※本ブログは、米国時間 9 月 14 日に公開された “New Azure Space products enable digital resiliency and empower the industry” の抄訳を基に掲載しています。
2 年前に Azure Space を開始して以来、マイクロソフトは、クラウドのパワーと宇宙産業の可能性の融合にフォーカスした、パートナーシップ、製品、ツールを発表してきました。
本日、マイクロソフトはこのミッションに向けた新たな製品群の強化、そして、宇宙産業の民主化とパートナー支援の具体的施策を発表します。
- Azure Orbital Cloud Access Preview の発表
- Microsoft Cloud のパワーを、最も必要とされる場所に提供できるまったく新しいサービスです。
- Azure Orbital Ground Station の一般提供開始の発表
- 2020 年 10 月に Azure Space が発売されて以来、Azure Orbital Ground Station は高い関心を呼んできました。本日より、KSAT などのパートナーネットワークに加えて、Pixxel、Muon Space、Loft Orbital といったすべての衛星通信事業者にこのサービスを提供します。
- 衛星通信ネットワークのDXの推進
- iDirect モデムの完全仮想化デモを初めて実施しました。
- SES と共に、新しい共同衛星通信仮想化プログラムを発表します。
これらの発表に共通するインパクトは以下の 2 つの重要な効果を示しています。第1に、マイクロソフトは、Microsoft Cloud による接続性とデータ活用を開放することで、宇宙の可能性を民主化することにフォーカスしています。第 2 に、Azure の柔軟で拡張性のある計算能力を利用することで、宇宙産業のお客様やパートナーの DX を支援していきます。
Azure Orbital Cloud Access Preview の発表
Azure Orbital Cloud Access は、企業や公共組織が最も必要とする場所にクラウドへのアクセスを提供します。宇宙エコシステム全体において、低遅延の衛星通信ネットワークが普及しつつあります。光ファイバー、携帯電話、衛星ネットワークを横断したアクセスを拡張していくためには、これらのオプション間でトラフィックを優先順位付けし、レジリエントな接続性を滑らかなクラウド体験に橋渡しするためのアクセス方法が必要です。
本日、マイクロソフトは、Azure Orbital Cloud Access のプレビューを発表します。5G と衛星通信が統合された未来に向けた重要なステップである Azure Orbital Cloud Access は、地球上のどこからでも低遅延 (1ホップ) のクラウドアクセスを可能にする新サービスであり、企業のクラウド運用に衛星通信を導入することを容易にします。
より具体的には、Azure Government プレビューのお客様に、接続性がほとんどない地域や、フェイルオーバー接続オプションが必要な地域における新たなシナリオと機会が提供されます。Azure Orbital Cloud Access は、SpaceX の Starlink 接続と Azure エッジデバイスを通じた優先的なネットワークトラフィックを提供し、Starlink が稼働する場所であればどこでも Microsoft Cloud のサービスにアクセスできるようにします。
「Starlink の高速かつ低遅延なグローバル接続と Azure インフラストラクチャの組み合わせにより、ユーザーはいつでもどこでも光ファイバーのようにクラウドコンピューティングにアクセスできるようになります。このソリューションを官民両方のお客様に提供できることをうれしく思っています」 — グイン・ショットウェル (Gwynne Shotwell) SpaceX プレジデント兼COO
さらに、Azure Orbital Cloud Access は、シンプルな月額利用料と従量制の衛星通信消費モデルによる課金体系で、お客様のソリューション全体を管理します。
また、Juniper Networks の SD-WAN テクノロジとネイティブに統合されており、お客様はファイバー、携帯電話、衛星通信ネットワーク間の接続に優先順位をつけることができます。
現在、Azure Orbital Cloud Access Preview は Azure Government のお客様向けに提供されています。ご登録は、マイクロソフトアカウント担当チームにお問い合わせください。
Azure Orbital Cloud Access により 全米省庁合同火災センター (NIFC) とファースト・レスポンダーを接続
Azure Orbital Cloud Access は、多様なお客様や状況に対応した新たなシナリオを実現します。たとえば、最近、マイクロソフトは、アイダホ州ボイシの NIFC (National Interagency Fire Center: 国家省庁間消防センター) の WFIT (Wildland Fire Information Technology: 森林火災情報テクノロジ) グループと協業しました。この協業は、遠隔地で活動することが多い森林火災の消防士や事故処理担当者に接続性を提供するという課題を解決するためのテストとして行われました。
米国では、毎年数万件の森林火災が発生しています。多くの場合、これらの森林火災は、接続性がほとんどない遠隔地で発生しており、消防士や火災管理者がコミュニケーションを取ることは非常に困難です。接続性の提供により、消防士たちは情報を共有し、火災に連携して対応できるようになります。
マイクロソフトの協力のもと、NIFC は、Azure Orbital Cloud Access の機能を SpaceX の Starlink LEO 衛星群と統合するテストを実施しました。このテストの目的は、遠隔地にいる森林火災消防士が Microsoft Azure サービスに接続できるようにし、消火活動や調整作業を中断なしにサポートできるようにすることでした。
このデモでは、Microsoft Teams と SharePoint を使用した森林火災対応のコラボレーションと管理のためのクラウドベースアプリケーションである FireNet へのアクセスと森林火災データへのリモートアクセスにより、重要な洞察を安全かつ迅速に意思決定者と共有できることが示されました。Azure Orbital Cloud Access により、携帯電話網、ファイバー、衛星を経由したインテリジェントな先順位付きトラフィックによるレジリエントな通信とフェイルオーバー機能を達成することができました。
Pegatron と 台湾新竹市消防局と共に 5G と衛星通信によるデジタルレジリエンスを実現
デジタルレジリエンスは、Azure Space の重要分野であり、接続性提供の重要なユースケースです。多様な接続経路の組み合わせから生まれる未来の可能性を見据えて、マイクロソフトは、Pegatron および SES と提携し、台湾新竹市消防局のために 5G と衛星通信の力を集約した自然災害対策のシナリオを検討しました。
衛星通信テクノロジ、モバイルインフラ、そして Azure のグローバルなカバレッジを活用することで、自然災害で被害を受ける可能性のある地域のインフラに依存せずに代替の接続経路を提供することができると、マイクロソフトは考えています。
「自然災害時には現場最前線での通信がきわめて重要になりますが、インフラが破壊され、接続が途絶えることも少なくありません。この衛星通信対応 5G ネットワークは、私たちが切望していたツールを提供し、ファースト・レスポンダーが人命と財産を守るための戦いに効果的かつ効率的に集中できるようにしてくれます」 — シークン・リー (Shi-Kung Lee) 台湾新竹市消防局本部長
Pegatron との提携により、被災地に迅速に配備できる緊急対応車両が開発されました。マイクロソフトの 5G コア、Microsoft Teams、Pegatron の 5G O-RAN 基地局、SES の MEO 衛星通信群を統合することで、Azure を使用した複数指揮所のファースト・レスポンダー間の広帯域、低遅延の通信を実現し、新竹市消防局の対応力が強化されました。
Azure Orbital Ground Station の一般提供開始の発表
本日、マイクロソフトは、Azure Orbital Ground Station の一般提供開始を発表します。Azure Orbital Ground Station は、フルマネージドサービスとして提供される地上局であり、すべてのお客様にご利用いただけるようになりました。是非ご検討ください。
Azure Orbital Ground Station のミッションは、マイクロソフトのパートナーエコシステムと連携して、衛星通信事業者が衛星に集中し、より低コストかつ低遅延のクラウド運用を実現することであり、Azure のパワーによって、事業者がより早く市場参入できて、高いセキュリティを実現できるようにすることです。マイクロソフト独自のパートナー重視型アプローチにより、地上局のパートナーネットワークを緊密に統合し、お客様が選択した Azure リージョンへのデータ配信をゼロコストで実現します。これにより、お客様の総運用コストを削減し、お客様の Azure テナントにおけるデータがさらなる処理のために利用可能になります。
Pixxel
Pixxel は、ハイパースペクトル地球観測衛星群と、そのデータから洞察を得るためのクラウド分析ツールの構築にフォーカスした宇宙データ企業です。KSAT とマイクロソフトとのパートナーシップにより、Pixxel は市場投入の期間を短縮し、世界トップレベルの地上波通信にアクセスし、運営コストを削減できます。
マイクロソフトが KSAT の世界中に広がるネットワークと統合したことで、Pixxel はバックホールのコストを要することなくデータを直接 Azure Cloud に提供し、Azure の AI/ML サービスを使って処理し、顧客のビジネスインサイトを生成できるようになりました。
Loft Orbital
Loft Orbital は、スペース アズ ア サービスへの迅速、確実、かつ簡便なアクセスを提供する宇宙インフラ企業です。マイクロソフトは、Microsoft Azure で宇宙システム用のソフトウェアアプリケーションを開発、テスト、検証し、Loft Orbital の宇宙インフラツールやプラットフォームを使って軌道上の衛星に配備する新たな方法を実現するために、同社との宇宙軌道上コンピューティングにおける戦略的パートナーシップを発表しました。Azure に対応した最初のLoft Orbital の衛星は来年に打ち上げられる予定であり、政府や企業は Azure 環境内で宇宙用ハードウェアにソフトウェアアプリケーションをシームレスに展開できるようになります。
本日は、このパートナーシップが次のステップに進む記念となる日です。Azure Orbital Ground Station の提供開始に合わせて、Loft Orbital とマイクロソフトは、エンドツーエンドの顧客ミッションをサービスとしてサポートします。KSAT は、マイクロソフトと協業の下、既存顧客である Loft Orbital が Azure Orbital Ground Station と接続し、特定のミッションニーズのために、マイクロソフトと KSATの地上局を活用するデモを行いました。
Muon Space
Muon Space は、気候データ主導の意思決定を実現する世界トップクラスの衛星リモートセンシングプラットフォームを開発しています。同社は、企業が環境目標を達成するために必要なデータセットを収集するためのターンキーソリューションを提供します。
これらのユースケースの多くは、グローバルな観測範囲と迅速な連携によって実現されます。Azure Orbital Ground Station は、地上ロケーションを増やし、すべての軌道で複数の接触機会を確保することで、Muon Space のカバレッジのニーズと運用をサポートします。
Muon Space は、マイクロソフトの地上局に加えて、サステナビリティ製品チームとも提携し、同社の Earth System のデータから派生する企業の Environment Social Governance (ESG: 環境社会ガバナンス) 分析をターゲットにした製品も開発しています。
衛星通信事業者の DX を加速する
DX は、マイクロソフトが事業展開する上で、その DNA の中心を成します。マイクロソフトは、Azure のクラウドが、ヘルスケアから小売、さらには宇宙産業まで、さまざまな業界を変革する力を秘めていることを確信しています。衛星通信事業者および通信は、DX とクラウドテクノロジへの移行において独自の価値を提供できます。
宇宙産業の将来は、仮想化されていない既存ネットワークをサポートしつつ、仮想化による柔軟性と拡張性を実現し、資本集約的なハードウェアの調達サイクルから移行できるか否かにかかっています。Azure Space は、業界がこの移行をシームレスに行うことができるようにするためのプラットフォームを構築しています。
ST Engineering iDirect
昨年、マイクロソフトは、業界最大手の地上波セグメントプロバイダー ST Engineering iDirect 社とのパートナーシップを発表しました。そして本日、Azure 上でソフトウェアとして完全に仮想化された iDirect の高速モデムの最初のデモを行い、このパートナーシップの進展を示しました。独自ハードウェアで実現されていた機能を標準化されたクラウドコンピュータ上で動作するソフトウェアに変換することで、衛星通信事業者の柔軟性向上とコスト削減を実現するこのイノベーションは、Azure Space の宇宙の DX に向けたアプローチの一例です。
SES
2 年前、マイクロソフトは、宇宙産業にクラウドのイノベーションをもたらし、お客様がどこにいても Azure のサービスにアクセスできるようにするために、SESとのパートナーシップを発表しました。
このパートナーシップにより、マイクロソフトは、Microsoft Azure の軌道上コンピューティングの MEO (Medium Earth Orbit) パートナーとして、SES を選択し、同社の第 2 世代 MEO 衛星群 O3b mPOWER の地上局の共同設置を行いました。これにより、お客様にワンホップかつダイレクトなクラウドアクセスによる安全で信頼できる Azure のサービスとアプリケーションの配信を確実に提供できるようになりました。
本日、マイクロソフトは、このパートナーシップをさらに拡大した、新たな共同プログラム Satellite Communications Virtualization Program を発表します。 このプログラムを通じて、マイクロソフトと SES は、ソフトウェア定義型ハブ、顧客エッジ端末、新たな仮想ネットワーク機能、エッジクラウドアプリケーションなどにフォーカスした、世界初の完全仮想化衛星通信地上ネットワークを構築します。この仮想化技術により、クラウドと衛星ネットワークのアーキテクチャが整合し、5G テクノロジを商用衛星ネットワークで使用できるようになり、地上波と非地上波の接続ネットワーク間のギャップを埋められるようになります。また、仮想化されたアーキテクチャにより、システムインターフェースの標準化を迅速に行い、自動化、API ベースの制御、業界を超えた相互運用性の向上を促進できるようになります。
短期的には、このプログラムは、完全に仮想化された SES 地上局のプリプロダクションアーキテクチャを定義・実装することになり、最終的には、Azure のパワーを宇宙エコシステムにもたらす将来の完全仮想化地上局サイトの青写真となるものです。たとえば、地上ネットワークの仮想化により、モデムやアンテナのパートナー企業が、ハードウェア中心の製品ではなく、ソフトウェア定義型ネットワークテクノロジの開発に集中できるという新しいパラダイムが生まれます。これにより、地上システムの展開、および、お客様のサービスニーズに合わせた再構成を迅速化できます。
「真の意味で宇宙ネットワークをクラウド化するためには、オープンでプログラマブルな衛星地上ネットワークが必要です。衛星ネットワークのお客様は遠隔地にいることが多く、また、セキュリティや認証の要件が厳しい航空業界や政府機関では多様な独自機器のアップグレードにはコストがかかり、新しい付加価値サービスの提供が遅延するため、これは特に重要なことです。当社は、マイクロソフトと共同で、標準的なオープンハードウェア、ソフトウェア定義型無線、仮想化ネットワーク機能、動的にプログラム可能なエッジクラウドアプリケーションにより、衛星地上ネットワークのあらゆる要素を仮想化していく予定です」 — ジョン-ポール・ヘミングウェイ (John-Paul Hemingway) SES チーフストラテジーアンドプロダクトオフィサー
マイクロソフトと SES は、この新しい完全仮想化エコシステムの基盤となるプログラムの最初の参加者に対して、本年第4 四半期に提案依頼書 (RFP) を発行する予定です。
最後に
Azure Space は、衛星アクセスを民主化し、地球上のすべての組織がより多くのことを達成できるよう支援します。今回の発表は、Azure とマイクロソフトが最も得意とすること、すなわち、お客様やパートナー企業が新しいビジネスチャンスを引き出すためのプラットフォームとしての機能、お客様の DX の支援、そして業界リーダーと密接に連携したイノベーションにフォーカスしたものとなっています。マイクロソフトは、Azure のパワーと宇宙の可能性を組み合わせたお客様によるクラウドの未来を実現するために、これらの取り組みを推進していきます。
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