Work Trend Index Pulse レポート「脳には休憩が必要なことが調査で明らかに」

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会議の合間に休憩を取りやすくする新オプションを提供

※本レポートは、米国時間 4 月 20 日に公開された “Research Proves Your Brain Needs Breaks” の抄訳を基に掲載しています。

パンデミックの時期には、多くの人がビデオ会議を連続で詰め込んでいます。ひとつの会議が終わると次の会議が始まるため、ストレッチしたり、水をグラスに注いだり、頭をスッキリさせたりする時間もないことが多いと思います。

マイクロソフトが実施した最新の脳波の活動に関する調査から、多くの人が体感していることが明らかになりました。それは、次々とバーチャル会議に参加していることをストレスに感じているということです。また同調査では、短い休憩を入れることが簡単な解決策であることも指摘しています。

「当社の調査で、休憩が重要なことがわかりました。休憩は、1 日の終りに疲れを少しでも和らげるだけでなく、会議中の集中力やエンゲージメントも実際に高めることができます」と、このプロジェクトを監督したマイクロソフトのヒューマンファクターズエンジニアリンググループでシニアディレクターを務めるマイケル ボーハン (Michael Bohan) は語ります。

Microsoft Outlook の設定により、詰め込まれた会議の合間に必要な休憩時間を簡単かつ自動的に入れることが可能です。すべてのケースに合わせることは困難なため、選択肢を2つ用意しています。個人ユーザーは、スケジュールのデフォルト設定として、自動的に会議のスケジュールを短縮することが可能です。また、本日より、組織全体のスケジュールにおけるデフォルト設定で、全社的に会議を短縮し、休憩時間が取れるような設定ができるようになります。

「この 1 年間で会議の詰め込みが一般的となりましたが、このような状況が持続できるわけではありません」と、Microsoft 365 担当コーポレートバイスプレジデントのジャレッド スパタロウ (Jared Spataro) は述べています。「Outlook や Microsoft Teams は世界中で何百万人もの人に使われています。そこに少し変更を加えることで、お客様は新たな文化的な基準を構築することができ、あらゆる人々のウェルビーイングを向上させることができるのです」


「現在のリモートワークやハイブリッドな働き方の世界では、セルフケアを促進するだけでは不十分です。イノベーションを進めテクノロジを駆使することで、従業員に必要な休憩を日々のルーティンに組み込めるようになります」– マイクロソフト チーフピープルオフィサー キャスリーン ホーガン (Kathleen Hogan)


世界中でさまざまな役割を担う従業員を多数抱えているマイクロソフトでは、そのやり方が個人やそのチームに合っているのであれば、従業員が設定を有効化するよう推奨しています。ハイブリッドな働き方への移行が進む中、この新しくよりデジタルな世界において今後も学びを継続し、働き方を向上させる方法を共に模索したいと考えています。

休憩問題について: 研究者の提言

パンデミックによって日常生活が混乱し、業務のデジタル化が進む中、何百人ものマイクロソフトの研究者が集結して働き方の変化を調査し、同分野における世界最大級の調査をまとめました。

最新の研究は、この取り組みがベースとなったものです。マイクロソフトのヒューマンファクターズ研究所にて、リモートワークやハイブリッドな働き方の新たな時代において喫緊の課題となっている会議疲れの解決策を模索しました。人間とテクノロジの関わりを調査している同研究所の研究者は、14 人を対象に脳波 (EEG) 計測器を装着してビデオ会議に参加してもらいました。EEG 計測器は、頭に装着して脳の電気活動をモニターする機械です。

14 人の参加者は、それぞれ 2 つの異なる会議に参加しました。ある日には、30 分会議を 4 回連続で詰め込み、それぞれの会議で異なるタスクに取り組みました。例えば、オフィスのレイアウトをデザインしたり、マーケティングプランを作ったりしました。またある日は、4 回の 30 分会議の合間に 10 分間の休憩を入れました。参加者はひとつの会議から次の会議へと急いで移るのではなく、休憩時間中に Headspace のアプリで瞑想しました。

データを明確にするため、参加者は全員休憩時間中に同じ活動をするよう指示されました。今回はそれが瞑想でした。こうすることで、結果を比較できるからです。このセッションは、2 週連続で月曜日に行われました。一方の参加者は連続会議から、そしてもう一方の参加者は会議の途中に休憩を入れることから始め、翌週にはその立場を逆にしました。そして、さまざまなチームの人と交流する一般的な日常をシミュレーションするために、追加で 14 名以外の人々にも研究対象として参加しました。

調査の結果、3 つの主要なポイントが明らかになりました。

1. 会議と会議の合間に休憩を入れることで脳が「リセット」され、会議で徐々に蓄積するストレスを和らげることが可能です。

以前の調査にもありましたが、2 時間連続で会議することにより、ストレスに関連するベータ波の平均的な活動が徐々に高まっていきます。つまり、ストレスが蓄積されていくのです。

しかし、瞑想して休む時間が与えられると、ベータ活動は低下し、「リセット」が可能になります。このリセットにより、参加者は次の会議をよりリラックスした状態で始められるようになります。また、ベータ波の平均レベルが 4 回の会議にわたって安定しており、4 回会議が続いてもストレスが蓄積されていないこともわかります。

会議疲れを防ぐのは簡単です。短時間の休憩をとるようにすればいいのです。


休憩によって脳の活動が変わる
ビデオ会議の合間に休憩時間を入れることで、ストレスの蓄積を抑制できます。

ベータ波の活動
図 1: マイクロソフトのヒューマンファクターズ研究所は、EEG 計測器を使って会議参加者のストレスに関連するベータ波の活動を測定しました。休憩を取った人は、時間が経っても平均的なベータ波の活動がほぼ一定で、ストレスレベルが「平静」だったことが青と緑で示されています。休憩が無かった人は、平均的なベータ波の活動が時間とともに上昇し、ストレスが蓄積されていることがわかります。ストレスの上昇は、冷静な色から熱い色へと変化していることから見て取れます。この図は、休憩をとった人ととらなかった人の会議の冒頭におけるベータ波の活動を比較したものです (調査参加者 14 人の平均)。

2. 会議を詰め込むと、集中力とエンゲージメント力が低下します

休憩時間に瞑想した参加者の脳波のパターンは、前頭葉のアルファ波の非対称性が高いレベルで出ていました。これは、会議中のエンゲージメントが高いことを示します。休憩をとっていない人は、前頭葉のアルファ波の非対称性がマイナスレベルで、会議中に離脱状態にあることや、エンゲージメントが下がっていることを示しています。これにより、脳がストレスを感じている時は集中力やエンゲージメント力を維持するのが難しくなることがわかります。

つまり、休憩はウェルビーイングに良いだけでなく、仕事で最高のパフォーマンスを出す力も高まるのです。


休憩を取ることで、エンゲージメントが向上
息抜きは、ストレスを和らげるだけでなく、パフォーマンスを高めます

休憩を取ることで、エンゲージメントが向上
図 2: 会議へのエンゲージメントが高まっているか、離脱状態にあるかを測るため、研究者は、前頭葉のアルファ波の非対称性 (前頭葉における左右のアルファ波の活動の差) という脳波のパターンを調査しました。マイクロソフトの調査では、休憩をとった人は非対称性がプラスとなり、エンゲージメントが高いことを示しています。休憩をとらなかった人は非対称性がマイナスで、より離脱した状態にあることがわかります。

3. 次の会議への移行が高ストレスの原因となることもあります。

休憩が無かった参加者には、会議から次の会議に移る移行時にもベータ活動が見られ、ストレスレベルが急増することがわかりました。

その要因としてボーハンは、「会議が終わりに近づくと、すぐに次の会議が始まることがわかっているので、ギアを入れ替え、頭を使って別のことを必死で考えなくてはならないからでしょう」と述べています。

休憩が無かった人は、新しい会議に入った時にベータ波の活動が再度急上昇しました。一方、休憩時間に瞑想した人は、上昇していたベータ活動が会議の合間に低下し、次の会議が開始した時に上昇してもより緩やかでスムーズな動きでした。


ひとつの会議が終わってすぐに次の会議に入ると、ストレスが急上昇
会議の合間に休憩を取れば、このようなストレスは和らぎます

ひとつの会議が終わってすぐに次の会議に入ると、ストレスが急上昇
図 3: 休憩が無いと、会議の始めと終わりに脳のベータ波の活動が急上昇し、ストレスが高くなることがわかります。休憩をとることで、そのような急上昇が抑えられるだけでなく、ベータ活動を低下させ、ストレスを和らげることができます。

つまり、会議から会議へと移行する際のストレスを軽減するには、短くても休憩をとることが重要だということです。

「この研究が強力で身近に思えるのは、人が内面で現象として体験していることを、効果的に見える化しているところにあります」とボーハンは語ります。「これは抽象的なものではなく、全く逆のものです。会議の詰め込みによって人が感じるストレスや疲れを科学的に表現したものなのです」

マイクロソフトの製品や業務への対応

この調査結果は、Microsoft Outlook の設定に反映され、個人や組織が Microsoft Teams の会議を 5 分、10 分、15 分削るというデフォルト設定ができるようになり、その合間に休憩がとれるようになりました。

例えば、個人や企業で会議を特定の時間の 5 分や 35 分から開始すると決めることで、30 分の会議が 25 分になり、1 時間の会議が 55 分になります。つまり、11 時に始まる予定の 30 分間の会議は、11 時 5 分に始まる 25 分間の会議になります。

このような変化を支持しているのは、脳の研究だけではありません。デジタルによって過度な負荷がかかるデジタルオーバーロードは、リモートワークやハイブリッドな働き方という新時代において喫緊の課題となっているのです。マイクロソフトが 3 月に公開した 2021 年 Work Trend Index では、グローバルな外部調査にて 54% の回答者が自分は働き過ぎだと感じており、39% が完全に疲れ切っていると答えています。

この 1 年でマイクロソフトは、このような急速な変化の時代に健康を促進するような新機能をリリースしてきました。Microsoft Teams の Together モードは会議疲れを解消し、バーチャル通勤は仕事と家庭の境界線を再構築する際に役立つ機能です。また、Microsoft Viva Insights アプリと一緒に提供される Headspace は、マインドフルネスを促進するものです。今回 Outlook で新たな設定ができるようになったことは、ウェルビーイングへの道のりに向かう次のステップであり、今後も新たな機能が登場する予定です。

最後にもうひとつ。Outlook の新設定を使って会議と会議の間に休憩時間を入れる場合、PC から離れることを検討してください。「その 5 分間や 10 分間に、他の仕事を詰め込まないように」と、ボーハンは話します。「一息ついて、画面から離れるようにしましょう」

休憩時間を有効活用して、会議疲れに打ち勝つ戦略とは

休憩時間を作ることなど簡単なように思えますが、実行に移すのは難しいものです。そこで、休憩時間を確保し、その時間を最大限活用し、会議をより効率的で活気あるものにするために、研究に基づいたヒントをまとめました。

考え方を変えてみましょう。休み無しに働いた方が効率的だと感じるかもしれませんが、調査では逆の結果が出ています。PC から離れることも重要な仕事のうちだと考えるようにしましょう。

心が落ち着くような休憩時間の過ごし方を見つけましょう。会議の合間にリラックスし元気を取り戻すには瞑想が効果的ですが、他の研究ではウォーキングなど体を動かすことが有効だという結果も出ています。マイクロソフトの過去の研究では、だらだらしたり楽しいものを読んだりすることにも効果があることがわかりました。「仕事関係のことを忘れ、リラックスできることに集中すれば何でもいいのです」とボーハンは語ります。そうすれば、次の会議を始める時にはリフレッシュして元気な状態でいることができるでしょう。

他のコミュニケーション手段を検討し、休憩をさらに増やしてみましょう。ビデオ通話のスケジュールを立てる前に、この課題について本当に会議する必要があるのか、立ち止まって考えてみてください。よりダイナミックで創造的なトピックや、感情的なトピックであれば会議が必要かもしれませんが、状況確認や情報に関することであれば、ドキュメントコラボレーションや Teams のチャネル、メールなどの方が良いかもしれません。その他の単純なタスクは、チャットで対応することもできるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。

会議をより計画的に実施しましょう。最も良いとされる会議は、時間も短く計画的なものです。事前にアジェンダを作成し送信しておくことや、出席者をしっかり考えること、時間通りに開始し終了すること、最後の 5 分間はまとめに入ること、といったようなベストプラクティスを実践することで、より短時間に目標を達成できます。詳しくはこちらをご覧ください。

参加者のエンゲージメントを高め、活気づけましょう。バーチャル会議では、リモートで相づちを打つのも難しいものです。会議の進行役が、リモートの参加者を確実に巻き込んでいくようにしましょう。Microsoft Teams の挙手機能やホワイトボード、ブレイクアウトルームなどのテクノロジも活用することで、創造的で戦略的な会話を引き出してください。

調査方法
この調査は、マイクロソフトのヒューマンファクターズ研究所が 2021 年 3 月 8 日~18 日に実施したもので、脳波 (EEG) 計測機を装着した 14 人にビデオ会議に参加してもらい、脳の電気活動をモニターしました。参加者は、普段リモートワークをしている米国のインフォメーションワーカーで、マイクロソフト従業員とその他企業の従業員で構成されています。対象者はそれぞれ 2 つの異なる会議に参加しました。最初は半数の参加者が 30 分間の会議に 4 回連続で出席し (連続 2 時間)、それぞれの会議で異なるタスクが与えられました (例えばオフィスレイアウトのデザインやマーケティングプランの作成など)。残りの参加者は、4 回の 30 分間会議の合間に 10 分間の休憩が設定され、休憩時間には Headspace アプリで瞑想しました。翌週はグループを入れ替え、前週に連続会議をしたグループが休憩し、前週に休憩したグループが連続会議を行いました。それぞれの 30 分会議には、脳波を測定していないボランティアが 3~4 人参加してバラエティに富んだ環境を作り、協力して指定されたタスクをこなしていきました。Headspace 社は今回の調査の設計や実施には関与していません。

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