ジャレッド スパタロウ (Jared Spataro)
CVP、Microsoft 365
※ 本ブログは、米国時間 9 月 22 日に公開された “A pulse on employees’ wellbeing, six months into the pandemic” の抄訳です。
外出自粛令が世界中の働き方を変えてから 6 カ月以上経ちました。マイクロソフトは、この課題に先手を打ち、お客様の変化するニーズに対応できるテクノロジを構築するために、この新しい働き方を注意深く研究しています。ここで重要な疑問が生じます。リーダーの関心事が、従業員が生産的であるかから、持続可能な形で働けているかへと移る中で、お客様が従業員のウェルビーイング (wellbeing、心身および社会的にも健康で幸福な状態) を優先できるように、マイクロソフトはどのような支援をできるでしょうか?
Work Trend Index のレポートは、このパンデミックが、働く上でのウェルビーイングにどのような影響をもたらしたかについてグローバルな調査結果を示しています。マイクロソフトは、Microsoft Teams の使用パターンが今年初めからどのように変化してきたかを調査し、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、日本、インド、シンガポール、英国、米国の 8 カ国、6,000 人以上のインフォメーションワーカーと、現場の最前線で活躍するファーストラインワーカーに調査を行いました。この報告書には、かつては忌み嫌われていた通勤がもたらす驚くべき生産性向上効果を明らかにした、Microsoft Research グループの調査結果も含まれています。
この調査結果そしてお客様との対話に触発され、本日、年次開催のMicrosoft Ignite コンファレンスにおいて、マイクロソフトは個人のウェルビーイングと組織の回復力を向上するためのプロダクティビティツールの進化に向けた取り組みを開始しました。本日より、Microsoft Teams において、朝には一日の準備を行ない、夕方には緩やかに仕事から離れられるバーチャル通勤を提供します。また、Teams にマインドフルネスと瞑想の体験を提供するために、Headspace と協業します。さらに、企業文化を形作る立場であるマネージャーやリーダーを支援するために、仕事の状況や従業員のウェルビーイングへの影響に関する洞察が新たに提供されます。また、Teams で新たに提供されるファーストラインワーカー向けの体験が、より安全に仕事をする必要がある人々を支援します。
では、主な調査結果を見ていきましょう。
主な調査結果
- パンデミックは仕事での燃え尽き症候群を増加 (その度合いは国により異なる)
- 職場のストレスの原因はファーストラインワーカーとリモートワーカーとでは異なる
- パンデミックから 6 カ月が経過し、コミュニケーションが増加し、組織の境界が減少している
- 通勤がないことは、リモートワーカーの生産性を向上するのではなく、むしろ低下させている
- 瞑想が燃え尽き症候群と仕事のストレスに対して有効
パンデミックは仕事での燃え尽き症候群を増加 (その度合いは国により異なる)
最近、仕事に圧倒されることが多いと感じているのならば、それはあなただけではありません。本調査の対象になった、ファーストラインワーカーとインフォメーションワーカーの 30% 以上がパンデミックにより仕事における燃え尽きの感覚が増したと回答しています。本研究で注目すべき点の 1 つは、誰もがこの状況を同じようにとらえているわけではないということです。私たちはみな同じ嵐の中にいますが、それぞれの船で嵐を切り抜けています。たとえば、ブラジルでは 44% が燃え尽きを感じていますが、同様に回答しているのは、米国では 31%、日本では 23%、ドイツでは 10% です。燃え尽き症候群は多くの要素に起因しますが、以下の図が勤務時間と燃え尽き症候群の関連を示しています。たとえば、オーストラリアのワーカーは、Teams 上の勤務時間 (注1) の増加率が最大 (45%) でしたが、燃え尽き症候群の増加は中程度でした。一方、ドイツのワーカーは勤務時間も燃え尽き症候群も変化はわずかでした。
職場のストレスの原因はファーストラインワーカーとリモートワーカーとでは異なる
12 個の選択肢の中から、職場でのストレス要因として大きなものを挙げる質問を行いました。グローバルに共通して、最大のストレス要因は COVID-19 への感染リスクであり、次いで、仕事と生活の境界の不明確化、同僚とのつながりの欠如、仕事量や時間のコントロール欠如が挙げられました。ファーストラインワーカーとリモートワーカーでのストレス要因の相違を調べるために、さらに詳細な調査を行いました。ファーストラインワーカーにとっての最大のストレス要因は全体と同様に COVID-19 への感染リスクでした。本調査では、ワーカーの 30 パーセントが適切なソーシャルディスタンスを維持するための保護器具を会社から提供されていないと述べていたため、この結果にはうなずけます。リモートワーカーの中では、仕事と生活の境界の不明確化と同僚とのつながりの欠如がストレス要因として上位にランクされました。
パンデミックから 6 カ月が経過し、ワーカーが適応する中で、コミュニケーションが増加し、組織の境界が減少
仕事と生活の境界の不明確化が、勤務時間の管理の欠如とともに、職場における重大なストレス要因となっている中、マイクロソフトは Teams の利用パターンからより詳細な洞察を得ました。Teams のデータは、外出自粛令が発令されてから 6 カ月が経った後も、パンデミック発生前と比較して、人々はより多くの会議を行い、より多くの電話通話やチャットを行っていることを示しています。勤務時間後のチャット (午後 5 時から深夜までのチャット) の数も増えています。おそらくもっと興味深いのは、勤務時間後のチャットを行う Teams ユーザーの割合が 2 倍以上になったことでしょう。別の言い方をすれば、パンデミック発生以前には午後 5 時以降にはまったくキーボードに触れなかったのに、現在は触れるようになった人々が存在するということです。
通勤がないことは、リモートワーカーの生産性を向上するのではなく、むしろ低下させている
リモートワークで長時間勤務することで疲労困憊することを多くの人が経験しています。本調査では、リモートワーカーの 3 分の 1 が、仕事と生活の境界の不明確化が自分のウェルビーイングに悪影響を与えていると述べています。Microsoft Research のグループによる研究により、かつては忌み嫌われていた通勤が実際には仕事と生活の境界の維持に貢献し、生産性やウェルビーイングの向上につながることがわかってきました。
「通勤は、精神的に仕事に入るあるいは仕事から出るための中断のない一連の時間を提供します。『通勤しなくてよくなり、時間を節約できてうれしい』という人は多いですが、仕事に向けて気分を高揚させ、また、仕事を終えて気持ちを解放するためのルーチンがないと私たちは一日の終りには疲れ果ててしまうのです。」
– シャムシ イクバル (Shamsi Iqbal) Microsoft Research 主任研究者
2017 年に、マイクロソフトの研究者グループは、通勤時間による生産性向上効果の定量的測定を行いました。この研究成果では、調査参加者への質問により、デジタルアシスタントとのチャットが一日の始まりに仕事の準備をすること、および、一日の終わりに仕事の緊張をほぐすことに役立っていることが明らかになりました。質問にはタスクベースのもの、たとえば「今日は何をする予定ですか?」と、感情ベースのもの、たとえば「今日の調子はどうですか?」があります。調査参加者は、自分の生産性を 1 時間ごとに 1 点から 5 点でスコア付けし、デジタルアシスタントを使用している週と使用していない週との間の比較が行われました。この調査では、10 人中 6 人 (61%) が、デジタルアシスタントが一日の仕事の始まりと終りで支援してくれることで生産性が向上したと感じたと回答しています。平均的に、生産性の向上は 12 ~ 15% でした。
この研究により感情ベースの質問とタスクベースの質問による効果は人により異なることが判明したため、Teams のバーチャル通勤体験ではユーザーの嗜好に応じた設定ができるようにしました。Headspace による瞑想、今日一日の振り返り、Teams と Outlook の作業中タスクの完了支援など、おすすめの活動の中から選んで体験をカスタマイズできます。
瞑想が燃え尽き症候群と仕事のストレスに対して有効
調査対象のうち、10 人中 7 人 (70%) が仕事関連のストレスの軽減に瞑想が有効であると述べています。この数字は、子育てや在宅学習を行っている人では 83 %に増加します。これを裏付ける研究成果もあります。Headspace を使用した定期的な瞑想によりストレスと燃え尽き症候群を軽減し、ネガティブなフィードバックへの対応能力を向上できることが示されています。そのため、Teams のバーチャル通勤の体験に Headspace による瞑想とマインドフルネスの体験を追加することに加えて、マインドフルネスのためのブレークを適宜、あるいは、定期的にスケジュールできる機能を提供することとしました。重要な会議の前や重要なプロジェクトにフォーカスしなければならない場合など時に応じてスケジュール可能です。
マイクロソフトは、従業員が働く上でのウェルビーイングに関する調査を継続し、Microsoft 365 と Teams においてその成果に基づくイノベーションを提供していきます。本レポートで触れた製品アップデートの詳細は Microsoft 365 ブログを参照ください。また、マイクロソフトの製品戦略、新機能に貢献したエンジニア、研究者、専門家による記事についてはこちらの Microsoft Stories を参照ください。
プライバシーに対するアプローチ:マイクロソフトはプライバシーを最重要事項ととらえています。レポートの作成に使用するデータからは、すべてのパーソナルデータや組織を識別するデータ (企業名等) を削除しています。電子メール、チャット、文書、会議などの、お客様のコンテンツを調査に使用することはありません。マイクロソフトの目標は、Microsoft Graph から収集したデータに基づきワークプレースに関する広範なトレンドを発見し、共有することにあります。
注1: Teams 上の「勤務時間」とは、Microsoft Teams の最初の使用からその日の最後の使用までの時間を意味します。チャット、文書編集、会議への参加などが含まれます。
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