ハイブリッドワークプレイスの理念と実践

カート デルベーン (Kurt DelBene) エグゼクティブバイスプレジデント

※本ブログは、米国時間 3 月 22 日に公開された “The philosophy and practice of our hybrid workplace” の抄訳を基に掲載しています。

COVID-19 (新型コロナウイルス感染症) のパンデミックによって数々の困難が押し寄せる中、マイクロソフトでは未来の働き方について、また従業員がどこでどのように仕事をするのが一番いいのかについて、重要な見解を得ることができました。そこで学んだことや理解したことが、この期間にハイブリッドワークプレイス (ハイブリッドな職場) を成長かつ進化させることになり、当社の従業員やお客様、そして事業の継続的な発展を支える能力を高めることにもなりました。

昨年 3 月、私は世界中のマイクロソフト従業員にメールを送信し、現場での作業が必要な人以外は在宅勤務を義務化する方針を打ち出しました。従業員がリモートワークに取り組んで 1 年が経過した現在は、世界の一部のオフィスで政府が求める条件を満たしているかそれ以上の段階に達したことから、より多くの従業員を受け入れることが可能となっていますが、他の多くの従業員はリモートワークを続けています。現時点では世界 21 ヶ国のマイクロソフトオフィスにて、世界の従業員の約 20% にあたる人員の受け入れが可能となっています。3 月 29 日には、ワシントン州レドモンドの本社と近隣キャンパスでも同様に従業員の受け入れを開始します。

パンデミックの発生当初から、マイクロソフトでは従業員の健康と安全を最優先にしてきました。キャンパスに通う従業員数を安全に増やす時期を判断するにあたり、常に地域の健康データを監視しつつ政府の要件を確認しています。一部の従業員が世界各地のオフィスに復帰する一方で、リモートワークを希望していたりその必要があったりする従業員もいるなど状況はさまざまですが、こうした中でハイブリッドワークプレイスを実践する新たな方法を模索しています。世界各地の拠点でハイブリッドワークプレイスモデルによるバランスを取っており、キャンパスへの復帰を希望する従業員には限定的な追加サービスを提供しつつ、リモートワークの必要がある従業員やリモートワークの方が快適だと感じる従業員もサポートしています。目標は、従業員がより柔軟に働けるよう、最も生産性が高く快適だと感じる場所で仕事ができるようにすることですが、新型コロナウイルスやその変異ウイルスが未だ懸念事項となっている現在は在宅勤務も推奨しています。

例えばレドモンドのキャンパスでは、何ヶ月もの間地域の健康データをしっかりと監視し、ワシントン州の収容人数規制に沿った形で安全により多くの従業員をキャンパスに受け入れられると判断しました。この地域におけるウイルス対策の進捗状況を確認しつつ、当社の指針も継続して見直し、レドモンド本社や近隣キャンパスで働く従業員に現場に戻るか、リモートワークを続けるか選択してもらうとともに、その両方を組み合わせて柔軟に働けるようにもしています。

今後数ヶ月で何が起こるかすべてを予測することはできませんが、何があっても必要に応じて学び、再評価し、対応を変更するという成長のマインドを持って対処していきます。

進化を遂げたハイブリッドワークプレイスへの道

1 年前、ウイルスとその影響は複雑すぎて予測できないことがすぐに把握できました。当初は具体的なスケジュールやパンデミックの進行状況に応じた指針を出そうとしましたが、その段階がいつになるのか正確に予測できるほどパンデミックを理解していなかったのです。その後、従業員やコミュニティの安全を確保するには、常に変化する公衆衛生の状況や政府の指針に対応した現場復帰戦略を策定する必要があることがわかりました。また、地域を超えて一貫したアプローチを推進し、社内で統一した COVID-19 対策を行う必要もありました。

これを念頭に、マイクロソフトはハイブリッドワークプレイスダイヤルを作成しました。このダイヤルには、特定の時間軸ではなく、定義された 6 つのステージがあります。これにより、健康状態に応じてオフィスの対応が迅速に調整でき、データに基づいた意思決定もできるようになります。また、現在の地域の健康データや政府の指針に基づき、各オフィスがどの段階にあるのかダイヤルで判断できるようになります。このダイヤルはどちらの方向にも動きます。COVID-19 による地域の負担が改善されればそのオフィスのダイヤルは前に進み、状況が悪化するとダイヤルを戻すといった具合です。各ステージは、データに基づいた基準 (感染者数や死亡者数の傾向、政府の指針など) と、オフィスの準備状況の評価によって決まり、ステージごとに方針と行動が用意されています。

例えばステージ 4 と 5 では、限定的またはそれより少し柔軟にオフィスで働けるような選択肢を用意しているものの、オフィスがステージ 1~5 の段階にある間はリモートワークが推奨されており、現場に戻る必要性を感じてはならない状況です。ステージ 6 は、すでに COVID-19 が地域社会に大きな負担をもたらすものではなくなった段階で、季節性インフルエンザのような流行性ウイルスに近くなった状況を指します。この最終段階になると、パンデミックに伴うオフィスでの要件や予防策はほぼ解除され、キャンパス内のほとんどのサービスが再開できるようになります。レドモンドキャンパスで 3 月 29 日に予定されているのは、ダイヤルがステージ 3 からステージ 4 へと移行することです。6 つのステージ
世界中でマイクロソフトのオフィスの一部が、地域の公衆衛生上の要件を満たしているか上回っていることから、より多くの従業員を受け入れられるようになっています。その中でマイクロソフトでは、安全に働けるよう必要な予防措置を講じていますが、その状況を維持するには個人の義務が不可欠です。ステージ 1~5 の段階にあるオフィスでは、職場でのソーシャルディスタンスやマスク、清掃作業の強化、日々の健康確認、出勤対策など、慎重な手段を取っています。

このような対策によって職場は大きく変わりますが、マイクロソフトの基本方針に沿った今回の職場復帰戦略のコンセプトと力はまっとうなものだと考えています。

・身体的、精神的、感情的に健康であることを最優先とします。

・従業員のニーズをサポートし、状況に応じてリモートワークやマイクロソフトオフィスで働くことができるよう、柔軟に対応します。

・お客様へのサービスや、重要な事業活動は継続します。

・地域や政府、公衆衛生の指針に従い、その要件を満たすかそれ以上の対応を行います。

マイクロソフトのオフィスに一部復帰した数千人の従業員の状況を見てみると、従業員は柔軟性を受け入れ、オフィスと自宅との時間を分けていることがわかります。調査データによると、ステージ 4 で職場復帰を選択した調査回答者のうち 54% は、オフィスで過ごす時間が 25% 以下となっています。また、69% の人はオフィスで過ごす時間が 50% かそれ以下となっています。この数字は、まだ多くの従業員がワクチンを接種しておらず、多くの学校が閉鎖されているという現時点での状況によるものだと考えられます。今後も状況が変化する中で、従業員にフィードバックを行い、意見を取り入れていきます。

従業員の安全性確保に向けたオフィスの変化

職場が以前と同じでないことは、皆わかっていると思います。昨年、多くの人が職場を離れて仕事をするようになって以来、当チームではさまざまな健康・安全対策を実施し、地域の公衆衛生当局が設定した基準を満たすよう、そして多くのケースでその基準を上回るよう取り組んできました。この取り組みは、従業員の健康を守るというマイクロソフトの最優先事項に沿ったさまざまな事前対策にもつながっています。

・マイクロソフトでは、ソーシャルディスタンスを保ち、地域の健康基準を満たすにはどういった調整が必要か把握するため、全オフィスを調査しました。また、全従業員と外部スタッフに、オフィスで使う除菌ティッシュやマスクなどの備品を提供します。

・地域ごとの収容人数に関する指針やソーシャルディスタンスの要件を満たすにあたり、必要に応じてチームごとのスペースやオープンスペース、共有スペース、物理スペースなどを調整するといった出勤対策を取ったほか、組織のニーズに応じてこれらの対策を組み合わせるようにしました。

・施設やオフィス内のサービスを一部変更しました。例えば、会議室やマイクロソフト交通サービスの収容人数に制限を設けたほか、共有エリアやカフェテリアにソーシャルディスタンスを保つようポスターを貼ったり、館内に手の消毒液を設置したりしました。

・従業員が他のオフィスに行く際に適用する基準と、お客様やパートナーがマイクロソフトのオフィスを訪れる際に適用する基準が同じになるよう、一貫性のある基準を設けています。

ワクチンの接種率は高まりつつあり、ウイルスによる地域社会の負担軽減にはワクチン接種が欠かせません。ただ、現在の接種率では多くのオフィスでの予防措置や予想を緩めるわけにはいかないのです。今後もワクチンの影響や公衆衛生上の指針を注視し、必要に応じて職場変更に関するアドバイスをしていきます。

ハイブリッドで現代的な職場の実現に向けて

今後ハイブリッドな働き方には、柔軟な働き方の指針や包括的な空間設計、革新的なテクノロジーソリューションなどを網羅した新たなオペレーションモデルや戦略が必要となります。現代的な職場で企業に求められるのは、従業員の新たな期待に応え、分散した労働力を結びつけ、創造やイノベーション、共同作業ができるツールを提供することで事業課題を解決できるようにすることです。マイクロソフトでは、過去 1 年間に見られた職場に関する知見と、今後予想されることを共有するため、本日 2021 Work Trend Index を発表しています。このレポートには、ハイブリッドな働き方の時代に向けてリーダーが検討すべき新たなデータと詳細な調査、そして専門家の知見が含まれています。

マイクロソフトでは、職場に人が集まることに価値があると考えています。世界各地にオフィスを置くことで、新たなアイデアや新鮮な視点、現地ならではの観点を取り入れて文化が豊かになり、お互いに学び続けることができるようになります。イノベーションラボやブリーフィングセンターなど、お客様の近くでより多くの接点を持つことにより、お客様やパートナーのニーズをさらに理解し、すばらしい共同の取り組みがさらに価値の高いものとなるのです。

これからもマイクロソフトでは、チームが協力して働くにあたって必要なさまざまな手法に対応する空間を用意するとともに、現在必要とされる柔軟性や俊敏性を提供することに注力します。職場の設計には、熟考した研究に基づく手法を取っており、インクルーシブであるようにというマイクロソフトの基本的なデザイン戦略を最小限変更するだけで、協力的かつ健康的で安全な環境が実現できると考えています。マイクロソフトでは、世界中のオフィスでインクルーシブデザインの標準化を取り入れており、人間の多様性を最大限活用することで、当社が構築するすべてのオフィス空間が誰にとっても役立つものになるよう取り組んでいます。従業員が在宅勤務中であっても、職場で仕事をしていても、職場にある野外コラボレーションスペースを利用していても、この手法によって帰属意識が高まり、どのような働き方をしていてもチームのつながりが保てます。

さらにマイクロソフトでは、当社の研究者、エンジニア、不動産や施設の専門家によるグループを結成し、ワシントン州レドモンドとイギリスのキャンパスにハイブリッドな会議スペースのプロトタイプを設けました。同グループでは、さまざまな会議の構成や、マルチスクリーン、カメラ、複合現実シーンなどの技術を調査し、ハイブリッドな働き方における最も効果的で包括的な状況を見極めようとしています。まだ初期段階ですが、既存の技術を再構築するだけのものから、ハイブリッドな働き方に対応する新たな Microsoft Teams のイノベーションを設計することまで、さまざまなソリューションを検討しています。

リモートワークで生産性を高めるには、新たなコラボレーションツールや堅牢なクラウドインフラ、そしてネットワークセキュリティに対する新たな考え方が必要です。また、ハイブリッドな働き方には新たな課題も生まれます。役職や場所にかかわらず、全員が仲間であり、参加していると感じるようにしなくてはならないためです。そこでインクルーシブな会話ができる空間を意図的に作り、共に働く新たな手法を定義することが重要となるのです。そのためマイクロソフトでは、リモートワークとハイブリッドワークの双方の環境に対応する当社のテクノロジツールのイノベーションによって、ハイブリッドな働き方の進化をサポートしています (例えば、Teams の Together ModeMicrosoft Whiteboard、インテリジェントキャプチャなどの機能を備えた Microsoft Teams ルームなどです)。

ニューノーマルがどの程度のものになるかはわかりませんが、マイクロソフトは柔軟性への理解を深めつつ新しい働き方に適応していきます。働き方には何千通りもあり、去年マイクロソフトの従業員はどんなことができるかを示してくれました。ワークライフバランスを維持するには柔軟性が欠かせないと感じています。

従業員と頻繁に透明性の高いコミュニケーションを持つことが、これまで以上に重要になってきています。それが意味のあるフィードバックループを確立し、全員の学びや改善に向けた繰り返しにつながっていきます。従業員からのフィードバックによると、オフィスに復帰することを楽しみにしている人もいれば、外部での仕事を続けたい、また外部で働く必要があるという人もいます。マイクロソフトでは、従業員にさらなる柔軟性を提供することで、個人のワークスタイルを支え、ビジネスニーズとのバランスを取り、当社の文化を継承していくことを目標としています。また、重要なインフラを支える役割を担う従業員など、一部の人は現場での作業が求められている一方で、リモートでも同じように行える仕事があることも理解しています。COVID-19 が地域社会に多大な負担を強いることがなくなれば、そしてオフィスを開放できる段階にまでダイヤルを動かすことができれば、マネージャーとチームが連携できていることを前提に、ほとんどの役職で在宅勤務は一部のみ (50%以下) とすることが標準的な働き方になると考えています。現在も将来的にも、特定の仕事を特定の環境に合わせるといった従来の考え方を見直す機会が来ているといえます。

ハイブリッドワークプレイスモデルによって、マイクロソフトは従業員に優れた職場を提供し、16 万人以上の従業員に対するさらなるコラボレーションとコミュニティを構築し、柔軟でハイブリッドなモダンワークプレイスの事例を示していきたいと考えています。

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