シャーリー ストローン (Shirley Strachan)
アジア地域 IoT パートナーセールス担当ゼネラルマネージャー
アジア太平洋地域は長年にわたって製造業が強い地域で、この業界では引き続き IoT が積極的に導入されています。しかし、最新の Microsoft IoT シグナルレポートによると、現在 IoT はより幅広い業界で世界的に導入が進んでおり、中でもアジア太平洋地域の多くの市場で重視されているスマートスペース分野での IoT の採用が顕著です。
同レポートの最新版は、アジア太平洋地域の組織にとって心強い内容となっています。このグローバルな調査は、3,000 人以上のビジネス意思決定者 (BDM)、開発者、インターネット技術の意思決定者 (ITDM) を対象に、オーストラリア、中国、日本を含む 10 ヶ国にて実施されました。レポートには、IoT が引き続きさまざまな用途で幅広く採用されていること、そして大半の企業が事業の成功には IoT が欠かせないと考えていることが示されています。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって、一部の人が懸念していたような成長の鈍化は見られず、IoT がさまざまな他のテクノロジとより密接に統合する中、むしろパンデミックをきっかけにさまざまな業界で投資が進んでいることがわかります。
アジア太平洋地域の中では、オーストラリアの組織における IoT 導入率が 96% と最も高く、イタリア (95%) や米国 (94%) よりも高くなっています。また、中国の組織はより革新的なユースケースで IoT を導入しており、新興技術戦略に対する導入率が最も高くなっています。日本では、企業が生産性向上や業務最適化に向け IoT を活用しているケースが多いことがわかりました。以下で、アジア太平洋地域の組織に見られる 3 つの主要トレンドを掘り下げていきます。
1. IoT プロジェクトのプランニングへの注力が成果に結びつく
アジア太平洋地域では、IT プロジェクトが実を結ぶまでに若干時間がかかりますが、それはより思慮深く入念なアプローチを取っているためで、その成果は出ているようです。アジア太平洋地域では、成功に向けた主要なビジネス目標を決めるにあたり、事前に時間をかけてじっくりと検討しており、その結果同地域の組織は IoT 導入率が高く (オーストラリア 96%)、IoT を重要視しており (中国では 99% の企業が事業の成功に IoT は欠かせないと回答)、IoT の総合満足度も高くなっています (中国 99%、オーストラリア 97%)。IoT の目的はグローバルでの調査結果とほぼ同じで、同地域の 3 ヶ国すべてにおいて、一貫して品質保証とクラウドセキュリティが挙げられていました。オーストラリアと日本の組織は、最適化と業務効率化に役立てようと IoT を採用しており、オーストラリアではエネルギーの最適化 (発電、分配、使用)、日本では製造の最適化 (アジャイル工場、生産最適化、フロントラインワーカー) に注力しています。オーストラリアと中国では、IoT を活用した状態監視保全の一環としてデバイス監視を行う傾向が高くなっています。
同地域の企業では、さまざまなユースケースによって大きなメリットが出ています。例えば、業務効率やスタッフの生産性が高まり、ヒューマンエラーの危険性削減で品質が向上し、生産能力の高まりによって生産量が増えているという報告があります。
2. 新興技術が IoT の導入を加速
調査対象となった組織のうち、IoT への投資を来年増やす、もしくは維持すると回答した 88% の組織は、AI やエッジコンピューティング、デジタルツインなどの新興技術を IoT ソリューションに取り入れる傾向がより高いことがわかりました。アジア太平洋地域では、こうした技術に対する認知度が他の市場より高くなっています。
中国の組織は、AI、エッジコンピューティング、デジタルツインの 3 分野に向けた戦略を持つ組織が、他の地域の組織と比べてはるかに高くなっています。AI とエッジコンピューティング戦略の実装については、中国が他のどの国をも凌いでおり、オーストラリアではデジタルツインを認識している企業の大半となる 98% が、同技術への具体的な戦略があると答えています。さらに重要なのは、こうした技術の体験が地域全体の IoT 普及率を高めていることで、約 8 割の組織がこれらの技術を IoT ソリューションに取り入れようとしています。
3. 業界特化型 IoT ソリューションがより幅広いメリットを促進
IoT シグナルレポートでは、アジア太平洋地域を代表する複数の業界を詳細に分析しています。例えば、オーストラリアの組織を見てみると、エネルギー、電力、公益事業会社では、IoT をグリッドオートメーション (44%) やメンテナンス (43%) に活用しており、石油・ガス企業は、職場の安全性 (45%) および従業員の安全性 (43%) に IoT を適用するケースが多くなっています。また、エネルギー企業は、IoT ソリューションに AI を使う企業が 89% と、他業界より大幅に高くなっています (全業界では 79%)。ここに挙げた業界の組織では、業務効率や生産能力が増大し、顧客満足度が向上するといった IoT のメリットを享受しています。
製造業が市場の重要な一部となっている日本では、主に自動化の強化に注力した利用段階の IoT プロジェクトが 26% と、他業界よりも多く見られます。製造業では、こうした IoT ソリューションを品質保証や工業オートメーションの促進、生産フローの監視に活用しています。これにより、業務効率化や生産能力の強化というメリットが得られ、競争優位性が高まります。この業界では、技術的な課題よりも、主にレガシーシステムやレガシープロセスによって多くの時間と検討が必要な大規模ビジネストランスフォーメーションの方が課題となっています。
もちろん、中国はデバイスに関しては常に革新的なので、同国の製造業にも同じような影響が及ぶことになるでしょう。しかし、アジア太平洋地域の他国と同様、大きく注目されているのはスマートスペース分野で、この分野での IoT 導入率が 94% と最も高く、全体的な満足度も 98% と最も高くなっています。またこの分野は、今後の成長が最も強固に見込まれる分野でもあり、69% が 2 年以内に IoT をさらに活用すると回答しています。さらに、AI 戦略に対して IoT を導入している組織の割合も、この分野が最も高くなっています。スマートスペースの IoT アプリケーションとして主に採用されているのは、生産性と建物の安全性に関するもので、こうした分野で組織は業務効率性や個人の安全性向上といったメリットを享受しています。
このレポートから、IoT が今後も定着することは明らかで、アジア太平洋地域全体の組織による懸命な取り組みの成果が出てきていることがわかります。詳細は、Microsoft IoT シグナルレポートの完全版をダウンロードいただければと思います。レポートでは、アジア太平洋地域や世界中の企業が IoT をどのように活用しているかや、セキュリティ、実装戦略、持続可能性といったトピックも網羅しています。
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