新たなプライバシー関連法規の制定を提唱し続けていきます。

二番目の柱は、デジタル時代における重要課題のサイバーセキュリティです。企業、政府機関、個人に対するサイバー犯罪が年間 1 兆ドル以上の損害をもたらしています。2018 年時点の 6,000 億ドルと比較すれば大幅な増加です。マイクロソフトは、1 日あたり 6.5 兆個のシグナルを分析し、1 月あたり 6,300 億件の認証を処理し、4,700 億件のメールのマルウェアとフィッシングのチェックを行っています。これらの膨大な情報により、マイクロソフトのプラットフォーム全域にわたるセキュリティのイノベーションが推進されます。しかし、拡大する脅威に対応するにはテクノロジだけでは十分ではありません。政府や業界の協力を含むパートナーシップが不可欠です。マイクロソフトは、サイバー攻撃から人々を守るための国際法の改正を目標として、過去から学んだ Digital Geneva Convention の必要性を訴えてきました。テクノロジ業界として、私たちはより安全なインターネットを目指して協力しなければなりません。100 社以上のグローバルなテクノロジ企業とセキュリティ企業が、Cybersecurity Tech Accord に調印し、世界中のオンラインセキュリティと信頼性の発展にコミットしています。

第三に、マイクロソフトは AI の開発に責任を持ち、規範に基づいたアプローチを取り、「コンピューターに何ができるか」ではなく「コンピューターは何をすべきか」という困難な質問を自らに投げかけています。公平性、信頼性と安全性、プライバシーとセキュリティ、包括性、透明性、説明責任がマイクロソフトの取り組みの指針となる倫理的規範であり、これらは開発者コミュニティに向けたソフトウェア開発ツールにも反映されています。

4. 持続可能な未来へのコミット

科学的コンセンサスは明確です。世界は CO2 の緊急課題に直面しています。CO2 排出を抑制せず、気温の上昇が続けば、その結果が破滅的になることは科学的に明らかです。

気候変動による被害を防ぐためには、私たちそれぞれが個人として、そして、企業として対策を取らなければなりません。この膨大な課題をひとつの企業だけで解決することはできませんが、グローバルなテクノロジ企業であるマイクロソフトは特に重要な責務を負っています。

マイクロソフトは、グローバルな環境問題を解決し、より持続可能な未来に向けた進歩を加速するために、テクノロジとデータを活用しています。特に、水問題、廃棄物処理のエコシステム、大気中の CO2 にフォーカスしています。

最初のステップとして、マイクロソフトのテクノロジ、そして、企業としてのカーボンフットプリントの削減に取り組んでいます。2012 年以来、マイクロソフトは、行動の変革を推進するために社内的な炭素料金を課し、自社の業務運営においてカーボンニュートラルでした。クラウドを支えるデータセンターは大量の電力を消費します。また、再生可能エネルギーの活用も大幅に拡大しました。

しかし、より多くのことをより迅速に行わなければなりません。今週に、マイクロソフトは、2030 年までに直接的な排出、および、サプライチェーンも含めてカーボンネガティブとなることにコミットしたことを発表しました。さらに先に進み、2050 年までには、1975 年の創業以来、直接的に、および、電力消費により間接的に排出してきた CO2 のすべてを環境から除去します。

この問題解決には、新たなテクノロジも必要です。先週には、CO2 の削減と除去テクノロジの開発を加速するための、10 億ドル規模の Climate Innovation Fund の設立も発表しました。

マイクロソフトは、CO2 の課題への最も重要な貢献が社内の行動ではなく、世界中のお客様を支援することから得られることを認識しています。これらの課題に対応するためにデジタルテクノロジは重要な役割を果たします。マイクロソフトは、お客様が自社のカーボンフットプリントを削減できるよう支援するテクノロジの開発と展開を続けていきます。

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マイクロソフトの企業としての目標と行動は、世界の問題を解決することに向けられるべきであって、新たな問題を作り出してはなりません。過去 10 年間から学べる教訓があるとしたら、ここで述べた考慮点なしに開発されたテクノロジは利益よりも大きな害をもたらしかねないということです。

今後の 10 年間には迅速なアクションが必要です。私たちの最も差し迫った課題に対して大胆な歩みを始める時です。これらの社会的課題を 1 つの企業だけで解決することはできません。しかし、協力していけば、2020 年代を、信頼の基盤とサステナビリティへのコミットメントを前提とした、広範で多様性を備えたテクノロジによる経済成長の 10 年にしていくことができるでしょう。この取り組みにおいて、お客様、そして、パートナーの皆様と協力していけることを楽しみにしています。私たちがより多くを達成するためには、私たちのそれぞれがより多くを達成しなければなりません。

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