AI for Health による新型コロナウイルス感染症対策

チーフデータアナリティクスオフィサー ジョン カハン (John Kahan)

※このブログは、米国時間 4 月 9 日に公開された ”Mobilizing AI for Health to fight against COVID-19” の抄訳です。

2020 年 1 月 29 日、マイクロソフトは世界中の人々やコミュニティの健康促進に向けた取り組みとして、AI for Health を開始すると発表しました。この 5 年間におよぶ取り組みは、非営利団体、研究者、組織に AI とデータサイエンスツールを提供するというものです。

その後、世界は変わってしまいました。この原稿を書いている時点で、世界では 140 万人以上もの人たちが新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に感染しています。この危機的状況により、健康というものがあらゆる国境を超え、地球上すべての人に影響を与えるという事実を痛感することになりました。

この緊急事態に対応するため、マイクロソフトは AI for Health で COVID-19 の研究の最前線にいる人たちへの支援に注力することになりました。特に、データや分析、そしてデータサイエンティストのスキルが最も大きなインパクトを与えると思われる 5 つの特定分野に注力しています。また、早急にこの特定分野への取り組みに 2000 万ドルを投資します。

これは、マイクロソフトの COVID-19 対策への大きな取り組みの一環として実施するものです。COVID-19 対策としてはこのほかにも、遠隔教育を支援し、世界中の学生がより多くのことを達成できるようにすることや、企業が在宅勤務を実現できるようサポートすること、必要な医療機器を確保し地域社会を支援するといったことに取り組んでいます。今回の新たな取り組みが、この危機的状況を解決する研究者や組織の力になれば幸いです。

COVID-19 対策への取り組みはすでに始まっています。この対策に向けた主なパートナーシップは以下の通りです。

  • COVID-19 ハイパフォーマンス コンピューティング コンソーシアムは、ホワイトハウスの科学技術政策局が進めている民間と公的機関による取り組みで、マイクロソフトは世界で最も強力なコンピューティングリソースを研究者に提供しています。これにより、ウイルスを阻止する戦いの中で、科学的発見のスピードを大幅に高めることができます。マイクロソフトの研究者は、世界中でコンピュータサイエンスや生物学、医学、公衆衛生などの分野を研究しており、同コンソーシアムのプロジェクトに協力しています。
  • ワシントン大学医学部の世界健康研究組織である健康指標評価機関 (IHME : Institute for Health Metrics and Evaluation) は、COVID-19 のデータ可視化セットをリリースしました。これは、ホワイトハウスや米連邦緊急事態管理局 (FEMA)、州知事、病院の管理者らがリソースを集約するために使い始めているとのことです。
  • ワシントン州保健局は、住民にデータをタイムリーかつ正確に、そして迅速に報告できるよう、新たなダッシュボードを準備中です。ダッシュボードは、地域保健所管区や医療施設、研究所などのデータによって構成されます。
  • 分散コンピューティングを活用する世界的組織の Folding@home では、COVID-19 のタンパク質を研究し、治療法の設計に役立てようとしています。
  • ワシントン大学医学部内の一部である Sepsis Center of Research Excellence (SCORE-UW) は、病院、産業界、血液バンク、大学、出資パートナーを結ぶネットワークにて世界的なコラボレーションを行っています。SCORE-UW では、臨床データや放射線画像、患者のほかのバイオマーカー反応なども使って、COVID-19 陽性患者を予測し、患者の医療や社会経済的な影響を改善する新しいアルゴリズムを開発しています。
  • ブラジルにおけるチャットボットとスマートコンタクト市場のリーダーである Take は、公式情報や信憑性の高い情報を国民に届け、潜在的患者を医療チームとつないでブラジルの病院がパンクしないようにすることを目的としたボットを開発しました。

AI for Health COVID-19 で注力する分野

世界的規模でパンデミックが発生していることから、COVID-19 対策にはほぼすべての面でテクノロジが重要な役割を果たすことになります。その役割には、AI を利用して膨大なデータセットを高速処理することや、病原体の媒介者を分析して治療の影響を特定することも含まれます。マイクロソフトでは、非営利団体や政府、学術研究者と協力してソリューションに取り組むほか、Microsoft AI や技術専門家、データサイエンティストなど、さまざまなリソースを提供することで、マイクロソフトの経験も活用してもらいたいと考えています。

COVID-19 関連の研究を支援する取り組みとして、マイクロソフトが注力する分野は以下の 5 分野です。

  • データと知見: 安全と経済的影響に関する情報を提供します。
  • 治療薬と診断法: ワクチン、診断法、治療薬の開発をより進める研究を支援します。
  • リソース配分: 病院のスペースや医療機器など、限られたリソースを分配する際の提案を行います。
  • 正確な情報の発信: 誤った情報の拡散を抑え、正確な情報を発信します。
  • 科学的研究: COVID-19 の研究を進め、理解を深めます。

マイクロソフトの最高科学責任者であるエリック ホロヴィッツ (Eric Horvitz) は、「データとコンピューティングにより、パンデミック緩和への道筋が見えてきます。マイクロソフトでは、コンピューティングリソースや専門知識を駆使し、生物医学、物流、疫学、公衆衛生など、最も有望な方向の分野に取り組む人たちを支援していきたいと考えています」と総括しています。

マイクロソフトの COVID-19 対策の進捗状況

マイクロソフトでは、世界中の人に COVID-19 の知識を深めてもらいたいと考えています。そこで、以下にインタラクティブなビジュアルを用意しました。これにより、問題の範囲が完全に可視化され、マイクロソフトが世界中の治癒に向けて共同で取り組んでいる内容の進捗状況をすべて把握できます。この情報は、新たなデータや知見を追加し、継続的に更新していく予定です。

上記ビジュアル内の項目をクリックすると、各項目の最新情報を確認できます。ビジュアルの右下の「全画面表示モードを開始」をクリックしてお試しください。

COVID-19 は世界的な問題で、解決策を見つけるには全員の力が必要です。マイクロソフトは、世界中の研究者と協力できることを、そして AI for Health という新しい献身的なサポートによって世界の研究者を支援できることを、恐縮するとともに光栄に思っています。

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